※この作品はR-18です。

追想の赤髪少女   作:完熟たまご

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決意

翌日。時刻は午前十時。

 

ほむらはいつも通り学校で授業・・・・・・ではなく家で掃除をしていた。

 

というのも昨晩の行為のおかげで、目を覚ました際には全てがいつもの目覚めと違っていたからである。

 

乱暴に脱ぎ散らかされた制服、ぐしょぐしょに濡れたシーツ、そしてほぼ全裸の自分自身。

 

到底こんな状態で学校に行く気にもなれず、これを機にほむらは部屋を一から片付けようと決めた。

 

体液と汗が染み込んだシーツと制服一式を洗濯し、その間に部屋のできる限りをこまめに片付ける。

 

そして洗濯が終わると、洗い終わった衣類を天日干しにし、最後に床を掃除して完成。

 

「ふむ、我ながらいい働きっぷりね……」

 

綺麗になった部屋を眺めながらそう呟くと、ほむらは昨日からお風呂に入っていないことに気が付く。

 

「丁度いいわ……」

 

タオルや着替えを持ち、風呂場へと向かう。

 

朝方から湯を張ろうとは思わなかったので、軽くシャワーで済ませることにした。

 

「……気持ちいい」

 

程よい温度のお湯に身体が清められ、心地よい。

 

それから髪を洗い、丁寧にコンディショニングし、やわらかめのボディタオルで体を擦るとシャワーを止めた。

 

ぽたぽたと長い髪から水が滴り、タイルへと落ちていく。

 

「……さてと」

 

一通りの事を終え、いざ風呂場から出ようとしたとき、ふと鏡に映る自分の姿が目に付く。

 

「…………」

 

お世辞にも立派とは言い難い小ぶりな乳房、くびれのない貧相な胴体、そしてあまり肉付きのよくない足。

 

「……ふんっ」

 

転校してくる度にクラスがざわつくほど美貌がどうだとか、髪の長さがどうだとか言われてきたが、

 

実はこんなにも貧相で魅力のない身体が暁美ほむら本来の姿なのだ。

 

幼少期の事を考えれば致し方無いことかもしれないが、それでもやはり少しばかりは女としての心が痛む。

 

「杏子はもっと健康的な子の方がタイプなのかしらね」

 

自嘲気味に、自らを皮肉る様に苦笑すると、ほむらは風呂場を退き、身支度を始めた。

 

丁寧に髪を乾かし、櫛ですき、制服ではなくレパートリーの少ない洋服を慎重に選ぶと、それに袖を通す。

 

「こ、こんなものかしら……?」

 

身体全体が映る姿鏡の前で身だしなみを確認する。

 

正面から見た姿、横から見た姿、背後から見た姿。

 

くるくると右に左にその場で回転して見せ、これでもかと入念にチェック。

 

その姿はまるで乙女のソレだ。

 

「……よ、よしっ!」

 

覚悟を決めた様に一喝すると、ほむらは緊張した面持ちでとある場所へと向かう為、自宅を後にした。

 

 

「今日は天気がいいわね」

 

時刻は正午を少し過ぎた頃。

 

学校で言うと皆が待ちに待った昼食の時間。

 

しかしほむらは今バスに揺られていた。

 

その行先は風見野市。杏子のいる町だ。

 

自分の気持ちに決心がついたこと。

 

その証明をするためにほむらは今一度杏子に会い、話をするべきだと結論付けた。

 

マミの言ったようにこの行動自体が杏子を傷つけることになりえる可能性も十分ある。

 

だが、やはりほむらは目の前でもがく大切な人に手を差し伸べずにはいられなかった。

 

魔女と戦う上で戦力どころか足手まといになってしまうかもしれない。

 

ほむらの想いがうまく伝わらず杏子とかち合いになってしまうかもしれない。

 

けれど、それでも杏子を一人にしたくない。そばに居てあげたい。

 

私自身が杏子のそばに居たい。

 

そんなどうしようもなく子供じみた自身の欲求がほむらを駆り立てる。

 

 

『次の停車駅は風見野、風見野です』

 

車内アナウンスが目的地を告げると同時にほむらの身体はビクリと脈打った。

 

さも一日でここまで人間の心情というのは変化してしまうものなのか。

 

昨日とは違う独特の緊張感とどうしようもない焦燥感がほむらを襲い、小刻みに体は震えはじめる。

 

やがてバスはその速度を緩めると、やがて停車し、その目的地へと到着した。

 

(…………よしっ)

 

目的地に降り立ち、その場で小さく深呼吸し、気を落ち着けたほむらは昨日と同じ道を歩み始める。

 

夜と昼間ではまるで違う景色を演出する景色をその目で眺めながら、一歩また一歩確実にその場所へと向かう。

 

綺麗に立ち並んだ住宅街を抜け、それなりに栄えた商店街を抜け、子供たちの声が響く学区を抜け。

 

そしてやがて人気のない荒地へとたどり着く。

 

建物の立っていたであろう跡には雑草が生い茂り、大小さまざまな石が散らばっている。

 

そしてそれらを従えるように、中心には目的の建物、寂れた古教会が鎮座していた。

 

「……ついに来てしまったわ」

 

様々な思いが交錯する中、ふと口をついたのはそんな言葉だった。

 

初めから感じていた緊張や焦燥はこの時すでに心からは消え去り、気恥ずかしさや対面欲求が新たに湧き上がる。

 

(杏子は、居るかしらね)

 

罪を償うとはつまり戦い続けるという事。

 

自身が振りまいた絶望の対価となる希望を届けること。

 

それを分かっているからこそ、杏子が今この時この教会にいる可能性は低かった。

 

(居ないなら帰りを待てばいいだけだわ)

 

今日はどんな理由があろうとも杏子に会うんだ。

 

ほむらの決心は固く、扉に手をかけると勢いよく開き、中へと侵入した。

 

その足取りはとても力強く、そして確かに前へと進んでいた。

 

 

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