またやってしまいました。宣言を覆して飢狼の連続投稿……。
ちょっとですね、魔導の方が中々進まない……。風呂敷広げ過ぎたのか、何かのインフレが起きているのか……。
進めるのが心象的に億劫になってしまったのですよッ!
でも魔導の3部はちゃんときっちり終わらせます。
栗林回ですし、まだ栗林メイン話来てませんし。
4部もやりたいですし。
新橋で仕事帰りのサラリーマンに混じって呑んでいた鼎は、アルヌスに戻るため銀座駐屯地に向かう最中で伊丹と会った。
アルヌスに向かうと言っても門限は来週明け迄だ。
折角、前の隊長に会ったので、奢らせた挙句にべろんべろんのぐでんぐでんに酔っぱらって介抱させた。
「ぐぉぇぇ…。気持ち悪りィ……」
「ま、待てっ。足柄! 吐くなっ。まだ吐くんじゃァないぞ!」
嫌なことや危険なことは事前に察知するのが得意な伊丹だが、今回の場合はソレとは解らない状態でやって来た。
先日の箱根では酒類に一切手を付けず、専らおつまみばかりを摘んでいた部下だったから今回も少ししか呑まないと思ったが、とんでもない鯨飲暴食である。
提げたビニール袋に入っているのは未だに開けてない缶チューハイだ。
自分と同じくらいの背丈の女性自衛官を負ぶって伊丹は銀座の街を彷徨う。銀座駐屯地までは持ちそうもない。何処か、伊丹も入れて吐ける場所を探さなくてはならない。
「何処か、公衆トイレ……」
は、駄目である。プライベートでは男みたいな喋り方を(たまに仕事中も)するが、足柄は女である。介抱のために伊丹が女子トイレに潜入するのは憚れた。
「あ、二尉ちゃん。このお城入ってみた~い」
鼎が指差す方向を見ると、それは西洋の城を模した宿泊施設だ。
銀座にこんなホテルあったっけ?
「いや、これは色々アウトだろ」
一刻も早く逆流しそうな胃の内容物を「出せる」場所に行かなくてはいけないとはいえ、何処でも良いという訳ではない。中でも「こういう施設は」アウトである。
「しかし他にトイレがありそうな場っ…、ウっ…ボェェェェェ!!」
「解ったから暫し堪えろ!もう少し我慢してくれ!」
頭の上に吐かれては敵わない。伊丹の行動は限られてしまったのである。
「ふぅ、お騒がせしました。お二尉ちゃん」
出すものを出した鼎は、伊丹が待つ部屋に戻る。
「スッキリしたか。じゃあ行こうか」
部下からの新たな呼称には突っ込まず、伊丹は階下に行くべく部屋を出ようとした。
「なに言ってるの、お二尉ちゃん」
宿泊目的が法律や常識で定められている訳でもないのだから、伊丹は早々にこの場からの逃走を選んだ。ところが、鼎はその逃走経路を塞ぐ。
「こんなトコに来て、さっさと帰るとかありえないわー」
「お、お前こそ何を言っているのか……」
先程から、いつもと呼称が違ってたがそこには突っ込まない。
「どうせ、またあの女達のところに行くんでしょう? でもお二尉ちゃんは誰にも渡さない。私だけのお二尉ちゃんなの」
「……………………足柄さん?」
「…………………ごめん、ヤンデレプレイは嫌いでしたか?」
「プレイかよ……。そりゃ驚いたって」
しかしながら、ネタにネタで返せなかったのは伊丹の過失である。
「だから罰ゲームがありまーす」
「どう返せば良かったんだよ!?」
「それはオタクであるお二尉ちゃんが考えて下さい」
「回答例を要求する」
仕方ないなぁ……と、ぼやくと、鼎はオタクにはメジャーな回答例を示した。
「図ったな! シャ○! ……とか、あるじゃないか」
「図ったの!? っていうかホントに酔ってたの!?」
そう言う伊丹に人差し指を振ると、鼎は反す。
「実際酔ったよー。もう少しでお二尉ちゃんの頭に連続ゲロりそうだったし」
頭上が冷戦もビックリの危険状態であったことを今にして知る伊丹。それより気になるのは罰ゲームの内容である。余り酷い内容なら全力で拒否するしかない。
「お二尉ちゃんにはキープしてあるチューハイを呑んでもらいます」
「なんじゃそら」
大変なものでは無いのだから幸いと言えるだろう。しかし、鼎と刺しで呑むことになるとは思わなかった伊丹である。
* * * *
オタクに理解があるという鼎は、理解者を自称するだけに伊丹には珍しい種類の女性自衛官だったかも知れない。今はもう自分の隊を抜けているが、ネタが解って話していて楽しい部類の女と言える。
「足柄、呑み過ぎは身体に毒だぞ」
「クリちゃんも呑むけど、お二尉ちゃん何も言わないじゃん」
「クリボーは元々呑める体質だけどさ、お前はそんなに呑めないだろって。ってか戻したばっかりだろうが」
「箱根で呑めなかった分を取ろうとしたんだけどな……。まぁイイや。お二尉ちゃんの忠告に従おう。ではあとは任せますよ」
言いながら、鼎は一度呑みかけの缶を机に置く。
「とはいえ、これは呑み切らないとお二尉ちゃんと間接キスになっちゃうから呑みますね」
取り直した缶を再び仰ぐ鼎に厭きれる伊丹。
「以前から気になってたんだが、その『オニイチャン』ってなんなんだよ」
「二尉に『お』と『ちゃん』を付けただけです」
例え年上になっても、この呼び方が出来るらしい。
「っていうかお前、妙にニッチな知識あるよな」
「お二尉ちゃんに言われるとは思わなかった……。まぁ隊に入ったらオタク趣味は便利ですからね」
「話が解るな」
「○Tですからね」
「お前の中のN○の定義を詳しく」
「派閥は雑多ありますが、オタクは解り合えるということです」
「足柄、お前もか!?」
敢えて言おう。NTの定義とかどーでも良いと。そして伊丹はこの日、だいぶ呑んでいた。
酔いも手伝って気が大きくなっていたと言えよう。
「足柄。お前、ちゃんと見ると可愛いなっ」
そんなことを言う伊丹への模範解答は「バ、バカなこと言ってるんじゃないわよ!」
である。
或は「Exactly(そのとおりでございます)」と、ネタに絡めても良い。だが鼎の返事は「知ってる」という淡泊過ぎるものだった。
「違う!そうじゃないッ!」
主張し始める伊丹に鼎は驚く。
「正解は『フン。知ってるわよ。バッカじゃないの』だっ」
「な、なにもそこまで大好きなお兄ちゃんを罵倒しなくても良いんじゃ……」
鼎も鼎でイイ(?)感じに再び酔っていた。
「いや、滅多に無い機会だから言ってくれ!」
若干……まぁまぁドン引きの鼎だが、ヤンデレプレイの失敗を取り戻せるならと、結構気軽に敢行する。
立ち上がると「もう一度さっきの台詞」と要求してから、鼎は言い放つ。
「フン。バッカじゃないの。そんなことぐらい知ってるわよ」
こうして、足柄 鼎さんは伊丹 耀司さんから「ブラボー、おぉ、ブラボー」と「イイネ」、そしてご褒美が一杯貰えたそうです。
* * * *
アルヌス南の森近く。
朝の早い時間帯。住宅前に作られた流し台の水で、顔を洗うのは鼎だ。
「28でツンデレ妹プレイって無いわー」
卑猥で酷い夢から覚めた鼎は、誰となく文句をこぼす。
「そもそも二尉ちゃんととか、無いわー」
明け方の夢では、伊丹二尉と避妊無しの子作りセックスにまで発展していた。だが、薄っすら憶える夢の内容でもあの酔い方はない。
そういえば…と、思い返す。
あの二尉は国会から梨紗の家に逃げる時、メトロの中でロゥリィにそれとなく要求していたことが『ツンデレキャラ』の反応だった。
その時は気持ち悪かっただけだが、そうと判れば伊丹篭絡への強力な武器である。そんな記憶と+αがあったから、今朝のような夢を見てしまったのだろうと推察する。
まぁ三人娘や元嫁以外にもライバルが出る気がするから、ノーセンキューである。
「おはよう」
鼎と同じように流し台に来たのはテュカだ。+αの原因でもある。
「おはよー」
「今朝はだいぶ唸されてたけど、悪い夢でも見たの?」
「そこまで悪い夢じゃ……。まぁお酒を呑む夢だったんだけどね」
朝起きた時、この娘は鼎の隣で寝ていた。
いや寧ろ鼎がテュカの家のテュカの側で寝ていたのである。
「お酒を飲んでるだけ……?」
鼎も起きる直前の明晰夢となってから解った
「怒らないで聞いて欲しいんだけどさ」
「なあに?」
テュカは朝一番で爽やかな素顔を鼎に見せる。
「テュカのお父さんとエッチした夢見てた」
「なにそれ!?」というテュカの苦情は予想していた通りだ。
「怒らないでってば。夢だから実際は何もしてないよ」
呻くテュカは、切り返して聞く。
「もしかして、実際に以前にお父さんから言い寄られたりしてない?」
「してないけど……テュカのお父さんって、そんなんだっけ?」
「そうよ! 見張ってないとすぐに何処か行っちゃうんだから」
先日からのテュカの言葉から察すると、テュカの“本当”の父親であるホドリュー・レイ・マルソーは大変な好色家らしい。
「これは……うぅむ。頭痛いわ」
眉間を抑えて呻く鼎に、テュカは駆けよる。
「どうしたの、ユノっ。具合悪いの? 丘のお医者様に診てもらう?」
鼎を、この場にいない友人の名で呼ぶ。鼎がアルヌスの住宅で寝起きしているのも、テュカが罹かっているパーソナリティ障害の影響である。
* * * *
テュカと寝所を共にすることになる数日前のことだ。
拡大して帝国各地から商人や傭兵、それに仕事を求めて来たものが流入するアルヌスの街でのことである。
「伊丹二尉ちゃんと……テュカがデート!?」
そうとしか思えなかった光景である。右の腕にテュカを提げ、アルヌスの街を行く伊丹とテュカは男女の仲にしか見えなかったのである。
箱根ではロゥリィを受け入らずに、テュカとラブラブデート……大丈夫なのっ!? と、思う鼎だがロゥリィとも普段と変わらない接し方である。
「ロゥリィ良く怒らないねぇ」
遂に二尉ちゃん呆れられちゃったか……と、思ったが、そうではない。
今より少し前に、幹部自衛官が話しているのを聞いた内容では「伊丹の奴、金髪エルフの父親役始めたってよ」ということらしい。
「なにが、どうなって?」とは考えるが、これが現実だから受け入れて見守るしかない。帝都での任務より前に、夕暮れ時になると誰か(黒川によれば既に死者となっている人物)を探していていた。
危うさを感じさせる部分はあったがテュカは鼎や伊丹のようなヒトより、ずっと長生きで寿命は無いとも言われる精霊種エルフである。
心の病気など、時間が解決してくれると思っていた。伊丹ら三偵のメンバーがアルヌスを離れても、何も心配せずに生きていけると思っていた。
しかし、その前提が崩れ去った。
もし今、特地方面派遣隊に撤退命令でも出たらテュカを見捨てることになってしまう。そうなれば、彼女の心はいよいよ壊れてしまうかも知れない。
さりとて、コアンの森から保護してきた以来の付き合いがあるとは言え、どうして鼎がそこまで異世界の住人に肩入れするかというと、鼎も伊丹同様にテュカに対して責任を負ったからである。
* * * *
その日、鼎はアルヌスの街をテュカとデート(或はただのショッピング)する伊丹を見つけた。
PXに入った二人を尾行し、行儀は良くないがその会話に聞き耳を立てる。
「テュカは他にも服があった方が良いだろう。どんなのが良い?」
「お父さんが選んでくれたものなら何でもいいわ」
非行に走った少女が「パパ」にアクセサリーなどを強請るのを想像してしまった鼎だが、父親と仲の良い娘との会話そのものである。
いや、良過ぎる。鼎などテュカくらい(外見的意味で)の時は「デブオヤジ」に「クソガキ」と呼び合っていたくらいだ。まぁ鼎の個人的事情を他の家庭…それも異世界のエルフという種族の家族に当てはめるのはおかしな話だし、鼎も反抗期を越えたら思想信条は家と同じだが。
ともあれ、テュカは「パパっ娘」らしい。
「おいおい、それはテッ…鉄帽だよ」
「どうかしら?」
鉄帽……所謂「テッパチ」を被ってお道化てみせるテュカに、伊丹は隊での用語を使わないよう気を付けていた。
「可愛いけどね。でもお洒落とは違うな」
そう言う伊丹の言葉尻が「父親を演じている」であろう優し気なものであったから、彼がテュカの父親役を始めたのは本当のことと確信する。
数時間後に課業が終わり、夕飯時になると鼎は伊丹を探す。
前の隊長は、今現在、非常に精神が擦り減る状態にある。言葉だけでも伊丹を労おうというのだ。アルヌスにいる今は常にテュカと一緒かもしれないが、それにしたって言葉の掛けようはある。
一応、隊の食堂にも顔を出した鼎だが伊丹の姿は見られない。だとすれば、街の食堂でテュカと一緒に街の食堂にいる可能性が高い。
丘の食堂に向かってみれば、やはり伊丹とテュカが並んで座って食べている。
「こんにちは~」
鼎が口にしたのは、普段言い慣れている日本語の「二尉ちゃん」でもなくテュカの名でもない。特地の言葉の挨拶だ。
伊丹の名前を口にするのはテュカを混乱させるだけだし、階級で呼ぶのも同じことだ。
ところがテュカは、鼎を見つけて思わぬことを口にした。
「ユノっ!」
鼎が知らない女性名を口走る。
「今まで何処行ってたのっ!?」
テュカの言葉は、どうやら鼎に掛けられてようであった。
なんやら今回短い……。
さて、漫画でヴィフィータが登場しましたね。取り敢えず健軍に嫉妬しておきます。
で、11巻も先頃購入したのですが、最近は栗林が登場しないので寂しいところです。
しかして伊丹ハーレムの女性陣が可愛いこと……!
当方はヤオが好みです。書海亭のハーマルさんと同じ好みですね。
まぁ基本的にダークエルフがエロくて良いんですが。