当初予定していた15話程度で終わらなくなりました。
これは30話とか40話とか必要かも……。
一日の仕事を終え、寝る支度をして寝る時に思いも寄らなかったことと言えば、テュカは裸で寝ることだっただろうか。
軽装や下着だけという意味では無い。裸とは文字通りの裸。一糸纏わぬ全裸という意味である。
この世界のエルフという種族は裸で寝るものなのか? と、思ってしまった鼎だが、テュカは稀少な精霊種だというらしいからカトーやレレイに聞いたところで意味は無いように思える。
「まぁ裸で寝るのは内地の世界の人間の中にも居るし」そういう物だと思うことにした。
だが問題は、テュカが鼎のことを愛する幼馴染だと思っていることで起きた。
「ユノ。お昼寝でもないのに、どうして服を着たまま寝るの?」
「ほ、ほら、アルヌスの人は……最近はヒト以外にも色んな種族がいるけどさ、皆、夜寝る時は服を着て寝るし、裸で寝ると寝てる時に擦り傷とか作ることがあるし」
テュカが愛していたユノという友人のことを、鼎が知る訳がない。訳がないのだが、テュカに同性愛気質があることは黒川から聞いていた。
特地のイイ男を探して、故あらばそのまま子種を貰おうと目論む鼎であったが、まさか同性と閨を共にすることになるとは思わない。
「わっ、ユノ。こんなに胸大きかった?」
「ふふ、女の子の身体は少し見ない間に成長するものよ」
テュカが心の病なのを良いことに、28歳の自身を臆面もなく「女の子」と言い放つ鼎は、自分自身でも図々しいと思う。
「毒を食わらば皿まで」という。テュカの愛する友人に成り切ろうとする弊害でもある。
だが、如何に鼎がテュカの幼馴染に成り切ろうと努力しても、所詮ヒトである。
ヒトの身で精霊種とか妖精種の希少なエルフのフリをするのは無理があるのだ。
服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になった鼎と同じ布団に入って、テュカは言う。
「ど、どうしたのユノ!肌がガサガサじゃない?」
一昨日、ノーマとほぼ一徹でまぐわうという無理をしたが、それだって鼎からすれば一晩頑張った程度のこと。「ちょっとビタミンCが足りないかな?」程度の問題でしかない。
だが、それも希少種エルフのテュカからすれば十分な肌荒れだったようだ。愛する幼馴染が、暫く見ない間に酷い肌荒れしていることはテュカを甚く心配させた。
「あー……ちょっと最近は大変だったからね」
「もしかして、ずっと私たちを探していたの?」
実際は夜中に遊びまくっていたからなのだが、他に適当な嘘も吐けないのでテュカが示した言い訳を肯定する。
するとテュカは顔を伏せ、鼎の大きな乳房に頭を預けて静かに泣き出した。
「ごめんね……大変だったよね。コアンの森から離れて、間には怪異や怖い動物もいるのにユノに無理させちゃったよね」
アラサーの鼎はテュカに抱き付かれて驚いた。いや、先程テュカと触れ合った時にも感じたのだが、今は軆の大部分がハイ・エルフに触れている。そして彼女の産まれたての赤ん坊のような、すべすべした肌を実感している。
これは、多少の肌荒れでも彼女の種族の中ではディスられそうだ。精神が圧し折られそうである。
「別に謝ることじゃないよ。テュカも大変だったんだし、今はこうしてまた会えたんだからさ……」
優しく顔を上げさせると、テュカは頬を紅らめ、若干であるが碧色の瞳を潤ませている。鼎は思う。「なんか地雷踏んでしまったか?」と。
するとテュカは突如、鼎に抱き付いてきた。
「えええっ。ど、どうしたの!?」
「だってユノがっ! ユノがぁ~!」
「ユ‥私がどうしたのっ」
鼎も抱き返そうとは思ったのだが、違い過ぎるキャラを演じていたらますますテュカの精神は壊れ兼ねない。
「ユノがすっごく大人になってる~っ!」
ユノというエルフの少女のキャラとは大きく違っていたようだが、テュカはテュカ自身の中で「友人の成長」としてそれを処理したようだ。
「あ、うん。だからテュカに会いに来るまでに成長したんだってば」
鼎がそう言うと、テュカはますます密着手して強く抱き着いてきた。
「ユノ……これからも!これからも友達で居てね」
それに対し、鼎は明言することは出来ない。
鼎が残るつもりでも、一度帰還命令が出てしまったらテュカを置いて帰らなければならないからだ。
だから鼎は自身の意思のみを、言葉を用いずテュカに伝える。
「テュカ…………」
ベッドに座した二人は、ゆっくりと互いに顔を近付け、そして唇を重ねる。
自身の百合化を多少、心配した鼎だが、今はテュカへの医療行為みたいなものだと自身に言い訳する。
医療行為なのだから、もう少し積極的に深いところまで堕ちようと、女性自衛官として鍛えられた逞しい腕でテュカを抱きしめ、そして彼女の唇を舐めて開くよう促す。
「えっ、ユ…………!?!?!?」
テュカが思わず開いてしまった口内に、鼎は舌を滑り込ませてテュカの舌と絡め合わせた。
次の瞬間、ドンっ と鼎を押し退け、テュカはベッドの端に逃げてしまう。
や、やぁぁってしまったァーーー!! 思いっ切り地雷を踏み抜いてしまったァーーー!
そんな風に鼎は考えた。だがテュカからは
「ご、ごめんなさい!」という言葉が投げ掛けられる。
「いやっ、私がゴメン! ちょっと急ぎ過ぎた!」
ホントごめんね! そう付け足して平謝りの鼎は、また一つ理解した。
テュカはレズだがソフトレズだったと。
* * * *
次の日の昼、鼎がアルヌスの食堂で気だるげに飯を摂っていると、その前の席にに伊丹が座って鼎に労いの言葉を掛けた。
「すまねぇ。でもお前に懐いてくれて助かっている。お前なら安心して任せられるわ」
そんなことを言う伊丹だが、実際には地雷を踏み抜いたかと思うくらいに焦っていた鼎だ。安心して任す…などという言葉を貰っても、鼎の方が安心できない。
「二尉ちゃん……どうしてこうなった…………」
成り行きは鼎自身、理解している。
アルヌスに来たヤオ・ハー・デュッシというダークエルフの女性が、ミドリノヒトに炎龍退治の助勢を求めて来たのが始まりである。
四六時中アルヌスを歩き回っている鼎だから、ヤオには会っている。第一印象は「もし自分が男だったら一晩お願いしたい」という程度の女性だった。
彼女は特地語を理解し喋れる鼎を大層有難り、炎龍退治の助けを求められたが炎龍の出没地域はエルベ藩国内。徒歩で数本のLAMを担いで徒歩で行ける場所ではない。
しかも、鼎には装備を出せるような権限もないし車を出すような権限もない。狭間陸将に相談を求めに行ってもらったが、ヤオはそこで断られてしまったようである。
はるばるエルベ藩国から一族の存続の為にやってきて、依頼を断られた彼女は抜け殻のようになってしまった。彼女の一族を支えて来たのは「炎龍を撃退した傭兵団」と噂されていた自衛隊という一途の希望だったのだろうが、それ頼りに出来ないことが解って一時、思考を停止してしまったのだろう。
だから、彼女は悪辣な手段にでた。
何処で知ったのか知らないが、辛うじて支えられてきたテュカの精神を「一族郎党が炎龍に殺された」と真実を告げることで、彼女の精神を壊してしまったのである。
だから、伊丹ら「ミドリノヒト」に助勢を求め炎龍を打倒し、仇を討てと。
「っだ! もう炎龍ぶち殺しに行きましょうよォ! その方が早いって!」
「おまっ、炎龍だぞ!?」
「炎龍ったって血が出る生き物なんだかドタマにLAM叩き込みゃ死にますって! っていうか殺らせて! ブチ殺させて! 一発で仕留めるから!」
「どーしてお前はそんなモチベーション高いんだよ!?」
「テュカの心が壊れる前に私のSAN値が壊れるンだよッ!」
「!?」
ある意味で既に足柄のSAN値は計測不能だが、悪い方向に向かう前に何らかの対策が必要である。
まぁ、足柄は良い大人なので伊丹が斟酌するところではないのだが、テュカにも悪影響があるかも知れないし。
* * * *
次の日、伊丹の姿は帝都に向かうヘリの駐機場にあった。
駐機場の外にはレレイ、ロゥリィ、そしてテュカが見送りに来ていて、テュカが泣き出しそうな表情でこちらを見ていることに伊丹は居心地の悪さと苛立ちを感じた。
だが、これが普通なのだ。任務に従って部下を指揮して外務省の役人を護衛して、そして戻って来る。そうしたら、また元通りだ。
そしてまた、テュカの家族を演じていく。
だが、何時まで……?
昨夜遅く、診療所前のベンチで考えを纏めていたら、義手に義足を付けた老人に会った。
第4偵察隊が近くの修道院で、敗血症など諸々の理由で死にかけていた老人をアルヌスの診療所まで連れて来たのである。
本人は農夫と言っているが、妙に軍事に詳しい。
何を黄昏ているのか聞いて来たので、地球の義手云々の話をしてたら炎龍の話もそのまま話してしまった。
そしてら案の定、爺さんは大層驚いていた。
大部隊を送れるような場所ではないのだ。かと言って少人数じゃ全滅の恐れも十分にあり得る。というか、その可能性が高い。
だがその時、爺さんは言った。
「危険と分かっていても退くことが許されない時がある。負けると承知していてもなお、進まねばならぬ時もある。頭の良いやり方ではないが、馬鹿にならねば男はやっていけぬ。そうは思わぬか?」
左目に眼帯をしていたその爺さんは、自殺にならないように知恵を絞れとも言う。
チヌークのハッチが閉じ始めた時、伊丹は決断した。
成すべきことに対して身体が自然と動いたのかも知れない。
「おやっさん、すみません。俺、行けません」
だが起動を始めローターが回転し始めているヘリの中とは酷く騒がしいものだ。伊丹が自分に何か言っいるのは分かるが、桑原にはその内容が分からない。
「なんて言いました?」
「俺、降ります。後を頼みます!」
伊丹は指揮を放棄して、後部ハッチが閉じる寸前にヘリから飛び降りた。
テュカは自分の我儘が父親を困らせてしまったような自覚はあるのだが、置いてけぼりにされなかった歓びが先に立って伊丹の胸に抱き付いた。
* * * *
任務放棄の上に単身での炎龍退治。これらの状況を上に説明するのは、今回の元凶その2とも言える
伊丹はこの柳田が柳田が余り好きではない。嫌味過ぎるのだ。ピニャやボーゼスにすら嫌われているのだから、柳田の嫌味は筋金入りだろう。まぁ柳田にとってじゃ交戦国の主要人物と親しそうにする義理はないのだが。
テュカに、南の方に出かけると言った後、柳田には75kg分の粘土火薬(C4)とLAM(110mm個人携帯対戦車弾)10本以上、そしてエルベ藩国に行く為に必要な燃料などが荷台に詰まれた高機動車を用意してもらった。
その際に、ロゥリィには足を払われ腹にどっかり座られ、鳩尾をボコられた後に死後に魂を契約を確約されて痛い思いした後、レレイに静かに激怒されたと思ったら元凶その1のヤオが慇懃に首を垂れて旅に加わった。
テュカは明らかに嫌がったが、旅の途中で故郷の近くを通るので、それまでの同行と嘘を吐いている。
「………………二尉ちゃん、どういうつもりなの」
「ファっ?」
伊丹は背後から掛けられた声に戦慄を覚える。
「私抜きで行くってどういうことなのか――――――ッ!?」
「これから誘おうと思ってたところですから……」
まぁ実際、ちょっと忘れかけていた。イタリカで鼎が撃った弾丸の先を見ていない伊丹は、鼎の腕間を知らなかったのである。
出発まで少しの時間があるので、鼎は念の為にノーマに出撃前の言葉を遺しに行く。
むろん、トカゲ野郎に負ける気などない。その為に毎晩のようにカトーから、人間に解る範囲で炎龍の生態や持ちうる能力を聞きに行っている。
その結果に得た答えは「殺られる前に殺れ」というシンプル過ぎるものだった。
博物誌や昔か伝えられている話では、炎龍が獲物を探す時は梟のように音もなく飛ぶから、奴の出現地域に入る前から対空警戒を怠らずに続けなくてはならない。
それさえ分かれば後は簡単である。鼎はノーマが居るであろう隊の施設まで走って行く。幸い、ノーマの姿は建物に入る前に確認できた。遠くから待つように叫び、彼の前に走っていく。
そして鼎は一世一代の言葉を言い放つ。
「今からちょっと危険な旅に私は行くけど、戻ってきたら側室でも良いのでどうか結婚してくださいっ」
鼎から言った。言い切ってしまったのである。
チンポの質ではカトーの方が格段に優るのだが、男はチンポより経済力である。
それに、寿命とか、ノーマは鼎より年下なのに対してカトーは「お爺ちゃん」である。失礼だとは思うが、10年後に生きているかも解らない。
最近のノーマはチンポ以外のことで上手くなってきているし、若い方を選んだのである。
プロポーズした鼎であったが、それだけでは“弱い”と感じたのか、やめりゃいいのに何時ぞやのホテルで見た「アヒル口」を敢行したのである。
その顔を見た瞬間、ノーマは固まった。そして思う。
「ニホンでは結婚を申し込む時、一番醜い顔を見せなくてはならないのか?」と。
鼎が披露したアヒル口……一度、鏡をでも見て練習してたら、この後の彼女の人生も変わったであろうが、それは誰が見ても「元気ですか!」や「イ○キですか!」な顔だったのである。
まぁ早い話が鼎のアヒル口は、ア○ト○オ猪木のモノマネでしかなかったのである。
「す、すいません。アシガラさん。一応は交戦状態なので、そうったことは後ほどじっくりお話した方が……」
頭から振られないだけマシかも知れない。しかし鼎にとってみれば、これまでに何度も経験した「フリ」の導入部でしかない。
「ごめんなさい!」と言って逃げ去ったノーマの後ろ姿は、鼎に自身の敗戦を知らしめるものだった。
独り残される鼎。暫しの間、呆然自失だった彼女だが、次第に瞳に光を取り威し、何がいけなかったのか考える。
ノーマと会って夜のアルヌスで何度も肌を重ね合い、その心は墜としたものだと思っていた。だが、結果としてはそうじゃない。では何がいけなったのか。
本来ならじっくり鼎好みに染め上げ、(ある意味で)出来る男に仕上げる筈だった。だが、炎龍退治という、まぁちょっと厄介なヤツを仕留める為に、告白するのが大分早まってしまったのだ。
これは、まぁ炎龍のせいであると鼎は考える。
盗賊に襲われれば、盗賊が悪いのに盗賊が出る場所に行った者が悪いと人はいう。
炎龍の被害に遭えば、怒りを向けやすい自分に対して憎しみを向ける。
炎龍がシュワルツの森のダークエルフを襲ったがばかりに、テュカは精神を壊し鼎もフラれることになってしまった。
つまり、全ての元凶は炎龍にある。
「トカゲ野郎ォ……ゼッテェブチ殺シテヤルゥッ!!!!」
食物連鎖の頂点に生きている炎龍は普通に生きているだけなのだろうが、炎龍の与り知らぬアルヌスで鼎は恨みの心が骨髄にまで達した。
炎龍ゼッテェ赦サネェウーマンに成り変わった鼎は、踵を返して伊丹達との合流そたのえある。
このあと炎龍戦ですが、それが終わったらワンクッション置いて特地を旅する感じになります。
はい、すいません。ネタバレでした。ですがそれ以外に続ける手段も無いので堪忍して下さい。
っつか、気付いたら評価が付いてますね。
7.20って結構高いんじゃないでしぉーかっ?
5より上だと高い評価というのが庵パン基準なのですよ。
評価して下さった方々、有難う御座います! お気に入り指定も遂に100代に入りました!
お気に入り指定して下さった方々も、本当に有難う御座います!