そして今日、漸く投稿です。
前回に炎龍を屠ってるので展開が少し違いますが、今回は炎龍を斃す直前から開始です。
まぁ、炎龍が死ぬるのには原作と違いないんですが……。
それと、今回は長くなってしまいました。
6月7日
アホなことに大きさを示す記号を間違えてました……。
炎龍の
その事実は、この世界最強の龍種である彼女の誇りを傷付けのに十分過ぎる出来事だ。再度、殴りに飛び込んきた黒い服を着た人間に火炎を吐き、動きを止める。
ハルバードを盾にして火炎を防いだロゥリィであったが、防御を解くと炎龍の右腕が見えた。叩き落とされたロゥリィは人間ではなく神だ。小さき体躯とはいえ、普通の人間では考えられない膂力を持っているから古代龍の腕に叩き落とされても死ぬことはない。
「やるじゃなぁい」
炎龍を撲殺するという選択肢を取れるロゥリィが不敵に笑うが、その視線の先でそれは起こる。鼎が発射したLAMによって炎龍の下顎から鼻先まで吹き飛ばさし、残っている右腕や足すらもぎ取られていったのである。
クリバヤシといい、目の前のアシガラといい、ニホン人の女は戦闘民族か何かだろうか? イタミ・ヨウジや他のニホン人を見れば、彼女らが特殊なのだと解るが、彼女達はファルマートに来て何か悪い物を食べたのだろうか?
そんな事を考えてる内に「ただの」鱗の塊にされてしまった炎龍に向け、テュカが伊丹の補佐付きで発射したLAMの弾頭が目標の胸を捉えた。
巻き起こった爆発は龍の胸を貫き穿ち、一撃のうちにこれを沈黙させる。
テュカの仇討ちは予想外に早く、至極簡単に終わったのである。
* * * *
その日の内に、炎龍討伐の知らせはロルドム渓谷に隠れ住むダークエルフ中に知れ渡った。
長老に報告しに行ってたヤオは、炎龍討伐の場面に立ち会えなかったのだが晴々とした様子だ。渓谷に隠れ住んでいたダークエルフが一同に会し、炎龍が討たれたことを喜んでいる。
中にはヤオの到着が遅れ、親しい者か近親者が炎龍の犠牲になってヤオを詰る者もいるが、ヤオはその批判を甘んじて受けるのみだ。
「イタミ殿、お越し頂いて早々に龍を討伐して頂けるとは、なんと礼を申して良いか……」
「ほとんど足柄が……一緒に着いて来た女の背の高い方がやってくれたことなんですけどね」
一人の長老から感謝の言葉を贈られても、謙遜する伊丹の控え目な性格に好感を持つ鼎である。まぁ控え目なのではなく、消極的とも言うのだが。
しかし部下手柄を我が物として誇示するのよりは良い。
それに対し鼎も「二尉の決断がなければ来れませんでしたからね。二尉のおかげです」である。まぁ、トドメを刺したのはテュカだし、翻弄したのはロゥリィの気魄とレレイの法術だが。
「昼飯、食ってないから腹ペコ」なぞと口走り、鼎は高機動車まで携行してきた糧食を取りに行く。
「昼飯くらい食っとけよ」と伊丹は言うのだが、鼎は長丁場もあり得ると考えて糧食を節約したと答えた。
「長丁場って、どうするつもりだったんだよ」
「一週間くらい巣の前に潜んで炎龍の出落ちも計画に入れてましたよ」
曰く、巣の前の狙撃ポイントで最大7日、同じ態勢で炎龍をブチ殺すことも考えていたらしい。「シモ・ヘイヘか何かかっ」とも思ってしまう伊丹だが、「こいつ連れて来て良かったなぁ」とも思う。
「しかしねぇ。炎龍は50年も早く起きて何する予定だったんでしょうね」
「さあなぁ」
鼎の疑問は以前に伊丹も聞いたことがある。だが伊丹は鼎ほど熱心に炎龍の生態には興味を持ってはいない。炎龍を斃した今は早いところアルヌスに帰還したいのだ。
その時、レレイが来て言う。
「炎龍の活動期と休眠期のサイクルは通常なら長い。アシガラが言う通り、本来なら50年先だった」
「ふ~ん、活動期に休眠期かぁ。休眠期って何してるんだ?」
「動物の冬眠に類似する状態で眠っている、と博物学の書物には記されている」
「活動期に喰い、休眠期に寝る。随分とお気楽な人生……いや、龍生だねぇ」
伊丹は随分と羨ましそうである。隊内の方々で聞く伊丹の噂によれば、息抜きの合間に人生やってる伊丹からすれば遊びを加えれば理想的だろう。そういえば、都会のハシブトカラスが余暇を楽しんで滑り台で遊んでいたが、炎龍はどうなのだろう?
「それほどお気楽ではない。あらゆる動物は活動期にするべきことがある。例えば捕食の他に、巣作り、場合によっては縄張り争い、そして………………………あっ」
レレイの発した「あっ」と、失念していたことを思い起こし、周りを凍らせた。知恵袋としても頼りにしているレレイが、何かしら忘れていたのは鼎にとっても大きなプレッシャーだ。
なにせ、賢者たる魔導士の力は以前にカトーが猪を相手にした時に見ている。
「…………………あらゆる動物は、活動期に繁殖、子育てする」
的が増えました、ということであれば鼎には朗報なのだが……。
「おいおいおい、嫌だよ。行ってみましたら炎龍がいっぱい居ましたなんてオチ」
新生龍は炎龍ら古代龍ほど脅威ではないとレレイは言う。危険性は古代龍>新生龍=歳経た亜龍>飛龍>翼竜……だそうだ。
炎龍は数百年に一度、1つ、ないし2つの卵を産むと言う。
ダークエルフ達も炎龍は一体しか見ていないというから、新生龍は産まれていない可能性が高いし、龍の産卵自体が数百年の一度のことで滅多にないとのことだが、炎龍が巣としているテュバ山を探索する必要がある。
「えっ、まさか行くの?」
もしや…と思いながらも、伊丹は同僚に聞いた。目的は終わったんだし、もう良いんじゃないかな……という言葉が、その言葉に隠されているのは明らかだ。
「行くに決まってんですよ。放っといたらまた山を降りてきちゃうでしょう」
そう言うと、伊丹は「あ、Cコンの録画を理紗に頼まなきゃ……」と遁走を図る。
「あぁ、ちょうど良い。大丈夫ですよ二尉ちゃん。知り合いがアニオタだから録画してる筈です。今度ダビングしてもらいましょーか?」
島根にいる幼馴染の吉田 純朗はアニオタと言って良い。特地に入る前の車検でお邪魔したら、待ってる鼎が暇だろうとオバチャンがDVDのリモコンを貸してくれたのである。
見てみれば、美少女モノからロボット物まで幅広いアニメが録画されていた。その中にCコンも一話から全部録画してあったのだ。鼎は〇ニコーンガ○ダムとかフヂタめいた妖怪バトルものとか、渋いオッサンが大勢出てくるのが好きで見せて貰ったが、ラストは中々燃えたものである。
「いや…、うん。大丈夫。 ………まぁ俺も繁殖期に当たる程、
伊丹が言うと、何故かダークエルフの中に何とも言えない空気が流れ、皆でヤオを見るのだった。
* * * *
次の日、伊丹と鼎に3人娘とヤオ含む6人のダークエルフの戦士は、テュバ山を登っていた。
登る前にダークエルフのクロウ、バン、セィミィにはLAMの使い方を憶えてもらったのだが、「二尉ちゃん、LAMなんて下手すると味方に対しても危なっかしい物を、素人に使わせて良いワケ?」と、射撃徽章を持つ鼎に怒られた伊丹である。だから不用意に弄って事故を起こさないようにするためであり、戦闘に参加させるためではない。
使い方も教えたのも念の為なのだが、その中で楚々とした雰囲気のセィミィが「こんなに太いもんいれたら避けちゃう」とか、それに対して「俺の方が凄いぜ」と豪語するバンがいたりと、聞いてる方が恥ずかしくなるダークエロフ的な冗談を言い合える種族らしい。
そして、予想はしていたが、男の方もボンテージ鎧だ。この絵面は中々キツイものがある。
クロウ、バン、セイミィ、には、それぞれ一本ずつのLAMと75kgのC47粘土爆薬を分担して運搬して貰っている。
勿論、伊丹もC4を運搬してるし、足柄改二状態になった鼎も3本のLAMを運搬している。
「足柄、無茶苦茶重そうなんだけど……」
「大丈夫です。三偵から弾かれて以降、アルヌスでは早起きして重り付きのまま駐屯地周辺二周してますから。この程度何の問題もない。龍を喰っちまう為にも必要なんです!」
何時か来るかも知れない炎龍喰いミッションは、昨夜の内に存外簡単に終わってしまったが、そいつが産卵した卵の中身を喰うミッションが残っている。爬虫類の癖に子育てたぁ生意気な! …なぞと考える鼎は、早朝ダッシュの折に以前に特地語習得の為にレレイの元を訪れていた男性自衛官に会っていた。
生え際後退気味のその自衛官も、炎龍を潰すための体力を付ける為に重りを付けて走っていたのである。まぁ、炎龍は昨日の内に鼎とテュカでサックリと平らげてしまったが。
「悪く思うなよ。こういうものは早い者勝ちだ」
口にはしないが、心の中では確実に言っている。
* * * *
以前にクロウが炎龍を見た山頂の洞窟には、3日の道のりだった。
中腹から草木が減り硫黄の臭いが立ち込めてきたことから、鼎は温泉の存在を期待したがそういったものは無い。所々噴気孔が立っているのを見れば、人間が手を入れれば出来そうではあるのだが、そんなことに現を抜かしている場合ではない。
良かったことと言えば、臭っい獣脂で臭いの偽装をしているのが気にならなくなったことだろうか。食欲減退しないのは好ましいことだ。
3日目の夕刻に辿り着いた山頂の洞窟の前で「火口から入れないのぉ?」とロゥリィは聞く。そういえば、ロウリィは地下が嫌いでダークエルフの集落でも洞窟内の住居には入らなかった。
前に、干し肉や干した果物を燻す為の硫黄を採取しにきたクロウが炎龍を見た時は、岩棚の上に作った巣で寝ていた炎龍を見ている。
火口は切り立った崖状で、そこから下るのは無理らしい。その話を聞いた時、伊丹は「こいつの使い方は分かるな」と、自分の耳から襟元に伸びているマイクに触れた。三人娘には無線機を渡しているのだ。これでロゥリィには外を見張ってもらうようだ。
洞窟の内部は幻想的な空間が広がっていた。
ダークエルフが持つ松明に照らされて見る空間は、神秘的と言える。
溶けた溶岩が流れ、冷えて固まる。新たに流れた溶岩も同じように冷えて固まる。そういったことが何度も繰り返し、積もった積層構造は長い階段のようでもあった。
その長い連なりは、神殿の入り口にも似ている。壁も角ばっておらず、長大なカーテンのような創りになっていた。回廊、高台、祭壇のようなものまであって「ここに神殿を建てよう。とか、アメリカ人を連れて来たら言い出すかも知れませんね」と、鼎が伊丹に振るレベルである。
「第23代アメリカ合衆国大統領は帰って下さい」
「いや、うん。連れて来ませんよ」
そんなことを言い合っていたら、洞窟の先が僅かに明るくなってるのを感じた。
「イタミ殿。この先です」
少し進むと、上に火口を通じて星が瞬き、月の光が差し込んでいるのが見えた。洞窟を進んでいる内に、陽は沈んだらしい。
巣があるという空間に入ってみると、相当にデカい……バスケットケート2面分程の岩棚の上に、砂と石が入り混じったような場所が炎龍の巣らしい。表札なぞしている訳じゃないのだが、表札代わりに巨大な足跡が幾つも存在し、孵った卵の殻の破片か散らばっている。
「古いものではないが、子育ては終えた様子。既に巣立ちしたと思われる」
卵の殻を調べ終えたレレイの報告に、皆が胸を撫で下ろす。撫で下ろすと同時に、新生龍が外界に出ていることに危機感を覚える鼎である。
砂の上に転がる石に見えたものも、よく見れば兜や鎧だ。どれほどの月日を待ち侘びていたのか、無数の剣を始めとした煌びやかな武具が半分砂に埋もれて散らばっていたのだ。
これまで、幾百人もの者が炎龍に挑んできたことの証明らしい。これを見るに鼎も「あんなにあっさり斃しちゃって良かったのかな」と思ったりもする。
ダークエルフの戦士が言うには、「魔法の剣」なんてものまで混じってるようだ。つくづくファンタジーな世界である。
「二尉ちゃん。ロゥリィから何か連絡あります?」
聞かれた伊丹はプレストークスイッチを押してロゥリィに喋り掛けた。が、厚い岩盤に阻まれて繰り返してもロゥリィからの返事はない。
伊丹と鼎は卵や孵化したばかりの新生龍のがいたら、C4で吹き飛ばそうと考えていたが、新生龍は自分が産まれた巣に帰る生態を持っているか解らない。
渓谷で倒した炎龍は、自身の片腕を吹き飛ばしたLAMを憶えていて、伊丹や鼎が構えているのを見て雄叫び……というか絶叫という名の咆哮を上げるほど知恵があったが、その知能の高さを頼りに巣で待ち伏せしているのでは心許ない。
急いでロゥリィの元に戻ると、そこにはやはりロゥリィがいた。
「どおだったぁ?」
「新生龍は孵っていたよ。ロゥリィにも何もなかったようだな?」
見ての通りと、ロゥリィは腕を開いて首を竦めたのである。
* * * *
結局のところ、山頂には既に何もなかった。
ヤオ以外のダークエルフの戦士には、山を下りて集落まで引き返してもらうのだが、途中で新生龍と遭遇した時のためにLAMはそのまま携行してもらった。
「いい? 途中で龍を見付けても慌てず、ちゃんと先っぽのブローブを伸ばして、それから後ろに味方が居ないのを確認してから撃つの。分かった?今、私が言ったこと言ってみて」
鼎の麓で教えたのを含め、この場に来ている戦士達が数百年間記憶し続けるまで繰り返しされた。
いや、ダークエルフの中に熱心な150歳くらいの少年がいたから、半永久的に残るかも知れない。
「……………何も来ないな」
ダークエルフ達が山を下りて数刻経った時、伊丹は言う。
「炎龍に飼い主とかって居るんですかね」
鼎が余り関係ないことを呟く。
「正神や亜神ならぁ、有り得るかも知れないわねぇ」
鼎の呟きに律儀に反したのはロゥリィだ。
「ロゥリィ以外にも神様っているんだな」
「そりゃそうよ。正神を全部で12柱。そして今、明らかになっている亜神はロゥリィ入れて5柱存在するわ」
「へえ」
「ふぅん」
仇を討って、明かに昨日までより顔色が良くなったテュカの説明に耳を傾ける伊丹と鼎。
「説明している暇はないみたいよぉ。龍が近付いて来たわぁ」
月の光に、暗黒色に変わった唇を輝かせるロゥリィがハルバードを構え、ヤオがサーベルの鞘に手を掛ける。
見れば、渓谷で倒したものより二周りほど小さい黒い龍と赤い龍、そして青っぽい色の、白ゴス(?)を纏った羽を持った亜人女性が伊丹達の方に近付いてくる。恐らく白いゴスロリめいた神官服だと思うが、大きく着崩れていて判別不能なのだ。
「まさか、飼い主登場?」
ぽつりと漏らした鼎が、ブローブを伸ばして炎龍爆殺モードに変えたLAMを構え、狙いを付けた。
「アシガラ殿、お待ちを」
それを止めたのはヤオだ。彼女は亜人の方に話を聞きたいらしい。ロゥリィが言うには、龍人出身で地上で一番若い亜神だという。
* * * *
死神の鎌を連想させる大鎌を携えたその神は、ハーディの使徒でジゼルといった。
青っぽいといったが、正確には深縹色の肌を、フリルに満ちた白い衣装で包んでいる。包んではいるのだが、胸元の合わせが足りず豊かな双球で構成された谷間から、ピアスの輝く臍部までを見事に露出。その、ぬめるような肌を紐できつく編み止めるデザインになっていた。
袖も肩で斬り落とし、フリルスカートの裾もボロボロ。深々としたスリットが入っているから、美脚を隠せる物がない。まぁ、足先はブーツを履いているような、恐竜や大型の鳥類に似ているのだが。
これが神官服なら、特地の宗教会は服装に関しては相当フリーダムである。彼氏が出来たら、その前でのみ試したいと鼎なんかは思う。
「お姉様、こんなところで会うとは思いませんでしたよ」
その亜神は言う。
「折角会えたんだから、今度こそ一緒に主上さんのところに来てもらいますよ」
そう言って大鎌を構えるジゼル。何やら剣呑なことに巻き込まれそうな雰囲気だ。
ロゥリィはか弱い少女のように伊丹に身をよせ、ジゼルから隠れるようにしている。
それは「私は伊丹のもの」アピールか、或は「伊丹は私のもの」アピールにも見える。
「お姉様、主上さんの奥さまになろうって人が、汚らしいヒト種なんぞに気安く肌を触れ、触れさせるとは不調法が過ぎまっ、せんか……」
丁寧な言葉遣いに慣れてないのか、自分の舌を噛みそうになって「ちくしょうめっ」なぞと小声で呟くポンコツ感があった。
「煩いっ。あんな女の嫁に、なるもんですかっ!」
おぬし、今、女と申したか? ……そんな疑問が伊丹と鼎の胸にはある。
「主上さんに見初められて嬉しくないんですか?」
「何度も言ってるでしょう。わたしぃの主神はエムロイ。死と断罪と狂気、そして戦いの神よぉ」
「はぁ、マリッジブルーってやつかねぇ。不憫なこって」
ここは、やっぱりひとつ無理矢理にでも連れ帰らねばなるまいか、なぞと剣呑なことを言っている。
「何がマリッジブルーよっ!」
もう嫌だっ、と子供のようにロゥリィは伊丹に縋る。今にも泣き出しだった。これが異世界のストーカーの正体だったのかと、鼎は妙に納得してしまう。
ロゥリィが縋った伊丹を見て、白ゴスは胡乱な視線を向けて言った。
ロゥリィにこそ敬意を示そうと気を遣った白ゴスだが、伊丹相手となるとあからさまに蔑んだ態度となる。
「そこのヒト種のオス。てめぇ主上さんの妻女になろうってお人を寝取ろうとか考えてんじゃねぇだろうな? もしそうならそのケツに二つ目の割れ目をこさえてやっぞ」
伊丹からすれば、何て俺? 寝取る? 滅相もないと訴えたい気分だ。だから首をブンブンと大きく振る。
この状況。白ゴスとロゥリィの間にどんな確執があるのか見極めるためにも、少しばかり言葉を交わす必要があると感じている。
同じ思いが有るから、鼎も、確実に始末出来る距離に新生龍がいるのにLAMを撃たないのだ。
「まさか、龍の飼い主さん?」
間違い無くエロくて怖そうな亜神に、鼎は訊ねる。
「あ? なんか質問かよ。そこのヒト種の雌。さっさと言いな」
思いっきり類型化した呼び方にアイデンティティが揺らぐ鼎ではないのだが、余り良い気はしない。
「神様がその2頭の新生龍の飼い主なんですか?」
「飼い主っていうか……まぁ飼い主だな。オレが手塩にかけて世話した二頭と炎龍が組めば勝てる亜神はいねぇ」
わざわざ眠っていた炎龍起こして、水龍と番わせて卵から手塩にかけてここまで育てたのだと言う。炎龍を育てて何をするのかと思えば、ロゥリィを含めた他の亜神との戦いに勝つためだとか。
「そりゃ苦労したぜ。でもその価値はあったけどな。炎龍と新生龍、それとオレ。無敵の組み合わせだぜ」
炎龍さん、既にこの世に居ませんが? 何やら笑えるので鼎は黙っておく。白ゴスもといジゼルは大鎌を構えると、ロゥリィ達との間合いを取った。
「ちょっとお待ちいただきたい、ジゼル猊下」
ヤオの言葉がロゥリィとジゼルの間を割るように入った。
「今のお話によるならば、炎龍を起こしたのは猊下であらせられるか?」
斃す時は至極あっさりしたものだったが、ヤオ達ダークエルフは炎龍に滅亡の淵に立たされていた。その質問、もとい詰問には鬼気迫るものがある。
「なんでぇお前は?」
「何故、そのようなことをっ!」
ヤオの怒気を孕んだ問いに無礼を感じてか、ジゼルはヤオに向ける視線を向けた。
「オレのやることに文句あるってのか?」
「ありますともっ!此の身らはハーディーを主と仰ぐ者。これまで、それなりに誠意を持って仕えて参ったつもりです。なのに、その代償として与えられたのが炎龍と言う名の災厄。それは一体なぜなのですか!?」
ジゼルが大きく溜め息を吐いたが、それに苛立ちが多分に含まれているのが鼎が見ても態度で解る。
「主上さんのご意志を、いちいち何故なんて尋ねてんじゃねぇよ。親分が黒っつったらそれが赤かろうと白かろうと黒なんだ。お前ら信徒はそれに従うのがスジってもんだろ」
「し、しかし」
「上には上の考えってやつがあるんだよ!」
「それが、我が同法を滅亡に導くものであってもですか?」
「当たり前だろう。信仰心が篤いっていうなら、なおさらだろう? お前らはだな、主上さんのお役に立てることを喜ばなきゃダメなんだよ。それが死ぬことなら黙って死ぬ。それが信仰心ってもんだろ。違うか?」
「こ、此の身に限って言えば、主神の仰せとあらば従いましょう。ですが同胞や一族すべてに生贄となれとは、あまりにも無体なお言葉。此の身の一族全てを炎龍の餌とするとは、本当に主神のご意志だったのですか?」
この言葉にジゼルは笑みを浮かべて手を打った。
「なんだそれ? へえ、餌になっていたのはお前らだったのか。炎龍の奴、どこから餌をとってくるのかと思ってたけど、それがダークエルフとは知らなかったぜ。災難だったな、お前」
その言葉にヤオは唖然とした。鼎も「もう撃って良いかな」くらいの余りの言いようである。
ダークエルフが餌になっていた。それがハーディの意思だった、というならまだしも、知らなかったという。
「で、あんたは何がしたいワケよ?」
後方の安全確認と、念の為に味方から数メートル離れた鼎がジゼルに問う。こちらもまた、先程のような慇懃さは微塵もなかった。
「あ? お前、今の話しを聞いて無かったのかよ。お姉様を連れて行くって言ってんじゃねぇか。炎龍に新生龍とオレがいりゃ無敵なんだからよ」
「炎龍はこの世からログアウトしてるけど、それで勝とうって気なワケ?」
「………え?」
ジゼルにとっては、ネトゲ用語なぞ当然のことながら意味不明である。
「察し悪ィーなぁ。そこの男、伊丹二尉ちゃんにブッ殺されたってことだよッ!」
「ええぇ!!?」
鼎がどう決断しようとエルベ藩国に来れなかった訳だし、幹部である伊丹の判断があって炎龍を討伐できたのだ。だから二尉ちゃんには、こういう時くらい甘えて良いんじゃないかなぁ、という考えが鼎にはある。
「はっ、嘘を言うんじゃねぇ。炎龍がヒト如きに斃せる筈がねえ」
「嘘だと思うんだら火口の中にある巣、見てごらんなさい」
そう言うと、赤龍が颯爽と翼を広げてテュバ山の火口に飛んで、そして戻ってくる。
「無かったでしょ。炎龍はロルドム渓谷に無様な死体を曝しているから、見れば分かるよ」
もう夜明けが近い。山の麓の遠くで、蠢く何かを視力2.1の鼎が見ていると、今度は黒竜がその翼で飛び上がり、ロルドム渓谷の方角に向かう。
だが、その黒龍は鼎の放ったLAMの弾頭を背後から受け、容易に爆殺されてしまう。
「なっ!?」
ジゼルは、一撃で新生龍を屠った女の力に驚き、半歩足を退いた。まぁ本当は武器の御蔭だが。それでもこの女や、その上役らしいイタミニイイチャンなら炎龍を殺せるかも知れない。そんな想像をする。
「誰が、いま見に行って良いって言った?」
正に、いともたやすく行われるえげつない行為ッ! であった。
鼎は一度に2発、赤龍にも撃ったのだが赤龍の方は外してしまった。赤じゃなくて青だったら当ててたと鼎は自分に言い訳をするが、それどころかではない。3発目を赤龍に当てるべく、鼎は11mm拳銃で眼球を狙い、牽制と少しでもダメージを与えようとする。
「足柄!」
「二尉ちゃん達はそっち牽制!」
見れば、伊丹やロゥリィもジゼルとの戦闘に入っていた。あっさり黒龍を屠られて赤龍も抑えられ、テュカとレレイとヤオの支援が付くロゥリィを相手にするジゼルは最初から旗色が悪いが、まぁどうにか戦えてる。いや、思いっきり劣勢だが、どうにか生きている。
「死ねえぇぇぇぇッ!!」
新生龍が11mm拳銃の弾丸で死ぬ訳ないのだが、こう言ったものは気合であると鼎は考える。実際、片目を潰してもう一方の眼にもダメージを与えているようだが、そこで弾丸が尽きた。
鼎は残った3本目のLAMを構え、念のため背後を確認した後に赤い新生龍を目標に発射。毎秒165mの速さで発射された弾頭が安定翼を展開、ロケットモーターに点火して毎秒250mに加速して赤龍に突き進む。
比較的近距離とも言える距離から放たれた赤龍は、黒龍の末路を見ていながらもこの距離では避けれない。その腹にコツンと弾頭が接触したかと思うと、大爆発を起こした。
「ハッ!殺ッたぜ!」
新生龍を残らずト屠殺したことを、鼎は確信した。
それにしても、いやに着弾時の爆炎が派手だ。丸で、対人用の榴弾でもぶつけたみたいに……。
そういえばプローブは? ちゃんと伸ばしていただろうか?
「やばい!」
地面を蹴って鼎は走る。
「二尉ちゃん!皆!撤収ぅぅ!」
伊丹の他、レレイもテュカもヤオも、ロゥリィですら突然のことに呆気に取られたジゼルを吹っ飛ばして山を下って遁走決め込む。
5人は走るように飛んで、否、飛ぶように下り道を走って、あっという間にジゼルや爆炎の中から現れた赤龍から離れて行った。
ジゼルが、その見事な逃走っぷりに呆気にとられた程である。
遠くでカラスが鳴いているその絵面は、なんとも間抜けであった。
暫し固まるジゼルに「どうする?」とでも言うように眼を向ける赤龍。
「お、追え!」
言われた赤龍は翼を広げて伊丹達を追う。
如何に地上を速く走ろと、空からの追跡を逃れるのは難しい。トンネルや洞窟でもあれば、そこに逃げ込めそうなのだが、伊丹達が走る道にそんなものは無い。
上空から炎を浴びせ掛けんと赤龍が口を開き、その中に炎を湛えた。その時。
4筋の蛇に似た軌跡を描いて、
「久里浜。『カレ』のサイズ、以前に見たのと比べて、ちと小さくねぇか?」
「二頭いたし、完全に別目標だ」
『とは言っても、あの一頭に伊丹二等陸尉達が追われているのは確かです』
神子田の問いに久里浜が答え、僚機の瑞原三等空佐の追加情報に神子田は頷いた。
ファントムから発射されたサイドワインダーが赤龍を山肌に叩き落とす。
鼎が見た、麓の遠くで蠢いていた第一戦闘団の車両に先んじて来た航空自衛隊のF-4ファントムである。続けて放たれた20mmバルカンは赤龍をミキサーのように激しく揺さぶり、完全に動きを止めさせた。
平衡を失った新生龍は暫しよろめいていたが、すぐさま翼を広げて大地から離れようとする。空の支配者たる素晴らしい闘争本能を持つ彼等だが、陸上自衛隊はそれを赦さない。
『だんちゃ~く、今っ!』
75式自走155mm榴弾砲15門から放たれた砲弾に充填された、合計105kgのTNTが炸裂。新生龍ごと周辺一帯を徹底的に掻き回して隙を与えなかった。
「じ、自衛隊が、どうやって……」
最初の着弾地点から500m離れた斜面に伏せる伊丹達は、この攻撃を成した者の正体を考え、そしてすぐさま結論に至った。
というか、今この世界でこれだけのことが出来るのは自衛隊に他ならないのである。他にあったら大変である。
2機並んだAH-1コブラが並行して前に出て、TOHミサイルを発射する。有線で発射されたこのミサイルは、赤龍まっしぐらに突き進んで此れに激突。その巨体を大きく弾ませ、炎龍に劣る鱗を引き裂きネギトロめいた死体に変えていった。
「な、な、なんだこれは!?」
驚くのは、子飼いの新生龍を瞬く間に殺され、自身も土砂に埋もれることになったジゼルである。
「こ、これがイタミニイチャンの力だと言うのか!?」
戦いに入ると目の前しか見えなくなるジゼルなので、山の下から他に現れた者がいることに気付かないのだ。
本人がいたら、ツッコミ所の多さに「とりあえず否定」から入るのだろうが、それも叶わない。
「じ~~ぜる~~~ぅ。何処にいるのぉ~~~? 幽閉してあげるからぁ、出てらっしゃぁ~~い」
見れば、ロゥリィがフリルスカートを滞空するヘリのローター風にたなびかせながらジゼルを探している。その光景は壮絶な程の恐怖をジゼルの魂魄に与えた。
「ゆ、幽閉……っ」
亜神というのは死なない。それが祝福でもあり、呪いでもある。
亜神同士の戦いでは、相手の活動を封じることが勝利なのだ。つまり、その四肢と首をバラバラにして別々の場所に封じたり、地中に何年も閉じ込めておくことが勝利になる。
実際、何百年ものあいだ地中深くに埋められたまま陞神した亜神は祟神となった。
邪悪な者に囚われ、生きたまま腸を獣に喰い続けられていた者もいる。
「じょ、冗談じゃないぜ」
ヒト種3人にエルフ2人。普段なら歯牙にも掛けない相手だが、この時ばかりは勝てる気がしなかった。ジゼルの目の前で一頭の新生龍を屠ってみせ、更には今の山が噴火したかと思う程の攻撃である。勝てる訳がない。その上にロゥリィ・マーキュリーが付くのだ。絶対に無理。
先のロゥリィとの戦いで、既に色々ボロボロになってしまったが、露出狂でもないジゼルは纏ってきた白ゴスの切れ端を集めてそそくさと逃走したのである。
何やら、今回は長くなってしまいました。
ちなみに、原作では第一戦闘団は数10km離れた所から砲撃しているので、
特地の空気が澄み切っているか、鼎の視力が2.1どころじゃない目ッ茶良いってことになります。
て言うか全然頑張らないで炎龍討伐したので爆轟が空気気味に……。
フーム……。
あ、次からワンクッション置いてから足柄さんのエロい旅の予定です。