※この作品はR-18です。

ゲート 飢狼 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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第30話

ヨルバとの夕食の最中、鼎は本題である東方エルフの遺産について二人に聴いた。トレドのドレイクが言ってたことも包み隠さずに。

するとヨルバもアストも難しい顔を返す。

「あるにはあるが、それは試練を果たした女にしか与えられないからねぇ……」

女限定の試練?それはどういうことかと更に聴く。

「母さんもそれを受けていたらまだ生きてたんだけど、あれは厳しいものだっていうし」

病没したというコトという彼の母親だが、厳しいものなら反って寿命を縮めるのではないかと思う。

「そ、それってどれだけ厳しいの?」

どうも、日本に持って帰れるものでは無いんじゃないかという気がする。

「分からないです。精神的にも肉体的にも厳しいらしいけど、僕は実際に仙蟲って見たことないし」

「虫!?」

まさか生き物だったとは予想外である。しかも虫とは。以前にカトー老師が言ってた意味が漸く解る。

鼎もカブトムシやテントウ虫程度なら大丈夫だが、台所の衛生害虫や脚が百本あるようなヤツは勘弁してもらいたい。

ナナフシやバッタ程度なら……まぁ実家の辺りに一杯いたし平気な方だ。蜘蛛系のは…モノによる。小さくヤツなら台所の衛生害虫を駆除してくれる益虫だが、外国に行けば小さくても強い毒を持ってる種類もいる。

日本にいるでも高足蜘蛛なんかのヤツは、あまり視界に入れなくない。

「どんなヤツなんだろ……」

思いはすれど答えが出ないその日は、山地の何処かにいる仲間たちに悪いと思いつつもヴィレリの家で世話になるのだった。

 

 

*  *                             *  *

 

 

鼎に用意された寝室は入り繰り側に頭床台と寝台があり、窓から外が見える造りだった。

念の為、鼎は寝台を窓の見える位置から動かした。この硝子窓と言える物は異常に厚いので狙撃される心配はないが、レレイが練り上げた魔法の類いだと窓硝子ごと吹き飛ばされ兼ねない。

爆轟という魔法を使える魔導士はそう居ないはずから、念には念を入れてのことだ。

この世界で歯磨きというのは、アルヌスでは歯茎や歯の間に指で塩を塗り込んで濯ぐものだったが、ロボラの……少なくともアストとヨルバは塩の後に薬草を煎じた粉歯磨きのようなものを練り込んでいた。

ヨルバは既に70に届く年齢だが、多くの歯が残ってるのは薬草歯磨きのお陰だろう。

これはこれで、貿易する際の良い情報になる。

「アシガラさん、今いいですか?」

ドアの向こうから声をかけて来たのはアストだ。

「良いよ。どうしたの?」

アグーには決して見せなかった穏やかな声色と表情でハーフエルフの少年を迎える。

ハーフとは言えエルフなのだから、この少年が大人になるのは当分先なんだと思うと惜しい。

「いえ、ちょっとお話したいと思って……」

本心がどうあれ感触としては素直な言い分だ。母親に似ているというのなら、もしかしたら甘えたいのかも知れない。

「うーん、どんなお話が良いかな?」

ヒトであれば性に興味を持つ年頃だ。その点でちょっと弄りたいのだが、他人の家だし鼎の身分は食客のようなものである。いつものように好きにはできない。

だが、この時の鼎の格好はボディーアーマーと戦闘服を脱ぎ、豊満な双球が中からTシャツを押し上げるものだった。

ボディーアーマーは食事中から脱いでいたが、戦闘服は着たままだ。だからTシャツ一枚の鼎の豊満な肉体を見た時、アストは思わず目を背けた。反射的に魅力的な女体を見るという無礼を避けたのだ。

「ど、どうしたの?」

「いや、その……ちょっとその、アシガラさんが魅力的というか……」

真面目な青少年の内情を理解した鼎は、取り敢えず戦闘服だけでも羽織ろうかと思ったが、食事中より近くなのだからボディーアーマーも着けることにした。

「真面目だねぇ君は」

「そういうのはちょっと慣れなくて……」

あの娘婿とは全く違う性格のようだ。アストの母親とはどのような人物だったのか? 気になった鼎は彼への質問を続けた。どの道寝るにはまだ早い。ヴィレリ邸の周辺を散策しようと思ってたくらいだ。

「アストのお母さんってさ、そんなに私に似てるの?」

「はい、決定的に違うのは耳だけですね」

そりゃぁ耳は違う。髪も綺麗な黒い鴉の濡れ羽色だったそうだ。女性としては身長も高めで、優しい女性だったそうだ。

「私はそこまで綺麗な黒髪じゃないよ」

黒川ならば当てはまる髪色だろう。そして性格は時により狂暴なところがある鼎だ。アストやヨルバにその姿を見せる機会は訪れそうもないのが幸いだろう。

「そういえば、アストってロンデルで勉強してるんだよね?」

「はい、以前は地元で人狼種の賢者の下で学徒を志したんですけど、本格的な研究賢者をやるにはロンデルに行くしかなくて……」

アストはエルフの血が流れているせいか、魔法を使おうと思うと精霊魔法になってしまうそうだ。魔導士としての研究をするには精霊魔法ではやり難く、既に知識が揃っているロンデルまで行く必要があるのだという。

そこでアストは生物学の勉強をしているという。

「生物学の分野では昔凄い賢者がいたんですよ。何でもかんでも自分の身体を使って研究するっていう」

「トンでもないのが居たんだね……」

銀座世界にもあらゆる毒を自分の身体で試し、あらゆる毒に対する血清を持った人間がいるとか聞いたことがある。世界は広いが、異世界も同じくらい広い。

そうしてる間に世は更け、それにつれて町の人々の活動も少なくなっていった。

 

 

*  *                               *  *

 

 

その咆哮によって鼎は起こされた。

時間帯は深夜の3時過ぎだ。急ぎシャツの上にボディーアーマーと戦闘服を着て、起きて来たアストとヨルバを確認してから慎重に屋敷の外を窺う。

するとグルトというキュクプロスが何者かと争っているのが見えた。

どうやら先程の咆哮はグルトのものらしい。危険が迫っていることを家人や近隣に知らせたのだと思われる。

「グルト!」

風の精霊を使役するアストは速やかにグルトを援護しようとした。

テュカのような精霊種エルフは風の精霊との相性が良く、たった2拍で攻撃魔法に転用できるがアストはそうでない。

また、戦闘の経験など無かった彼は明らかに手間取った。賊であろう男とは言え、その命を奪うことに戸惑いを感じていたのだ。

「アスト!」

彼に飛来する矢を鼎の手が防ぐ。お蔭でアストは矢から守られたが、矢が鼎の掌を貫通する。

咄嗟のことに身体が動いてしまった鼎だが、現実とともに激痛が彼女を襲った。

「くっ、良い度胸だテメェら!!」

鼎は即座に左手に持つ10mm拳銃で賊の頭部を撃ち、砕く。それと同時に町全体に火の手が回っていることに気付いた。

「貴様ら生かして返さん!」

ヴィレリ邸で浴室を使わせて貰う前にモタードから信号弾を持って来ている。痛みに耐えつつ、鼎は<赤>の信号弾を天に放った。

「アスト! 賊は独りじゃない。残りが何処にいるか判らないから矢避けのまじないで皆を守って!」

ヨルバはアストと共にいる。グルトには何本も矢が突き立ち負傷してはいるが、まだ動けるくらい体力がある。手を貫通した矢を彼に折ってもらい、鼎は64式小銃を携行して町に向かう。

「ちょっと待って母さん!」

自分を母と呼ぶハーフエルフの少年に、鼎は足を止めたのだった。

 

 

*  *                             *  *

 

 

クアリ・コ・ヴィレリは娼館で馴染みの娼婦である翼人のメルバを抱いていた。

ロボラの娼婦は大体抱いたが、やはりメルバは他の女には無い気遣いがある。

そもそもクアリは亜人種の女が好きだ。

先程婿入り先の屋敷で見た女も縁があれば抱いて見たいくらい美女と言えるが、やはり亜人には敵わない。

そういう意味でクアリは見事なまでのケモナーだった。

メルバとはもう何度共に夜を過ごしただろうか。

もう既に夫婦のような感じがするが、彼女は娼婦であり自分はその客だ。

だが、今夜は少し様子が違った。

「メルバ。愛している!」

クアリが娼婦の翼人に愛を伝えるのは何度目になるだろう。

「嫌ですよ、クアリ様。また奥様から冷たい目で見られるんだから」

「身請けさせて欲しい。必ず君を幸せにして見せるから」

重婚が禁じられていない帝国の法制度とは言え、本妻が良い顔するわけがない。

女とは常に自分を一番に考えてくれる男を信用するのだから。

「クアリ様に身請けされて、何時も冷飯食いなんて嫌ですって」

自分以外に女が居るなど、何時も冷戦という名の熱いバトルがそこには発生してしまうのだ。

「でも、先代の町長の時はコトっていうエルフの女が居ても婆さんとは仲良かったぞ」

「それは先代様が女にかまけず優秀だったかはなのでは?」

コトの自己主張が薄く、それでいて大変気が遣えたという理由があるからなのだが、そういう意味で言えばメルバも大変気が着く女だ。

メルバを身請けするならクアリの努力が必要となる。しかし明日から急に真面目に働くのはクアリの柄ではない。切欠さえあればヨルバに今までのことを謝罪して働き、少しの贅沢として翼人娼婦の妾でも作ることはできるのではないかと考える。

しかしその切欠が難しい。クアリにも自尊心があるのだから、何も無いのに明日から人が変わったように働くというのは難しかった。

その夜、クアリは娼館でメルバを抱いてそのまま泊まることにした。

最近のロボラは衛士が帝都に招兵されて物騒になった。この間もピストという雑貨屋の妻が夜間に友人宅から帰る際、行方不明になっている。行く場所などピストにも思い当たる所はなかった。何者かに拐取(かいしゅ)されてしまったのではないかと思われる。

ピストの嫁はロボラのヒト種でも美人として知られており、ピストは何時も幸せそうだった。

衛士が帝都に招兵されたのは、少し前に帝国が新たな戦争を始め、大敗したからだ。

公には帝国が大敗したなどという話は流れてないが、クアリが帝都に住んでた時期に帝都の娼婦に馴染みがおり、その娼婦から最近は帝国兵の馴染み客が何人も居なくなってしまったと聞いたからだ。

そんな情報を手元に持つクアリは、先代の妾の子供が連れて来た緑の斑模様の服を着た女がその交戦国の兵であることに薄々気付いていた。

だがロボラに来る途中に立ち寄った村の吟遊詩人が歌っていた歌の内容では、異世界の兵であるミドリノヒトというのは騎士道に近い精神性を持っているとのことだ。

それが事実であれば、ロボラの人間が殺されるようなことはないだろう。

だが今の時間帯に野外に出るのは、先述の理由から危険だ。それに、遅い時間に妻の実家に帰っても妻や義母から嫌味を延々と聞かされるのも嫌だ。

クアリはメルバを抱いた布団で一夜を共にすることにした。

 

 

*  *                               *  *

 

 

娼館というのは夜遅くになっても灯を落とすことない。だが、この日に限って言えばクアリが訪れた娼館の灯りは少なかった。

それでもクアリが真っ先に気付いたのは隣で寝ていたメルバがいないことだ。

次に自分の身体が固く縛られていることにも気付く。

そして廊下を数人の男達が移動し、猿轡を噛ませた娼婦達が次々と荷物でも運ぶように連れ去られていく。

「メルバ!」

そのままの体勢でクアリは愛する翼人娼婦の名を呼ぶ。すると見慣れた男がクアリの前に出た。

「ガスト……」

頭部を包帯で巻いた男だ。昼間にあった行商人である。

「クアリの旦那。あんたは良い目印になってくれたよ」

その言葉に、クアリは男の正体を知った。ガストという男は以前にクアリと共にこの町を訪れている。その時にピストの妻は居なくなったが、心に暗い思惑をしていた男はその時に娼館の下見でもしたのかも知れない。

「ガスト! メルバ…翼人の娼婦が居ただろ。彼女はどうした?」

「心配要りませんよ。亜人の女は大事な商品です。傷付けたりなんかしませんよ」

その言葉に、クアリは一抹の安心と怒りを覚えた。美しい亜人女性を愛玩奴隷として金で取引することは知っていたが、ガストという男は拐しという不正な手段で奴隷を得ようとしているのだ。

亜人女性(に限らず異性)というのは大人の駆け引きで徐々に距離を縮めていくのに、この男は奴隷という手段で強行的に関係を得ることを良しとしているのだ。

「待て、お前は賊なのか?」

「旦那は今更気付いたんですか」

答えるのも面倒だが、後のことは手下がやってくれる。この男と話すのもどうせ最後だから相手してやって良いか…くらいに豚顔を包帯で包んだ男は応えてやった。

しかしゆっくりしてる精神的余裕は無い。

異世界の女兵士が逗留しているというヴィレリの家には、手下をやって火を着けさせた。あの女は惜しいが死んでもらうしかない。

そうでなければこの町を荒らし回る時間がないのだ。

気掛かりは、その手下が仕事をやり遂げることが出来たかだ。

「おい、外の様子はどうなってる?」

通路を通りかかるモリショに訊ねると、ガストの手下達は手筈通りに事を済ませているらしいことが伝わった。

「まぁそういう訳だクアリの旦那。あんたともここでオサラバだな」

「ま、待て!」

「話すことはねぇ。二度と会うこともなかろうよ」

ガストが賊であれば、クアリはここで殺されることを考えた。しかし豚顔の男はクアリに手を掛けようとはせず、娼館の中を物色している。金目の物は全て持ち去るつもりらしい。

「アグー、早く逃げねぇと火の手が回るぞ」

手下の1人が叫ぶとガストは物色する手を止めて足早に娼館から出て行った。彼の手でクアリを殺そうとしなかったのは、この炎でクアリの命が絶たれることを予測したからだ。

そのことを理解してクアリは悔しさの余りに唇を噛み締める。あんなヒト種を自称して憚らない豚顔の男を信用したばかりに、亜人娼婦達は連れ去られ自分は焼き殺されようとしている。

しかし死者の魂は速やかにハーディかエムロイの元に集められるので、怨念のようなものでアグーを呪い殺すことも出来ないのだ。

 

 

*  *                               *  *

 

 

アストは鼎がロボラの町に蔓延る賊を掃討しに行く前に、矢避けのまじないを掛けたがその必要は無かった。

ダークエルフ達と合流したからである。

ダークエルフ達と合流したのはヴィレリ邸に浸入してきた賊を射殺したすぐ後だ。

鼎が撃ち上げた信号弾を見ていた彼等が、西側の鼎が苦労して通った道ではなく、野営していた北側の大岩を爆発して最短距離を高機で駆け付けたのである。

かなり大きい岩だったので、LAMにそこまで威力があったのか疑問に感じた鼎だが、その疑問は陽が明けて解くとする。

「弓を射るのは私が許可してからにして!」

ダークエルフ達は賊と町人の区別はつかない。鼎ですら会った町人は少数なのだから、区別して発砲するのに苦労するのである。

怪しければ撃つというのが戦場の鉄則なのだが、ここでそれをやると町人含めて大虐殺になり兼ねない。

「この! よくもやりやがったな!」

鼎の前で、人狼種の男が野刀で背中に荷物を担いだ獣人男に斬り掛かる。

「待て! 動くな!」

高機の荷台に乗ったダークエルフが一斉に矢を番えた弓を向け、鼎が人狼男の足元に発砲する。すると人狼男は固まり、その隙に獣人の男は荷物を担いで逃走していった。

「母さん! それは肉屋のソルドさんだよ! 今逃げてったのが賊!」

慌てて鼎は逃げていく獣人の足を撃つ。すると獣人はうつ伏せに倒れ、重そうな荷物に押しつぶされた。近付いて見ると、何かの燻製肉を強奪しようとしたらしい。

「アスト、家は良いの?」

「お婆様はグルトが守ってくれてるから平気。母さんは見分け付かないでしょ。僕が手伝うよ」

それなら良いのだが、グルトも負傷していた。早く町を回って賊を掃滅しなければならない。

鼎を母と呼ぶエルフ(?)の少年にカルドとダークエルフ達は疑問符を抱きつつつも、鼎はアストの申し出を有難く受け取ることにした。

 

一体、何人の賊が町に浸入したのかは不明だが、鼎達ダークエルフのパーティは既に十二人の賊を行動不能にしていた。

町の者が犠牲にならんとする時は速やかに頭部を狙撃、或は射抜いて殺害するが、余裕のある際は身体の末端部を狙って8人の賊を捕らえている。

捕らえると言っても鼎達は町を廻って賊を掃討するので放置し、町人達自らが捕縛している状態だ。

町人達から私刑を下されても仕方ない。

だが一応、首謀者の名を吐かす為に生かすよう伝えている。

町には火が放たれていたので賊の姿を探すのには苦労しなかった。

そまそも、カルドやダークエルフ達は夜目が効くのだ。闇に隠れられたところで見付けるのには問題無かった。

鼎が気になるのは、高機の荷台に乗って同行してるのが7名居ることだ。

ダークエルフがフェン、ナユ、セィミィ、コムの4人。

ハーフエルフがカルドとアストの2人。

そして知らない金髪エルフが1人付いていたのである。

協力者のようだから緊急時の今は詮索しないが、最初に言えるのは胸がデカい。

テュカも精霊種エルフの中では巨乳の方だとロゥリィは言ってたが、この金髪エルフは鼎より少し低い身長にバスト100㎝はあるんじゃないかと言う爆乳である。

この異世界には爆乳化する食べ物でもあるのか、少し気になる。或は魔法の類いか?

 

ロボラの町は賊が放ったと思われる炎に包まれていた。

鼎達は逃げ遅れた町人がいないか一軒一軒の民家を確認する必要がある。

半日とは言え世話になっている町の人々だ。自衛官のポリシーもあるが人情として見捨てることは出来ない。

「誰か、水の精霊を使役して私に水ぶっかけて!」

「ブッカケとな!?」

予想外にも反応したのは金髪エルフだ。何か反応することがあるのか? 日本語ならアダルトな領域で思う所があるかもしれないが、特地語で言ったのだから分かる筈ないのに。

「よ、よし。分かった! 喰らえい!」

鼎の意図が分かったのか分からないのか不明だが、水の精霊を使役して鼎をずぶ濡れにしたのだから分かったのだろう。

水で衣服を湿らせた鼎は高機から降り、目に入る民家へ入ろうとする。

「オヌシ、そこにはもう人はおらぬ! 行くのはあの建物にせい。逃げ遅れたヒトがおるぞ!」

金髪エルフは鼎を呼び止めると、大型の施設を指差す。

複数の娼館が密集した地区だった。

 

 

*  *                            *  *

 

 

アグーは手下からの報告を聞き、驚愕した。

馬の居ない荷車が町に乗り入れ、町の人間とヴィレリの屋敷に逗留していた女と共にダークエルフ達によって手下の半数が無力化されたというのだ。

大岩が町の出入口を塞いでいるから計画できた略奪なのに、外から来た土エルフ達はどうやって大きな荷車ごと入れたのか?

「今すぐ手下共を集めろ!逃げるぞ!」

途中で予定が狂ったなら早々に逃げる。

それが帝国兵崩れの賊であるアグーが今日まで生き残れた理由だ。

罪人として捕らえられることがあっても、離れた地域なら重罪で罰せられることもない。だが今回はそうもいかない。

そもそも異世界の女は魔法か、それとも別の手段かは知らないが一撃必殺の手段を持っている。

「冗談じゃねぇ。まだ半分も稼いでねぇぞ!」

だが男達の大半はアグーに賛同しなかった。手下とは言え、悪所や牢獄で知り合った奸賊(かんぞく)でアグーから儲け話と聞いて付いて来た者達に過ぎない。

本当の意味で信頼できる手下は、同じ帝国兵崩れのモリショくらいのものだ。

「なら勝手にしろ!」

集めた奸賊は殺されても分け前を渡さないで済む。仮に捕らえられ、拷問の末に口を割っても隠れ家や住処を知られることはない。奴隷とする女を運ぶ手が少なくなるのは痛いが、それより大事なのは自分の命だ。

燃え盛る町を一瞥したアグーは、モリショと共に馬に乗り、山中への闇の中へと駈けて行った。




1節を添削してたらかなり短くなってしまった……。
9000字近くあったのが、7000字代になってしまいました。
そして、またしても足踏み状態です。話が進みません。
そろそろ本命(エロい意味で)登場と行きたいのですが、もう暫く掛かってしまいそうです。
このままだと50話くらい行くかも……。
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