グロ……かなぁ?
今回は……量が多いからちょっと疲れたやもし。
箱根、山海楼閣の客間で鼎はハードケースを前に悩み、苦悩していた。
雑貨屋で買った鍵の番号は解る。『1091』という覚えやすい語呂合わせだ。
だが市ヶ谷で受け取った時から付いていた鍵の番号を忘れてしまった。
肝心な場面で忘れるとは、足柄・鼎……一生の不覚である。
外ではロゥリィが外国工作員共の前に踊り出て、殺戮の前口上を述べているところだ。
「これは……どうしよ」
見れば、栗林が爆乳曝して未だに眠り込んでいる。
「おい」
若干嫉妬と注意が混じった感情でベシンと爆乳を強めにはたき、痛い程に乳房を揺らして迷彩柄のブラがずれた。
「だっ…痛ったァ……!?」
寝起きの一発には強烈過ぎて、目の前にいた下手人の鼎を恨みはしたが、御蔭でスッキリと目は覚めた。
「栗ちゃん、ピニャさんや皆起こして。それとちょっとこの鍵、握り潰して」
* * * *
持つべき者が世界のリーダーとなる。
ニホンの独占は赦されなかった。来賓回収の途中で遭遇する障害は排除し、直ちに事を済ませる。とりわけ難しくもない、来賓を回収して本国に送る任務の筈だった。
だがロジャーにとっては……いや、ロジャーだけではない。
CIAのアメリカチームにとっても、CBPや国家安全部の連中にとっても不測の事態だろう。
政府が外交に使えるカードを切ったから、後は易々と来賓を回収できると思っていた。
他の国の工作員と遭遇する可能性を考えなかった訳ではない。だが味方ではない者が武装して自分達の前にいるのだ。
それは他の国の者も同じである。
数ヵ国語を自在に操り、非合法活動に従事する者達である。従って国籍や身元が明らかになるような物は身に付けていない。ミリタリーショップで手に入るような戦闘服やバラクラバ帽。
武器に至っては事前に用意された外国製を使う念の入りよう。そんな三組の連中がかち合ったのは、喜劇としか言いようがない。
しかし、当人達からすれば笑いごとではない。疑わしければ殺せ、しかる後に相手の所属を確認せよ……という発想の下で行動する訓練をしている。
従って味方でない者は皆敵なのだ。
一瞬、お見合いしてしまったという間抜けな瞬間が生まれたが、それで生まれた後れを取り戻そうと銃を構える。
だが……。
縁窓のサッシが音を立てて開き、着物を纏った少女が長柄を築山に突き立てるようにして降り立った。
それは着慣れない着物から伸びる白い素足を長柄に絡ませて不敵な笑みを湛える、恐ろしいまでに魅惑的な少女だった。
その否常識的な出来事は彼らの執るべき方策を遅らせ、彼らの運命を決定づけた。
「みなさまぁ、こんな夜半に、わざわざご足労様ぁ」
目標の中に幼い少女がいることは事前のブリーフイングでも知らされていた。
だが、それがまさか工作員の前に躍り出てくるとは思わなかったのだ。
そして、彼女の瞳が剣呑な色を放っているとは思わない。
任務を遂行する上で障害となるなら撃て。それが彼らのルールだ。
信じられないことが起きたのは、いち早く状況を呑み込んだバラクラバ帽の工作員が発砲した瞬間だ。
胴体を両断された白人の工作員と目出し帽を被った頭の上半分が吹き飛ぶ。それを成したのが幼い少女と彼女が持つ長柄武器だと知ると、工作員らは一斉に銃撃を始める。
流れ弾が味方に当たらないよにする注意力は残るが、獣のように素早い少女を追撃しても弾は目標には当たらない。
職人が丹精篭めて剪定した草木や灯籠を抉るか、他の国の工作員らに当たるだけ。
銃撃を受けた方もやられるだけではなく、当然のように撃ち返す。そうして始まる三つ巴の戦いの中で、ロジャーは迂闊にも少女が出て来た部屋の前を通ってしまった。その時、彼を襲う凄絶な衝撃。
ロジャーが最後に見たのは、血飛沫を噴き上げる自分の下半身と宿の中から外を狙う銃口だった。
* * * *
工作員の目標がいる山海楼閣の部屋の中。
市ヶ谷駐屯地で預かったハードケースから取りだし、鼎が否応も無しに上がろうとするテンションを抑えながら使用している長銃の名は、バレットM82A3対物ライフルだ。
以前は対戦車ライフルと言われていたが、実際に配備されているものは戦車の装甲を貫通することはできず、陣地・トラックや多目的車を標的としたアンチ・マテリアル・ライフルとして分類されている。
トラックや多目的車用、或は対装甲車用に使われる武器を対人として使われたことは過去にもある。
それが、先程の工作員のような結果である。だが、今回は数十年前の歴史で使われた時よりも遥かに至近距離だ。
発射された弾丸は大した空気抵抗も受けずに工作員の被服を破き、皮を抉って肉を裂き脊椎を破壊して肉体を貫いただろう。
「…………………………………」
話しには聞いていたが、実際に自分が発砲した弾で人間が二つの肉の塊になると、流石の鼎も何も言えない。
「バカめと言って差し上げますわ!」
いや、少ないながらも定例句は出た。
「この大馬鹿共めがァ――!!」
箱根の温泉旅館で外国の悪戯小僧を叱り付ける。それだけの簡単なお仕事だ。
何しろ相手は武器を用意して日本に潜り込み、非合法手段で何らかの目標を達成しようとしている連中である。真っ二つにしようが四ツ裂きにしようが、何の問題もない。
とりあえず帰ったらテトリスやろう。
鼎はそんな事を思ったり思わなかったり。
伊丹は伊丹で部下が姉妹艦の台詞を出したかと思ったら師匠の台詞を喋ったり
「何がどうなってやがる!?」
のポルナレフ状態である。
まぁ19世紀英国の貧民層からなり上がった吸血鬼の幽波紋攻撃を受けたワケじゃなくて、「今の状況は何がどうなってやがる」なのかも知れないが。
「二尉ちゃん!」
鼎から伊丹を呼ぶ時は、この呼称で決定である。
「特戦群、ホントに撤収してる?」
撃つ前に確認して欲しかったが、今更である。
「間違いない。撤収してる」
ならば高速で動き、背が低いロゥリィの影以外は敵である。
メールを見て話す伊丹の言葉を聞き、落ち物ゲームとして有名なロシア民謡の鼻唄を口ずさみながら、何も考えずに10発の弾丸を撃ち正体不明勢力の構成員……話す言葉からしてアメリカ・中国・ロシアであろうが、それらの連中を対人以上の威力を持った銃で吹き飛ばしていく。
* * * *
常識外れの敵に、工作員達になす術はなかった。
味方こそ撃たないが、それ以外で動く者は全て敵とばかりに引き金を引く。
四方から来る銃撃と戦場を駆け巡る少女のような死神の斧に、工作員達は今まで訓練された戦術や連携を忘れ、ただ自分の身を守るので精一杯になった。
少女の叩き付けてくるハルバードは、アラミド繊維のボディーアーマーなど全く役に立たない。一撃のうちに吹き飛ばされるか両断される、或はその両方かだ。
少女が出て来たサッシは開け放たれていて強行突入できそうな気もするが、その延長線上に足を踏み入れると高い威力を持った武器で制圧される。
対人用の武器ではないのだろうが、調べようにも知った瞬間にロジャーのように悲惨な死体を一体作るだけである。
一瞬たりとも気が抜けない。気を抜いた瞬間に他国工作員に撃たれるか、少女のハルバードによって息絶えるか……。
作戦の失敗が決定的になったが、クワウドル・ハイデッガーにはこの後執るべき行動も考えている暇がなかった。
今、この乱戦を抜けだせる状況にない。背を見せたら他国の工作員から撃たれるし、ハルバードで叩き潰されるかも知れないのだ。
旅館の庭というのは、戦場とするには非常に戦い難い地形である。
白銀に輝く月の下、池があり灯籠があり築山がある。そして、そこらかしこに木々が植えられている。
戦場としては狭く障害物が多い。少女はその地形を巧みに活かして銃弾を避け、一撃にして工作員を吹き飛ばしたと思うと築山に逃げ、回り込んで攻めてくる。
既にアメリカチームはハイデッガーを残して全滅という状況でも、彼自身はそれと気付かない。ハルバードの少女を前にすると、彼女の情け容赦ない殺戮に形容し難い感情がこみ上げて来た。
「化け物め!」
他国工作員の銃弾を浴びて死亡した仲間もいるが、彼女に頸を刈られた者は多数いる。恐怖の他、恨みや憤りなどが織り交ぜになった感情とともに銃弾をばらまくが、少女は血に濡れた巨大なハルバードを盾にして銃撃を弾いて来る。
接近し肉迫し、彼の銃弾が尽きると見るや振り下ろされるハルバード。それをどうか避けたが衝撃はハイデッガーを池まで吹き飛ばす程だった。
そこに、別の敵の追い撃ちのような銃撃が襲ってくる。
サイドアームを左手で引き抜こうとしたが、その時に左腕を失っていることに気付く。
「ちっ」
急ぎ、右手で大腿のホルスターからマカロフを引き抜き発砲する。敵も拳銃を構えていて、ほぼ同時である。
銃口を向け合った敵に、装填された殺意を纏った弾丸が尽きるまで、引き金を引き続ける。
彼を焼けた火箸を突き立てられたような感覚が、頬や肩、胸、腰を襲う。急速に力が抜けて、銃を握る腕も動かない。
「くそっ」
急速に襲って来る強烈な睡魔と死の臭い。
ハイデッガーの呼吸は、山海楼閣の池の中で永遠に止まった。
* * * *
ハードケースに付属していた11ミリ拳銃を構え、サッシの向うから入って来るかも知れない工作員を警戒していたが、庭が静けさを取り戻して暫く経つと、敵が全滅したことが知れた。
10発あった弾の数だけ米・中・露の工作員をネギトロめいた死体に変えた鼎だが、その鼎は[身内]には極力優しい。
テュカ、レレイ、ロゥリィは避難民として受け入れる前から知り合った[身内]だし、ピニャやボーゼスも今現在は[身内]である。
「ピニャ殿下とボーゼスさんはすぐに着替えて、移動できる準備を」
鼎が言うと伊丹も指示を出す。
「足柄、富田と栗林は使えそうな銃を回収。理紗とレレイとテュカは荷物をまとめてくれ」
たった今、発生した仏サマには天災だと思って成仏してもらうしかない。
「予備弾倉忘れるな」
と言われた栗林は
「うひょー、クリスベクター」
とか
「スウェーティシュK?」
とかほざいていたところを見ると、中々ディープな銃オタのようだ。
その後、何時までも余韻に浸っているロゥリィを伊丹が連れて行く時に見たが、彼女にも多少の被弾の跡が見れた。
再び戻って来た時は何時もの黒ゴスだが、神とは言え傷は大丈夫なのだろうか?
* * * *
暗い内に旅館から抜け出した伊丹一行は箱根の道を、ただ只管に歩いていた。
終電は終わったし始発にまではまだ数時間ある。仮に始発が来たとしても、工作員の残りが罠を張っている可能性がある。
タクシーに分乗するか、歩いて銀座なり都心まで行くしかない。
「最近こんなのばっかり」とは富田のボヤきである。鼎も明朝一番で朝風呂ならぬ朝温泉するつもりだったので、米・中・露への憎しみは一入だ。
「隊長」
言うのは先頭を歩く富田だ。一行のメンバーで最初にアイドリング状態のワゴン車を確認したのである。
週末でもないのに、深夜の温泉街近くにアイドリング状態の車があるのは少々可笑しい。ミラーに写らないように警戒して接近すると、やはり工作員の仲間であることが解る。
鹵獲した武器を構え、如何にもなロシア人を車外に出す。
後ろ手に拘束したロシア工作員を片膝で踏んづけて、白人大男から武器弾倉を没収して身体のあちこちをまさぐって武装解除させた栗林は言う。
「悪人なら撃って良い?」
質問無しに撃たない良識があるのは良いが、悪人と決めつけるのは良くないと鼎は思う。だが武装して海外で非合法活動を目論み、外国同士の戦争を長期に引き伸ばし兼ねないことをしたのだ。悪人だから撃って良い。
というか撃たせて。
「それって、ちょっと後味悪いって」
と富田は言うが、ブっ殺しちゃって問題ない。他人様の国で来賓を拉致しようとは、トンだ悪人である。私が許可するので後腐れなく殺ってしまいなさい……な、鼎の前でレレイがすすっと前に出て来た。
「殺傷せず、無力化できれば良い?」
何をするかと思えばリアル・ラ○ホーとでも言うべき魔法で大男を深い眠りに誘った。
「実はレレイは拳法の達人」節をちょっぴり考えた鼎だが、これはこれでスゴい。道路のど真ん中に寝かせることになったが、大型トラックに轢かれない限り生きているだろう。
「運の良い奴め」
な大男だし、オーガみたいに肉厚そうだから凍死することも多分きっとない。
ワゴンを強奪した伊丹達は、箱根を東京方面に移動する。
「真っすぐ銀座に行くのはやめよう。待ち伏せされたらきつい」
そんな事を言う伊丹に栗林は反論する。
「じゃあどうします。こう言っちゃなんですけど、へんにこっちにいるより『門』の向うの方が安全っすよ。出来るだけ早く駆け込んだ方が良いと思うんですけどね」
一番安全なのは戦闘地域である特地という皮肉だが、安全に銀座まで行けるかも解らない。
「……そうだ。今回の休暇は台無しになっちゃったんですから、後で取り直しさせてもらいますよ。隊長」
「当たり前だろ。俺だって全然休めてないんだぜ。こうなったらなんとしても柳田に捻じ込んで、12月29、30、31日間に休暇とってやる」
「その日に何の日か尋ねませんけどね。私は別の日に休暇を取ります」
まぁ伊丹は冬の祭典の日なのだろうが、年末くらいは休暇をとって実家で暮らしたい……そんなふうに思う鼎である。
「俺も、もう巻き込まれたくないなぁ」
富田が言った時、ピニャが伊丹の肩を叩き些か詰問口調で伊丹に問う。
「少し尋ねたい。そもそも何故、妾達はこのように逃げ隠れしなくてはならぬのか?」
「そう。私もそれ訊ねたいですよ隊長。最初から妙だなとは思ってましたけど、いったい何が起きてるんですか?」
嘉納からのメールを伊丹やロゥリィと共に見た鼎には、大体推測できてしまうので何も言わない。
「実はな……」
「実は?」
「俺にも、よく、解らん」
寄りにもよって言いやがったのである。
「隊長?」
FNP90の銃口を向けて、実に過激な筋肉娘である。
やはり未だ酔っぱらってる感がある。非常に危険だ。なのでおっぱいを半分要求する。
鼎がそんなことを考えている間にも栗林は今にも後ろ弾しそうだ。
「待たれよ、クリバヤシ殿。そなたイタミ殿の部下であろう? 無理を言ってはいけない。これは非常に政治的な問題なのだから」
まさか、ピニャが割って入るように言い、伊丹に助け船を出すとは思わなかった鼎である。
「イタミ殿が立場上、言えないことは分かっている。これから妾の推測を言うので聞いて貰いたい」
* * * *
ピニャの推測は、ピニャ達が売り渡されたのではないかという問題から始まった。
それを否定するのは伊丹だが、この休暇扱いの日本滞在では初めから齟齬が起きている。
地下鉄はロゥリィの意を汲んで降りたのは仕方ないが、その後に地下で停止したという知らせは構内で明らかになっている。
最初の宿舎は何者かに火を付けられて理紗の部屋まで逃げることになったのは、火事場の盗人を避ける為にも当然のことだ。
だがこの1~2日の間に立て続けに起きて、挙句に先の旅館での襲撃があった。これは子羊をコボルド……という名の特地の怪異の前に繋げ、警備を解くようなものではないか。
そんなピニャの推測は大体合っている。嘉納からのメールは特戦群が撤収したから直ぐに逃げろ……というような内容だったから、ほぼ正解と言えよう。
だとすれば伊丹や鼎が知らない政府の中で、何かが起きてる可能性がある。考えられるのは本位内閣の閣僚が不正行為をやらかして、その資料をアメリカが入手した……とかだ。
こんなことなら市ヶ谷で重機関砲を二丁くらい寄越してくれれば良かったのだ。ロゥリィが居なければこっちが全滅していた。
ともかく、これ以上日本にいるのは危険である。どうにかして特地まで逃げ込まなくてはならない。
* * * *
午前5時頃の東京近郊のサービスエリア。
そこで3人娘は皆を代表して朝食を買っていた。
レレイは学術的に日本の機械を見たり実際に操作する目的もありそうだが、実際に彼女らは純粋に物珍しい物を自分で弄ってみたいお年頃らしい。
165歳に961歳ってそういうお年頃なのか知らないが、どうもそうらしい。
結局、銀座に向かい特地に逃げることにした伊丹は理紗に協力してもらい、大きなお友達の集団を呼ぶことにしたようだ。
スライドドアを開けた3人娘は伊丹やピニャらに菓子パンやら缶の飲み物を渡す。粕やら粒が底に溜まる微妙なラインナップばかりだが彼女らが言うには「美味しそうな物を選んだ」とのこと。
缶の甘酒を受け取った鼎は、手が疲れるまで缶をシェイクしていた。
その脇で、伊丹はロゥリィの機嫌を損ねて何も貰えていない。
「何かやったの?」
と理紗が不愉快そうに訊ねるが、何もしなかった伊丹はそう答えるしかない。
男女の仲にあっては、何もしないのが罪になる典型であろう。後でなんやかんやフォローしてやらなければ……と思うのは、そこそこ歳を経た足柄・鼎である。
* * * *
銀座に来たところで、伊丹一行のワゴンは渋滞に捉まった。
「大きいお友達舐めてたっ」
なんて苦笑いで語る理紗だが、ピニャやボーゼスには只事ではないらしい。
「これ程の数を理紗様が招集するとは……」
招集したのは3人娘の力であろうが、全国各地から銀座に集まったとみられる大きなお友達の行動力は馬鹿に出来ない。
その行動力で経済回せと、と鼎は思うのだが、オタクな彼等は彼等なにり経済を回している。
主にオタクな形で。
「どうします。絶対に動きませんよ」
ドライバーを務める富田の前にも人が溢れ、交通はほぼ麻痺している。
理紗が不特定のオタク仲間に流した情報は、次のようなものだ。
『本日十四時、銀座事件慰霊碑にロゥリィ・マーキュリー氏、テュカ・ルナ・マルソー氏、レレイ・ラ・レレーナ氏の三名が献花予定。その後、特地への帰途につく』
「これ、全部オタク……」
ゲッソリと呟く栗林に思う。
「クリちゃんも銃オタだろ」
流石に栗林には絶望的過ぎる言葉だろうから言わないが、オタクが多数いるだろうことは間違いない。
近場だから異世界から来た美少女を見に来たという者もいようが、きっと多くはオタクである。
そして工作員も居るであろうことを考えなければならない。車外に出るのは危険である。
「どうしたものかね二尉ちゃん」
「今出ると危ないだろ」
「そりゃ危ないっすよ」
伊丹の言葉に栗林が反応する。だが「大丈夫よぉ」という声を出して、車外に出る者がいた。ロゥリィだ。
そりゃあんたは大丈夫だよロゥリィと鼎は言いたい。来る途中に昨夜の戦闘で撃たれなかったかと聞いたところ、大体避けたし当たっても変化が無い亜神は再生するし死なない……と言ったような答えを聞いた。
年齢も固定されてて実に羨ましい限りだが、軆の変化が無いだけに子供を宿し産むことは出来ないらしい。俗人の鼎には、それが一つのネックだ。
ロゥリィは近くにいたオタクっぽくない青年に銀座の方向を聞いている。青年が驚いてみせたのはロゥリィ様に道を尋ねられたためか、抜き身のハルバードがあったせいか。
すると銀座への人垣が、一斉に開かれた。
後に理紗は古い映画にあったように、主人公を前に人という波が割れていくシーンのようだったと語っている。
「二尉ちゃん、これ行くしかないでしょう」
「うーん、やっぱ今日は理紗の部屋に泊まらないか?」
嫌なことは避けて通る伊丹の言葉だが、特地に逃げ込む成功率が一番高いのは今日だ。
「明日になって敵中突破とか無理でしょ」
伊丹は部隊長としてこれからの方策を真剣に考える。嘉納の話からすると、市ヶ谷や各地の駐屯地に逃げ込むのもダメだ。政府機関で二人を保護すれば米国大統領の要求を躱しきれなくなってしまう。
だとすれば、足柄の言う通りに今行かないとこれ以上のチャンスは巡って来ない。
伊丹は溜め息を吐いて後ろ頭を掻くと、三人の部下に言う。
彼女たちを害そうとする者がいれば「撃て」と。これは「許可」ではなく「命令」なのだ。
命令を受けた三人は志願して自衛官になった身である。職業自衛官として高度な訓練を経て実戦も経験した彼等は、即座にマインドモードを殺戮に切り替えた。
日本に来た時は簀巻きのような格好だった鼎も、内ポケットに鹵獲した短銃と使っていない11ミリ拳銃を掛けたジャンパーを完全に開いて、すぐに発砲できるようにしている。
曰ば、程々にスタイリッシュなお姉さん化していた。
例を鼎だけ取り上げてみたが、そんな感じに4人とも雰囲気が激変していたので理紗は「ひっ」と短かな悲鳴をもらした。
といっても伊丹は持続時間が短く、すぐに元のとぼけた感じに戻ってしまうのだが。
「悪ぃな理紗。こっから先は連れていけない」
窓から首を突っ込んで喋る伊丹と理紗の会話は、元夫婦の睦事などではあるまい。借金がどうたらこうたら言っている。
「また連絡するよ」と言って車に背を向ける伊丹を、理紗が呼び止める。何やら話していたようだが、今度は睦事めいた何かかも知れない?
鼎達が歓声の中を用心しながら進んでいると、群衆の中から独りの男が飛び出してきた。
ロゥリイが地面を石突きすると腰を抜かして座り込んでしまったが、3人娘の何れかに花束を渡そうとしたオタク君だったらしい。
銀座駐屯地の近くまで行くと、テレビカメラがある。情報が広がるの速ェー!? と考える鼎だが、未明に知らされた本位総理緊急入院と辞意について街角インタビューしていたTVカメラだった。
「お姉ちゃん」
栗林を呼ぶ声に、栗林は過剰に反応する。
「誰か!?」
御蔭でリポーターを怖がらせてしまったが、栗林は戦闘モードに入っていたことだし仕方ない。
どうやら全国放送らしいテレビの中継をやっているようだが、この栗林の妹というリポーター、鼎は知らない。島根って全国放送から省られるほど田舎だったのか!? 独立するぞこのヤロウ!
……と思ってしまった鼎だが、栗林の妹の菜々美は色物亜種、或は準色物だから知名度が低いのだ。
「3人にインタビューできない?」
そんなことを聞く栗林妹だから、背後を警戒していた鼎は「献花が済んだらすぐに帰るからそれは無理」と冷たい表情で言ってしまう。
「なんでよ?」
会話が姉妹というご家庭感覚だが、この娘も食らい付いた。
「一昨日から狙われているのよ」
「……狙われてるって、何に?」
「アメリカかなぁ。もしかして中国とかロシアかも。乗った電車はなんか知らないけど事故って停まるし、泊まったホテルは放火されて火事になるし、他にも色々さ。こうしてる今だって……」
流石に最後は言葉を濁したが、ここまで言えば全部言ったようなものだ。少し時節に詳しい者や新聞に目を通す者は、それらの事故と符合する出来事が起きていたことが解るからだ。
慰霊碑に献花し終えたロゥリィは鎮魂の鐘を求める。
銀座のど真ん中にそんな施設があるのか……と思ったが、和光の14時を告げる鐘が鳴り響いた。
「うん、ありがとぉ」
礼を述べて微笑む。周囲は厳粛な雰囲気に包まれる。彼女の中では、これから毎日14時に銀座で鎮魂の鐘がなることになるのだろう。
この裏では情報本部の駒門が働きを見せていた。
どういう繋がりがあるのかは不明だが、CIAのグラハムと知り合いの駒門は、肥満気味の白人男性の前に出てこういったのである。
「おたくのところの工作員とロシアの工作員、どうやって見分けたら良いんだ?」
それはアメリカ人とロシア人、見分けが付かないから全部捕まえちゃいましたよ……ということだ。
「お前っ!」
「ロシア人とか中国人とか、区別がつけられねぇんですよ……すまねぇな」
そう言う駒門の背中は、更に陰険さを増していた。
一つ突っ込むとすれば、ロシア人と中国人の見分けはいくらなんでも着きそうな気はする。
携帯電話を取り出すと、メモリにある電話番号の一つを呼び出し、出てきた声に駒門は告げた。
「よお、伊丹。露払いはしておいたぜ」
対物ライフルを返納するのは門を越える時、銀座駐屯地に返せば良いのだが鼎は痛くそれを惜しんだ。
言うなれば我が子との離別である。
お陰で若干ではあるが、大群衆がテュカの名を呼び、レレイの名を連呼し、ロゥリィの名を叫ぶというアイドルさながらの熱狂ぶりを感覚的に濁すことが出来た…………ら良いなぁ…と思う。
間違いなくドン引きした彼女らは、それなりの笑顔でこれに応えて手を振った。
その後、指紋、掌文、網膜パターン、皮静脈パターン等の検査を行い、ようやく門を覆うコンクリート製のドームに入ることが出来る。
それからまた警衞所の係官からチェックがあるのだが、これが一番時間がかかったと鼎は記憶する。
女性陣が東京観光の折に買い溜めた衣料品の多いこと。
しかも衣服なのに金属反応を示すものも少なくない。
鼎の場合は、物が物なので女性係官にチェックをお願いした。
流石にどんな男にでも自分が着るダイターン水着を見せるという痴女めいた……良く言えばアグレッシブな女ではない。
すると「これ何ですか?」と係官が言うのが聞こえた。
ピニャとボーゼスが箱根の某国人事故現場で回収して隠し持っていたらしい拳銃が見つかってしまったようだ。
「おや、まぁ」
と紋切り型の感嘆詞を口にする鼎。
「やるわねぇ」
と、抜け目なさを感心する栗林は「あ、それ護身用に彼女に預けていたヤツです」とフォローする。
その後も鹵獲武器関連で色々面倒なことが起きたが、なんやかんや三偵の武器庫入りしたことだしようやく常夏の特地入りである。
ちょっと離れただけなのに実家のような安心感。
アルヌス山麓の避難民キャンプに、富田が運転する高機動車でレレイ、テュカ、ロゥリィを送る。
土産物などの荷物が多いので伊丹が荷下ろしを手伝い、三人娘はそれぞれのプレハブ小屋に帰って行った。
「ただいまぁ!」
テュカは誰もいない部屋に明るい声で帰宅を告げる。
「門の向こうって凄かっわ!お土産も沢山」
居ない誰かに語りかけるように、テュカは荷物を置いて室内を見回す。
「あれ、いないのかな?」
部屋のあちこちを見回して、そね人物がいないと解ると些か不機嫌そうな顔を作った。
「もう、すぐに居なくなるんだから」
その言葉が、彼女の病を示す物だと伊丹が気付くのは、もう少し後のことだ。
朝に投稿してその日の内に見たら、色々訂正すべき部分があったので訂正しました。
やはり急ぐと良いこと無いですねぇ……。
随分前ですが、箱根の旅館に悪質サバゲーマーが旅館の庭に乱入して荒らし回るって事件が実際にあったと記憶します。
あれ、これ……実際にありましたよね? 当方の記憶が改竄とかされてませんよね?
っていうか、今回は結構長くなったのですが、原作小説の表現なり台詞をままいれてたりします。
ホントごめんなさい。
さて置き、この小説。
エロ小説の割に余り(?)エロくない気がします。まぁ当方エロ作品を二本書いていますがエロ描写苦手なワケです。
しかも主人公をヒロインにしておきながら、女性自衛官なせいか積極的にエロひどい目に遭わせていません。
ですが先日、思い改めました。
これから足柄さんにもエロい目に遭ってもらうよ!!
逆レ〇プだけじゃなくてレ〇プにも遭ってもらうよ!!
以前に感想の返信にも書いて結局やってないけど、
おねジジとかあるよ!!
きっと御爺ちゃんにも頑張ってもらうよ!