※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

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侵食する現実・破(謎のヒロインX)

 熱く火照る体を持て余し、悩まし気な表情を浮かべては苦し気な呼吸を繰り返す。手にした本で顔を隠し、出来る限り自身の異変を悟られぬ様にしながら、ヒロインXは理解の追いつかない状況への対策を必死に考えていた。 

 

 食堂での一件、そしてトイレで見たあの幻覚……連続して濃厚な情事を見せつけられたヒロインXの体は否応なしに高められてしまった。履いているブルマは股間がぐっしょりと濡れており、愛液と汗で乾くことの無い性器はすぐにでも男根を求めて口を開いてしまいそうだ。

 別段、ヒロインXが禁欲を続けていたという訳ではない。つい先日にはソロモンに抱かれ、魔力供給をしてもらったばかりだ。はしたなく淫行を夢見てしまうほど、彼女が男に飢えているという訳では無いだろう。

 であるならば、これは精神攻撃の一種なのだろうか? ヒロインXがソロモンの手先であることを察知してのカルデアからの牽制のようなものなのか? しかし、そうだとしたらヒロインXを追い詰めるだけ追い詰めて直接的な手出しをしないことが腑に落ちない。まさか、自分がこうして苦しんでいる様をカメラか何かで視姦し、嘲笑っているのだろうか?

 

(ぐっ……! 下種なことを……!)

 

 横目でギロリと監視カメラを睨んだヒロインXは、その先に居るかもしれない監視者に対して憎しみを込めた視線を送った。自分は決して、お前たちの思う様にはならない……体を追い詰めらたとしても気丈に振舞うヒロインXは、何とかして体を落ち着かせようと深く呼吸を繰り返す。

 

「ふ~っ♡ は~っ♡ ふ~~っっ♡♡♡ はぁぁ……っ♡♡♡」

 

 落ち着きを取り戻すための深呼吸、しかしてそれは、むしろ彼女を追い詰めることに一役買ってしまう結果をもたらした。口から吐き出される甘い吐息を肌で感じ、その熱を自覚する度に、ヒロインXは自分の昂ぶりを認めてしまうことになる。下らない精神攻撃の一種で、自分の躰はここまではしたなく感じ、そして男を求めだしているということを彼女にはっきりと自覚させてしまうのだ。

 認めたくはない、だが、認めざるを得ない……自分が抱かれている幻覚やトイレでの三組の男女の交わりを見せられたヒロインXは、完璧に発情してしまっている。どんなにそれを否定しようとしても、熱い呼吸や激しく脈打つ心臓の鼓動がそれを否定させてはくれない。お前は体を火照らせ、餌を待つ犬が涎を零す様に股間を愛液で湿らせているのだと非情な現実を彼女に突き付けて来る。

 逃げられない、逃げようもないこの状況に首を振って、ヒロインXは周囲に誰も居ないことを確認してから指を股座に這わせる。もう、彼女の頭からは存在しているかもしれない監視者の存在は消え失せ、ただこの体の火照りを鎮めることしか考えられなくなっていた。

 

「くぅっ♡ んんっ♡ んふぅっ♡ ふぅぅっ……♡」

 

 ブルマの上から割れ目をなぞり、陰核を擦る。びりびりとしたもどかしい快感がヒロインXの頭を痺れさせ、一瞬だけ彼女の煩悩を満足させた。しかし、それは本当にほんの一瞬の間だけのこと……貪欲な体はこの甘ったるい自慰行為だけでは満たされることはなく、それどころかもっと激しい快感を求めて彼女の理性に訴えかけて来た。

 

「あぁっ♡ あっ♡ くっっ♡」

 

 ブルマ、そして下着の中に指を突っ込み、広がり切った膣内へと指を突き入れるヒロインX。しかし、当然の如く、彼女の緩んだ膣がか細い指での愛撫で満足するはずがない。むしろ空虚に響く僅かな快感のせいで、彼女自身が何を求めているのかを強く自覚させる結果になってしまっていた。

 

「あ、あ、あ……♡ おちんぽ♡ おちんぽぉ……っ♡♡♡」

 

 自分の性器を割り裂き、子宮を押し潰し、膣壁を擦る……そんな激しい快感が、男の欲望を顕現した様な滾りが、欲しい。肉棒、陰茎、男性器、言い方は何でも構わない。一番卑猥で分かり易いその名を甘い声で囁くヒロインXは、脳裏に自分の主を思い浮かべながら性交の快感を妄想し始める。

 

「ひぐっ♡ ソロモン、さまっ♡ あっ♡ あっ♡」

 

 魔術で膨張し、雄々しく起立するソロモンの肉棒が、ゆるゆるのヒロインXの膣内へと叩き込まれる。何度も味わったその快感は容易に思い出せるし、はっきりとこの霊基にも刻まれているはずだ。

 それこそが最高の快感だと、彼女は知っているはずだった。むしろ、他の男たちの肉棒の感触など知るはずも無く、唯一の男となっているソロモン以外の性交の味を知ることも無い。彼女の意識は、ソロモンとの性交が至上のものだと結論付けている。

 しかし……ヒロインXの体の方は、別だった。

 

「あ、え……? んひぃいぃいぃぃいいぃっっ♡♡♡」

 

 妄想の中で性器を割り裂いて挿入された肉棒に違和感を感じるヒロインX。自分が知る唯一の快感、最高の快感であるソロモンとのセックスを想像していたはずの彼女は、ぐちゅりと音を立てて自分の内部へと侵入して来た肉棒がまるで知らない形であることに驚きを隠せない。しかし、もっと驚いたのは、その肉棒が自分の想像を絶する快感を与えてくれたことだった。

 

「んへっっ♡♡♡ はへぇえぇぇっっ♡♡♡ これ、なにっ!? こんな、しらなっ♡♡♡ あひぃぃいぃいいっっ♡♡♡」

 

 がくがくと体を震わせ、大きく背中を仰け反らせ、座っている椅子に全身をもたれかけさせるヒロインXは、手にしていた本を放り投げてしまうほどの快感に顔を隠すことも忘れて喘いでいた。胎と膣に叩き込まれる快感は彼女の知っている性交の何倍もの強さを誇り、あっという間にヒロインXの思考能力を完璧に奪い去ってしまったのだ。

 緩んでいる筈の膣がキツく締まり、その肉棒の侵入を歓迎するかの様にして襞の一枚一枚を以って絡みつく。広がっていない、狭い膣内に響く快感は、シャープにヒロインXの全身を揺らして頭の中を真っ白にしてしまう。

 

「ひぎっ♡ ひぐぅっ♡ あぁっ♡ あ、ぐぅうぅううぅぅっっ♡♡♡」

 

 知らないはずの、強い快感。だが、ヒロインXはこの快感が何であるかをなぜか知っていた。経験したことの無い強さの快感が何であるのかを、彼女は理解していた。

 矛盾しか存在していないこの現象に混乱しながらも、ヒロインXはただのた打ち回る様にして喘ぎ続けている。机に突っ伏し、椅子を愛液で汚しながら、息も絶え絶えになって喘いでいた。

 

「おちん、ぽぉっ♡♡♡ ひぐぅうぅうっ♡♡♡ また、イっちゃ、あぁあぁぁぁぁあぁっっ♡♡♡」

 

 知らない、知っている。わからない、わかる。否定と肯定の言葉が交互に浮かび上がり、快感に押し流されて消えて行く。段々と削ぎ落されていく無駄な思考が、彼女にどうするべきかを示す様にして頭の中で明滅する。

 ただ享受すれば良い……この快楽を味わい尽くし、幸福に酔えば良いとヒロインXの中で何かが囁いた。それは、もっともらしい理由を次々と彼女に与え、その心をくすぐる。

 自分が知っているのはソロモンとの性交の快楽のみ。であるならば、この抗い様の無い快感もまた、彼とのセックスによる快感に違いないのだ。只一人の男しか知らないはずなのだから、この快楽はその男が与えてくれたものに違いないのだろう。

 なら、もう何も迷う必要は無い。淫らに喘ぎ、快楽を貪り、ただ雌鳴きすれば良い。これは愛する主が与えてくれた快感だ。拒む必要など無いのだから。

 

「ひっ♡ ひんっ♡ まひゅ、たぁっ♡♡♡ まひゅたぁぁっっ♡♡♡」

 

 そうして、ヒロインXは快楽の底へと転がり落ちて行った。頭の中で響く言葉が何処かおかしいと感じながらも、彼女はこの快楽に抗うことが出来なかった。甘美で幸福な毒の様な快感を拒むことがどうしても出来なかったのだ。

 抵抗を忘れ、堕ちてしまえば最期、あとはただ転がり続けるだけ……終わらぬ果て、下り続け、最下層へと辿り着くまで堕ち続ける。腰までどっぷりと浸かった快楽の沼に、全身を飲み込まれるのは時間の問題だった。

 

「イクぅぅぅっ♡♡♡ ますたぁっ♡♡♡ イキ、ますぅぅっっ♡♡♡ あぁっ♡ あっ♡♡♡ あぁぁああぁあぁあぁぁぁあぁっっ♡♡♡」

 

 主の名を叫びながら、ヒロインXは高みに達した。彼女以外の人影が存在しない資料室の中で響いた嬌声が呼ぶのは、どちらの(マスター)のことなのか? それはもう、叫び声を上げた張本人ですら分からないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

「かえ、らなきゃ……! 部屋まで、帰らなければ……!」

 

 うわ言を呟き、おぼつかない足取りでカルデアの廊下を歩くヒロインXは、熱を帯びた呼吸を繰り返しながら自分の部屋を目指す。もはや、彼女の履いているブルマはぐしゃぐしゃに濡れて色が変わっており、今の彼女の姿を見ただけでもただごとではないことがわかってしまう。

 何が起きているかはわからない。だが、自分がおかしくなってしまったことはわかる。今、自分が優先すべきことは、一刻も早く自分の部屋に帰って体を休めることだ。そう考えるヒロインXは、廊下に愛液の雫をぽたぽたと垂らしながら必死に歩みを進めていた。

 

「帰らなきゃ……! 部屋に、安心出来る場所に、ソロモン様の下に、帰らないと……!」

 

 快楽を求める心だけが、今のヒロインXを突き動かしていた。もう一度、ソロモンに抱かれることで、この色欲に狂った自分の体をどうにかして慰めることだけが、彼女の原動力となっていた。

 少しで良い。愚かだと、淫らだと嗤われても良い。だから快楽を味わいたい。ソロモンの手で与えられる快楽に身を沈め、何も考えずに狂ってしまいたい。一歩、また一歩と歩み続け、ヒロインXは火照った体を疼かせながらただ部屋へと向かう。必死に、懸命に、快楽を求め、まるでゾンビの様なゆったりとした歩みで、死んだ表情で脚を進めて行く。

 そんな時だった。ヒロインXが、廊下の向こう側から気配を感じたのは……

 

「っっ……!?」

 

 確かな気配、数は3つ。サーヴァントでは無く、恐らくはカルデアの職員だろう。小声で話しながらこちらに近づく気配にヒロインXは顔を青ざめさせた。

 見られたら終わりだ。自分が今、どうなっているかを知られれば最期、なんだかんだと理由を付けられて拘束されてしまう。そうなれば、ソロモンの命令を遂行するどころか、動く事すらままならなくなる。

 見つかる訳にはいかない……瞬時に逃げの判断を選択したヒロインXは、周囲を見回して見つけ出した部屋の中に瞬時に飛び込んだ。

 静かに、されど迅速に。求められる全ての技術を使い、ヒロインXは部屋の中へと入って気配を完全に消した。そうして息を殺しつつ、外の様子を必死に探る。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 先ほどまでとは違う意味での荒い呼吸。心臓の鼓動も激しく、緊張感がヒロインXの全身を包んでいる。もしも自分がここに居ることがバレてしまえば、それは文字通りの破滅となる。全てが露見し、自分の命運は終わりを迎えてしまう。

 ソロモンの期待に応えられないこと、それだけが恐ろしくて堪らないヒロインXはがたがたと震えながら自身の気配を殺しつづけ、そして――

 

「はぁ……っ! っっ、はぁ……っっ」

 

 ……どうにかして、隠れ切ることに成功した。安心感を感じたヒロインXは、途端に緊張の糸が切れてその場にへたり込んでしまう。瞳からは涙がこぼれ、三度意味合いの違う荒い呼吸を繰り返し続けている。

 生き延びた。どうにかして首の皮一枚繋がった。ギリギリの体と精神状態であり続けるヒロインXは、もうあらゆる意味で限界が近い。心と体の安寧。それだけを求める彼女は、崩れ落ちた体を立ち上がらせると再び自室に向かい始めようとして……唐突に、気が付いた。

 

(この部屋、何かが臭う……甘い様な、生臭い様な、複雑で淫らな臭いが……)

 

 漂う臭気に気が付いてしまえば、この部屋が何のために存在しているのかも想像がついてしまう。大きなベッドと淫らな玩具の数々が目に入り、その想像が正しいことをヒロインXに確信させる。

 ここは、所謂『ヤリ部屋』だ。カルデアの随所に用意された、様々な趣向のプレイを楽しむための部屋……微かに香る性の残り香はヒロインXの鼻を衝き、この部屋が数時間前にも使用されていたということを感じ取った彼女は表情を歪めた。ちりり、と頭の中で弾ける電撃が体を追い詰め始め、折角立ち上がった体を再び脱力させてしまう。

 

「あっ……!?」

 

 がくり、と床に崩れ落ちるヒロインX。ブルマが床に触れた途端、べちょりと湿った音が部屋の中に響いた。自分の愛液がここまで大量に漏れていることを恥ずかしく思いながら、彼女はゆっくりと顔を上げる。

 なぜかは分からないが、彼女には確信があった。また、自分を追い詰める幻影を目にする確信が彼女の胸の内にあったのだ。そして、その予感は正しく、ヒロインXは目の前のベッドに横たわる二人の人影を目にする。

 

『んっ! ちゅぷっ! じゅっ! ちゅぅぅぅ……っ』

 

『はぁっ♡ あっ♡ んはっ♡ んふぅうぅぅぅうぅ……っ♡♡♡』

 

 人の口が奏でる吸引音とその行為によって快感を得たが故の嬌声。二つの音が響かせるベッドの上では、男と女が交わっていた。男は女の豊かな乳房の先にある桜色の突起を口に含み、女はそそり立つ男の立派な肉棒を手でゆっくりと扱いている。

 甘い声と甘い匂い。ぷんぷんと漂うそれは、どちらも女から発せられている。乳首を吸われることによって女は喘ぎ、特濃の母乳を噴射しているのだ。

 

『おっぱい、ミルクぅ……っ♡♡♡ マスターが、私のミルクを美味しそうに飲んで……♡♡♡ 性槍もこんなに大きく勃起させて、興奮してくれている……っ♡♡♡ ふあぁぁぁあぁっっ♡♡♡』

 

 ぶるりと全身を震わせた女の名は、アルトリア・ペンドラゴン……ヒロインXと同じ顔をした、本来の歴史とは別の道を歩んだ騎士王だ。聖剣の制約から解放され、成熟した雌の体を手に入れた彼女は、美しく端正な顔を快楽に歪ませてただ喘ぐ。たわわな乳房の先からは、びゅうびゅうと音を立てる勢いで母乳が噴き出し続けていた。

 

『んくっ、んくっ、んくっ、んくっ……!』

 

『はぁぁ……っ♡♡♡ んんんんんんっっ♡♡♡』

 

 片方の乳首を延々とマスターに吸われるアルトリアは、彼の口の中に甘い母乳を放ち続けているのだろう。搾乳、射乳の快感に体を痙攣させる彼女は、だらしない表情のままその快感に酔いしれていた。マスターはそんな彼女の乳首を吸い続け、時にもう片方へと吸う乳首を変更しながら、一定のペースで彼女の母乳を味わい続ける。芳醇な魔力の結晶であり、味わい深い特濃のミルクは、彼にとっても貴重な栄養・魔力の回復剤でもあるのだ。

 

『ふぅっ♡ んんっ♡ ……マスター、私のおっぱいは美味しいですか? おっぱいをゴクゴク飲んで、元気いっぱいになったマスターのおちんぽは、私がシコシコしてあげますからね……♡♡♡ 騎士王のエロミルクはこのエロ乳にたっぷりと詰まっています。好きなだけ飲んで、もっと元気になって下さいね……♡♡♡』

 

 あえて卑猥な言葉を使い、マスターの興奮を煽りながら起立した肉棒を手で扱き上げるアルトリア。まるで赤ん坊の面倒を見る母親の様な彼女は、淫らに微笑みながら聖槍ではなく男の剛直を掴んでいる。その表情には一点の曇りもなく、ただ幸せそうな笑みを湛えてマスターへと奉仕を続けていた。

 穏やかで、幸福で、女神の様な笑み……柔和で美しいその笑みは、見る者を魅了し、アルトリアに神々しさを感じさせる。全裸であろうと、女神像にいやらしさを感じさせない様に、今のアルトリアの姿など大した問題にはならない。曇りなき笑みは彼女の美しさを最大にまで引き出し、女神と呼ぶに相応しい輝きを全身から放たせている。

 

 同じなのに違う、そうヒロインXは思った。肉体の成長度合いは違うだろう。しかし、顔や性格はあのアルトリアと自分は同じなはずだ。それに加えて、境遇だってそっくりだ。

 彼女も自分も、場所は違えど()()()()()()()()()()存在だ。自分は膣を限界を超えて拡張させられ、彼女は妊娠もしていないのに母乳が出る体にさせられた。それなのに、自分と彼女では大きな差がある様な気がしてならないのだ。

 

 アルトリアは美しい。女としての幸福を感じさせる笑みを浮かべ、母の様にカルデアのマスターを受け入れるアルトリアの姿は、文句の一つもなく美しかった。例え、彼女が性交の最中であろうと、手にしているものが肉棒であろうとも、その美しさを損なうことは無い。ランサーのアルトリア・ペンドラゴンは美しい。これは不変の事実だ。

 それに比べて自分はどうだろうか? ヒロインXはゆっくりと視線を下にずらし、自分の性器を見る。拡張され、常識では考えられぬほどの大きさに広げられ、子宮だって簡単に飛び出るようにさせられた自分の膣は、どう考えたって美しさとは程遠い存在だろう。無論、女性の象徴をそんな風にされた自分だって、美しいとは到底思えない存在のはずだ。どう足掻いたって……アルトリアとヒロインXは比較出来るような存在じゃあない。月とスッポン、良く似ているがまったく違う存在だと、そう言わざるを得ない。

 

 何が違うのだ? 女性らしさでは敵わないだろう。ヒロインXには膨らんだ尻や胸は無い。だが、慎ましやかだが可愛らしく、形が整った女体は有していたはずだった。なのに、何でここまでの差が生まれたのだろうか? 彼女だって、マスターに作り替えられた存在だろうに。

 絶望的な差を感じ取ったヒロインXの心に生まれる疑念、それは段々と彼女の精神を蝕み始める。先ほどから追い詰められていた心と体は、容易にその蝕みの範囲を広げていく。気が付けば、ヒロインXは思考停止状態となって体を火照らせたまま、アルトリアとマスターの情事を眺めることに注力していた。自分とアルトリアの決定的な差の原因を知るべく、彼女は夢中になって観察を続けるようになっていたのだ。

 

『んっ、ぷはぁ……っ! アルトリア、もっと、もっと……!』

 

『あぁ、マスター……♡♡♡ 私のおっぱいを吸うのも良いですが、そろそろ手だけでは虚しくなってきた頃でしょう? 一度、マスターのミルクも搾り取っておかないといけません……♡♡♡』

 

『ぐぅぅぅうぅぅぅっっ!!??』

 

 乳首を吸うマスターの顔を引き剥がし、母乳を求める彼の頭を優しく撫で、アルトリアはそっと体勢を変えた。仰向けに寝転がるマスターの股間に自分の乳房を向けるパイズリ奉仕の体勢への移行。しかし、それはただのパイズリでは無かった。

 ぐっ、と自らの乳房を掴み、勃起した先端の乳首から母乳を迸らせるアルトリア。粘度抜群のそれは彼女の温もりを保ったまま、マスターの起立した陰茎へと大量に降り注いでいく。亀頭から根元までを真白く染め、ぬるぬるとした滑りを肉棒に与えたアルトリアの母乳は、唾液やローション代わりの存在となってこの後のパイズリを潤滑に行わせるための役割を担っている。

 

『アルトリアのミルク、温かい……! ぬるぬるしてて、俺のちんぽに纏わり付いて、これだけでも気持ち良いよっ!』

 

『ふ、ふふふ……♡♡♡ それは良かった、と言いたいところですが……本番は、ここからですよ?』

 

『うぅぅうぅぅぅうぅぅっっ!!』

 

 アルトリア自身の母乳に塗れた肉棒を、彼女の豊かな乳房が包む。甘く、雄々しく、淫らな臭いを放つ肉棒を乳房で挟み込み、潤滑油となった母乳がぬちゃぬちゃといやらしい音を立てるほどの上下運動を見せつけ、アルトリアはマスターの陰茎を刺激し続ける。

 

『如何です? 騎士王、アルトリア・ペンドラゴンのエロミルクをローション代わりとしたデカ乳パイズリ奉仕の味は……♡♡♡』

 

『はぁっ! くっ! そんな、いやらしい言葉ばっかりくちにして……っっ!!』

 

『そんなに淫語を口にする私がお好きですか? なら、もっと言って差し上げましょう♡ 乳まんこはマスターのデカちんぽの熱で燃えてしまうのではないかと思うほどまで火照って発情していますっ♡ ほら、もっと滑りを良くしましょう♡ エロミルク、びゅ~っ♡♡♡ マスターのおちんぽにびゅ~っっ♡♡♡』

 

『あぁっ! あぐっ! ぐぅぅっっ!!』

 

 卑猥な言葉を口にしてマスターの興奮を煽りつつ、アルトリアは乳房で彼の肉棒を擦り続けた。肉棒に粘り気のある母乳がぐちゃぐちゃと音を鳴らす度、マスターは大きく仰け反りながら呻き声を上げる。そんな彼の姿を見るアルトリアは、どこか満足気な表情で微笑み、更に奉仕の手を強めた。

 重量感のある乳房が激しく上下する。淫らな水音、喘ぎ声、肉と肉のぶつかる音……それらの音が重なり合って、生物の本能を刺激する卑猥な合奏を奏でていた。唇を亀頭に落とし、柔らかで張りのあるそこに熱烈なキスを落とすアルトリアの横顔を茫然と見つめるヒロインXは、その瞬間に彼女と自分の間にある決定的な違いに気が付いてしまう。

 

(ああ、そうか……()、なのか……)

 

 自分は『ソロモンに体を作り変えられた』後で、その体で与えられる快感に悦びを見出すことを強要され、そして『ソロモンを愛する』様になった。体を壊された後、壊されて良かったと思い込まされる形で快楽を擦り込まれた。だから、その狂った快感に酔う自分の心は壊れているし、その行為で与えられる快感に悦ぶヒロインの艶顔は狂気染みているのだ。土台や本質が壊れている以上、そこから何をどう積み上げても出来上がるモノが正しく在れる筈が無い。当然だ、ヒロインXは最初の一歩の時点で間違った方向へと歩み出しているのだから。

 だが、アルトリアは違う。ソロモンの元に居る他の彼女たちと違い、彼女はまず『愛される喜び』を知った。そして、『愛する喜び』を自ら学び取ったのだ。英霊や騎士王としてではなく、一人の女として誰か一人の男を愛する幸福を学んだ彼女は、同時にその男性から愛される喜びも知ることとなった。互いに想い合う関係を元としている両者は、そこから一歩ずつお互いの意思を尊重した関係を築き続けている。

 

 マスターを喜ばせたいとアルトリア自身が願ったからこそ、彼女の体は変化した。より柔らかく、より美しく、より淫らに……乳房と尻は指が埋まる程に柔軟になりながらも、戦いの邪魔をする様な重しにはならない。それは、アルトリアが自分を雌奴隷では無いと自覚しているから。マスターを守る槍であると理解しているが故の変化。マスターもまたそんな彼女を只の戦力や性処理の道具だとは思っていない。大切な仲間であり、一人の人間として扱って、愛しているのだ。

 アルトリアは愛しているから変わった。変わったからこそ更に深い快感と幸福を味わえる様になった。その根底にあるのは愛だ。マスターに愛され、彼を愛しているからこそ、アルトリアは日々進化を続けている。愛する人のためによりより自分になろうと、自ら望んで変わり続けている。きっと、その思いに限りは無いのだろう。愛し愛され続けている限り、アルトリアは何処までも強く、美しくなる。ヒロインXは、そう感じていた。

 

 自分とは何もかもが真逆だった。壊され、狂わされ、無理矢理に愛する様にされたヒロインXは、そんな自分とソロモンの関係を振り返りつつ瞳に涙を浮かべる。こうして結んだ絆が、自分に何を与えてくれたかを思い返し始める。その結果、与えられたのはこの()()()()()()だけだったと気が付き、絶望した。

 ソロモンは自分のことなど愛してはいない。ただの玩具、性奴隷程度にしか思っていない。気が向いたり、理由が無ければヒロインXを抱いたりはしてくれないのだ。気まぐれに女たちを傷つけ、時に屠るソロモンに対して、女英霊たちはただ媚び諂うしかない。自らを昇華させることなど考えず、ただ這いつくばってソロモンの機嫌を取ることしか考えられない。そんな女性たちがより魅力的になることなどもあるはず無かった。

 

 このままヒロインXがソロモンの下に在り続けたとして、それが何を与えてくれるのだろうか? 最初に壊された体を更に壊され、せいぜい雌穴がどれほどまでに広がるかの実験台にされるだけだ。その内、その遊びにも飽きたソロモンはヒロインXを放置して、彼女に指一本たりとも触れることをしなくなるだろう。どんな男に抱かれても満足出来ない体にされたまま放置され続ける、そんな未来を想像したヒロインXの背中を冷たい絶望感が駆け抜けた。

 幸福にはなれない。美しくもなれない。強くもなれず、ただ人形の様になるしかない。挙句の果てには快楽すら与えて貰えなくなる。ソロモンの下で迎えるそんな未来がはっきりと見せてしまったヒロインXは、目の前のアルトリアの痴態を羨ましそうに見つめていた。

 

『あぁっっ♡ うっっ♡ はぁんっっ♡ あぁ、マスター……♡♡♡ マスターのミルク、下さい……♡♡♡ 私の子宮にっ♡ 赤ちゃんのお部屋にっ♡ マスターのおちんぽミルクをどぴゅどぴゅしてくださいっ♡♡♡ 熱くて濃い、美味しいザーメンをごくごくさせてくださいっっ♡♡♡』

 

 卑猥な言葉を口にしても、下品な表情で喘いでいても、今のアルトリアは美しかった。愛する喜びに身を蕩けさせ、ただその幸福に打ち震えている彼女は、疑い様も無く幸せなのだと思える。そんな幸福、ヒロインXは味わったことが無かった。

 火照っていた体が急に冷め始める。発情が治まったのではない。ただ心が冷え切ってしまっただけだ。今、アルトリアが感じているあの快感と幸福を自分は一生味わえないのだと思った瞬間、ヒロインXの心が完全に冷め切ってしまったのだ。

 

 もうこれ以上、惨めにはなりたくなかった。瞳から大粒の涙を零しながら、ヒロインXは部屋を出る。温度の差がある体と心が彼女の動きを鈍らせてはいたが、ただ真っすぐに自室に向かって歩き続けることだけは出来た。

 脳裏に浮かぶアルトリアの姿を思い出す度、胸が苦しくなる。自分はああはなれない、あんな風にはして貰えない……そんな思いが胸をよぎり、ただヒロインXを苦しめている。

 だが、淫紋令呪はそんな彼女にソロモンへの忠誠心を消し去ることを許してくれなかった。苦しみの中でも、僅かな希望を無理に抱かせようとするのだ。

 

(戻ろう……そして確かめるんだ。ソロモン様が、私を愛してくれるということを……!)

 

 例えつい先日に魔力供給を終えたばかりだとしても、例え自分が何の成果を挙げられていないとしても、自分が苦しんでいるのなら、ソロモンは優しく抱きしめてくれるはずだ。愛の言葉を囁き、快楽を与えて安心させてくれるはずだと、夢物語としか言い様の無い期待を抱くヒロインX。心の底では答えがNOであるとは理解していながらも、淫紋令呪の効果によってその期待を拭い去ることは出来ない。だから、彼女はただ一時的な帰還を願うことしか出来ないのだ。

 

(戻って、愛して貰って、安心しよう。大丈夫、きっとソロモン様は私を許してくれるから……!)

 

 淡い期待を胸に、ヒロインXは自室の扉を開く。隠してある聖杯を使って帰還することだけを考えていた彼女は、部屋の内部に踏み入ると同時に目を見開いた。

 部屋の中には先客が居た。ベッドに腰かける少女が一人と、その傍に立つ若い女性が一人。彼女たちの手には、それぞれ一つずつ黄金に輝く杯が握られていた。

 

「な、あ……!?」

 

「あら、遅かったじゃない。随分と待ってたのよ」

 

「ひっどい顔してるわね~。絶望、っていうのがぴったりね」

 

 驚愕し、目を見開くヒロインXへと視線を返しながら、二人の女性……ジャンヌ・オルタとクロエは何てことでも無い様に笑っていた。仲間の一人の部屋から報告されていない聖杯を見つけ出したというのにも関わらず、彼女たちは平然と微笑んでいた。

 そこでヒロインXは気が付く、自分が裏切り者だということが露見したのだと。だがしかし、どうして二人は礼装に収納した聖杯を取り出すことが出来たのだろうか? 取り出し方は自分しか知らないというのに……

 

(い、いや! 今はそれどころではない! こいつらを倒して、聖杯を奪還しなければ!)

 

 疑問を抱いたヒロインXであったが、事態の緊急性にそれを振り払うと瞬時に戦いの構えを取った。このまま捕縛されてはソロモンに申し訳が立たない。何としても聖杯を奪還し、帰還するのだ。

 敵は二人、数の上では不利だが今は油断しきっている様子だ。不意を打って一人を倒し、一対一の状況に持ち込む。最悪の場合、聖杯を一つ奪い返せれば、ソロモンの元へ帰れる筈だ。そう判断すると同時に、ヒロインXは微笑む二人の英霊へと駆け出した。

 

「はぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 一振りの聖剣を出現させ、それを力強く握りしめる。狙いはベッドに腰かけるクロエだ。彼女の方が戦闘能力は低い、体勢的にも攻撃を捌くのは難しいだろうし、確実に倒せると判断しての選択だった。

 淫紋令呪の効果で強化された脚力と俊敏性をもってすれば、ヒロインXがクロエを射程範囲に収めるために必要は時間は0コンマ1秒にも満たない。左から右へ、クロエの胴体を両断する横薙ぎの一撃で彼女の命を摘み取ろうとしたヒロインXは、渾身の力を込めて剣を振り抜く。風が唸り、衝撃波が生み出されるほどの一撃を繰り出したヒロインXは、この一撃で間違いなくクロエを仕留めたはずだと思っていたのだが――

 

「なにっ!?」

 

 クロエの遺体が転がっているはずのベッドの上には何も存在していない。それどころか血の跡一滴も残っておらず、まるでクロエが最初からそこにいなかったのでは思えるほどに痕跡が無かった。

 忽然と姿を消したクロエに対して動揺を隠せないヒロインX。そんな彼女の背後から愉快気な笑い声が響く。

 

「ふふふ……♡ ここよ、ここ……♡」

 

「っっ!?」

 

 握っている剣に僅かな重みを感じたヒロインXが背後に振り返れば、驚くべきことにクロエが剣の切っ先に爪先立ちしている姿が目に入った。完璧に背後を取られたことに驚愕しつつ、ヒロインXはがむしゃらに攻撃を繰り出してクロエを斬り裂こうとする。

 剣を大きく振り、クロエをその上から弾き飛ばす。軽くジャンプして空中に浮いたクロエを仕留めるべく、ヒロインXはもう一度横薙ぎの斬撃を繰り出す。だが、薄皮一枚の所でそれも回避され、絶好の機会を逃すこととなった。

 それでもヒロインXは追撃の手を緩めない。攻撃の回避はギリギリだった。なら、攻撃を続けていれば必ず直撃するはずだ。目にも止まらぬ速度で剣を振るうヒロインXは、クロエの小さな体を捉えようと懸命に攻撃を続ける。

 斜めの斬撃、はずれ。一歩後ろに下がられて当たらない。続けて繰り出す踏み込みながらの振り下ろし、これもはずれ。クロエの頬を掠める程の距離ではあったが、ギリギリで当たりはしなかった。

 そのまま剣を握り直しての横薙ぎ、またしてもはずれ。軽く膝を曲げて体勢を落としたクロエは、剣が頭髪を掠めるほんのわずかな隙間を空けて刃を回避した。意表を突いての刺突攻撃、やっぱりはずれ。腕を完全に伸ばし切ったヒロインXは、そこであることに気が付いた。

 

 自分の攻撃はギリギリの所でクロエに避けられている。それはあと一歩で直撃させられる様な距離であり、徐々に自分がクロエを追い込んでいる証拠だと思っていたが……本当にそうなのだろうか?

 考えてみれば、クロエは戦う構えを取ってはいない。武器も出さず、ただヒロインXの攻撃を避け続けているだけだ。それに、ここまでピンチであるクロエをジャンヌ・オルタは一切助けようとはしていない。余裕のある笑みを浮かべ、二人の戦いを見守り続けている。ようやく違和感に気が付いたヒロインXは、突き出した剣の切っ先からほんの1mm程度だけ離れているクロエの瞳を見つめ、その眼が愉快気に笑っていることに気が付き、そして愕然とした。

 

(まさか……! わざとギリギリで回避しているのか!?)

 

 ヒロインXがギリギリでクロエに攻撃を当てられないのではない。クロエが敢えてギリギリでヒロインXの攻撃を避けている。薄皮一枚、ほんの僅かな距離だけを空け、攻撃を回避しているのだ。その気になれば簡単に避けられる攻撃だからこそ、防御の構えを取る必要も無い。クロエはヒロインXを弄び、オルタはそんなクロエに攻撃が当たることなどあり得ないと思っているからこそ、何の手助けもしないのだ。

 

「ふざけるなっっ! このっ! このぉっ!!」

 

 自分が舐められているということに気が付いたヒロインXは、持てる技術の限りを使った猛攻をクロエへと繰り出していく。力、技、速度……剣術の髄を尽くした攻撃は、並の英霊ならば一瞬で細切れになるほどのものだろう。しかし、彼女の本気をもってしても、クロエには剣がかすりもしないのだ。

 

「はっ! くっ! はぁっ!」

 

 光速の一撃も、フェイントを織り交ぜた斬撃も、徐々に体勢を崩す様に仕掛ける連撃も、何の意味も為さない。変わらずに延々と避けられ続け、いたずらにヒロインXの体力を消耗させてしまうだけだ。

 まるで風に舞う羽を追い続けている様な錯覚をヒロインXは覚えていた。掴もうと思って手を伸ばせば、その風の流れで手の中から擦り抜けてしまう。何度やっても同じ、クロエと言う名の羽を掴むことは絶対に出来ない。

 

「はぁっ……! ぐっ、はぁっ……!」

 

 猛攻を続け、圧倒されているプレッシャーに押し潰され続けたヒロインXは、一度攻撃の手を休めて荒くなった呼吸を整え始める。だが、例え体を休めた所で状況は変わらない。次はどんな手段で攻撃を繰り出せば良いのかと思案しても、答えが出ないのだ。

 クロエもまた楽しそうに微笑むとヒロインXへと挑発的な視線を向ける。可愛らしい唇を開けば、余裕に満ちた言葉がそこから飛び出して来た。

 

「無駄よ……。今のアナタじゃあ、私を捉えることは出来ないわ。絶対に無理よ」

 

「この……っ! 小娘が、調子に乗って……!」

 

「……調子に乗ってるんじゃないの。ただの事実なのよ。だって私には感じられるんだもの。あなたがどう剣を振るのかがわかるの。筋肉がしなる音が聞こえて、剣がどう軌跡を描くかも見える。繰り出される攻撃はスローモーションにしか見えないし、その気になれば目を閉じたって避けられるわよ」

 

「傲慢なことを……! その奢り、叩き斬ってやりますっ!!」

 

「だ~か~ら~……奢りでも傲慢でも無いのよ。これは事実なの……。アナタ、犬が恐竜に勝てると思う? キャンキャン鳴いてる犬を目の前にして、恐竜が退屈することを奢りだと思う?」

 

「なっ!?」

 

 怒りの炎を燃やすヒロインXに対して、クロエは冷静そのものだった。微笑む表情を見れば彼女がヒロインXを煽る為にこんなことを言っている様にも思えるが、クロエからしてみればただの事実確認の様なものなのだ。

 

「淫紋令呪の再臨によるステータスの強化、及び新スキルの習得、それを繰り返した私たちがアナタに負けると思う? ご主人様に大切に大切に愛されてる私たちが、ソロモンにボロクソに扱われてるアナタに勝てないとでも思ってるの? ……奢ってるのはアナタとソロモンの方でしょう? こんな穴だらけの作戦を自身満々に実行して、相手が子供だからって絶対に勝てると思い込んで……少しは彼我の実力差って奴を自覚したらどうなのかしら?」

 

「貴様っ! ソロモン様を愚弄するつもりかっ!?」

 

「ええ、そうよ。だってそうじゃない。圧倒的有利な状況から逆転され続けて、滅茶苦茶な作戦しか思いつかなくて、サーヴァントの使い方もなってない。おまけに女の子一人だって満足させられない欠陥だらけの雄を馬鹿にして何が悪いの? 悪いけど、私たちはアナタたちとは違って事実を元にして軽蔑してるんだからね? 何の根拠もなく『カルデアのマスターは無能だ』とか言ってるアナタたちと一緒にはしないで頂戴な」

 

「ゆ、許さん……っっ! 必ずや、その心臓を抉り出してやるっっ!!」

 

 ヒロインXの視界が怒りで真っ赤に染まる。血走った眼でクロエを睨み、怒りのままに駆け出したヒロインXは、再び彼女へと猛攻を仕掛けようとした。が、しかし――

 

「……遊び過ぎよ、クロエ。さっさと済ませなさいな」

 

「は~い! わかりました~!」

 

 ヒロインXが怒りに燃えていることなど欠片も意に介さず、オルタは淡々とクロエに命令を下した。クロエも彼女の言うことに従い、ようやく攻撃の構えを見える。

 そして次の瞬間、ヒロインXは腹部に重い衝撃を感じると同時に部屋の壁に叩き付けられていた。

 

「がっ、はっ……!?」

 

 感覚が、理解が、追いつかなかった。攻撃に出たはずが、いつの間にか攻撃を受けていた。反撃や防御どころか反応すら出来なかった。

 カウンター気味に繰り出された一撃はあまりにも重く、ヒロインXは呼吸を荒げて痛みに耐えることしか出来ないでいる。たった一発の攻撃で決着が着いてしまったことに、ヒロインXは驚くことしか出来ない。

 

「はい、おしまいっ! ……ね? 言った通りでしょ? これでようやく、私たちのアナタたちの差が分かった?」

 

「が、はっ……! ぐぅっ……!」

 

「ああ、良い事を教えてあげるわ。私は淫紋令呪の強化と淫紋隷呪のスキル習得をしてるから、そこそこ強い部類に入ってるけど……今のカルデアには、私の数倍は強い人が何人もいるわよ。最終再臨を終えたマシュ、元々強い上に第三再臨を迎えたランサーのアルトリアさん、私と同じ二種類の淫紋令呪を持ちながら私より再臨の進んでいるジャンヌ・オルタさん……それぞれの強みは違うけど、この三人に比べたら私なんてまだまだなんだから!」

 

 ヒロインXの両腕と両脚に霊基遮断のバングルを取り付けて彼女を達磨状態にしたクロエは、軽い雑談を楽しんだ後で二つの聖杯を手にした。彼女の代わりにヒロインXの相手をすることとなったジャンヌ・オルタは、四肢の消えた体を抱きかかえてクロエと共に部屋から出て行く。

 

「クロエ、聖杯は頼んだわよ。指令室まで届けて頂戴ね」

 

「は~い! 終わったら、私もすぐに合流しますね!」

 

 ヒロインXの部屋の前で別れた二人は、それぞれの目的の地へと歩み出した。クロエは指令室に聖杯を届けに、そしてジャンヌ・オルタは……

 

「……さあ、そろそろまどろっこしいのは終わりにしましょう。アンタも悪夢から目覚める時が来たのよ」

 

「な、何をする……? 私をどうするつもりだ……?」

 

「えぇ? ……そんなの決まってるじゃない――♡」

 

 震える声で問いかけて来たヒロインXに対し、オルタは今までとは違う意味合いの笑みを浮かべながら振り返った。冷酷でありながら情欲を帯びたその微笑みにゾクリとした震えを感じるヒロインXは、次いでオルタが発した言葉に意識を奪われる。

 

「これから、ご主人様の所に行くのよ……♡ そこでようやく、アンタもアタシたちの仲間入りをするってわけ……♡ ホント、やっとのことって感じだわ……♡」

 

 熱を帯びたオルタの声に再び体を震わせたヒロインXは、その言葉の意味に気が付くことも無く運ばれて行く。そうして、カルデアのマスターの私室まで運ばれた彼女は、僅かな緊張感と共に何処か懐かしい感覚を覚えながらその内部へと連れ込まれたのであった。

 

 

 

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