※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

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新年、あけましておめでとうございます。お久しぶりです。

今年もよろしくお願い致します。


膨張と放出(モードレッド)

 

 最近、調子がおかしいとモードレッドが気が付いたのは、つい数日前のことだった。

 微妙に感じる違和感とズレ。そう言った不具合を感じながらも、まあ気にすることでもないと放置していた。まさかサーヴァントが病に犯されるなんてことはないだろうし、少しすれば異変も収まるだろうと考えてのことだ。

 しかし、その違和感は日に日に大きくなった。そして、その結果が彼女の現状である。

 

 機械仕掛けの人形の歯車が噛み合っていないような、そんな感覚。動くこと、歩くこと、静止すること、何の行動を取ったとしても、不思議な違和感に体がふらついてしまう。

 自分の体が自分のものでは無い、徐々に鈍くなる自らの体に恐怖を感じながらも、モードレッドはそれを誰かに相談することは出来なかった。こういった事柄に詳しいダヴィンチや体調管理を主にしているナイチンゲール、そして敬愛するマスターにもこの異変を告げることが出来なかった。

 それは、明確な恐怖心からの行動だ。不調を黙っていたことを怒られるだとか、ナイチンゲールの脅迫じみた看病に対する恐怖もある。だが、それ以上に彼女が恐れているのは、ついに見捨てられてしまうかもしれないということであった。

 

 元々、モードレッドの霊基はソロモンの下に居た頃に受けた非道な扱いによって、戦闘能力を著しく落としてしまっていた。今では多少なりともまともな戦闘が出来る様にはなったが、それでもまだまだ本調子には遠いと彼女は思っている。

 ここまで自分を育ててくれたマスター、そしてカルデアの仲間たちが、モードレッドが再び弱っていると知ったらどう思うだろうか? もちろん、彼らは薄情な人間ではない。彼女の身を案じ、原因の究明と対策を考えてくれるだろう。

 だが……頭ではそれをわかっていても、これまでの経験がモードレッドの脳裏をかすめた。裏切り、裏切られ、利用され、ぼろぼろになるまでこき使われた後、利用価値は無いと切り捨てられかけた時の恐怖が、彼女を躊躇わせたのだ。

 

 ここまで時間をかけた。手間もかけた。ようやく復調の兆しも見えて来た。そのタイミングで、再びその努力がすべて無に帰してしまったとしたら? それでも、仲間たちは自分に今までと同じ様に接してくれるだろうか? また0からの積み重ねに付き合ってくれるだろうか? 

 万が一にも、自分に利用価値は無いと見捨て、居ない様な者として扱うことはないだろうか? モードレッドが恐れているのは、そこだった。

 

 あの薄暗い洞窟の中で頼光に刀を突き付けられた時の絶望が蘇る。未来もなく、今までの自分に対する価値すら認められず、ゴミとして扱われることへの恐怖が身を包む。

 誰にも必要とされることなく、このままカルデアの中で腐るだけの人生……それを思う度、モードレッドの全身に震えが走る。生前に求め続けた認められることへの欲望と相反したその苦しみを死んで英霊となってからも味合わなければならなくなるなど、悪夢と言う他ない。

 

 自身の異変を告げなければ取り返しのつかない事態になるかもしれない。だが、それを告げた時に仲間たちが自分を見捨てないとも限らない。その二つの事実に板挟みされ、苦しむモードレッド。

 肉体と精神の不調は相まって、徐々に彼女の体を蝕み始め……ついには、まともに剣を握ることすら出来なくなってしまった。

 

 事ここに至り、モードレッドは自分自身に絶望した。今度こそお終いだと、彼女はベッドの上で膝を抱えて蹲っていた。

 チャンスはあった。異変も感じていた。それでも、それを誰かに告げることが出来なかった。恐怖に怯え、それを乗り越えられなかった結果、自分は再び何の役にも立たない存在と化してしまった。ここまで目を懸けてもらって、力を取り戻しつつあったこの状況でだ。

 きっとマスターも怒り、呆れるだろう。そして、自分のことなどもう見向きもしなくなるのだ。自らの失敗を隠し、取り返しのつかない事態を引き起こしたのだからそれが当然のことだ。自分の部下がそんなことをしたら、モードレッドだって即刻首を刎ねようとする。それが当たり前なのだ。

 

 軋み、曇る心を抱えるかの様に膝を抱えるモードレッド。彼女が柄にもなく、これからどうしようかと悲観的な考えを巡らせていた時だった。

 するりと、ロックしていたはずの部屋のドアが開いた。驚いた彼女が視線をそちらに剥ければ、そこには今、二番目に会いたくないであろう相手……マスターの姿があった。

 

「夜遅くにごめん。ちょっと話があるんだけど、良いかな?」

 

「……入れよ」

 

 軽く話をするように見せかけるマスター。しかし、彼の様子を見ていたモードレッドは、即座に彼が本当は自分の違和感に気が付いていることを察し、そのことについて話に来たのであろうという所まで気がついてしまった。

 であるならば……もう、覚悟を決めるしかないのだろう。渋々とした様子で、されど内心は大いに怯えながら、モードレッドはマスターを部屋の中に招き入れた。

 

「本当にごめんね。でも、出来る限り早めに解決しておきたい問題だったからさ」

 

「……ああ、わかってる。俺の体調の話だろ?」

 

「そっか、モードレッドにも自覚はあったんだ。うん、今日はそのことについて話に来たんだ」

 

 明るい口調で話し続けるマスターに対して、モードレッドの表情はみるみるうちに暗くなっていく。俯いているので彼からはその様子は伺い知れないだろうが、小刻みに震える体から何かを感じ取っているかもしれない。この明るい口調は、暗くなりがちな場の雰囲気を沈めないための彼の空元気とも取れる。

 詰られるだろう。責められるだろう。どうしてもっと早くに報告しなかったのかと怒られ、そして……今度こそ、見捨てられるのだ。

 でも、それも仕方がない。自分以外の誰も悪くはないのだから。ただ怯え、逃げ、見て見ぬふりをしてきたツケが回ってきただけ……その結果を受け止めることが、自分に出来る最後の奉公だとモードレッドは考えていた。

 そんな風に覚悟を決め、マスターの宣告を潔く受け入れようとしていたモードレッドであったが……だからこそ、この後彼が発する言葉に大いに驚くこととなる。

 

「じゃあ、早速その問題を解決しようか。さっきも言った通り、出来る限り早めに解決しておきたい問題だからさ」

 

「……へ?」

 

 本当に何てことでもないような口調で、マスターはモードレッドにそう告げた。彼女が顔を上げれば、そこには余裕すら感じさせる笑みを浮かべて自分を見つめている彼の姿がある。

 マスターは言った、この問題を解決すると。当のモードレッドですらも原因や治療法もわかっていないこの問題を、風邪でも治す様な気軽さで解決すると言ってのけた。既に彼は自分に失望し、切り捨てを宣告しに来たのだと思っていたモードレッドにとっては、その反応はあまりにも予想外のことで、暫し口を半開きにしたまま、固まってしまう。

 

「……とりあえず、俺を信じてよ。大丈夫、悪い様にはしないからさ」

 

「あ、ああ……わ、わかった……」

 

 そんな自分に微笑みかけながら、ほんの少しだけ真摯な声色で語り掛ける彼の言葉にモードレッドは頷きを返す。こんな話をしている以上、マスターには考えがあるのだろう。それも、自信たっぷりな策がある、ということだ。

 この異変を解決し、もう一度剣を手に取ることが出来る様になるのなら、それに乗るのも悪くはない。そもそも、彼がこう言ってくれている以上、断る理由などモードレッドには見つからなかった。

 承諾の意を示し、彼に従うことを決めたモードレッドは、心の中の怯えに僅かに身を震わせる。しかし、彼がこの部屋を訪れる前に感じていたその恐怖は、今では随分と小さくなっている様に感じられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さあ、目を閉じて。それで気を楽にするんだ」

 

「ん……」

 

 ベッドの上に仰向けに寝転んだモードレッドは、マスターの言葉に従って瞳を閉じる。瞼の裏に広がる暗闇を見つめながら、これから彼が何を行おうとしているのかを理解出来ないままにただ深く息を吸っては吐き続けた。

 ベッドに横になれと言われた時は、てっきりいつも通りにセックスをするのかと思ったのだが……マスターはモードレッドの服を剥ぎ取ることも、彼女と共にベッドに乗ることもしない。寝台の横に座り、囁く様にして助言を口にするだけだ。

 一体、これからどうするのだろうか? どこかむず痒い感情に胸を衝かれつつも、モードレッドはその思いを押し留めて気を静める。そして、すぐ近くから聞こえるマスターの声へと耳を傾けた。

 

「……モードレッド、今から俺の言う状況をイメージして。出来る限り鮮明に、頭の中で想像するんだ」

 

 まるで催眠術にでもかかっているかのように、その声はモードレッドの心の中に染み込んでいった。軽く息を吐き、ゆっくりと首を縦に振ることで了解の意を示した彼女に対し、マスターは静かな声で囁く。

 

「……今から、俺たちは戦いを始める。敵の数は多く、強大だ。魔術王ソロモンの軍勢が、俺たちに襲い掛かろうとしている」

 

 言われた通り、モードレッドはマスターの口にしている状況を頭の中で空想し、その場面を出来る限り克明に思い浮かべた。

 何処とも言えない広大な荒野の果てに、ソロモンが率いる軍勢が見える。彼が従えるのはモードレッドが産み落としたこともある魔獣、物言わぬ人造人間(ホムンクルス)、そして、淫紋令呪の呪縛に囚われているサーヴァントたち……その中には、かつての主であり、自分が引導を渡した相手でもある『アルトリア・ペンドラゴン』の姿もあった。

 

 荒野の一角を埋め尽くすほどのソロモンの軍団。今から自分たちはこれを相手にする。マスターの言う通り、敵は強大だ。自分と肩を並べる実力を持つ円卓の騎士や、その王である父がいるのだからそれも当然だろう。

 きっと苦しい戦いになる……イメージの中でも堂々とした迫力を持つ騎士王の姿に息を飲むモードレッド。その耳にマスターの声が響く。

 

「……敵は強い。数も多い。だけど……なんの心配も要らない。だって、俺にはモードレッドがいるから。最強の騎士が傍にいてくれるから、何も不安はない。君が、負ける筈がないんだから」

 

「……っ!?」

 

 ぴりりと、心の中に痛みの様な痺れが走った。今の弱い自分を信じてくれるマスターの言葉に応えられない自分自身に情けなさを感じ、モードレッドは歯を食いしばる。

 だが、何度もその言葉を噛み締めている内に、マスターの言葉には慰めやお世辞の様な感情が一切込められていないことがひしひしと伝わって来た。彼は、今の弱い自分のことを心の底から信じてくれている。そのことを理解したモードレッドの心は、確かな感動に打ち震え始めた。

 

「……信じて、モードレッド。君は強い。騎士王を超える騎士になる君が、本来の強さを失ったアルトリアに負けるはずがない。勿論、他の英霊たちにもね。思い出すんだ、モードレッドは強い。モードレッドは、最強の騎士なんだ」

 

 何度も、何度も……マスターは、モードレッドに言い聞かせる様にして言葉を繰り返した。最初の時と同じ様に、その言葉はモードレッドの心に深く染み込んでいく。

 自分は、強い。他の誰よりも強い。円卓の騎士も、父も、自分には敵わない。あの魔術王でさえ、自分の力の前にひれ伏す。強く、強く、モードレッドはその状況を頭の中に思い浮かべ、最強の自分をイメージし続けた。

 

(オレは、負けない……。オレは、最強……。オレは、父上を超える王になる英雄だ……!)

 

「……さあ、戦いが始まるよ。準備は良い? 魔剣(クラレント)を手にして、魔力を込めて……迫る敵に、モードレッドの力を見せつけるんだ!」

 

 頭の中のイメージと、マスターの言葉ががっちりと噛み合う。根拠のない想いが、彼の言葉によって確かな自身へと変化する。自分の力を信じてくれる人がいる。心の底から、信頼を置いてくれる人間がいる。その事実が、モードレッドに見えない力を与えてくれていた。

 そして、それと同時に頭の中の空想も最強のイメージとなる。モードレッドが迫る有象無象に向けて魔力を込めた剣を振るえば、そこから放たれた赤雷が悉く敵を飲み込み、灰と化したのだ。

 魔獣など、人造人間など、物言わぬ人形と化した英霊など、何も怖くはない。あの見捨てられる恐怖に比べれば、なんの恐れも感じない。そして、自分はその恐怖を乗り越えた。そのために力を貸してくれた人間が傍にいる。もう何も怖くない。自分は、反逆の騎士は……最強だ。

 

「う、あ……! なんだ、これ……!?」

 

 自らの強さを再確し、弱さを振り払ったモードレッドは、今まで噛み合わなかった自分の中の歯車ががっちりと組み合ったことを感じていた。全てが噛み合い、動き出したことを感じ取ったモードレッドは、次の瞬間に湧き上がる力を感じて瞳を開き、自分の手を見つめる。

 体の中で膨れ上がる魔力は、今までの比ではない。それは、かつてのモードレッドの実力を凌駕するほどの力を彼女に与え、その強さを確固たるものへと進化させている。試しに魔剣を召喚し、それを手にしてみれば、今まで持つことで精一杯だったそれが驚くほどに軽く感じられるではないか。

 

「あ、あ……っ! マスター! オレ、オレっ!!」

 

「ああ、わかってる。ちゃんと見てるよ、モードレッド」

 

 以前の力、それを超えるだけの能力を取り戻したことを喜ぶモードレッドをマスターは優しく見つめていた。そんな彼の姿に自分を包み込む様な包容力を感じながら、モードレッドはある疑問を彼へとぶつける。

 

「なあ、これってどういうことなんだ? なんで、急にオレは強くなったんだよ?」

 

「簡単なことだよ。そもそも、モードレッドの不調の原因は強くなったことだったんだからね」

 

「???」

 

 返答として口にしたマスターの言葉にモードレッドは首を傾げる。自分が強くなったから弱くなったとは、一体どういうことなのだろうか?

 いまいち要領を得ていないと言った様子のモードレッドに対し、話を飛躍させ過ぎてしまったとばかりに苦笑を浮かべたマスターは、最初から順を追って彼女へとこの異変の原因を語り始めた。

 

「あのね、モードレッドの霊基は、かつての強さを失ってふにゃふにゃの状態になってる訳でしょ? それを解決する方法として、日々の鍛錬や魔力供給、淫紋令呪の強化って言う手段を取ってたんだけど……そのスピードが余りにも早すぎたんだよ」

 

「強くなるスピードが早すぎた? んで、オレが弱くなったってのか?」

 

「えっと、モードレッドは霊基……体の方はまだ進化途中なんだ。でも、そこに注ぎ込まれる魔力は膨大な量を誇ってて、しかもモードレッドの霊基はそれを溜められるだけの力を有してたことが問題だったんだ。体中に満ち溢れる魔力をどう扱えば良いか? モードレッドの霊基はそれがわかってなかったってこと」

 

「あー、ちょっと理解出来た。つまりあれだ、俺が車だとしたら、ぽんこつだけど大容量のガソリンタンク満杯にニトロでもぶっ込まれたってことだろ? んで、本当だったら速く走れるのに俺の体がぽんこつのままだから、逆にスピードが遅くなっちまったってことだ!」

 

「うん、考え方としては合ってるね。それで、その問題を解決するための力はもう既にモードレッドの中にあった。強化と共に新しいスキルを習得してたから、それを発動させたんだよ。今のモードレッドの霊基は、戦闘に特化したものに変化してる。豊潤で膨大な魔力もそのために使う様になってるから、単純にその分だけ今までより強くなれたってわけ」

 

「なるほどなー! ようやくわかったぜ! ……にしても、へへっ! 強くなり過ぎて弱くなるなんて、まるで想像出来なかったな。一時はどうなると思ったけど、マスターのお陰で無事に解決したぜ!」

 

 タネを知ってしまえば本当になんてことのない問題だ。自分は着実に力を付け、そのスピードが早すぎたせいでこうなっていた。まさかの事態ではあったものの、その問題も無事に解決し、有した力を存分に扱うことが出来る様にもなった。結果としては万々歳だ。

 数分前の憂鬱も忘れ、モードレッドは笑みを浮かべてマスターへと素直に感謝の言葉を口にする。それに対して、マスターは照れ臭そうに頬を搔いた後、これまた照れ臭そうにして話し始めた。

 

「あはは、こんな風に偉そうに解説してるけど、この仕組みを教えてくれたのはダヴィンチちゃんなんだよね。ここ最近、モードレッドの様子がおかしいって相談したら、一生懸命に原因を調べてくれてさ。お陰で助かっちゃったよ」

 

「そうなのか? なら、あいつにも礼を言っとかないと――」

 

「あー……なら、明日はカルデアの皆にお礼を言って回らないとね。皆、モードレッドのために動いてくれたんだよ」

 

「え……!?」

 

 マスターの言葉に驚くモードレッドは、カルデアの皆が自分のために動いてくれていたということを知って、唖然とした。そんな彼女に対し、誰がどんな風に彼女の再起に関わっているかをマスターは解説し始める。

 

「メインの研究はダヴィンチちゃんだけど、そのフォローにはドクターをはじめとした多くの職員が関わってる。そもそも、人手がカツカツのカルデアでダヴィンチちゃんに研究時間を作れる様にシフトを調整して、皆で協力してくれたからこそ、迅速な原因究明が出来たんだよ」

 

「ん、そっか……あいつら、只の人間の癖して無茶しやがって……!」

 

「……ダヴィンチちゃんに研究のためのデータを渡してたのはナイチンゲールだよ。沖田さんや牛若丸……モードレッドと同時期にカルデアに戻って来た英霊たちから相談を受けてたみたいで、必死に動いてくれてたんだ。お陰で研究が捗ったってダヴィンチちゃんが言ってた」

 

「……皆、オレの様子がおかしいって気が付いてたんだな」

 

「うん……オレだけじゃなくって、他の皆も違和感は感じてたらしい。食事の時に浮かない顔をしてるってキャットが言ってたし、最近手合わせに来なくなったってカエサルとクレオパトラも心配してた。マシュも、アルトリアも、モードレッドの様子がおかしいってダヴィンチちゃんに相談しに来たこともあったし、カルデアのほぼ全員がモードレッドのことを心配してたんだよ」

 

「そう、なんだな……そうか、皆、オレのことを……」

 

 じわりと、モードレッドの視界が滲む。仲間たちが自分の事を想い、行動してくれていたと知った彼女の胸に熱いものが溢れた。

 それと同時にモードレッドは自分自身の不甲斐なさを恥じる。自分の異変を知られたら見捨てられるのではないかと怯え、誰にも相談出来なかった。そのせいでいたずらに仲間たちを心配させ、余計な手間を取らせてしまった。カルデアの仲間たちは全員モードレッドのことを信じてくれていたのに、他ならぬ彼女自身がその仲間たちを信頼出来ずにいたことが恥ずかしくて堪らなかった。

 

「ごめん、マスター! オレ、ちゃんと誰かに相談すべきだった! そうすりゃ、もっと早くに解決出来てたかもしれないのに――」

 

「ううん、違うよ。悪いのは俺だ。モードレッドが信頼してくれる様に動いて、話をしてくれる様な活躍が出来て無かった俺が悪いんだよ。もっとちゃんと、君を見ておくべきだった。ごめん、モードレッド」

 

「マスター……あ、頭を上げてくれよ! お前がそんな風に思う必要は無いんだ! 悪いのは、柄にもなくビビっちまったオレで……つ、次からは、なんかあったらちゃんと報告する! マスターや皆が俺のことを大切に想ってくれてるってのはよくわかったから! だから、そんなこと言わないでくれ。なんか、悲しくなるから……」

 

「……うん、わかった。俺ももっと努力して、モードレッドが信頼出来るマスターになるよ。モードレッドも、何かあったらきちんと報告すること、約束だよ?」

 

「ああ!」

 

 差し出された小指に自らの小指を絡め、指切りを交わす二人。体の問題も、心の不安も消し去ってくれたマスターと仲間たちに感謝しながら、照れ臭さを誤魔化す様にしてモードレッドは言う。

 

「へへっ! でもまあ、この力があればマスターたちにも楽をさせてやれるぜ! というより、父上たちの活躍の機会を奪って、逆に恨まれちまう可能性も――」

 

「あ、そのことだけどさ。モードレッド、そのスキルは――」

 

「……あれ? あれれれっ!?」

 

 この力があれば怖いもの無しだ、そう口にしようとしていたモードレッドであったが、不意に全身が脱力してしまったことでベッドに倒れ込んでしまった。先ほどまで感じていた力は霧散し、体を動かすことが非常に億劫になる。戸惑う彼女に向けて苦笑を浮かべていたマスターは、やれやれと言った様子で言いかけていた言葉を継いで口にした。

 

「――燃費が凄い悪いみたいだから、長くはもたないって言おうとしたんだけど……身を以って体験してるみたいだね」

 

「なんだよ~! そういうことは早く言ってくれよ~! クソッ! ぬか喜びさせやがって……!」

 

「ははは! そう上手くはいかないね……スキルの効果はもって数分って所かな? それが過ぎると力を使い果たしちゃうみたい。扱いが難しいね」

 

「う~……せっかく元に戻れたと思ったのになぁ……」

 

「ごめん、ごめん。でも、その数分間なら間違いなくモードレッドは最強だよ。アルトリアにだって負けない、最強の騎士になれるんだ。それに霊基の成長が追いついたら、そのスキルも必要なくなる。常に最強モードになれる筈だから、今は我慢我慢」

 

「……しょうがねえな、ったく。ま、その、なんだ……今はこれで納得してやるよ」

 

 マスターがぶーぶーと文句を口にしながらベッドに寝転がるモードレッドをあやす様にその頭を撫でてやれば、彼女の機嫌は多少なりとも良くなった様だ。微笑みを浮かべて優しくモードレッドを見つめるマスターは、一つの問題が解決したことを喜ばしく思う。

 モードレッドはそんな彼のことをちらりと横目で見た後、そっぽを向き、彼の目を見ないままに小さな声で呟いた。

 

「……腹、減った。マスター、なんかくれ」

 

「ん? ああ、そうだね。魔力も消耗したし、疲れちゃったよね。待ってて、食堂からなにか持って――」

 

「バーカ、そうじゃねえよ。オレが減ったって言ってんのは、こっちのことだっつの……」

 

 部屋から立ち去り、軽食を持ってこようとしたマスターに悪態をついたモードレッドは、とんとんと自分の下腹部を叩いて真に求めているものを彼へと告げた。いじらしくも愛らしいそのおねだりを目にしたマスターは、珍しいモードレッドからのお誘いについつい頬を緩めてしまう。

 

「……んだよ、気持ち悪い顔すんなっての! ……魔力供給にも霊基の強化にも丁度良いだろうがよ。それに、その……今、すっげーシたい気分だし、よ……」

 

「うん、そうだね。俺もそうしたい、かな。今のモードレッド、凄く可愛いからさ」

 

「ばッ!? か、可愛いとか言うなよ! オレを女扱いすんなっての! ……抱けって言っときながらこんなこと言うのは矛盾してっかもだけど、とにかく可愛いとか言うな!」

 

「ん、はいはい、わかったよ。それじゃ、準備してから始めよっか?」

 

「うぅ……本当にわかってんのか? 馬鹿マスター……」

 

 自分の服を脱ぎ、モードレッドの服を手慣れた様子で剥ぎ取る彼の姿に呆れた様子で呟きながらも、モードレッドは自分の中でむくむくと肉欲が芽生えつつあることを感じ、興奮を露にする。ギシリと音を立ててマスターがベッドの上に乗った時、その興奮は大きく膨れ上がった。

 

 どくん、どくんと心臓が高鳴る。彼に抱かれることを喜ぶ自分が居る……あの肉棒に蹂躙され、迸る魔力で全身を満たされる快感に抗えなくされ、彼のモノであることを自覚出来る幸福が味わえるのだと、モードレッドは子宮をときめかせながら息を飲んだ。

 と、同時に、ある可能性が頭の中で閃く。確信はなかったが、もしかしたら上手くいくかもしれない程度の思いでその考えを実行に移したモードレッドは、瞳を閉じて脳内でイメージを固め始めた。

 

(今から、マスターに抱かれる……すげー、気持ち良いことをする……もっと、もっと、気持ち良くなって、マスターを気持ち良くしたい。だから――)

 

 スキルの発動には、モードレッドのイメージが必要だとマスターは言った。彼女の空想をトリガーとして、モードレッド自身の霊基をその空想に相応しいものに変化させるのだと解説してくれた。であるならば、先ほどの霊基が戦闘に特化したものに出来た様に、別の用途に適した霊基に変質させることも可能なのではないだろうか? そうモードレッドは考えたのである。

 現状、モードレッドの体に残っているのは搾りカス程度の魔力のみだ。しかし、肉体を構成する程度ならば無理が利くかもしれない。ダメもとでその考えを実行に移したモードレッドは、目を閉じて頭の中でこれから行うことを想像し、何度か呼吸を繰り返した後で瞳を開くと……

 

「へ、へ……! 上手く、いったな……!」

 

 そこには、今までとは違う自分の体があった。決して大きいと言えなかった胸は膨れ上がり、マシュと同程度の大きさにまで成長している。尻もまた、動きにくそうなくらいに肉付きが良く、むっちりとした下半身に変化していた。

 心臓の鼓動が早くなる。いやらしく成長させた自分の体を見れば、自分が雌になってしまったのだと強く自覚してしまう。他の誰でもなく、自分自身の意思でこうなったのだと再確するほどに、心音がけたたましくモードレッドの中で響いた。

 

「どうだ? こんな使い方もあるみたいだぜ!」

 

「なんて言うか……モードレッドは飲み込みが早いと言うか、知恵が回ると言うか……」

 

 ほっそりとした肢体が急に肉感溢れる女体に変化したことに驚きを隠せないマスターであったが、自分の変化を誇らしげに笑いながら告げるモードレッドに苦笑とも取れる笑みを向けて、いつもの調子を取り戻した。そして、これが彼女の望むことであるならば自分のやることは一つだとばかりにその体に手を伸ばし、優しく触れる。

 

「あっ♡ ふっ、んんっ……♡♡♡」

 

 まずは、たわわに実った胸の果実に触れると、そこを優しく揉み解した。今までの自分には存在していなかった確かな質量と重みを感じ、そこから伝わる深い快感に表情を蕩けさせるモードレッドは、甘い声を漏らして快楽に喘ぐ。

 表面的ではなく、肉の中心にまで伝わる快感。胸は小さい方が感度が良いと聞くが、これはこれで気持ちが良い。恐らく、モードレッドの乳房を膨らませた魔力が感度も上昇させているのであろう。ぷるぷると震える胸の肉がマスターの手に包まれる度、彼女の口からは嬌声が溢れ出た。

 

「はっっ♡ あうっ……♡ んっ、んぅっ……♡♡♡」

 

 ゆっくり、ゆっくりと、大きくなった胸の調子を確かめられる様に揉まれる。快楽を声に出す口も、突然に降って来た唇によって塞がれてしまった。舌を交わらせ、胸を揉みしだかれ、双方からの甘い快感に身を蕩けさせながら、モードレッドはくぐもった声を漏らす。

 

「んっ♡ ん~~っ♡ はっ♡ ふあっ♡ はふぅ……っ♡♡♡」

 

 舌が吸われる。唾液が流し込まれる。胸がゆっくりと押し潰され、形を変えていく。その一つ一つが甘い痺れとなってモードレットの官能を襲い、意思を蕩けさせる。

 静かな湖畔に浮かぶ小舟の上で寝転がっている様な穏やかな快感に身を慣れさせていたモードレッドであったが、マスターの指が胸の頂点にある桜色の突起を摘まんだ瞬間、鋭い衝撃が胸に響いて目を見開いてしまった。

 

「あぁぁっっ♡♡♡ んぁぁっっ♡♡♡」

 

 ぴょんっ、と体が跳ねる。乳首を抓られただけで軽く達し、全身を浮かび上がらせてしまったことに驚きを隠せない。未だにモードレッドの視界はちかちかと明滅し、快感の残滓が痺れとなって胸の内で弾けていた。

 そのままマスターはキスをしていた唇をモードレッドの起立した乳首に触れさせると、巧みな舌使いで彼女のそこを弄り始めた。吸い、甘噛みし、舌で転がして、好きに弄ぶ。強すぎず、決して弱すぎない快感を与えながら、モードレッドの敏感になった乳首を責め上げる。

 

「あっっ♡♡♡ ああっ♡♡♡ はひっ♡♡♡ あっ、ひぃっ♡♡♡ や、やばいっ♡♡♡ それ、やばぁっ♡♡♡」

 

 両方の乳首を重ね合わされてぺろぺろと舐められた後、一気に吸い上げられる。胸が大きくなったからこそ出来るその責めに耐性を持たないモードレッドは、腰を大きく浮かせて絶頂に達した。

 荒い呼吸を繰り返し、紅潮した頬のまま夢見心地で呻くモードレッド。性交に適した体となった今、前戯だけでここまで感じてしまう。となれば、本番行為で味わえる快感はどれほどなのだろうかと想像すれば、その期待に子宮が勝手に疼いた。

 

 既に、マスターの肉棒は勃起している。それを受け入れる自分の性器の湿りも十分過ぎるほどになっていた。

 胸に抱く期待の感情のままに足を開き、濡れそぼった女性器を見せつけたモードレッドは、媚びた視線をマスターへと送って無言のおねだりをしてみせる。彼もまた、彼女の望む行為をすぐに感付き、挿入の体勢を取ってくれた。

 

(来るんだ……♡ マスターのバキバキちんぽが、超が付くくらいに敏感になってるオレのまんこに挿ってくる……♡ ぐっちゃぐちゃにまんこ中を掻き回されて、狂うまで喘がされちまうんだろうな……♡♡♡)

 

 激しく腰を叩き付けられ、弱点である聖槍の力を纏った肉棒で膣内を掻き回され、子宮の中を埋め尽くすほどの量の精液をぶちまけられる。思考が追いつかず、壊れてしまうほどの快感を叩きつけられてアヘる自分の姿を想像したモードレッドの体がぐんっ、と体温を上げる。

 がっしりと腰を掴まれ、起立した肉棒を割れ目をあてがわれた瞬間に瞳にハートマークを浮かばせるモードレッド。このまま一息に膣を割り裂く様な激しい挿入が行われるのだと思っていた彼女であったが、マスターの取った行動はその予想を裏切るものであった。

 

「あっ♡ ふっ♡ んっ、んんんんん……っ♡♡♡」

 

 普段通りの激しく膣奥を叩く様な挿入ではなく、ゆっくり、じっくりと肉棒を膣内に埋めていく様な挿入。じわじわとモードレッドの内部を突き進む熱く硬い肉棒の感覚に呻くモードレッドではあったが、それは彼女の求めていた快感とは違うものであった。

 有無を言わさずに腰を叩き込み、喘ぐモードレッドの声を更に甲高くさせる様なピストンを行う。なんだったら、最初から聖槍の魔力回転を解放させてしまっていても構わない。そんな激しい挿入からの嵐の様なセックスを想像していた彼女にとって、この甘い挿入は些か拍子抜けと思えるものであった。

 決して、このセックスが気持ち良くないということはない。しかし、どこか生温さを感じてしまうことも確かだ。ゆっくりと時間をかけた挿入からのこれまたねっとりとした腰の振り。激しさはまるでなく、丁寧なピストンでモードレッドを感じさせにくるマスターのセックスは、今のモードレッドにとって予想外のものだった。

 

(やっぱ、魔力切れのオレのことを気遣ってんのかな……? そんなことしなくていいから、いつも通りにガンガンピストンして欲しいんだけどな……)

 

 いまいち彼の意図を読めずに困惑するモードレッドは、これがまだ慣らし運転の様なものであると想定し、納得することとした。まずは一回射精と共に魔力を送り込み、なんの憂いもなくなってから本気のセックスをするのだろうと勝手に思い込んだ彼女は、甘く浸る様なセックスの快感に身を委ねる。

 どうせこれは序の口の快感。気持ち良くないこともないし、魔力切れの体には丁度良いかもしれない。そんな考えを浮かべているモードレッドは、何も気が付かなかった。マスターは最初から、本気で彼女を蕩けさせに来ているということに……。

 

「あふっ♡ んっ♡ あ、へっ♡ ん、お……?」

 

 モードレッドが異変に気が付き始めたのは、セックスが始まって数分後のことであった。激しくない、優しいピストンを繰り返されているだけだというのに、段々と声が抑えきれなくなってきたのだ。

 魔力の嵐も纏ってはおらず、ピストンの速度も変わってはいない。単調に、リズミカルに、ただモードレッドの膣内を何度も出し入れしているだけのはずなのに、どうやっても口から声が溢れてしまう。それも、自分が今まで出したことのない、甘く蕩ける様な声が、である。

 

「あっっ♡♡♡ あんっ♡♡♡ あぁんっ♡♡♡ あっ、んっっ♡♡♡」

 

 必死に口を閉ざし、声を堪えようとしても無駄。とんっ、と亀頭が膣の何処かに当たる度、そんな我慢など忘れたとばかりに口が開き、甘い嬌声が溢れ出てしまう。そのまま肉棒が引き抜かれ、カリが膣壁を引っかく快感が続けざまに与えられ、今度は口を閉ざすという行為すらも忘れて喘ぎ続けることになってしまうのだ。

 

(なん、だよ、これぇ……っ♡♡♡ へん、だぞっ♡♡♡ これも、スキルの効果なのか……?)

 

 自分の好きなセックスはもっとガツガツとした激しいもののはずなのに、それとはまったく違うセックスを行われているはずなのに……それなのに、深すぎる快感を味わい、甘い快楽に全身が蕩け始めている。気が付けば、モードレッドの性器からは大量の愛液が溢れ出て、それを掻き回されるいやらしい音が響き始めていた。

 

(オレの子宮っ♡♡♡ 媚び、まくってるぅっ♡♡♡ マスターのちんぽにちゅうちゅう吸い付いて、甘えてるぅっ♡♡♡ あ、あ、あ……っ♡♡♡ なんだよ、これ……♡♡♡ まんこが、蕩けて――っ♡♡♡)

 

 肉棒を受け入れる性器が、今まで感じたことのないくらいに蕩けている。いや、性器だけではない。モードレッドの全身が脱力し、この甘い快感に浸り切っていた。ただ一点、指と指を絡ませ合い、マスターと繋がり合う手だけが彼と離れたくないとばかりに強く力が込められている。

 なんてことのないセックスだ。単調な腰使いで膣を責め、激しさも何もないセックスのはずなのだ。なのに、自分はそんなセックスでここまで感じてしまっている。一体、何故? どうして? そんな風に喘ぎながら困惑していたモードレッドであったが……不意に、その答えに気が付いた。

 

(マスターの、ちんぽ……♡ オレの、欲しいと思ってるとこに毎回くるぅ……っ♡ 一回、一回のピストンで、一番気持ち良くなれる場所を突いてきてるんだ……♡♡♡)

 

 例えばGスポット。例えばボルチオ。そのほか、名前も無いただモードレッドが好きな場所であったり、弱点でも何でもない膣内の一点であったり、そんな部位。ただひたすらに同じ感じる場所だけを突かれるのも気持ちが良いが、緩急を付けて様々な場所を責められる快感はその数倍にも膨れ上がる。

 最初は一番感じる場所を突いて欲しい。その後は少し位置をずらして焦らし、意識を外してから次いで感じる場所を責める。次はここ、その次はあそこ。そんな風に無意識の内に責められる場所を願うモードレッドの願望とまったく同じ場所をマスターは責めていたのだ。

 

 今、肉棒で突かれたら一番気持ち良い場所を責める。引き抜く時は次の位置を選定しながらその快楽を引き上げる様に襞を擦る。強すぎない力で、甘い快感を味合わせるために、何度も何度もそれを繰り返す。モードレッドの望みを叶え、彼女に未知の快感を体験させるために、延々と繰り返し続けるのだ。

 気が付いてしまえばあまりにも簡単な答え。だが、それがどれほど困難なことなのかは想像に容易い。モードレッド自身ですら気が付いていない、無意識の快感スポットを毎回寸分なく見つけ出し、そこを責める。僅か数秒の間にその選択を繰り返し、毎回正解を導き出すことなど、本来ならば絶対に不可能だ。

 

(なんでそんなことが出来るんだよぉ♡♡♡ この馬鹿マスター、オレのことを知り過ぎだぁ♡♡♡ どんだけ、オレのことが好きなんだよぉ♡♡♡)

 

 肉体も、精神も、全て理解しなければこんなことは出来ない。それが可能なのは、彼がモードレッドのことをきちんと知ってくれているから。なにをどうすれば悦ぶのか、なにを考えているのか、その全てを理解し尽くしているからこそ、こんなことが出来るのだ。

 そのことに気が付いてしまえば、もうモードレッドの我慢などあってないようなものだ。肉体だけではなく、精神もまた甘く蕩ける快感に満たされてしまえば、声を堪えることも、快感を抑えることすらも出来なくなってしまう。後はただ快感に包まれ、喘ぎ続けることしか出来なかった。

 

「あうっ♡♡♡ あんっ♡♡♡ あぁっ♡♡♡ あんっっ♡♡♡ んあぁっ♡♡♡ は、あぁぁっっ♡♡♡」

 

 嵐の様な暴虐さで膣全体を責め、感じる場所を滅茶苦茶に犯すのとは違う。的確に、丁寧に、毎回一番気持ち良くなれる場所を責め上げるセックス。全身が蕩け、びくびくと震え、全てを理解されているという安心感に心が浸る。

 マスターの圧倒的な包容力を感じるモードレッドは、セックスによる肉体面の快感と安心感による精神面の快感を同時に味わい、その甘さに感動していた。今までの激しいセックスで自分が雌になっていたとしたら、このセックスによる変化はまさに()()()()だ。自分を愛し、包み、安心させてくれる男に心酔する女としての姿を晒し、モードレッドは快楽に蕩ける。

 

「あうんっ♡♡♡ しょこっ、いひっ♡♡♡ あぁっ♡♡♡ ま、たぁ、いいときょ、あたりゅぅっ♡♡♡ おうっ♡♡♡ しきゅっ♡♡♡ こんこんっ♡♡♡ ましゅたぁのちんぽ、オレのあかちゃんべやノックひてりゅうっ♡♡♡ あ、あっ♡♡♡ だひて、ましゅたぁっ♡♡♡ オレのしきゅうに、ぜんぶだひてぇっっ♡♡♡ おまえのあかちゃんっ♡♡♡ はりゃむからぁっ♡♡♡ じゃあめん、ちょうらひぃっっ♡♡♡」

 

 だらしないアヘ顔も、女としての本能も、弱い自分自身の姿も……全てを曝け出し、モードレッドはマスターに強請る。至上の快楽を、最高の幸福を、彼自身が満足し、モードレッドを自分のモノとした証を、女性としての器官に注ぎ込むことを望んだ。

 そして、マスターもまた彼女に快楽を刻み込む姿勢を取る。媚びて、降りて来たモードレッドの子宮を何度も優しく亀頭で叩き、段々と膨張していくそこの感覚を彼女に教え込み、モードレッド自身が望むものを散々に期待させた。

 最後の瞬間、彼はモードレッドの子宮口を柔らかく叩き、そこに鎮座した。決して無理に押し込まず、ただ触れる様なピストンを繰り出せば、その動きに反応したモードレッドの子宮口は、大口を開けてマスターの亀頭を咥え込み、そこから放たれるものを一滴残さず受け止める体勢を取る。

 

 腰が、勝手に浮き上がる。自分の女としての本能が、今まで感じたことのないくらいに燃え上がっていることがわかる。男の精液を受け止め、その子を孕むための体勢を取った自分の女性器と子宮に対して、悦びと幸福の感情を抱いたモードレッドは、口元に笑みを浮かべ……マスターの迸りを飲み干しながら叫んだ。

 

「あぁあぁぁあぁぁああぁぁあぁぁあぁァアぁああぁっっ♡♡♡ ひっ、くぅううぅううぅううぅううんんっっ♡♡♡」

 

 ぱしゅう、と潮が噴き出す。全身から魔力が噴き出て、膨れ上がっていた胸や尻がしぼんでしまった。代わりに彼女の体を満たしたのはマスターの精液と魔力、そして凄まじいまでの快楽だ。頭の天辺から爪先まで、モードレッドの全身はマスターによって満たされてしまった。

 

「んあぁ……♡♡♡ おいひぃ♡ マスターのせいし、うましゅぎるぅ……♡♡♡ あうっ♡♡♡ あっ♡♡♡ はぁぁ……っ♡♡♡」

 

 熱く濃い精液を子宮で飲み続けるモードレッドは、その甘美な快感に酔いしれていた。そんな彼女の体を引き起こす様に引っ張ったマスターは、そのまま強く彼女を抱き締めてその背を摩る。

 全身を彼に包みこまれ、彼の温もりの中に身を置くモードレッドは、体の内外をマスターの熱で満たされる幸福に頬を染めた。その歓びの感情のままに舌を彼の体に這わせ、唇を落としてはキスマークを作り、そうして入念に彼に敬愛を示した後で懇願する様な口調で言う。

 

「マスター……オレのこと、手放さないでくれ……! ずっと、ずっと……お前の傍に、居させて……んっっ♡♡♡」

 

 たった一つの願いを口にしていた唇は、彼によって塞がれた。舌を挿れる大人のキスを暫し交わし、モードレッドのことを丁寧に可愛がった後、マスターはそっと唇を離す。

 互いの涎によって出来た銀色の橋が重力によってぷっつりと途切れる。その光景を夢見心地の表情で見つめていたモードレッドの瞳を真っすぐに見て、彼女の瞳が自分のことを映していることを確認してから、マスターはモードレッドの願いに対する答えを口にした。

 

「俺も、モードレッドのことを二度と離すつもりはないよ。他の誰の物にさせるつもりもない。モードレッドは、俺の騎士さ」

 

「は、ぅ……♡♡♡ あっ、へぇ……っ♡♡♡」

 

 自分の願いが受け入れられた喜びに涙を浮かべるモードレッド。マスターは、そんな彼女に意地悪をする様に腰を跳ね上げ、浅い位置にあったモードレッドの子宮を奥まで押し込んだ。

 未だに硬く、そして熱い肉棒によって快楽を与えられたモードレッドは、だらしなく舌を垂らしてアヘ顔をマスターの眼前に晒す。そんな彼女の頬に手を添え、愛らしく撫でながら、彼はうっとりとした口調で呟いた。

 

「とっても可愛いよ、モードレッド……凄く、素敵だ……!」

 

「………♡♡♡」

 

 頬を撫で、腰を抱き、とても大切なものを扱う様にしてモードレッドを愛でるマスター。そんな彼の行為に応える様にして、モードレッドも愛らしいと褒められたアヘ顔を一切崩すことなく彼の目の前で浮かべ続けている。

 強い騎士としてではなく、弱い女としての姿を晒し、愛する者から与えられた快楽に酔った女性としてマスターに抱かれるモードレッド。目に浮かんだ涙も、だらしなく垂れた舌も、紅潮した頬も、全てが変わることなくマスターの眼前に曝け出されている。

 ……いや、たった一つだけ変化しているものがあった。口から放り出て、涎を垂らし続けている彼女の舌の表面には、モードレッドの下腹部に刻まれていた紋様がじりじりと浮かび上がってきている。彼の目の前で、彼の女になる瞬間を見せつけたモードレッドの舌には、真っ赤に輝く令呪が新たに刻みこまれた。

 

 剣と犬、その二つを組み合わせ、ハートマークで括った様な形をした令呪の紋様を眺め、彼女が更なる成長を見せたことを確認したマスターは、脱力しきったモードレッドの体を強く抱きしめた。そして、その耳元で優しく、甘い声で囁く。

 

「本当、可愛い女の子だね。()()()()()()()()は……!」

 

「~~~っっ♡♡♡」

 

 その囁きを耳にし、甘さに酔い、全身を蕩けさせたモードレッドは、大きく仰け反りながら彼の腕の中で達し、激しく痙攣して高みに上り詰めたのであった。

 

 






モードレッド 第三再臨 完了
スキル 『魔力操作』及び『不敬なる敬愛』 習得




『魔力操作』

今回モードレッドが習得(正確にはもっと早い時点で習得はしていたが、気が付いていなかった)したスキル。全身の魔力を放出、収束、膨張させることで、彼女がイメージした最適な状態に霊基を変質させるためのスキルである。

以前に彼女が習得していた『魔力放出』と似たスキルであり、それに加えて細やかな操作が可能。以前と比べてマスターから注がれる魔力が上質かつ膨大な量になったため、その効果は『魔力放出』を大きく凌駕する。ただし、戦闘面に特化した霊基を構築した場合、燃費の悪さから即座に魔力を使い果たしてしまう模様。その後の計測によって、最大効果時間は5分程度という結論を得た。
ただし、油断することなかれ。たかが5分と言えど、その間のモードレッドは父であるアルトリアを凌ぐほどの戦闘力を得るのだから。その状態の彼女を止められるサーヴァントがソロモン側に居るかどうかと聞かれれば、恐らくは否であろう。

戦闘時に5ターンに渡って攻撃力・防御力の大UP。Bastardの効果大UP。弱体効果の無効(4ターン5回)付与。デメリットとして、効果切れと共に1ターンのスタン効果が付与される効果を持つ。



『不敬なる敬愛』

モードレッドが第三再臨と共に習得したスキル。淫紋令呪が刻まれた場所が舌=それを見せるためには相手に舌を出さねばならない、という敬意と不敬が入り混じった状態を示唆した効果を持つ。
 
通常状態では効果が発揮されないものの、マスターの危機に応じて発動される。自身に無敵効果とターゲット集中の効果を付与し、更に攻撃して来た相手の強化効果を無効にするデバフを与える効果を持つ。まあ、所謂ツンデレスキルという奴である。



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