※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

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今回Hありません、場面転換多いです。すいません


再会、フランスにて

 

「特異点が観測された?」

 

「ああ、時代は1400年代のフランス、君たちが一番最初に行ったレイシフトの座標さ」

 

 Dr,ロマンに呼び出された俺たちは彼からの報告を受けて顔色を変えた。その言葉には、ソロモンが新たな行動をし始めたと言う意味が込められているからだ。

 

 数多の英霊を手中に収め、戦力を拡大したソロモンが再び人理を焼却しようとしている……それは、俺たちにとってとてつもない脅威となっていた。

 

「……ついにソロモンが動き出しやがったか、思ったより早かったな」

 

「カルデアの壊滅よりも人理焼却を優先し始めたと言う事でしょうか?」

 

「いや、わからないよ。もしかしたら並行して行ってくるかもしれない」

 

 皆は口々に自分の意見を言い合っている。それを黙って聞いていた俺だったが、やがて話題が一つにまとまって来た事を確かめると口を開いた。

 

「……今の最優先課題は、このソロモンの動きにどう対応するかを決める事だ。皆はどう思う?」

 

「当然フランスに行くっきゃねぇだろ。聖杯を回収しなきゃ話が始まらねぇ」

 

「しかし、私たちがフランスに行っている間にカルデアが襲われる可能性もあります。戦力を計算して分けないと危険です」

 

「……つまり、話をまとめるとだ。俺たちは二つのチームに分かれる。一つはフランスに行って聖杯を回収するチーム、もう一つはここに残って防衛にあたるチームだ」

 

「その戦力の選定はどうしますか?」

 

「んなもん、決まってんだろうが」

 

 そう言いながら兄貴が俺を見る。その動きに合わせてこの場に居る全員の視線が俺に集まった。

 

「決められんな、マスター? アンタの指示通りに動かせて貰うぜ」

 

「……わかった。じゃあ、組み分けを発表するよ」

 

 その言葉に対して俺はすでに決めていたチーム分けを皆に伝え、すぐさまレイシフトの準備に移って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ロビン、まだ戻ってこないのかな?」

 

「心配ですね……」

 

 数十分後、俺たちはフランスへとたどり着いていた。ここに来たのはそんなに昔ではないはずなのになんだかとても懐かしい気分になる。しかし、その気分を楽しめる余裕は俺たちには無かった。

 

 二度目の来訪となるフランスは、かつてここに来た時よりも賑やかで活気にあふれていた。何か問題が起きている様には到底思えない。

 

 とにかく俺たちは人目に付かない様に隠れながら、情報収集の為に街に送り込んだロビンの帰りを待っていた。

 

「……雰囲気的には問題が起きてるとは思えねぇな、だが、嫌な感じがしやがる」

 

「圧制者の姿が見えぬ、しかし、国中に不穏な空気が満ち満ちているな!」

 

 後に控える兄貴とスパルタクスの言葉を聞いた俺は、自分もまた感じている妙な感覚が正しいのだと言う確信を強めた。上手くは言えないが、なんだか変なのだ。じりじりと足場が崩れ去って行くような感覚を覚えてしまう。

 

「先輩、とにかくロビンフッドさんを待ちましょう。情報を得てから行動を起こすのが定石です」

 

「そうだな。慌てても仕方が無いか」

 

「そうそう! 肩の力を抜いての~んびり行こうぜ」

 

 さすがにそこまでは出来ないとオリオンに言いながら苦笑した俺は今回のメンバーの選定を確認した。多分、これで間違いは無いはずだ。

 

 今回のレイシフトに連れて来たメンバーはマシュ、兄貴、ロビン、スパルタクスとマスコット代わりにと無理に付いて来たオリオンの計5人だ。4人と1匹と言った方が正しいかもしれない。

 

 このメンバーを選んだ基準は単純な消去法だ。今現在、戦力として使えそうなメンバーを選んだ上で、安定性を重視した。

 

 霊基があまり育っていないスカサハとクラスが勝手に変わってしまうエリザベートを連れて行くのはリスクが高い。二人はカルデアに残って防衛に努めて貰う事は決めていた。それに加えて、戦力としても医療スタッフとしても優秀なナイチンゲールに残って貰い、防衛陣の安定性を強化したのだ。

 

 もう一人くらい残して、更に安定性を強めた方が良かったかもしれない。だが、それでフランス攻略メンバーの戦力が足りなくなっては元も子もないのだ。

 

 迅速に聖杯を回収し、急いでカルデアに戻れる様にすることがこの場での最善策と判断した俺の提案にロマンもダヴィンチちゃんも賛同してくれた。であれば、その目的を果たすことが俺の役目だろう。

 

 一刻の猶予も無いが慌てて仕損じる訳にも行かない。堅実で大胆な策を練るために、俺は心を冷静に保ちながらロビンの帰りを待った。

 

「……待たせたな、今帰ったぜ」

 

 やがて何も無い場所から声が響いたかと思えば、宝具を解除したロビンが姿を現した。彼の口から今の状況を教えて貰おうと思った俺たちだったが、ロビンは少し慌てた口調で俺たちを急かす。

 

「済まねぇ、じっくりと集めた情報を教えてやりてぇところだが時間がねぇ。急がねぇとまずい事になる」

 

「何、どうしたの?」

 

 まさか敵襲かと思った俺に対してロビンは街の中を指差すとこう言った。

 

「……顔見知りが処刑間近だ、急がねぇと殺されちまうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャンヌとオルタが!?」

 

「ああ、どこもかしこもそればっかりさ。聖女が帰って来たってな」

 

「ソロモンに堕とされた二人が、手先となって国を操っているのですね?」

 

「ああ、盛大な一人芝居を行ったみたいだぜ? 何せ配下の化け物どもを存分に使って聖女の帰還を演出したんだからな」

 

 ぼろ布を被り、街中を急いで歩きながら俺たちはロビンの集めた情報を聞いていた。スパルタクスを隠すのには苦労したが、そのルックスのお陰で奴隷のふりをさせて周りからの違和感を感じさせない様にしている。  

 鎖を引き、スパルタクスの主である様に振る舞いながらロビンとマシュと話す俺、ロビンの話を総括するとこうだ。

 

 戦争を続けていたフランスは突如化け物の襲撃にあった。国が滅びるかどうかの瀬戸際まで追いつめられたその時、ソロモンの奇跡で蘇ったと嘯くジャンヌたちが化け物を退治して帰還したのだ。

 

 彼女たちは長く続いた戦争を終わらせ、そのままソロモンの声を神の声と言って神託を行った。ソロモンの制定した法律を掲げ、フランスの一大革命を行ったのである。

 

 その法律の出来は確かで、ソロモンとジャンヌたちは民衆からの絶大な支持を得た。その結果、国は彼女たちの思うがままに動くようになったのだ。

 

「……俺の予想だが、これから先ソロモンはジャンヌたちを利用してフランスを自分の理想の国家へと変えていくぜ、そうなれば歴史が狂うんじゃ無いのか?」

 

「はい。前にもドクターが言っていましたが、フランスは後に続く国の手本となった国家……その法やあり方が変化すれば、当然歴史にも影響があるでしょう」

 

 マシュの言葉に俺は息を飲み込んだ。かつてソロモンは武力をもってこの国を滅ぼそうとしたが、今回は政治的な方法を用いてこの国を手中に収めようとしているのだ。誰もが気が付かない間に、ソロモンはフランスの全てを手に入れようとしている。

 

 俺たちが来なければこの国はソロモンの思うがままになっていたに違いない。そしてそれを誰も疑問に思わないのだ。その巧妙なやり口に俺は身震いをした。

 

「もしも誰かが違和感に気が付いたとしても、ソロモンの言葉を受けたジャンヌたちが様々な手を使って抹殺する。抵抗するものは許さない、国中上げて反逆者扱いさ……あんな風にな」

 

 そう言ってロビンが指差した先を見た俺たちは絶句した。立ち並ぶ民衆たちが見えやすいようになっているそこには絞首刑用の処刑場があり、そこでは今まさに良く見知った人物が刑を執行されようとしていたからだ。

 

「皆、目を覚ますのだ! 何かが……いや、すべてがおかしい事に何故気が付かない!?」

 

 そう叫ぶのは白銀の鎧に身を包んだ騎士、髪は乱れ、目も飛び出さん限りに見開かれたままに大声でこの場に集まった民衆に訴えかけている。

 

 だが、誰もそんな彼の叫びには耳を貸さない。それどころか反逆者として処刑を望む声が上がるばかりだ。

 

「このままではフランスが壊れてしまう! その事に何故気が付かないのだ!? あのジャンヌ・ダルクは本物ではないのだぞ!」

 

 文字通りの必死の叫び、それは、生前のジャンヌたちを知る彼だからこそ言える事だ。

 彼はこの世界の異変に気が付き、戦っていたのだ。自分が敬愛した聖女が愛したこの国を守るために、決死の戦いを続けていたのだ。

 

 彼の名はジル・ド・レェ……聖女に付き従いし誇り高き軍人にして、後の世では稀代の狂人として伝えられる英雄の一人だ。

 

「ジルさん!? なぜ、彼があんな目に……?」

 

「……マスター、わかってると思うがあいつはサーヴァントじゃねぇ、この世界に生きている一人の人間だ」

 

 兄貴の言葉に俺は頷く、このフランスが生まれ故郷である彼がこうして生きていてもなんの不思議もない。今の彼は、清く正しい騎士であった頃の彼なのだろう。

 

 軍人として最高の栄誉である元帥の称号を得た彼が何故処刑されようとしているのか? 今のフランスの状況から察するに間違いなくこの時代の異変に気が付き戦っていたのだろうが、力及ばず捕らえられてしまったのだろう。

 

「とにかく助けないと!」

 

 俺は処刑場に向かって一歩踏み出す。この時代のジルとは面識がないとは言え、彼も仲間であることに間違いないのだ。

 それに、この狂ったフランスを立て直す手がかりを握っているかもしれない。ここで彼を死なせるわけにはいかない。

 

「待て、マスター! ここで目立った真似は出来ねぇぞ!」

 

 だが、慌てて俺の肩を掴んだロビンに行動を阻害された俺は彼を睨んでその手を放すように目で伝えた。しかし、ロビンもまた手に力を込めて俺を放そうとはしない。

 

「無茶だ! 俺たちはせいぜい五人、戦うには戦力が足りなすぎる!」

 

「五人いれば十分だろ!? ただの兵隊なんか蹴散らせば良いじゃないか!」

 

「ただの兵隊ならな、だが、戦っている間にサーヴァントが来ないなんて保証がどこにあるんだ?」

 

 ロビンのその言葉に俺は一瞬言葉に詰まった。確かにその通りだ、フランスを支配しているソロモン側には数多の英霊が居るのだ、ジャンヌたち以外にもこの時代に送り込まれた英霊がいるかもしれない。

 

 もしも戦闘中に敵側のサーヴァントが駆け付けた場合、戦況的には間違いなくこちらが不利になる。向こうには大量のフランス兵たちが付いているからだ。対して俺たちはこの場に居る面子だけ、どうあがいても数の上では不利にしかならない。

 

 加えて、もしもここで無事にジルを助け出せたとしても俺たちがこの時代に来てしまっている事は間違いなくジャンヌたちの耳に届くだろう。情報も戦力も整っていないその状況で俺たちの存在が露見してしまうと言うのは避けたいところだ。

 

「でも! 見捨てる事なんて出来ないよ!」

 

「分かってる、だが不用意に動けばそれだけでお終いだ。まずは冷静に……」

 

 言い争う俺とロビン、だがジルの処刑は待ってはくれない。今にも彼の足元にある板は取り除かれ、その体が吊り上げられそうになっている。

 

 もはや一刻の猶予も無い。無理な突撃でもジルを救う為にやるしかない。俺がそう考えた瞬間だった。

 

「その処刑、待ってもらおうカ!」

 

 どこか聞き覚えのある女性の声が処刑場に響く。声の出所を探って周りを見渡す兵士たち、その中心に黒い影が落下してきた。

 

「ぐあぁっ!」

 

「ぎゃっ!?」

 

 ジルの周囲に居た兵士たちを瞬く間に無力化したその人物、メイド服に身を包んだ尻尾の生えた女性の姿を見た時、俺たちは目を疑った。

 

「……安心しろ、みねうちなのだ。いや、我の爪にみねなんて無いのだがな」

 

「た、タマモキャット!?」

 

 そこに居たのはかつてカルデアで一緒に戦った仲間の一人であるタマモキャットだった。ソロモンに連れ去られたはずの彼女が何故このフランスに居るのだろうか?

 

 彼女はジルの様にフランス生まれの英霊ではない。もっと言うならば人間ですらないのだ。つまり、あの場に居るキャットは間違いなくサーヴァントとして現界しているのだろう。

 

 であるならば……彼女は一体、どうやってソロモンの呪縛から逃れたのか? その答えを探る俺たちだったが、その前にキャットがぴくぴくと耳を動かした後でこちら側を見て来た。

 

「むむっ! この声はご主人! 間違いない、キャットの耳がご主人の声を捉えたぞ!」

 

「きゃ、キャット殿! それよりも先にこの縄を解いて下さい!」

 

「どこだ~? ご主人は何処にいる~?」

 

 周りにぞくぞくと兵隊が集まってきていると言うのにマイペースに俺の事を探し続けてるキャット、この点に関しては流石としか言い様が無い。

 気が付けば広場の至る所で戦闘が始まっていた。それがジルやキャットに味方する軍隊とフランス軍との戦いである事に気が付いた俺たちは隙を見て処刑台へと近寄った。  

 

「キャット! ジル!」

 

「おお! ご主人、やはり来ていたか! ここで出会えるなんて正に地獄で仏、猫にマタタビ、キャットに人参だワン!」

 

「キャット殿、お知り合いと話すのは後にして下さい! 今はこの場から離脱を!」

 

 キャットの活躍で解放されたジルが合図を送ると、広場で戦っていた兵士たちが撤退の構えを取り瞬く間にこの場から去り始めた。俺たちもその後に続いて処刑場から逃げていく。

 

「……ロビン、何やってるの?」

 

「何、ちょっとした置き土産さ。俺がこういうの得意なの知ってるでしょう? エグいのお見舞いしてやるとしますかね!」

 

 俺はちょっとだけ追撃を仕掛けてくるフランス兵たちに同情した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何はともあれ助かりました。改めて礼を言わせてください、カルデアのマスター殿」

 

 そこから一時間ほど必死に撤退した俺たちは、反乱軍の隠れ家がある山の中へと案内されていた。と言うよりも、ついて来たと言う方が正しいのだが

 

 現状、多くは無いものの確かな軍勢を持つジルとサーヴァントであるタマモキャットとは行動を共にした方が良い。俺たちよりも長い間このフランスで活動しているジルならば知っている事も多いだろう。

 

 そしてなにより、キャットが無事だった理由が知りたい。ソロモンの手から逃れることが出来た理由を知れば、他の英霊たちを救える算段が整えられるかもしれないからだ。

 

「マスター殿たちはこのフランスで起きている異変には気が付いているご様子、よろしければ私が更に詳しい話をさせていただきますが……」

 

「いや、それも聞きたいが先に知っとかなきゃいけない事がある」

 

「……アタシの事だな? ご主人」

 

 バーサーカーであるキャットも俺たちの聞きたいことには気が付いていた様だ。野生の勘が冴える彼女ならば当然かもしれない。

 

「聞かせてくれタマモキャット、どうやってソロモンの支配から逃れたんだ?」

 

「う~む……ご主人、その前に残念なお知らせだ」

 

 少し考え込む態度を取ったキャットは来ていた服の裾をペロリと捲った。そして、腹の部分を俺たちに見せる。

 

「……この通り、我はソロモンの支配下にバリバリ置かれているのだな」

 

 そこには、見慣れた黒い淫紋令呪がしっかりと刻まれていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直、アタシが何故ソロモンの傀儡に堕ちなかったのか、はっきりとした理由は分からないのだな」

 

 カルデアとの通信を繋げた状態で俺たちはキャットの話を聞く、彼女はここに至るまでの経緯を話してくれていた。

 

「既にご存知の通り、アタシは他の仲間達と一緒にソロモンの所へと連れていかれた。そこでばっちりと性的な責めも受けたのな」

 

「アンタはその責めに耐えきったって事か?」

 

「う~ん……その辺も曖昧だ。耐えきったと言えばそうなのだろうし、そうじゃないと言われればそうじゃないのだろうとアタシは定義する!」

 

 無駄にきっぱりと言い切りながらも要領の得ない返事をするキャット、そんな俺たちの微妙な視線を受けたからなのか、彼女は自分がソロモンの元でどんな目に遭わされていたのかを説明し始めた。

 

「アタシは幸運だったのだ。なにせソロモンはアタシの事を本気で堕とそうとしていたわけでは無いのだからな!」

 

「本気で堕とそうとしてなかっただって?」

 

「うむ! と言うよりかは侮っていたのだろうな! 何を隠そうアタシはバーサーカー、単純な女だと思われていたらしい。意外と色々考えている事はあるが、それはソロモンだけでなくご主人にも内緒だぞ!」

 

「いや、だから何をされてたんだって?」

 

「……輪姦されてたな。獣たちに。俗に言う獣姦という奴なのだな」

 

 こともなげにハードな事を言うタマモキャット、顔色一つ変えないまま彼女は続ける。

 

「それはもうすごかった。『獣同士存分に愉しむが良い!』とか何とか言われた覚えはあるが、そこから先はズッコンバッコン酒池肉林も驚きの乱痴気騒ぎだ」

 

「ワーウルフにゴブリン、キメラにワイバーンも居たな。全員絶倫の上にアレもデカいときた。もはやがばがばになるまで突っ込まれたな」

 

 軽い感じで話すキャットだったが、その話を聞いた俺はソロモンに対しての怒りを感じざるを得なかった。大切な仲間を化け物の性処理係の様に扱い、あまつさえ壊しても構わないような仕打ちをしていたことに体を震わせる。

 

「……しかしまぁ、そこでソロモンにとって予想外な事が起きた」

 

「え……?」

 

「アタシは最初にこの令呪を刻まれた状態で獣たちの中に放り込まれたわけだが、ソロモンからしてみればアタシが獣たちに犯されている間に快楽に流されると思っていたのだろうな」

 

「えっと……何を言ってるの?」

 

「まぁ、総勢100ほどの獣たちが相手だ、普通はそう考えるのな……でもまぁ、その、なんだ……流石にちょっと恥ずかしいのだが……」

 

 歯切れの悪いキャットの言葉、それを聞いていたマシュはまさかと言った表情で恐る恐るキャットに切り出した。

 

「あの、タマモキャットさん。まさか……相手をしていた獣たち、全員を絞り尽してしまったわけではありません……よね?」

 

「……残念ながらそのまさかなのな。ふと気が付いた時、周りに居た獣たちは皆ちんぽをへにょへにょにさせてぶっ倒れていたのだ」

 

 ナイチンゲールに続く性の化け物、ここに爆誕す、ちょっと引いた目で見ている俺たちに対してキャットは照れた表情を見せた。

 

「いや、そんな目をされると照れるぞご主人! ……あと少し傷つく」

 

「いや、でも、そうでしょ? 性豪すぎない?」

 

「言っておくがナイチンゲールには負けるぞ! あいつは不衛生だからと言う理由で獣の相手はしなかったが、アタシが見る限りは一秒たりとも欠かさず男の相手をしていたぞ!」

 

『……ああ、なるほど。ちょっとわかりました』

 

「あの、婦長はこの会話で何が分かったんですかね?」

 

 呆れ顔のロビンが通信越しに会話に割り込んできたナイチンゲールに対して突っ込む。バーサーカーの相手はしていられないという様に気怠く発せられたその一言だったが、意外にもナイチンゲールはまともな返答をしてきた。

 

『簡単です。なぜ、私がソロモンに対して忠誠心が低い状態だったのかが理解できたのですよ』

 

「……ほう、聞かせて貰おうじゃねぇか」

 

『ええ、恐らくですが……私は、セックスの相手をしていた男たちに満足できなかったのでしょう。だからソロモンへの忠誠心が低かったのです』

 

「……どゆこと?」

 

『あー! なるほどね! そういう事か!』

 

 ?マークを浮かべる俺たちに対してダヴィンチちゃんは納得した様子で頷いている。分かり易い説明を求めて彼女に視線をやった俺たちに対して、ダヴィンチちゃんは丁寧に解説してくれた。

 

『いやさ、マシュたちの記憶を読み取りながらずっと思ってたんだ。なんでソロモンは先に淫紋令呪を刻まなかったんだろう……ってさ』

 

「それ、どういう事……?」

 

『淫紋令呪自体は別に無理矢理刻んでも構わないんだよ。刻めば少なくとも躰の感覚の鋭敏化は行われる。その状態で犯せば篭絡も簡単にいくのに、ソロモンは何故かそれをしない事が多かったんだ』

 

「……言われてみれば、スカサハの時も心を折ってから令呪を刻んでたな」

 

『今のキャットちゃんの話を聞いてて思ったんだけど、淫紋令呪がその効果を完全に発揮するには、刻まれた相手が快楽に飲まれなきゃダメなんだと思うよ。それも心がグズグズに蕩けきるほどの快感ね』

 

 その解説を聞いた俺はやっと意味を理解できた。要は、淫紋令呪を使用するには刻まれた後、もしくは刻まれる前に相手が快楽に身を流されていなければならないらしい。

 

 ただ刻んだだけでは体が敏感になるだけ、その後の令呪として効果を発揮したり、ソロモンに深い忠誠心を植え付けるには性の悦びを叩き込むしかないのだ。

 

『良い例がエリちゃんだよね。令呪を刻んだは良いけど、ソロモンは彼女を一切抱かなかったから忠誠心がまるでなかった。聖杯を持ってカルデアにやって来れるくらいにはね』

 

「ある程度の軽い洗脳は行われるんだろうが、そっから先は自分のテクニック次第ってとこか」

 

『そういう事。ナイチンゲールもタマモキャットも、セックスはしたけど己の色欲を満足させては貰えなかったんだろうね。だから、ソロモンに対しての忠誠心が薄かった』

 

『まぁ、私に関してはソロモンが自分を忘れる様に記憶を改竄したことも影響しているのでしょうが、そうせざるを得なかったほどに扱いにくい女だったのでしょうね』

 

「なにせソロモンの命令を無視して近くにいる男を搾り尽すまで抱くのだからな。ソロモンからしてみれば早く放流したかっただろうな!」

 

 とりあえずナイチンゲールが規格外だと言う事は分かった。それは置いておいて、今の問題はキャットをどうするかだ。

 

「タマモキャットさん、今の話を総括すると、あなたはまだソロモンに完全な忠誠は誓っていない。誰かに抱かれて、獣に犯されていた時以上の快感を得れば私たちの元に戻って来れると言う考え方でよろしいでしょうか?」

 

「無論、よろしいぞ! だが……実際問題、結構危険なのだ」

 

「危険……? 何がだよ?」

 

 兄貴の質問に対してキャットは俺の前まで来るとすんすんと鼻をすすって匂いを嗅いできた。キャットなのに犬みたいな行動をするのはいつもの事だ、ついでにキャラがぶれているのも普段通りの彼女だ。

 そんな行動をしながらキャットは答える。結構危険と称するその問題点の事を

 

「何……今のアタシの頭の中では延々と声が響いているのだな。目の前に居るご主人を殺せ……そう、うるさいぐらいに声が聞こえてくるのだ」

 

「なっ!?」

 

「ああ、安心しろ。その声は獣特有の強烈な本能で抑え込んでいる。しかし、この状況はだいぶ危険なのだ」

 

「アタシが忠誠を誓うとしたら、それはご主人しかいないだろう。この命を懸けて守る主と心に刻んでいるのだからな。獣共で満足できなかった時もすぐにご主人の事を思い出した。きっとご主人ならこの躰の渇きを潤してくれると思ったのだ。だからアタシは逃げられた。ご主人に会いたくて、家出してきたのだ」

 

「こうやってご主人と再会できて我は嬉しい。すぐにでも抱いて欲しい位だ。でもな……もしもご主人が我を満足させることが出来なかったら、アタシは失望でご主人を殺すかもしれないぞ?」

 

「っっ……!?」

 

 キャットの言葉にマシュたちが凍り付く。無邪気で獰猛なその一言にはたっぷりの愛情と殺意が込められていた。

 

「……先輩、ここはクー・フーリンさんかロビンさんに任せましょう。あまりにも危険です」

 

『私もその意見に賛成だ、リスクが高すぎる』

 

 マシュとダヴィンチちゃんがセックスをすることを反対してくる。周りにいる兄貴たちも同じ様に首を振って俺の事を見ていた。

 

 確かにこの賭けはとても危険だ、ついでに分が悪すぎる。

 失敗したら死ぬ危険性がある上に、相手は化け物相手でも満足できない野獣の様な女なのだ。ただの人間である俺が相手をするには厳しすぎるだろう。

 

 しかし……

 

「……俺、やるよ。キャットとセックスする」

 

「先輩!?」

 

 俺の宣言を聞いたマシュが驚きで叫ぶ。何かを言いたそうにしているダヴィンチちゃんを目で制すると、俺は自分の考えを述べた。

 

「タマモキャットは、俺の事を信じて今まで戦ってくれてたんだ。俺ならばソロモンの支配を打ち砕くことが出来るって信じて、苦しい戦いを続けてくれてた……その信頼を裏切って逃げる様な真似をしたら、俺はキャットだけじゃなくて皆のマスターで居る資格なんてないよ」

 

「良く言ったご主人! ぶっちゃけ勧められるがままに逃げていたらその時点でブッ殺す所だったゾ!」

 

 嬉しそうに物騒な言葉を口にするキャットを見たマシュが再び俺に視線で問いかける。止める気は無いですか、と

 その答えは勿論無いだ。どうせいつかは通らねばなら無い道、ならば早い方が良い。

 

 そうとも、仲間を救い出すのならば早い方が良いに決まっているでは無いか

 

「……ではご主人、さっそく始めようか? 失敗すれば死あるのみ。しかし成功すれば忠犬メイドと我の知る限りの情報が手に入るのだな!」

 

「……そんなの関係無いよ。俺はキャットを救いたいだけだ、フランスの事は今は忘れて、目の前の仲間を助けたいって思ってる」

 

 笑いながら試す様な視線を送るタマモキャットの目を見つめ返す。他の皆の不安気な視線を受けながら息を吐く。

 久しぶりの一人きりでの戦い、マシュに続いての取り返すべき相手の顔を見ながら気を落ち着かせる。

 

 前とやる事は変わらない。リスクを負っている所も変わらない。相手が別なだけだ。

 

 バーサーカー、タマモキャット……行動がまるで予想できない彼女を俺たちの元へと取り戻す為の戦いが、始まろうとしていた。

 

 

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