疲労とそれから来る眠気に耐えながら、私はコーヒーを啜った。
砂糖もミルクも何も入っていない真っ黒な苦みが口の中に広がり、ほんの少しだけ眠気が遠ざかる。私は、座っている椅子の背もたれに寄り掛かると仮眠を取るべく目を閉じた。
私はこのカルデアに務めている職員の一人だ。名前を言う必要は無いだろう。モブの職員Aとでも覚えておいてくれれば良い。
そうとも、この地獄の様な状況で生き残った数少ないモブの一人だ。友人も上司も気になっていた女性も、皆襲撃を受けて死んでしまった。そんな中で生き残った幸運で不幸な人間の一人だと覚えておいてくれれば良い。
襲撃を受けた時はもうお終いだと思った。施設も戦力もすべてを失い、更には味方だったサーヴァントもソロモンに奪われてしまったのだからそう思っても仕方が無いだろう。
だが、今は違う。今まで何度も逆境を覆して来た彼の活躍を見て、諦めることを止めた。人類悪であるソロモンと戦うことを固く決心したのだ。
仲間たちの命を奪い、世界を滅ぼそうとするソロモンに対抗することを決めてから、私たちも必死の戦いを続けている。指揮官であるロマニ・アーキマンを始めとして、皆が文字通り不眠不休で働いているのだ。
それでも弱音を吐く者は居な無かった。命を懸けて現場で戦う彼の姿を見ているからだ。
彼は私たちの希望だ。私たちは彼の為に、彼は私たちの為に、そして全員で世界の為に戦い続けている。この危機的状況において心を一つに出来ていることが、私たちに更なる希望をもたらしてくれていた。
「んん……っっ……」
大きく伸びをして全身の筋肉を解す。現在、私は情報管理室で勤務をしている。
情報管理室と言っても、今のカルデアにはあまり必要ないものだ。
別の施設から送られてくるメッセージ等を管理して整理するだけの言わば電話番とでもいうべき仕事なので、このカルデア以外の世界が崩壊した現状ではあまり意味がない。
それなのに何故ここで仕事をしているかと言われれば、単純に仕事の名目の休み時間だと言うだけだ。コーヒーを飲み、仮眠を取って次の仕事に備えるための時間、それがこの情報管理室での仕事の意味だ。
だから私はこのわずかな休息をありがたく受け取ろうとしていた。一時間程の休憩だが、今の状況を考えると十分すぎる贅沢と思える。
―――PiPiPi……
そんな時だった。私の耳にPCの通知音が届いたのは。
最初は聞き間違いだと思った。先ほども言った通り、今の世界はカルデア以外が消滅している。連絡なんて来るはずがない。
だが、念のために目を開いた私は、目の前の画面に一件のメールが確かに届いていることを確認してその目を見開いた。
「これは……!?」
届いたメールには題名は無かった。空白の文面の中に添付ファイルを見つけ出した私は、それを展開しながら送り主を確認する。
今までに送られて来たメールのアドレスを確認した私は、このアドレスがつい最近使われていたものだということに気が付いた。
人理が崩壊してから送られて来たメッセージ……そんな物、一つしか無い。カルデアが崩壊してすぐに送られて来たあの悪夢の様なビデオメッセージ、女英霊たちの堕ちた姿を記録したあれだけだ。
つまりこれはソロモンからのビデオレターと言うことになる。そのことに気が付いた時、私の背中には冷や汗が流れていた。
一体、奴は何を送って来たのだろうか? 何を思い、何のためにこんな真似をしているのだろうか?
そんな疑問を浮かべた私の目の前で、展開が終わった映像ファイルの再生が始まる。私は、固唾を飲んで映像が映りだした画面を見つめていた。
映像に映ったのは真っ暗な部屋だった。長いポールの様なものが設置された高めの台が一つだけあるその部屋が、何かの舞台である事にはすぐに気が付いた。
そして、私はそこに一人の女性の人影があることも見て取っていた。部屋が暗いせいで輪郭しかわからないが、女性の物であることは間違いないだろう。
その人物が誰であるかを確認すべく映像を注視している私の目の前で、部屋に明かりが灯される。
ピンクと紫のなんとも淫靡なスポットライトに照らされて姿を現した女性の姿を見た時、私は息を呑んだ。
豊満でありながら子供の様な幼い顔立ちをしたその女性は何も身に着けておらず、褐色の肌と豊かな肢体を曝け出している。
ペロリと舌なめずりをし、淫らな雰囲気を醸し出すその女性の名はマタ・ハリ……かつての仲間であり、襲撃の際にソロモンの手に捕らえられてしまった英霊の一人だ。
彼女の下腹部にはあの憎むべき淫紋令呪が刻まれている。マタ・ハリもまたソロモンに凌辱され、彼の奴隷に堕ちてしまったのだ。
それを悟った私の胸に悲しみと怒りの感情が半分ずつ生まれた。彼女は比較的現代に近い英霊であり、正常な思考を持つサーヴァントでもあった。母性的な性格も相まって、気にかけて貰う事も少なくなかった。
「あんまり無理しないでね。大変なのはわかるけど、倒れたら元も子も無いわよ」
そんな風に何度彼女に優しい言葉をかけてもらっただろうか? 戦闘能力が低い故に戦いの場に出ることが少ない彼女は、それでも腐らずにカルデア内部の面倒を見てくれていたのだ。
母性的であり、お茶目である彼女にときめいたこともあった。男女の関係になりたいと思ったわけではないが、彼女の優しさに何度も心を慰められたことは確かだ。
そんな彼女が全裸で舞台に立ち、淫らな姿を晒している事に私はショックを隠せなかった。
生前の彼女がそういったことを仕事としていたことは知っていたが、伝聞で聞く事と直接見る事では大違いだ。
「ふ、ふふ……ふふふふふふ……♡」
マタ・ハリが今まで聞いたことの無い笑い声を響かせた事を合図に音楽が流れだす。どこか扇情的な音楽に合わせて、彼女が淫らな舞を披露し始める。
ポールに体を寄せ、舌でそれを舐める。まるで男の肉棒に舌を這わせている様な光景は、私の興奮を煽った。
「ふふ……れろぉ、じゅろぉ……♡」
マタ・ハリは涎を垂らし、下品な音を立ててポールへのフェラチオを続ける。銀色の棒が彼女の唾液でねっとりと濡れ、スポットライトの光を反射する。
そうして舌での淫らな行為を終えた彼女は、次に腕をポールに絡ませるとくるくると回り始めた。
360度全ての方向に全裸を見せつけながらゆっくりと回り始める。
やがてポールの周りを一周した彼女は、カメラに向けていやらしく尻を振り始めた。
左右に可愛らしく尻を動かしたかと思えば、次にはまるで男の肉棒を受け入れているかの様な上下運動を始める。男の劣情を煽る方法を知っている彼女の動きから私は目が離せなくなっていた。
「ふっ、ふぅっ……♡ あはははは……♡」
縦に横に、そして円運動を描く様に丸く……小麦色の尻が跳ね、淫らに動き回る光景は私の興奮を引き出していった。
尻を振ることを止めたマタ・ハリは、今度はカメラ側に体を向けて後ろ手にポールを掴む。そして、足を下品にがに股に広げるとかくかくと腰を動かし始めた。
「あはっ♡ あはぁっ♡ うふふふふ……♡」
先ほどよりも激しく腰を上下させるマタ・ハリ。これは完全に男との性行を演出しているのだろう。彼女の股座からは興奮故の飛沫が飛び散り、ステージの上を濡らしていく。
私はその光景を見て心を痛めながらもなんとも言えない興奮を感じていた。
あのマタ・ハリが、優しくて母性的な彼女が、こんなにも乱れている姿を晒している光景に抗い様の無い興奮を感じる。
「んっ♡ あぁっ♡ あはぁぁぁぁっっ♡♡♡」
カメラの前のマタ・ハリが体を仰け反らせ、大声を上げて股から愛液を噴き出す。
彼女が絶頂したのだと私が気が付いた時、彼女はカメラの目の前にまで来ていた。
「ふふふ……♡ 久しぶりねぇ、マスター……♡ どう? 私のステージは楽しんでくれた? ソロモン様がわざわざ演出と踊りを考えて、こんな機会を下さったのよ♡ た~っぷり、楽しんでくれたわよね?」
可愛らしくも悪魔の様な冷たい笑みを浮かべるマタ・ハリが彼に対する言葉を口にする。どうやらこの映像は彼に見せつけるための物のようだ。
最初に送られて来たあの映像と同じく、彼の心を責める為の堕落した英霊を見せつけるソロモンの所業に怒りを感じながら、私は彼女の言葉を聞き続ける。
「残念ねぇ、私がカルデアに居た時に頼んでくれれば、マスターの童貞ちんぽを卒業させてあげたのに……♡ でも、もう無理よ」
マタ・ハリが四つん這いになり、自分の尻を掴む。尻を左右に引っ張り、カメラに女性器とアナルを広げて見せながら話し続ける。
「もう、私の穴ぼこはソロモン様の物なの♡ 使い古したビッチまんこだけど、ソロモン様に精一杯ご奉仕する為に使わせて貰う事にしたわ♡ だからぁ、もうマスターとセックスは出来ないのよ♡」
ぶしゅう、と音を立てて彼女の性器から潮が噴き出す。自分がソロモンの物になったことを嬉々として告げるマタ・ハリの姿を、私は茫然と見ていた。
「まあ、ソロモン様のご好意でこうやって私のエッチなステージを見せてあげるから、せいぜいそれでおちんぽシコってなさい。一生味わえない私のまんこの感触を想像しながら、必死こいてオナニーしてなさい!」
嘲る様なマタ・ハリの言葉。それに興奮を感じてしまっていることに軽くショックを受ける。
あの温かな笑みを見せてくれていた彼女が冷たく私を笑っているという事に傷つきながら、私は今まで感じたことの無い興奮にこの身を震わせていた。
「……それじゃあ、これでお終いよ。最後に私のとっても下品な姿を見せてあげるわね……♡」
マタ・ハリはそう言うと用を足す様な格好を取った。和式便所に跨る格好になった彼女を映すカメラは二台に増え、彼女を前後から撮影している。
「ふぅんんんんっ……♡♡♡」
思いっきり気張り、顔を真っ赤にするマタ・ハリの顔を撮影するカメラは、同時に彼女の下腹部で黒く光る淫紋令呪も映し出していた。
どんよりと鈍く光り、禍々しい印象を与えるそれは彼女の行おうとしていることを手助けしている様で、令呪が輝く度に彼女の腹がグルグルと鳴っていることが聞き取れた。
―――ぷっ♡ ぷすぅっ♡ ぷぅぅぅ~~っ♡
「あはっ♡ どう、私のおならは? 下品でしょ♡ 素敵でしょ♡ とっても興奮するでしょう♡ 変態でふにゃちんのあなたにはぴったりの代物よねっ♡ ……でも、これがメインじゃないのよ」
尻穴から放たれる屁で下品な音楽を奏で、尻を僅かに動かして淫らな舞を行う。
マタ・ハリのその淫乱めいた姿に心を奪われた私は、彼女の言葉と相まって絶大な興奮を感じていた。
「ああっ♡ 見てっ♡ 見なさいっ♡ 私の恥ずかしい姿見て、おちんぽシコシコしちゃえば良いのよっ♡ ソロモン様の命令に逆らえない下品な女に興奮しちゃいなさいっ、この腐れちんぽマスター♡♡♡」
もこりと彼女の肛門が広がる。予想はしていた。だが、本当に彼女がそんな行いをすると信じられなかった私が居た。
その思いは見事に裏切られた。女性として、人間としての最大限に恥ずべき姿である排泄行為の一部始終をカメラの前で曝け出す彼女から目が離せない私は、自分がとんでもない変態であったということを初めて理解した。
羞恥に染まりながらも恍惚とした笑みを浮かべるマタ・ハリが美しい。今の彼女は、かつてカルデアに在籍していた時よりも輝いて見えた。
汗を流し、スポットライトに照らされて輝く体は淫らながらも神々しく思えるほどの輝きを放っていた。あの体を抱きしめたいと思いながら、私はゴクリと喉を鳴らす。
そしてカメラに映る女性の象徴は濡れそぼり、男根を受け入れる為の場所としてのアピールを絶えずに行っていた。見るだけで私の肉棒は滾り、すぐにでも彼女にこの劣情をぶちまけたくなる。
それが叶わないことはわかっている。
かつての仲間が奪われ、敵によって痴態を晒されているという背徳的な快感が私を興奮させ、病みつきにしているのだ。
「んあぁ……♡ うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡ あぁっ♡ んほあぁぁぁぁぁぁっっ♡」
カメラの前で雄叫びを上げながら、マタ・ハリが
大きな音を響かせ、人間としての尊厳を打ち捨てながら、マタ・ハリはソロモンの命令に従ってこの行為を行っている。主に従う下僕としての自分を受け入れてしまっている彼女に対して、私は劣情と興奮の感情を爆発させていた。
カメラは排泄を終えたマタ・ハリの顔を映し出しながらフェードアウトしていく。
涙と涎でぐちゃぐちゃになり、白目を剥いて豚の様に喘ぐ彼女の姿をたっぷりと見せつけた後……映像は途絶え、ビデオの再生は終わったのであった。
(れ、冷静になれ……。冷静になるんだ……)
ビデオを見終わった後、私は暫く放心状態であったが、その状態から何とか復帰して冷静さを取り戻すと考え事を始めた。
考えている内容は一つ、このビデオをどうするかだ。このビデオは、指揮官であるロマニ・アーキマンやマスターである彼に見せるべきであろうか?
少し考えた後で私が出した結論は、
普通に考えて、これを他の誰かに見せたとしても何の利益も無いだろう。精神的な動揺を引き起こすだけだ。
ここから得られる情報も少ないだろうし、マスターである彼が堕ちたマタ・ハリの姿を見て傷つかないわけが無い。彼の為にもこれは秘匿しておく方が良いだろう。
だが、勝手に消去するわけにもいかない。これは一応残しておかなければならないものだということはわかっている。
とくれば……これは、適切な方法で秘密裏に確保しておくべき記録ということになる。そう結論付けた私は、PCを操作して今の映像を別フォルダに変換した。
そしてそれを別のPCへと移動させる。移動先は勿論、私の個人的なPC機材だ。
マタ・ハリの痴態と堕ちた姿を記録した映像を移動させながら、私は体が熱くなっていることを感じていた。彼女の淫らな姿を記録した秘密の映像が、私だけの物として残せることに興奮が隠せないでいる。
「セキュリティを確認しておかないとな……」
念には念を、今晩はPCのセキュリティをチェックしてから眠ろう。彼女の秘密の映像を流出させるわけにはいかないからだ。
そう決心した私は、あと少しだけになった休憩の間に体力を回復させるべく眠りに就いた。
今夜は眠るまで時間がかかりそうだ。そう考えながら、私は先ほどの映像を脳内で再生させて身をよじらせるほどの興奮を得て、心臓を高鳴らせたのであった。