※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

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戦いの始まり (マシュ)

 廃墟の中で俺は目覚めた。

 その廃墟がほんの少し前まで自分たちが暮らし、作戦の拠点としていた場所……カルデアだったことを思い出したのは少し後だった。

 

 俺たちは人理焼却を防ぐ為に戦い続けてきた。いくつもの時代を巡り、その時代を修正し、世界に異変をもたらしてきた聖杯を回収するのが俺の……俺たちの目的だった。

 

 「サーヴァント」と呼ばれる仲間たちと戦いを続け、あともう少しですべてが終わると思われたその時、異変はやって来た。

 

 空に輝く光の輪、それがカルデアの上空に現れ、そこから次々と敵が襲い掛かって来たのだ。

 それを行ったのは世界の崩壊を目論む黒幕、グランドキャスター「ソロモン」だった。

 

 俺たちは必死に戦った。全力をもって抵抗し、敵を打ち破ろうとした。

 だが、戦力差は圧倒的だった。ほどなくしてカルデアは破壊され、英霊たちも次々に捕らえられ、消滅していった。

 

 残されたのは廃墟と化したこの建物と一握りの人間だけ……俺たちは、敗北したのだ。

 

「良かった! 生きていたんだね!」

 

 つい先ほど起こった事を思い返していた俺の肩を誰かがつかむ。振り返ってみればそこにいたのは、ボロボロになったDr.ロマンだった。

 

「良かった……君が無事で本当に……本当に良かった……!」

 

 涙を流しながら俺の事を抱きしめるロマンを見ながら俺もまたこの愛すべき上司が無事なことを喜んだ。しかし、状況は最悪に近い。

 

「ドクター、現在の状況は? 皆は無事なのか?」

 

「……最悪だよ。本当に最悪だ。君が生きていたのが唯一の朗報だと言えるくらいにね」

 

 聞き覚えのある女性の声に顔を上げれば、そこにいたのはロマンと共にカルデアの技術面を支えていた英霊、「レオナルド・ダ・ヴィンチ」ちゃんだ。

 しかし、その体は実体をとどめていない。いつも通信の時に見る青い立体映像の様な姿で俺たちの前に立っている。

 

「私もあいつらにやられてこの様さ。連れていかれる前に自害して、もしもの時のためのバックアップデータを用意していたからこうやって君たちの前にいるが……私はもう、君たちと一緒に戦えそうはないよ」

 

「ダヴィンチちゃん……」

 

「カルデアの職員はほぼ全滅、施設としての機能も8割停止、極めつけは英霊もほぼ残っていない……完膚なきまでに敗れたね」

 

 自嘲気味に笑うダヴィンチちゃんと悔しそうに震えるロマン、俺もまた致命的な損害を受けたカルデアを見る。

 

「……聖杯は?」

 

「奪われたよ。もう私たちにはほとんど何も残っていない」

 

「……なら、また奪い返すだけだ!」

 

 俺はダヴィンチちゃんに対して噛みつく様にして言い返す。今まで何回も世界の危機を救ってきた。一回敗れたからと言って二度と立ち上がれない訳じゃない。

 もう一度やり直すのだ、ソロモンを倒すその時まで

 

 しかし、悲しそうに俯いたダヴィンチちゃんは本当に残念そうな声で無情な宣告をした。

 

「……無理だ。もう、戦う戦力は無い」

 

「なんで!? みんながやられてしまったとしてもまた召喚すればいい! 召喚システムが壊れているならそれを修理して……」

 

「違うんだよ……皆、いないんだ。英霊の座に、誰も居ないんだよ……」

 

「え……?」

 

「皆ソロモンに連れていかれてそのままなんだ、殺されていないから再度召喚することも出来ない。戦力の補充は出来ないんだよ……」

 

「そんな……」

 

 それは、俺たちに戦う術がないという事を示していた。ただの魔術師がサーヴァントに勝てるはずがない。

 全力と言って良い程の力で当たった戦いで敗れたと言うのに、戦う方法が無いまま再度挑んでも勝てるはずが無い。

 

 絶望が俺たちを包んだ、そしてそれに追い打ちをかける出来事がこの後すぐに起きることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……やぁ、カルデアの諸君。気分はどうかね?』

 

 カルデアのモニタールーム、運よく生き残っていた大型画面に映し出されたのは、カルデアに壊滅的被害を与えた張本人「ソロモン」だった。

 

「つい先ほど受信したメッセージだ」

 

 ロマンが俺に向かって呟く、一体ソロモンは何を考えているのだろうか?敗北した俺たちを嘲笑うためにこんな映像を送り込んでいるのだろうか?

 再びロマンが映像を再生すると、愉快そうに笑うソロモンは口を開く。

 

『君たちは我々に敗北した。それはもうわかっているだろう。完膚なきまで敗れ去り、君たちは戦う術を持たない』

 

「くっ……!」

 

 悔しさに体を震わせながら画面越しにソロモンを睨む。そんなことをしても意味がないのは分かっていたが、そうでもしないと気が狂いそうだった。

 

『……だが、君たちがこんなことで諦める者たちでは無いことも私は知っている。故に私は完璧を持って君たちを叩き潰そう。君たちの元に居た英霊たちはほぼ全て私の手に落ちた。英霊の座に戻ってないことはすでに知っているかと思うが……では、彼らは今どうしていると思う?』

 

「……どうしている、だと?」

 

 愉快そうな笑みを強めたソロモンは自分の右腕を見せる。そこには腕全体を覆いつくすほどの令呪が刻まれていた。

 

「あれは……!?」

 

 ダヴィンチちゃんが驚愕の声を上げる。びっしりとソロモンの腕を覆いつくす令呪は俺の右手に刻まれているそれとは少し違う。色が黒く、どこか禍々しく思える。

 

『怨嗟の声を上げて俺を睨んでいると思うか? お前たちを信じて屈辱に耐えていると思うか? ……違うなぁ!』

 

 ソロモンが指を鳴らすと、ゆっくりと画面が引いて行った。今までソロモンの顔だけを映していた画面がその背景を映し出すと……俺たちは驚きで息を飲んだ。

 

「み……んな……?」

 

 ソロモンの背後には彼を囲む様にして女性たちが並んでいる。そこに居るのは共に戦った英霊たちだ、彼女たちは皆薄ら笑いを浮かべて頬を紅潮させている。

 何より俺を驚かせたのは、彼女たちが誰一人残らず裸であることだった。魅力的な肢体を隠す事無く直立する彼女たちの下腹部には皆同じ模様が刻まれている。

 

 ハートマークを禍々しくした様なその模様、まるで令呪の様なそれを大事そうにさする者までいる。今まで一緒に戦ってきた仲間たちの淫らで異様なこの姿に言葉を失っている俺たちに対して、ソロモンは解説を始めた。

 

『君たちからしてみればこの映像が届いたのは襲撃を受けてすぐの事だろうが……こちらでは既に3カ月の時が経っている。それまでに君の仲間たちはすべて陥落させて貰ったよ』

 

ソロモンが手を挙げれば彼女たちは恭しく跪き忠誠の証を見せる。その光景に軽い眩暈を覚えた俺の耳にはソロモンの嘲笑う声が聞こえてきていた。

 

『洗脳、催眠、魔術……あらゆる手を使って君の仲間達には私を新たなマスターだと認めさせて貰ったよ。ここに居ない面々もそうだ。まぁ、彼女たちを見せたのは新たな私の魔術を君たちに見せたいからなんだがね』

 

 そう言いながらソロモンは自分の右腕に刻まれた令呪を見せびらかす。

 そして、自分の新たな発明であるその令呪の説明を始めた。

 

『彼女たちの下腹部……ちょうど子宮の部分に刻まれた模様には気が付いただろう? あれは令呪を改造して作り上げた新たな魔術、『淫紋令呪』だ。これを刻まれた女性は常に昂ぶり……マスターに絶対の忠誠を誓う様になるのさ! ……下種な事をと思うかね? だが、彼女たちは自らこの淫紋令呪を刻むことを選んだのだよ。英霊としての自分をかなぐり捨て、淫らで浅ましい雌として私に使えることを選んだ……そうだろう? お前たち』

 

『はい、その通りです。我々はソロモン様に目覚めさせて頂きました』

 

『どれほど英雄と祀り上げられても所詮は女……我らは皆、快楽には逆らえない淫らな雌なのです』

 

『その事を知らしめて頂いたソロモン様には、絶対の忠誠を誓います』

 

『鍛え上げた力も磨き上げた知も、この淫らな躰もすべてソロモン様に捧げます。戦いの駒として、慰み者として好きにお扱い下さい』

 

『我々はソロモン様の忠実な犬でございます』

 

「嘘だ……こんなの嘘だ……」

 

 ロマンの言葉ももっともだ、俺も信じられない。だが、奴ならこれをやりかねない。いや、実際にして見せたのだろう。

 グランドキャスター「ソロモン」……奴は、俺の仲間だった女性英霊をすべて自らの駒として、そして性奴隷としてみせたのだ。

 

 俺たちに絶望を与えたソロモンは高笑いをすると、自分の目の前に跪く女性の頭に手を乗せる。ソロモンの股間に顔を埋めて必死に奉仕するその女性の後姿を見たとき、俺たちは更なる絶望を感じた。

 

『……君たちの始末には君たちのかつての仲間を送ろう。しかし、さすがの私といえど何度もあれだけの軍勢を送るのは疲れるのでな。一人だけ……この女だけを君たちの始末に向かわせよう』

 

 その言葉と共にその女性が立ち上がるとこちらを向く、薄紫の髪、白い肌、豊満な躰……可憐な姿のその女性の顔を見たとき、俺の口からは自然の言葉が漏れていた。

 

「マシュ……っ!」

 

『先輩、ドクター、お久しぶりです……お二人からすれば、さほど時間は経っていないのでしょうが……』

 

 蕩けた顔で俺たちに挨拶をするその女性は、俺を先輩と呼び慕ってくれた最も古くからの仲間……マシュ・キリエライトだった。

 彼女もまた下腹部に淫紋令呪を刻まれている。ソロモンはマシュの豊かな胸を鷲掴みにするとまるで子犬を躾ける様にして話しかける。

 

『誰が言葉を発して良いと言った?主の命令がわからんのか?』

 

『あっ……♡ 申し訳ありません、マスター……♡』

 

 ぐにゅぐにゅと形を変える様にして揉みしだかれる胸から快楽を得るマシュは甘い声で囁く。

 彼女は椅子に座るソロモンの上へ跨ると、先ほどまで自分が咥えていた怒張に向かってゆっくりと腰を下ろしていった。

 

『あっ……♡ あーっ♡』

 

 ずぷり、と音がした気がした。深く深くマシュの膣へと怒張を突き入れると、ソロモンは令呪を見せびらかしながらマシュに命じる。

 

『マシュ・キリエライトに令呪をもって命じる。私が話を終えるまで腰を振り続けろ、そして決して達するな』

 

『あ、あぁ……あぁぁぁぁぁぁっ♡』

 

 その命令を聞いたマシュの腰が勢い良く動き始める。何度も何度も自分の尻肉をソロモンの腰へと打ち付けて快感を発するマシュの動きは一切止まるところを知らない。

 涎と涙、そして快感によって歪んだマシュの顔は淫卑さに満ちている。あの誠実で真面目な普段の彼女からはとても想像できない表情だ。

 

「ま、マシュ……」

 

 ロマンが呆然とした様子で呟く、怒るべきか、悲しむべきか、絶望するべきか……その全てを混じり合わせ、そして無気力となった声色が彼の口から溢れ出た。

 俺もそれは同じだった。幾つもの戦いを共に潜り抜けた相棒が今、敵に跨り腰を振っている。自ら体を差し出して屈服した彼女の姿など、見たくは無かった。

 

『ククク……我が奴隷が失礼をしたな、話を元に戻そう。さて、先ほども言った通り、ほどなくして君たちの元に一人のサーヴァントを送り込ませて貰う。シールダー、マシュ・キリエライト……君たちの最後を看取るのに最適な者だろう?』

 

『ひあぁぁぁっ♡ あぁっ、あぁぁぁっ♡』

 

 俺たちはその映像の何に注目すれば良いのか分からなかった。俺たちに自分の打つ次の一手を話すソロモンを見れば良いのか、それともそのソロモンに跨って腰を振り続けるマシュを見れば良いのか判断が出来なかった。

 

『あぁっ♡ すごいっ♡ きもちいいのにぃ……イケ…ないぃ……っ♡』

 

『……何度言ったらわかる? この雌犬め……主の話の邪魔をするでない』

 

『もうし……わけ、ありません、マスター……♡ でも、達せないのが、辛くってぇ……ひあぁっ!?』

 

 胸を鷲掴みにされ、一気に最奥まで怒張を突き入れられたマシュが甲高い悲鳴を上げて仰け反る。がくんと体から力が抜け、力無く項垂れながらもマシュの腰はその動きを止めないでいた。

 先ほどの令呪を使った命令がそうさせているのだろう。淫らな水音を立てながらマシュの膣に出入りするソロモンの男性器を、俺たちは悪夢でも見るかのように見つめていた。

 

『あ、あぁ……♡』

 

『……これでうるさい犬は黙ったな。話を長引かせて済まない、もうじきに終わる。……君たちがこの映像を見終わってから一時間後、私はカルデアへとマシュを送ろう。そして、彼女の手によって生き残った君たちの命は終わりを迎える……どうだ? 最高に悲劇的な結末だろう?』

 

「ぐっ……ソロモンっ!」

 

『さぁ、マシュ……お前の手でかつての同胞を殺してこい。そうすれば、お前にかけた令呪での暗示を解いてやる。待ち望んだ絶頂と快楽を何度でも味わえるぞ……!』

 

『ふっ、くぅ……♡ それは本当ですか、マスター……?』

 

『ああ、本当だとも……さぁ、この映像を見ているかつての仲間たちに最後の挨拶をするんだ、良いな?』

 

『はい……わかりました、マスター……♡』

 

 そう言ったマシュは蕩けた様な焦点の合わない目で俺たちを見る。熱に浮かされ、快楽以外の何もかもが頭から消えたであろう彼女は、幸せそうな顔をしながら口を開く。

 

『先輩……ドクター……カルデアの皆さん……私は、マスターの言いつけ通り皆さんを殺します……人理の修復も、自らの使命も投げ捨てて、私自身の快楽のために……マスターに抱いて貰うために皆さんを殺めます。どうか、私たちのために死んで下さい……では、また後で……』

 

「っっ! マシュっ!」

 

 我慢しきれず叫んだ俺を置いて、映像は途切れる。画面には徐々に減っていく時間の数値が映し出された。

 それが、カルデアにマシュがやってくるまでの……俺たちの命のタイムリミットだと言う事など、言われなくても分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! 畜生っ!」

 

 俺は目の前のコンソールを何度も叩いて苛立ちを紛らわせようとする。しかし、この気分が晴れる事は無かった。

 

 俺を先輩と呼び慕ってくれた後輩が、何度も危機を乗り越えてきた相棒が、誰よりも愛らしく美しい少女、マシュ・キリエライトが……敵の手に堕ち、その心と体を完全に掌握されてしまったのだ。

 いや、マシュだけではない。今まで一緒に戦ってきた仲間たちはすべて、誰一人として例外無くソロモンの傀儡に堕ちてしまったのだ……その事実は、俺を打ちのめすのには十分だった。

 

「……どうするロマン? 何か手はあるかい?」

 

「……正直、何もないと言う他ないよ。でも、諦める訳にはいかない。何とかしてこの危機を乗り越えないと……!」

 

「ドクターの言うとおりだ……! 俺たちがここで諦めたら、世界も皆もソロモンの手に落ちたままになってしまう。何とかして奴の鼻を明かしてやるんだ!」

 

「……私も諦めるつもりは無いよ。でも、戦力差は歴然だ。向こうは山ほどいる英霊たちを自由に操れる。対してこっちは手負いの科学者たちと平々凡々なマスター、おまけのサーヴァントは映像で戦えないときている……本当、絶望的だよね」

 

 ダヴィンチちゃんの考察は間違っていない。普通に考えれば俺たちが勝てる要素など一つもないのだ。

 だが、それでも諦める気にはなれない。あのソロモンの思うとおりになんてなってやるものか。

 俺が、そこまで考えた時だった。

 

「……いるぜ、こっちにもサーヴァントならよ」

 

 モニタールームに響く男の声、はっとした俺たちが部屋の入り口を見ると、そこには3人の男の姿があった。

 

「ようマスター、お互いしぶとく生き残っちまったな!」

 

「クー・フーリン! 生きてたんだ!」

 

「あたぼうよ! 生き残ることに関しては俺の右に出る奴はいねぇっての!」

 

 快活に笑う青い髪の男、アイルランドの光の御子・クーフーリンはそう言いながら俺の肩を叩く。体もボロボロで傷が幾つも出来ているというのに、彼の手は力強い。

 姿は違えど一番最初の特異点からの付き合いである彼が生き残ってくれていたことは俺にとってかなりの励ましとなった。しかも、彼は世界の3本指に入るであろう槍兵だ。戦いにおいても大きな力になってくれるだろう。

 

「……逃げ隠れが得意ってのも考え物だな。おかげでこんな絶望的状況に放り込まれちまった」

 

「でも、そのおかげでまた一緒に戦える。そうでしょ? ロビン」

 

「ま、俺もソロモンの奴に使われるよりかはましだと思うけどねぇ」

 

 そういいながら手をひらひらと振る緑の弓兵、ロビンフッドは口ぶりに反して嬉しそうだ。

 彼はいつもこうだ、一匹狼を気取りながらも仲間の事を人一倍大切に思っている。そんな彼が、敵の奴隷と化した仲間たちを見て何も思わないはずはないだろう。

 生前、たった一人で王の軍勢と戦った彼の力はこの状況では頼りになるはずだ。

 

「お前も生きててくれたんだな、スパルタクス」

 

「おおマスター! この絶望的状況をひっくり返す事こそ叛逆。我が力を存分に振るわせて貰おう!」

 

 笑みを絶やさぬ灰色の巨人、スパルタクスはそう言いながら俺を抱きしめる。意思の疎通が出来ないはずのバーサーカーとして召喚された彼は支配するもの……彼の言葉を借りれば圧制者を嫌う。

 ソロモンは彼を生き残らせた事を後悔するだろう。なにせ、スパルタクスは最強の反逆者なのだから……。

 

「驚きだな、あの攻撃の中でも生きていられるとはね」

 

「まぁ、運が良かったってのもあるんだろうけどよ。だがしかし、最悪の状況だなおい」

 

「まさか女英霊たちが全員寝取られるなんてねえ」

 

「……師匠もメイヴも、あのいけすかねぇ魔術王に侍らされてるってか。かーっ、腹が立つやら恐ろしいやらだな」

 

 ロビンもクー・フーリンも口調は軽いが事態の深刻さは分かっている様だ。後ろでニコニコ笑いながら武器を振っているスパルタクスはわからないが。

 

「マシュの嬢ちゃんの襲撃はしのげるとしても問題はその後だ。奴さん、一気に俺たちを攻め滅ぼしにくるぜ」

 

「アドバンテージは俺たち三人が生きてるって事を向こうは知らないって事だ、それがバレたら向こうは4人以上の英霊を送ってくるだろうな」

 

「つまり、僕たちは向こうに3人の存在をばれない様にして戦っていかなきゃいけないって事かい?」

 

「いや、それは難しいと思うよ。ソロモンも馬鹿じゃない、サーヴァントがいないはずのカルデアが何回も襲撃をしのいだとなれば何かあると思うだろうさ。遅かれ早かれ君たちの存在は露見するだろう」

 

「……俺たちがすべきなのは『こちらに戦力があると相手側に知られる前にできる限りの戦う用意をしておくこと』って事か」

 

「はは、つってもこっちの召喚システムは役に立たない。戦力の補強なんて出来っこないって事だよな?」

 

 ロビンのその一言に皆が押し黙る。確かにその通りだ、英霊の座に誰も居ないと言うのならこちらの戦力の補充なんて絶望的だ。

 だが、それは新たな戦力を補充しようとした場合に限る。元あった戦力を取り戻すというのなら……この限りじゃない

 

「……奪い返すんだ、皆を」

 

「え?」

 

「奪われた皆を奪い返すんだよ! 皆が戻ってくればまたソロモンと戦えるはずだろ?」

 

「……マスター、気持ちはわかるがそれは無理ってもんじゃ……」

 

「……いや、待てよ。それだよ、その手があった!」

 

 諦めた様なロビンの声を遮ってダヴィンチちゃんが叫ぶ。そして、モニターに映し出されているタイムリミットを見ながら何やらぶつぶつとつぶやき始めた。

 

「……向こうはマシュを一人だけしか送らないと言った。という事は、一回だけなら何か奇策を持ってマシュを取り戻したと思われなくもないだろう。十分に勝算はある」

 

「あの、ダヴィンチちゃん?」

 

「皆、喜べ! 策が思い浮かんだよ! あとは皆に刻まれてたあの令呪さえ何とかなれば……」

 

「……あの~、それなら俺が役に立つかもしれないぜ~?」

 

「へ?」

 

「ここだよここ~!」

 

 何処からか聞こえる男の声、しかし、声の主の姿は見えない。姿を消しているのかと思ったが、自らの居場所を示す様に大声を出したその声の主は俺たちの目の前のテーブルにちょこんと現れた。

 

「オリオン!?」

 

「やっと気が付いて貰えたよ……アルテミスは連れてかれちまったけど、俺は見逃されたというか、気が付かれなかったというか…」

 

「は、離れて平気なの?」

 

「大丈夫って事は大丈夫なんじゃねぇの? てか、それよりもこれを見てみろよ」

 

 そう言って自分の小さな体を指し示したオリオンを見れば、そこには先ほどの映像に映っていた皆と同じ紋様が刻まれているではないか。

 

「な、なんで!?」

 

「……そうか、アルテミスに刻まれたその令呪が君の体にも表れたって事か。これならサンプルとして研究できそうだよ!」

 

「え? 俺なんかの実験台になんの? 嫌なんだけど……」

 

「我慢しろオリオン! お前が我慢すれば全員助かる道が見えるんだからよ!」

 

「……まぁ、どの道そうするつもりだったけどよ。俺もアルテミスを奪われたまんまじゃあ、格好がつかねぇだろ? やれることはやるさ」

 

 いつも通り緊張感のないオリオンがそう呟くと、ロマンの手の上にぴょこんと飛び乗った。彼もまた、この戦いに勝つために自分のできることをやろうとしているのだろう。

 

「……マシュを一人で送り込むというのは向こうの失策だ。私たちはそこを突いてマシュを奪い返す。そして、一人、また一人と仲間を取り返すんだ」

 

「よっしゃ! 反抗作戦の始まりだな! 向こうでうちの女どもを抱いていい気になってる魔術王に一泡吹かせてやろうじゃねぇの!」

 

「はいはい、またどうせしんどい戦いになるんでしょ?  ……ま、あいつらを放っておいたら目覚めが悪いのは確かだわな」

 

「圧制者よ! 我が抱擁を受けるが良い!」

 

「ああ、やれることをやろう。僕達はまだ生きているんだからね!」

 

 拠点は破壊された。仲間は奪われ、相手の奴隷へと化した。戦力の差は歴然、負ける可能性の方が圧倒的に高い。

 それでも、この場にいる全員の心は折れていない。わずかな可能性にすべてをかけて、もう一度立ち上がって見せる、皆そう思っている。

 

「……やろう。取り戻すんだ、皆を!」

 

 俺の言葉に皆が力強く頷く。絶対に取り戻して見せる。奪われた仲間を……!

 その為の第一歩、タイムリミットと同時にやってくる襲撃者の事を思い、俺は固く誓った。

 

(マシュ……絶対にお前を元に戻して見せるからな!)

 

 誰よりも大切な相棒の事を思いながら、この日、俺たちは小さな反逆の狼煙を上げたのであった。

 

 

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