「……ちったあマシな顔になったな、小僧」
屋敷の中で一番広い部屋に入った俺を見た土方さんは、ニヤリと笑いながら開口一番にそう告げて来た。
その笑みには俺の横に居るマシュと俺との関係を推察した結果も含まれていたりして、彼の揶揄うような視線に俺たちは同じように顔を赤らめてしまった。
「まあ、座れ。今はお前が頭を冷やしたことが分かれば十分だ」
「は、はい」
土方さんに促された俺はマシュと隣り合った席に座る。上座に座る土方さんはこの場に居る全員が自分に注目していることを確認すると、おもむろに口を開いた。
「……お前の所の斥候が沖田達の隠れ家を見つけた。準備が整い次第突入し、奴らを討ち取る!」
「えっ!? それって本当!?」
「本当ですよ。まあ、驚くのも無理ないでしょうけどねぇ」
驚きの声を上げた俺に対し、ロビンが涼しい顔で土方さんの言葉を肯定する。頼りになるサーヴァントに信頼の眼差しを送れば、照れ屋の彼はフードを深めに被って黙ってしまった。
「……それで、敵の本拠地ってどこなの? この町の中にはそれっぽいものは無かったと思うんだけど……」
「……地下だ。地下にある洞窟を改造して、アリの巣みたいな隠れ家を作ってやがったんだよ。そりゃわからねえわけだ」
「ち、地下ぁっ!? な、なに? アタシたち、地下にある牢獄みたいな所に行くの? ちょ、ちょっと気が向かないんだけど……」
「はいはい、気持ちは分かるけど我慢してくれよ~。なんせ今回の作戦の肝はお嬢なんだからな」
「え? アタシ!? アタシになにやらせるつもりなの?! 怖いの嫌なんだけど!」
「そう難しいことはやらせねえよ。お嬢はいつも通りにやってくれりゃあ大丈夫だ」
「うわ、なんか不安……」
真面目な話から何故か漫才の様なやり取りを繰り広げるロビンとエリちゃんを見ながら、俺は地下にある秘密基地の有用性について考えを巡らせていた。
確かに地下ならばスペースは無限だ。どんなに広く作っても、地上に影響を出さない限りは見つかる可能性は低い。
加えて地上への出入り口を巧妙に、かつ多く作れば地上への進攻も容易だろう。少数の部隊で隠れるにはうってつけの場所なわけだ。
「……だが、隠れ家ってのは一度場所が露見すると途端に脆くなるもんだ。逃げ隠れの手段は考えてあるんだろうが、捕虜を奪い返すことくらいは出来るだろう」
「そうですね。問題は敵の本拠地の内部構造がわからない事ですけど……」
「敵の戦力が多くない以上、そこは大丈夫だ。サーヴァント4人を同程度の人数で抑えたとして、お前の護衛をしながら内部を探索する余裕はある。問題は、その組み分けだ」
「……そこが俺の役目、ってことですね?」
俺の問いかけを受けた土方さんが大きく頷く。どうやら、作戦の最終的な動きは俺が決めることになっているらしい。
「……冷静になった頭でしっかり考えろ。お前の作戦一つで助かる奴らの数が決まる。全員助けたきゃ、死ぬ気で知恵を絞りやがれ!」
「言われなくてもそうしますよ!」
叫ぶ様に俺に言葉をかけた土方さんに同じ様に叫び声を返す。俺の威勢のいい返事に満足したのか、土方さんはもう一度ニヤリと笑うと手元に置いてあったものを投げ寄越して来た。
「おら、受け取れ。んで、作戦の時にはそれを羽織ってろ」
「え? これって……」
俺は今、自分に渡された物をまじまじと見つめる。
テレビの時代劇や漫画で何度も見た浅葱色の羽織。新選組の隊服であるそれを見つめる俺に土方さんが険しい視線を向けながら語り掛ける。
「ここがローマだろうが、時代が違おうが関係ない。俺が戦う以上、それは新選組の戦いだ! ……俺と共に戦うなら、お前もその覚悟を俺に見せてみろ!」
「……うっす!」
敬礼の構えを取り、渡された羽織を身に纏う。パリッとした新品の羽織に袖を通せば、なんだか身も心も引き締まる気分になった。
「……人員の振り分けは決まったか? まだなら本拠地に向かいながら考えろ! 今は一秒が惜しい!」
「とっくに終わってますよ! 振り分けに関しては、動きながら説明します!」
俺の返事を聞いた土方さんが立ち上がる。それに続いて俺たちも腰を上げ、戦いに出る準備を整える。
すべての支度が終わったことを確認した後、土方さんは目を見開いて屯所中に響くような大声で叫んだ。
「新選組……出るぞ!!!」
「……あ、う……あぅぅ……」
「……そろそろこれも限界ですかね? お役御免、って所でしょうか?」
「そうですねえ……。そろそろ、苗床としての役目も果たせなくなって来た頃でしょうしねぇ」
「では、殺してソロモン様の所に送り返しましょう。そして、
「あ、あ……! い、やだぁ……! やめてくれぇ……っ!」
「はいはい、黙りなさいね。どんな形であれ、ソロモン様のお役に立てることを喜ぶべきでしょうに、このなえど……便器は、我儘を言って……!」
「やだぁ……! そんなの嫌だぁ……!」
激しい凌辱による種付けからの出産までをほんの数時間でこなしたモードレッドは、体力の残っていない体で必死になってもがいて自分を取り囲むサーヴァントたちに抵抗をして見せた。しかし、彼女のそんな抵抗などまるで意味をなさず、すぐに頼光に体を踏みつけられて身動きを封じられてしまう。
この後に自分を待つ運命を予見したモードレッドは、恐怖に震え歯をカチカチと鳴らしながら無様な命乞いを始めた。
「助けて……! オレ、頑張って苗床になるから! だから殺さないでくれよ! 便所になんかなりたくねえよ!」
モードレッドは知っていた。一見苗床として酷い扱いを受けている様に見える自分だが、それよりも下の階級が存在していることを……。
女英霊に与えられる役目の中で最も底辺に属する地位、それが便所だ。便女、肉便器、クズなど、様々な呼び方が存在しているが、役目は一律で同じである。
便所の役目、それは
基本的に便所の役目を与えられるのは、
「助けて……助けてぇ……!」
モードレッドは涙を流しながら懇願を続けた。死ぬほど苦しい凌辱や出産の痛みも、便所になる事に比べたら遥かにましだ。便所には、一切の自由も与えられないのだから。
誰かが望めば、意味のない出産をすることになる。獣や魔獣ならまだ良い。実験材料として子宮を使われ、生き物とも形容しがたい未知の生物を産むことだってあり得るのだから。
便所になった英霊が五体満足で居られることなど決してありえない。せいぜい、死んだ後の再召喚時のほんの一時間位のものだ。それも男たちの興味が薄れればなくなってしまう。
五体満足で、出産後にはしっかりと休養を与えて貰え、魔力供給もある程度は行われる苗床は、便所に比べれば天国の様な物なのだ。
「うふふ……! ダメに決まっているでしょう? あなたには、もう何も出来ないのですからね……!」
「あ、あぁ……! そん、なぁ……っ!?」
だが、モードレッドの懇願を笑いながら切り捨てた頼光は、彼女の体を踏む力を強めてぐりぐりとモードレッドをその心ごと踏み躙った。
体の痛みと心の絶望に打ちひしがれる彼女に対し、頼光はモードレッドが辿るであろう残酷な未来を予言する。
「苗床として進化を遂げたあなたには、もう戦う力は無い……こんなにも体が柔らかく、そして弱くなってしまったのです。苗床になれないのなら、せめて殿方にこの身を捧げるしかないではありませんか」
「嫌だ! 嫌だっ! オレは、便所になんか……あひぃっ!?」
「……この痴れ者めっ! ソロモン様のお役に立つことを拒否するなど、なんと罪深いことを……! 今までの功績を踏まえて楽に殺して差し上げようと思っていましたが……あなたには、徹底的な仕置きが必要の様ですね!」
「ひっ!」
鬼の様な殺気を放つ頼光に圧されたモードレッドは短い悲鳴を上げて体を縮こませた。そんな彼女を二体の牛男がホールドし、体を持ち上げる。
牛男によって脚を開かされ、性器を露出させたモードレッドに対し、頼光は愛刀の切っ先と鋭い視線を向けた。
「な、なにを……!?」
「……今からあなたの性器にこの刀を突き刺し、子宮を貫いて差し上げましょう。その上で我が雷によって体を内部から焼き焦がされる痛みを感じなさい!」
「ひ、あ……? そんなぁっ!? そんなの、嫌だぁぁぁっ!!!」
「お黙りなさい! 己の愚かさを恥じる良い機会です! 存分に苦しんでお逝きなさい!」
頼光が雷を放つ刀を構える。彼女が刀を突きだせば、残虐な処刑がすぐに執行されるだろう。
泣きじゃくり、必死に暴れながら、モードレッドは助けを求めた。刀が突き刺さればすべて終わりだ。自分はもう、苗床以下の便器に成り下がるしかなくなってしまう。
誇りも尊厳もなにも無かった。ただひたすらに終わらない凌辱を受けることが怖かった。喉が裂けても構わないと言わんばかりに泣き叫ぶモードレッドは、必死になって助けを呼び続ける。
「嫌だぁぁっ! 死にたくない! 便所になんかなりたくないっ! 父上ぇ……誰か……誰か助けてくれよぉぉっっ!!」
騎士としての風格など微塵も感じさせないその姿、無様にもほどがある懇願を続けながら、モードレッドは手足をじたばたと動かして暴れる。もはや彼女には拘束を振り払う力などなかったが、それでも暴れ回る彼女の動きに対して頼光が顔をしかめさせたのは確かだ。
ほんの数十秒、それがモードレッドの稼げた時間であった。ほどなくして本気を出した雄牛たちの手で押さえつけられた彼女は、今度こそ頼光の手で処刑されようとしていた。
「あ、あぁ……! たす、け……」
「ふふふ……! 最後の最後に良い見世物が見れました。では、お別れですね」
頼光はモードレッドの無様な抵抗を嗤った。そして、この後彼女が辿るであろうより無様な運命を想い、黒い微笑みを浮かべる。
しかし……頼光は、モードレッドの稼いだそのほんの数十秒が彼女の運命を分けたことをこのすぐ後に知る事になる。
―――ズガァァァァンッ!!!
「っっ!? な、何事ですか!?」
「落盤……? いえ、この洞穴はそんな柔な作りはしていません。ならば……」
「敵襲!!!」
自身たちの隠れ家に響いた大きな物音から非常事態を悟った三人の行動は素早かった。音のした方向に向けて駆け出し、瞬時に戦いへと思考を切り替える。
彼女たちが去った後の部屋には、雄牛に拘束されるモードレッドだけが残っていた。優先事項から自分の処刑が滑り落ちたことを幸運に思う彼女だったが、体力の尽きた体を雄牛たちに組み伏せられたことに表情を強張らせた。
「や、やめっ……」
「ブモォォォォッ!!!」
どうやら彼らは興奮している様だ。このままモードレッドを犯すつもりらしい。
凌辱と出産で疲れ果てた体を彼らに蹂躙されてはそれこそ死にかねない。しかし、もはやモードレッドには雄牛たちに抗う力は残っていなかった。
「くっ、そぉ……! なんで、こんなに弱く……!?」
一頭目の雄牛に組み伏せられ、何の抵抗も出来ない事に涙が溢れる。また苦しい輪姦が始まるのだと覚悟を決めた彼女の頬に生暖かいものが飛び散った。
「え……?」
頬についた鉄の錆の様な臭いを放つ液体。それが血であると気が付いたモードレッドの体にかかる圧力が弱くなる。自分のどさりと圧し掛かって来た雄牛の体からは、生気が消えていた。
「ゴ、オ……?」
「ひっ……!」
続けて二頭目の雄牛が静かな断末魔の声を上げた。頭部が潰れ、グロテスクな姿に変わったモードレッドもまた小さな悲鳴を上げる。
一体何が起きているのか? そのことを理解できないでいた彼女の上に圧し掛かっていた雄牛の体が浮き上がった。そして、その雄牛を持ち上げている灰色の巨人の姿を見て、驚きに目を見開いた。
「おまえ、は……?」
「おお、哀れなる奴隷よ。解放の時は来たれり! その鎖を引き千切り、真の自由の元へと邁進するのだ!」
見覚えのあるその男の口から放たれたのは、やはり聞き覚えのある彼の声と台詞であった。
自分を助けてくれたスパルタクスの姿に驚くモードレッドだったが、上機嫌に笑う彼の体の陰から出て来た人物の姿を見て更に驚きの表情を見せる。
「ま、マスター!? なんでここに……?」
「何でって、勿論助けに来たんだよ。モードレッドが捕まってただなんて知らなかったけど、運が良かった!」
「助けに……? オレのことを……?」
「……ごめん、モードレッド。今は時間が無いんだ。出来れば教えて欲しいことがある」
全裸の汚れた姿をマスターに見られていることを恥じるモードレッドだったが、そんな彼の真剣な眼差しを受けて一度その恥の感情を押し殺すことに決めた。そして、彼の問いかけをじっと待つ。
やがて口を開いた彼は、モードレッドが知っているある情報を求めて来た。
「……あの旗がある場所を知りたい。知っていたら、教えてくれないか?」
「……ここだぜ、マスター」
「ありがとう、モードレッド」
疲れ果てたモードレッドに肩を貸し、彼女の導かれるままに移動したマスターは、あの旗が刺さった神腕のある部屋に辿り着いた。
部屋の中心に鎮座する神腕に険しい視線を送るマスターの横顔を見たモードレッドは今の自分の状況を思い、立場が逆転している事に悔しさを滲ませる。
「……悪い、マスター。オレ、サーヴァントなのにこんな有様で……」
「そんなことを気にする必要は無いよ。謝るなら俺の方さ、未熟な指揮のせいで皆をこんな目に遭わせてしまったんだからね」
苦し気に、しかし強い決意を見せながらそう言った彼の横顔を見たモードレッドは、こんな状況でも意思を貫ける彼の強さに素直に尊敬の思いを抱く。しかし、すぐにその思いは暗い感情に塗り潰された。
(……もしかして、こうならざるを得なかったのかもな。オレたちのせいで……)
絶対的絶望の状況の中、心を折れぬ様にする為に強くなるしかなかった。こうやって真っ直ぐな眼差しで前を見る彼の今の姿は、自分たちが弱かったが故に出来上がったものだ。
そのことに気が付いたモードレッドは悔しさを感じ、同時に彼の瞳の中にはもう自分の姿は無いのではないかと不安になる。使い魔であるというのに逆に支えられている立場になった彼女は、唇を噛みしめてその悔しさに耐えた。
「……スパルタクス、皆が時間を稼いでいる間に仕事を済ませよう。お願い出来るかな」
「了解した、マスター。再び圧制者に苦しめられる少女を解放しようではないか!」
マスターの指示に従ったスパルタクスは部屋の中央に鎮座する神腕目掛けて大股で近づくと、それを無遠慮に真っ二つに引き裂いた。再生しようともがくそれを更に掴み、次々と分解していく。
スパルタクスの剛腕によって哀れな肉片となって行く神腕。その中からは、人の肌と思われる薄い肌色の物体が見え隠れしていた。
「ぬぅんっ!!!」
今、スパルタクスが気合の叫びと共に最後の神腕を引き裂いた。残っていた肉片がすべて消え、神腕の中に隠されていた女性が姿を現す。
土方歳三の予想通り、下半身の二つの穴に太い旗の柄を挿入された状態になっているその女性の姿を見た時、モードレッドとマスターは不快感と怒りに顔をしかめた。
「あいつ、は……」
モードレッドはただ茫然と呟きを発することしか出来なかった。スパルタクスの手で旗を引き抜かれた彼女の体は、彼に軽々と持ち運ばれてしまうほどに軽く小さい。いや……幼いと言った方が正しいだろう。
銀色の髪と白い肌、まだ子供としか思えない未発達な体付き……その特徴を併せ持つ新参者のことを思い浮かべた瞬間、モードレッドの隣に居たマスターの雰囲気が変わった。
「あ、の……外道め……っっ!!!」
ひしひしと伝わるマスターの怒り、普段の穏やかで優しい彼の雰囲気とはまるで別人の様なその姿に驚愕を隠せないモードレッドだったが、彼のその感情は痛いほどに理解できた。
道具としての扱いを受けた彼女は幼かった。文字通り、生まれたばかりの存在だった。まだ子供だった。そんな彼女をも利用し、体と心を踏み躙るソロモンに対して、怒りの感情を持たない方がおかしいだろう。
淫紋令呪が刻まれていなければ自分もまた怒り狂っていたかもしれない……そんな考えを浮かべたモードレッドと共に一歩前に踏み出したマスターは、スパルタクスの腕の中で空ろな瞳をしている少女へと声をかける。
「……もう、大丈夫だから……! もう、君を辛い目に遭わせたりなんかしないから……!」
「……ぁ」
幼い彼女の双眸がマスターを映す。信じられないと言った表情を浮かべた彼女は、それが現実なのかどうかはっきりと理解しないまま、いつもの呼び方で彼のことを呼んだ。
「トナ、カイ……さん……? 本物、ですか……?」
「ああ、そうだよ……! 君を助けに来たんだ。こんな悪夢から、君を連れ出しに来たんだよ、リリィ……!」
「ぁ……ぅ……ぁぁ……」
優しく、そして力強い彼の声を耳にした幼き聖女……ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは、じわりと大きな瞳から涙を零した。大好きな彼が自分を助けに来てくれたことを心の底から喜ぶ彼女であったが、その安心感が仇となり緊張感が途切れたのか、瞳を閉じると気を失ってしまった。
「っっ!? リリィ!!?」
「……安心せよ、マスター。少女の命の鼓動は確かにある。ただ気を失ったに過ぎない」
「そっか……! よし、これで作戦目標は達成した。急いで脱出しよう!」
「あ、ああ……。でもマスター、そんなに急いでどうしたんだ? 気持ちは分かるが、他の奴らと合流してからの方が安全……」
「あ~……そうも言ってられないんだよ。あんまりのんびりしてると、地獄のコンサートが始まるからさ……」
「へ……?」
一体彼は何を言っているのか? 彼の口にした言葉の意味が理解出来ないでいたモードレッドだったが、その数拍後に痛いほどその意味を理解することになる。
―――Ahhhhhh……!!!
「どわぁぁっ!? な、なんだよこの声はぁっ!?」
「だから言ったでしょ? 地獄のコンサートだって! 逃げ場無し、反響性抜群のステージで繰り広げられるエリちゃんのワンマンライブだよ!」
「な、なるほど……! そりゃあ地獄に違いねぇ!」
狭く深い洞窟の中にこだまするエリザベートの声は、正真正銘の兵器と言っても過言では無いだろう。鼓膜が破れそうになっているし、ガンガンと頭を揺らされるような痛みも感じる。しかもある程度離れた位置に居る自分がこうなのだ、至近距離で彼女と戦う沖田たちはどれほどの被害を受けているのだろうか?
計り知れぬそのダメージ量を推察しようとしたモードレッドは、大きな身震いと共にそれを止めた。考えるだけで苦しいし、そもそもこんな場所でゆっくりと考え事などしたくない。
「脱出しよう。俺たちが倒れないうちにね。その後は本拠地で別動隊と合流だ!」
「お、おう! 付いて行くぜ、マスター!」
善は急げ、逃げるが勝ち……そんな言葉を思い浮かべながらマスターに支えられたモードレッドは、スパルタクスとジャンヌリリィと共に彼らが侵入して来た抜け道から脱出を果たしたのであった。
「……こちら突入班、目的は無事に達成した。今、そっちに向かってる」
「了解しました。本拠地で合流するまで、どうか油断しないでくださいね」
「分かってるよ、マシュ」
令呪を介した通信で報告を交わした後、マシュは小さく息を吐いた。
戦いは無事に作戦通りに行われ、大きな問題も無く終了した。捕らえられていた苗床と神腕の中のサーヴァントを救い出すことにも成功し、上々な成果である。
それに加え、マシュたちはもう一つ大きな戦果を得ていた。ちらりと横目でその戦果を見たマシュは、汚れた体をした彼女のことを不憫に思う。
「……っぅ……」
「すいません、牛若丸さん。こんな手荒な真似はしたくないのですが……」
縛られ、体の自由を奪われた牛若丸は、気を失った状態で呻いている。一度消滅した影響か、十分に霊基が育っていなかった彼女が単独で突出したことは、本当に幸いだったとしか言い様が無い。
そのおかげで牛若丸を捕縛することが出来た。モードレッドとジャンヌリリィを加えれば、この戦いで一気に三人もの女英霊を奪い返した事になる。
だが……これで戦いが終わった訳では無いことはマシュにもわかっていた。この後、彼女たちに刻まれた淫紋令呪の支配権をソロモンから移さねばならないし、まだ沖田たちも敵として残っている。
解決すべき問題は山ほどある。油断出来ない状況であることは十分に理解している。しかし、ほんの少しくらいはこの勝利を喜んでも構わないだろうか?
もう一度短く息を吐いたマシュは、月と星が浮かぶ夜空を眺めて僅かに微笑む。
今の自分たちの状況はこの夜空の様だ。暗く、いつ終わるか分からない闇の時間だが、それでも確かな希望の光は存在している。
その光を逃さず、必ず掴んで見せる……そう決意したマシュは、一際大きな光を放つ星に愛する人の姿を重ね、再び微笑みを浮かべたのであった。
次もエロ無いよ! でもその次はあるよ! お相手はみんな大好きな彼女だよ!
全裸待機で待っててね!