「あのじゃじゃ馬は上手く手懐けられたみたいだな」
「手懐けられたって……そう言う言い方、好きじゃないです」
「なら好きに言えば良い。重要なのは、あの女が前を向ける様になったってことだ……沖田みたいにな」
夜、土方の部屋で彼から軍略を教えられながらの会話に渋い表情を見せるマスターは、それでも心の中で土方に感謝した。彼の助言が無ければ、モードレッドを救うことは出来なかったと思っているからだ。
土方がマスターに教えているのは剣術や戦略だけではない。人の上に立つ者としての心構えこそが、彼が重点を置いている点であった。
(人の心を掴め、か……)
かつてアルトリアに言われた言葉を思い出しながら、マスターはサーヴァントもまた心がある人間なのだと言う事を思い出していた。彼女たちにだって望む物があり、欲している物があるのだ。
それを探り出し、与えてやるのが心の掴み方だとアルトリアは言った……今、自分はそれをモードレッドたちに対して実践しているのだ。
「……あのじゃじゃ馬娘みたいな手合いには、下手な小細工は必要ねえ。心の奥底では誰かに認めて欲しい、信じて欲しいって思いが燻ってる様な奴だ。なら、それをしてやるだけで良い」
そう助言を受けたマスターは、土方の言う事に従ってモードレッドへの信頼の気持ちを伝えた。
アルトリアの手助けも借りつつ行われた夜伽は十分な効果を発揮し、彼女を淫紋令呪の呪縛から解き放つことに成功した。まさに上々の成果だ。
戦力が増えたとは言えないが、仲間を救い出すことが出来た。そのことを素直に喜ぶマスターを観察する土方もまた、彼への評価を心の中で呟く。
(予想以上だな。思ったよりもお人好しで、沖田みたいな奴らの扱いにも慣れているらしい。上に立つには向いてないが、
目の前の青年には長として必要な冷酷さや非情さが足りていない。だが、代わりに温かさや優しさ、そして無償の愛を注げる器の大きさがある。
誰かに崇められる様な王には向いていないだろう。しかし、皆の中心になって集団を率いる頭目としてはこの上なく優秀だ。
優しさから来る甘えは汚れ役が担えば良い。この男の為ならば進んでその役目を引き受ける人間など、探さずとも居るはずだ。
(近藤さん……この坊主、少しだけあんたに似てるよ……)
思い返すのは自分が担いだ男の姿。優しく、堂々とした、自分の憧れた男の事。
この青年には自分が憧れた男の面影がある。無数の志士たちがその背を追った男が持っていた物をこの男も持っている。
なればその才覚を花開かせるのは自分の役目だ。かつて新選組と言う組織を作り上げた男として、この男を一人前の漢に育て上げる。それが、自分の妹分を救って貰った恩を返す自分なりの方法だ。
「……さて、次行くか。今度は……あの嬢ちゃんだな。そろそろ頃合いのはずだ」
「リリィの事ですよね? 確かに、俺に対する警戒の気持ちが弱くなってる感じはします」
この数日間、マスターはモードレッドに集中して行動していたわけでは無い。ジャンヌや牛若丸も含めたメンバーを解放するために必要な行動を取り続けていたのだ。
それは片手間で女性の相手をしているようだが、決してそうではない。牛若丸、ジャンヌリリィ、モードレッドの三人を癒すために時間を費やし、その間にも土方の教えを受け続ける。夜は夜でゆっくり休む事も無く講義を受け、体力の限界を超える勢いで毎日を送っているのだ。
しかし、そんな日々を送りながらもマスターは弱音を吐くことも不満を口にすることも無かった。彼の中にあるのは仲間を救いたいと言う気持ちだけであり、その為ならばこんな苦労など屁でも無いのだ。
そのことも素直に評価しながら、土方は彼にジャンヌリリィを救うタイミングの判断を委ねる。彼女の人となりを良く知る彼の方が、実行のタイミングを計りやすいと思っているからだ。
しかし……自分の考えが正しければ、今夜がそのベストなタイミングのはずだ。その判断は正しかったようで、マスターも座学の本を閉じて立ち上がり、部屋を出て行こうとしている。
「じゃあ、行ってきます。残りはまた明日お願いしますね」
「……おう」
襖を閉めて部屋から出て行ったマスターの影を見送りながら、土方は誰にも気づかれない僅かな微笑みを浮かべる。
その胸中にあるのは頼もしく育つ弟分の成長を喜ぶ気持ちなのか、はたまた戦力が増える事に対する感情なのか。それを知る人物もまた、土方しか居ないのであった。
「トナカイ、さん……」
ほう、と息を吐くのと同時に口にした愛しい人の名前。優しい彼の笑顔を思い浮かべながら、ジャンヌリリィは布団の中に潜り込んだ。
ここ数日、頑張る彼の姿を毎日見ている。自分に気を遣いながら、それでも変わらず接しようとしてくれる彼の優しさに確かな温もりを感じている。
そんな彼の姿を見る度、リリィの中にあった恐怖の気持ちが薄れていくことがわかった。しかし、根本にある男性への恐怖が消えないでいるのだ。
だが……その恐怖の感情も、予想外の位置から崩れている。布団に潜り込んだリリィは、その中で聞き耳を立てて静かな闇の中へと意識を集中させた。
(……今日は何も聞こえません……今日は、誰もトナカイさんと、その……)
そこから先の言葉に恥ずかしさを感じたリリィは顔を赤らめる。しかし、頭の中ではばっちりと想像が繰り広げられていた。
ここに来てから毎晩ずっと、屋敷の中から女性の喘ぐ声が聞こえているのだ。最初は恥ずかしさで耳を塞いでいたリリィだったが、好奇心に勝てずにこっそりとその声に聴き耳を立ててしまった。そこで聞いたのは、自分が知るのとは全く違う、幸せそうな女性の声だったのだ。
ソロモンの城の中に居た頃、ジャンヌが耳にしていたのは苦悶に満ちた女性の声であった。助けてくれだとか、止めて欲しいだとか、そう言う苦し気な声が聞こえてくる度、リリィは耳を塞いでしまいたくなる恐怖に押し潰されそうになった。
そして、その声が狂った様な喘ぎ声に変わる度、またソロモンや男、もしくは雄の手で女性の心がへし折られたのだと理解し、感じている恐怖を更に強めた。心と体を蹂躙され、自分の知る英霊が奴隷に堕ちた姿を想像する度に涙が溢れた。
リリィにとってセックスとは恐怖の象徴であり、女性の誇りを砕き、慰み者や奴隷にする為の恐ろしい儀式であった。そしてその思いは、自分がソロモンに辱められたことでますます強くなった。
未開発な自分の膣とアナルに太い肉棒を叩き込まれて処女を奪われた後、それよりももっと太い旗の柄を突き入れられて拘束された。一連の行為には快感など全く無く、ただ痛いことであったと言う思いしか無い。
「役に立たない貴様を有効活用してやるのだ、涙を流して喜ぶが良い!」
ソロモンは自分にそう言った。その言葉通りにリリィは涙を流していたが、それは彼の役に立てる喜びの涙などでは無く、痛みや悲しみ、そして絶望に彩られた涙であった。
暗い神腕の中で身動き一つ出来ず、ただ痛む二つの穴を抉られる毎日。それが終わるまで、どれほどの時間が過ぎたかなど彼女が分かるはずも無い。
ただ、その長い時間は彼女の心を壊すのに十分な物であったことは確かだ。現にリリィは、大好きなマスターの事すらも恐れる程に男性に恐怖心を抱くことになってしまった。
本当は彼と話がしたい。自分を助けてくれたことを感謝して、お喋りして、抱きしめて貰って……もっと傍に居たい。もっと触れ合いたい。もっと愛し合いたいのだ。
だが、それが出来ない。男の人が怖いと、セックスが怖いと思ってしまっている自分には出来るはずが無い。そう、思い込んでいた。
しかし、思ったよりも早く転機は訪れた。それこそが、毎晩聞こえる女性の喘ぎ声だ。
(あんな幸せそうな声、初めて聞きました……。うっとりしてて、聞いてるこっちまでふわふわして気分になる声……あれってやっぱり、トナカイさんに抱かれて……)
自分がこの屋敷で耳にした喘ぎ声の一つ一つを思い返す度、体がかあっと熱くなることを感じた。口から漏れる吐息も、甘くて熱いものに変わる。
マシュが、沖田が、モードレッドが……自分の聞いたことの無い声で喘ぎ、愛を叫んでいた。愛していると、もっと抱きしめて欲しいと、彼に強請る声を幾度と無く聞いた。
控えめで大人しいマシュが、敵として堕ち切っていた沖田が、絶望に泣きじゃくっていたモードレッドが、ソロモンの元では響かせなかった嬌声を口にし、マスターに抱かれている……その姿を想像する度に、リリィの体は熱く火照って彼の熱を求めた。
「トナ、カイ、さん……♡ マスター……♡」
彼はどんな風に自分に触るのだろうか? 優しく、幸せな一時は、彼に抱かれれば過ごせるのだろうか?彼は、自分に本当の女の幸せを教えてくれるのだろうか?
そんな思いを心の中で浮かべるリリィの手が、己の秘所に伸びる。薄い下着をずらし、まだ幼いその部分を指でなぞり、自分で自分を慰め始めた。
「はっ♡ はぁっ♡ はぁぁ……♡」
乱暴に犯され、旗の柄を突き刺されたことで少しグロテスクになってしまったそこを指で弄る。甘い痺れと共に快感が生まれるが、同時にソロモンに与えられた恐怖も思い出してしまう。
空いている手で乳首を弄り、布団の中で身をくねらせながら自慰行為を続けるリリィ。甘い声を漏らしながら、指の動きを速めていく。
「はぅ……♡ は、くぅ……♡」
くちゅくちゅと言う水音が響き始め、リリィは恥ずかしさを感じながらも指を動かし続けた。
生まれる恐怖を快感で誤魔化そうとしているかの様にその動きが徐々に激しくなる。
「あ、い、イク……♡ いっ、くぅ……っっ♡♡♡」
最後の瞬間、びくんと体を跳ね上げたリリィは、布団の中で大きく仰け反って体を硬直させた。
浅い絶頂に荒く呼吸を繰り返しながら、リリィは薄く目を開いて愛しい彼の笑顔を想う。
「トナカイさん……♡ トナカイさん……♡」
彼に触れられたらこれよりもっと気持ち良いのだろうか? 自分がいつも耳にしているあの喘ぎ声を、自分も漏らすことになるのだろうか?
期待の様であり、恐怖の様でもある感情を浮かべたリリィはそのまま眠りに就こうとした。絶頂の余韻を全身で感じながら、微睡に身を委ねようとする。
「……何やってんのよ、アンタってやつは」
「え……!?」
だが、そんな彼女の耳に呆れの感情を持つ声が聞こえて来た。驚いて目を開けた彼女は、被っていた布団を剥ぎ取られてほぼ全裸の姿を外界に晒してしまう。
「ひゃぁぁぁぁっっ!?」
「はっ! 一人でちゅくちゅくオナニーだなんて、本当に根暗な小娘だこと!」
「いや……その言葉、自分にも向けられてるってわかってます?」
恥ずかしさに叫んだリリィが見たのは、布団の両脇に立つ成長した二人の自分の姿だった。
片やリリィを馬鹿にした様子で、片やその行動がブーメランであると呆れ顔で指摘しながらリリィに視線を注いでいる。
「にゃ、にゃんでっ? どうしてですか!?」
「な~に、この部屋から何やらあま~い声が聞こえて来たから様子を見に来たって訳よ。でもまあ、まさかあんたが一人で寂しくオナニーしてるなんて思いもしなかったわ!」
オルタから嘲笑を受けたリリィは自分の失敗を恥じた。この部屋で自分が他の女性の上げる嬌声を耳に出来た様に、自分の声だって他の部屋に聞こえる可能性は十分にあったのだ。
「う、うぅ……」
「ああもう、オルタ! そんな意地悪をしに来たわけじゃないでしょう? リリィが可哀想ですよ!」
「ああ、そうだったわね……。それじゃあ、オナニー娘にもっと気持ち良い事を教えてあげましょうか」
「へっ!?」
俯き、恥ずかしがって肩を震わせていたリリィがその言葉に驚いて顔を上げると、そこにはキスできるほどにまで近づいたジャンヌたちの顔があった。
ジャンヌは真剣に、オルタは意地の悪そうな笑みを浮かべたまま自分を見つめている。二人の謎の威圧感に圧倒されるリリィが、交互に姉たちの顔を見比べていると……
「……あんた、こう言うことするの初めてじゃないでしょ? このところ毎日、布団に粘っこい染みが出来てたもんね? ……毎晩毎晩、この布団の中でオナニーしてたってわけでしょ?」
「う、うぅぅ……」
「ああ、リリィ! 別に怒っているわけでも、責めている訳でも無いんですよ? 私たちはただ、あなたが性に興味を持ってくれたことが嬉しいだけなんです! 凌辱と恐怖の思い出を乗り越えてそう言うことに興味を持つと言う事は、あなたが強くなった証ですからね!」
「くくく……! そうそう、あんたがむっつりスケベだって分かって、私たちも安心してるところなのよ」
「オルタ! だからあなたの発言は全部ブーメランなんですって!」
「も、もう良いです! 出てって下さい! 意地悪をする二人なんか嫌いです!」
引っぺがされた布団を掴み、もう一度その中に包まったリリィは大声でそう叫んだ。
自慰行為を覗かれた上にこんな辱めを受ければ、誰だって怒るし悲しむだろう。まして、彼女は子供なのだ。色々と多感な時期にこんな仕打ちを受けたとあってはトラウマになりかねない。
知らんぷりを決め込もうとしたリリィは、耳を塞いで布団の中で丸まっていた。しかし、次のオルタの言葉で布団の中から飛び出すことになる。
「良いの~? あんたの大好きなトナカイさんも来てるんですけど~?」
「え……? ええっ!?」
オルタの一言に驚いたリリィは被っていた布団を吹き飛ばして立ち上がった。どうかこの言葉が成長した自分の意地の悪い嘘でありますようにと願った彼女だったが……。
「えっと……その、ごめん……」
「は、はわ……はわわわわわ……!?」
残念ながらこんな時に限ってオルタは本当の事を言っていたらしい。開きっぱなしの扉の向こう側から見える申し訳なさそうな表情の男性は、紛れも無く愛すべきマスターだ。
自慰行為をしていた姿を見られてしまったリリィは、先ほどよりも顔を真っ赤にして蹲ってしまった。何より、自分が
「リリィ、本当にごめん。悪気があった訳じゃあ無いんだけど……」
「謝らなくて良いのよマスター。布団の中でくちゅくちゅオナってるこいつが悪いのよ」
「オルタ……仮にもこの子は自分自身なんだから、もっと優しくしてあげなよ……」
「はっ! このオナニー娘を甘やかす必要なんて無いっての!」
「……ジャンヌも言ってたけど、その発言全部ブーメランだからね?」
ジャンヌ同様の呆れ顔を見せたマスターに対して厭味ったらしい表情を見せたオルタは、続いてリリィへと視線を移した。
意地の悪い笑みを浮かべていることからどうせ彼女がまた自分を弄ろうとしているのだと思ったリリィだったが、予想に反してオルタは案外優しい感じを醸し出しながら話し始める。
「で、なんだっけ? ……そうそう、あんたも多少は立ち直って来たみたいね、って話をしてたんでしたっけ? 一人でこそこそオナニー出来る位には性へのトラウマも消えて来たってことでしょ?」
「も、もう黙って下さいよぉ!」
「そう怒るんじゃないわよ。そこまで回復したなら、もっと気持ち良いことをしてみたくない?」
「ほぇ……!?」
戸惑うリリィに対して視線で自身の背後を見るように促すオルタ。そこに居るマスターの姿を見たリリィは、オルタが何を言おうとしているのかを理解して、またしても顔を真っ赤にした。
「な、な、な、な……!?」
「あらぁ? そんなに顔を赤くしちゃって、何をするのか分かっちゃったみたいね? ……ほんと、むっつりスケベだこと」
「は、う、あ……」
抱かれろと言うのか、彼に? 先ほどまで自分がしていた妄想が、現実の物となると言うことなのか?
彼に体を委ね、心を預け、全てを捧げろとオルタは言っている……彼に抱かれろと、セックスをしろと言っているのだ。
「む、無理です。出来っこありません。だ、だって、怖いし……」
咄嗟に口から出たのは本心の様な建前だった。マスターに抱かれることを拒絶するリリィだったが、真正面に座ったオルタに見つめられながらその言葉を論破される。
「何? 何が怖いの? 男が怖いっての? あんたは、こいつが怖いの?」
「そ、それは……?」
「あんたの体と心を傷つけたソロモンや奴に従う奴らとこいつが同じだと思ってるの? ……違うわよね? だってオナニーのネタに使っちゃう位だもの、他の男とは違うって思ってるんでしょ?」
「………」
オルタの言う通りだった。確かに男性への恐怖心は存在する。しかし、彼だけならば話は別だ。
優しく温かい彼は、自分を傷つける様な事はしないはずだ、きっと大切にしてくれる……心の何処かでそう思っているからこそ、妄想の中の相手として彼を選んだのだろう。
自分自身の考えなどすべてわかっているとでも言う様に話すオルタは、リリィの心の中にある不安を自らの言葉で掻き消して行く。続いて彼女は自分の纏う服を消滅させると、リリィの想像が正しい事を己の身を以って証明した。
「……ねえ、どう? 私の体に痛々しい跡は残ってる? 戦いでついたんじゃない、男に乱暴に扱われてついた傷が、あんたの目には映ってるの?」
目の前で全裸になったオルタの体を見たリリィは、息を飲んでまじまじと彼女の裸を観察した。
オルタの体には多少の傷や火傷はあるが、それもマスターに治療して貰っているのか殆ど跡は残っていない。自分と同じ白くて美しい肌が広がっているだけだ。
ソロモンにグロテスクな状態にされてしまった女性器も、オルタの物はとても綺麗な形と色をしていた。やはりマスターは彼女の事を大事に扱っているのだと知ったリリィの体をオルタがそっと包み込む。
「……知ってるでしょ? あいつは人の心を踏みにじる様な事は絶対にしない。時々意地悪もされるけど、それでも最後にはとびっきり甘くて優しい時間を私たちにくれる人だって……あんたは、あいつのことがまだ怖いの?」
オルタのその質問に少し悩んだ後、リリィはゆっくりと首を振った。
最初から答えは決まっていたのだ。ただ、どうしようもなく周りの男性が怖かっただけ……男と言う分類では無く彼個人と言う部分で見るならば、自分の大好きなマスターが恐ろしいわけが無い。
「……でも、少し怖いです……。セックス、怖いです……」
しかし、まだセックスに対する恐怖はリリィの中からは消えていなかった。
それを掻き消してくれる優しい一言を期待したリリィだったが、オルタが発したのは今までとは真逆の冷たい言葉であった。
「……そう? ここまでされてまだ決断出来ないの? なら……あんた、もう良いわ」
「えっ……?」
「同じ私同士だし、色々な恐怖心を吹き飛ばせる良い機会だと思ってあんたを誘ってあげたけど……まだ迷う様ならもう良いわ。あんた抜きで話を進めるだけよ」
「え? え?」
「……あんた抜きであいつとセックスするってわけ。あんたはいつも通りこの部屋で聞こえて来る私たちの喘ぎ声で興奮してオナニーしてれば良いんじゃない?」
「あ……」
リリィの脳裏に浮かぶ光景。愛しい彼に抱かれて幸せそうな表情を浮かべる成長した自分自身と、別の部屋で彼女の嬌声を耳にしながら布団の中で自慰行為をする自分の姿。
もう一人の自分が幸せを享受していると言うのに、自分は一人寂しく布団の中で丸まっているだけだなんて寂しすぎる。彼に抱きしめられる幸せを味わえないなんて、辛いにもほどがあるではないか。
「……さ、行きましょマスター。ビビりのガキンチョには大人のセックスは早すぎたみたいだし……ここで一人でくちゅくちゅやってりゃ良いのよ」
俯いたまま肩を震わせるリリィの事を嘲る言葉を口にした後、オルタはマスターを促して部屋の外へ出て行こうとする。
彼女の手が襖の取っ手に触れた瞬間、小さいがはっきりとしたリリィの声が部屋の中に響いた。
「待って、ください……!」
彼女の声を聞いた瞬間、オルタの口元に笑みが零れた。これこそが彼女の求めた展開だったからだ。
自分の役目は果たした、後は彼に任せるだけだ。そう思いながら動きを止めたオルタは、ことの成り行きを黙って見守る。
「あ、あの、私、私……っ!」
上手く言葉が紡げないながらも、リリィの表情が全てを物語っていた。
彼女が何を望むのか、何を欲しているのかは、もうこの部屋の中に居る全員が理解していた。
「大丈夫だよ、リリィ。落ち着いて……ね?」
「ふぁっ……」
未だに微かに震えるリリィの体をマスターが抱きしめる。彼の体から伝わる温もりと鼓動が、リリィの心を落ち着かせていった。
(あった、かい……)
彼は温かい。彼は優しい。やっぱり自分は、彼のことが大好きなのだ。
最初からこうして貰えばよかった。怖がらずにただ抱きしめて貰えばよかった。彼を怖がる必要なんて、欠片も無かったと言う事に今更気が付いた。
「……もっと、ぎゅってして下さい……♡ トナカイさんの温もり、もっと感じたいんです……♡」
淫らさを僅かに含んだ、可愛らしさ満点の彼女なりのおねだり。直接自分を抱いて欲しいなんて言えやしないけど、それでも大好きな彼は自分の思いを汲み取ってくれた様だ。
「うん、良いよ。今夜は一緒に居ようね、リリィ……」
「はい……♡」
かちりと、心が繋がったことを感じる。彼の腕の中で幸せな一時を楽しむ。
もう何も怖くない。彼に受け止めて貰えた幸せの中で、リリィはそんな事を思った。
「あっ♡ これっ♡ 凄いっ♡ 自分でするのとは、全然ちがうっ♡」
小さな体を何度も跳ね上げながら、リリィは歓喜の声を上げていた。後ろからマスターに抱きしめられた状態で自分がそうしていた様に秘所を弄られれば、自分でしていた時とはまるで別物の快感が全身に伝わって行く。
丁寧に、優しく、マスターはリリィの秘所を指で愛撫する。陰核も包む皮を剥いてから弄ってやれば、リリィの体はまるで魚の様にびくびくと跳ね上がる事を止められないでいる。
「……ね? マスターに愛されることを知っちゃうと、もうオナニーじゃあ満足できないでしょう? 今のあんた、良い顔してるわよ……♡」
「ふふふ……♡ とろんとした、気持ち良い事に夢中になってる可愛い顔ですね……♡ マスターもそう思うでしょう?」
「うん、とっても可愛いよ、リリィ……!」
「ふ、ぁ……♡」
ジャンヌたちの言葉を肯定するマスターに甘い声で耳元で囁かれたリリィは、腰砕けになって瞳を潤ませた。
次いで頬に手を添えられ、反対側の頬にキスを落とされればそれだけで幼い少女の心は恋心満開のピンク色に染まる。真に愛されると言う事の意味を学ぶリリィは、高鳴る鼓動のままにマスターに全てを委ねて快楽を享受していた。
「ほら、ここも良いでしょ? リリィの感じる所は全部知ってるんだからね……」
「あうっ♡ うぅっ♡ ふあぁぁぁっ……♡」
大人の自分が感じる場所を指でなぞられたリリィは体を仰け反らせて喘いだ。あまりの快感の強さに呼吸すらも困難になるリリィだったが、優しく体を撫でられるうちに落ち着きを取り戻す。
「はー♡ はー……♡」
口から漏れるのは荒く甘い吐息。愛撫による快感で蕩け切った心が彼を求めて疼き出す。瞳に映った愛する人へと腕を伸ばせば、彼は優しくその手を取ってくれた。
「トナカイさん……♡ もっと、もっとぉ……♡」
「はいはい、そんなに慌てなくてもちゃんとシテあげるからね」
「ふひゃぅぅぅっ♡♡♡」
マスターの二本の指が膣の中でばたつき、リリィの体を責め立てる。
ぐちゅぐちゅと言う水音を股間から響かせながら小さな体を何度も痙攣させるリリィは、大きく目を見開くと絶頂の叫び声を上げた。
「はぁぁぁぁぁっっ♡ とにゃっ、かいしゃぁぁんっ♡♡♡」
膣から勢いよく愛液が噴き出す。愛しい彼の手をびしょびしょに濡らす潮噴きを披露したリリィは、そのことを恥ずかしがる余裕もない程に快感に蕩けていた。
「は♡ はぁ♡ はぁぁ……っ♡」
ぱくぱくと上下の口が開閉を繰り返す。上の口からは喘ぎ声を、下の口からは白く濁った愛液を噴き出して視線を宙に舞わせる。
優しく頭を撫でてくれるマスターの胸に顔を埋めたリリィは、彼の心臓の鼓動を感じ取って瞳を閉じた。
(ドクン、ドクンって……トナカイさんの心臓の音、安心する……)
彼の全てが心地良い。彼の与えてくれる温もりが、優しさが、自分のことを安心させてくれる。
ここが自分の居場所なのだと言ってくれている様で、君のことを大切だと言ってくれている様で、ただ傍にいるだけなのに涙が溢れて来そうになる。
「あっ……♡」
ジャンヌたちによって彼の腕の中から引き剥がされた時、リリィは寂しさと心細さを感じてしまった。だが、彼女たちが幸せそうに笑いながら自分の体を仰向けに寝転がした時、彼女たちが自分に何をさせようとしているのかを理解して唾を飲み込む。
「そろそろ良いでしょう。少しきついかもしれませんが……」
「マスターなら、きっと優しくしてくれるわよ。安心なさい……」
「っっ……♡」
じっとりと濡れた膣が期待でひくつく。とうとうその時がやって来たのだと心臓がざわつく。
(挿っちゃうんだ……♡ トナカイさんの、あれが……♡)
城で自分を凌辱した男の物よりも、旗の柄よりも、もちろんソロモンの物よりも大きな彼の肉棒に視線を向けたリリィは、僅かな恐怖心を感じると瞬時にそれを振り払った。
だってそうだ、大好きな彼が自分に酷いことをする訳が無い。優しく、温かく、自分のことを愛してくれるに決まっている。
「リリィ……行くよ?」
「はい、トナカイさん……♡ 来て、ください……♡」
自ら大きく脚を開いて彼を迎え入れたリリィは、直後に自分の予想が正しかったことを感じ取った。
ゆっくり、じっくりと時間をかけて肉棒の挿入を行うマスターは、リリィに負担を掛けぬように慎重に行為を行ってくれている。お陰で、リリィには一切の痛みや苦しみの感覚を感じることは無かった。
それは恐らくソロモンによって行われた膣の拡張改造によるものもあるのだろうが……リリィにとっては、そんな事を知る由も無い。自分の穴など裂けてしまえと言わんばかりに無理やり物を挿入して来た他の男と、目の前の大好きな人が全く別の人種であるとしか思えないだけであった。
彼は優しい。彼は自分を大切にしてくれる。彼はソロモンとは違う。彼は自分を道具なんかにはしない。
彼を恐れる必要は無い。自分は彼が大好きで、彼もまた自分に飾らぬ愛情を注いでくれる。彼は、彼こそが、自分たちの主であり、愛する人なのだ。
「あぁぁぁぁぁぁっっ♡♡♡」
リリィの心の中の思いが高まり、爆発した瞬間、マスターの逸物が彼女の中に完全に挿入された。
小さな体の何処に巨大な肉棒を咥え込むスペースがあるのかと思わせる程にがっちりと彼の分身を受け入れるリリィの瞳には、喜びの涙が浮かんでいる。
「一つに、なれた……♡ マスターと、大好きな人と一つになれた……♡」
愛しい人に抱きしめられ、自分を見守る姉の様に穏やかな微笑みを浮かべるジャンヌとオルタに頭を撫でられるリリィは、今まさに幸せの絶頂に居た。自分を愛してくれる人に囲まれる喜びは、何物にも代え難いものであった。
淫紋令呪もいつの間にか形と色を変えている。主を書き換えたその令呪によって彼への思いが強まる中、それに拍車をかける様にマスターはリリィに優しい言葉をかけてきた。
「大丈夫、リリィ? 苦しくない?」
「ぜんっぜん苦しくないですっ♡ むしろ気持ち良くって……早く動いて欲しい位ですっ♡」
「そ、っか……なら、ゆっくり動くから、苦しくなったらすぐに言うんだよ?」
「はいっ♡」
彼の手が自分のお尻を掴む。小ぶりな尻を持ち上げ、それを優しく上下に揺らす。
その動きに合わせて上下する自分の腰は彼の肉棒を擦り上げ、彼に膣を擦り上げられて快感を与えあっている。充実感と快感に瞳を潤ませるリリィは、腕を彼の背に回し、思いっきり力を込めてマスターに抱き着いた。
「となっ、かいっ、さんっ♡ もっと♡ もっとシテくださいっ♡ もっとがんがん、私を突いてっ♡」
リリィは涎を垂らし、子供にあるまじき淫靡な表情と言葉を使って彼に快楽を強請る。頬は上気し、目にはハートマークが浮かび、全身が快感と興奮によって桃色に染まっている。
拙い動きで腰を動かし、カクカクと震えるリリィの姿を見たマスターは、彼女の思いに応えるべく少し強めにピストンを開始した。
「はぁぁぁっ♡ しゅごっ♡ いぃぃぃっ♡ おまんこっ♡ ぶるぶるしてぇっ♡」
巨大な肉棒が膣を抉り、カリが壁を引っ掻く。子宮を押し上げられる快感に仰け反りながらも、リリィは絶対に彼の背に回した腕を離そうとはしない。
浅い絶頂を繰り返しながらも貪欲にマスターを求める少女の瞳は、完全に快楽に酔っていた。しかし、リリィは自分の口から漏れる声が、いつも自分が聞いていたあの幸せそうな喘ぎ声になっている事に幸福感を得ていた。
(しあわせぇっ♡ となかいさんにあいしてもらえて、しあわせですっっ♡ みんな、こんなしあわせなきもちになってたんですねっ♡)
毎晩聞いていた様な声を上げる気持ちも分かる。こんな幸せで気持ち良い事、叫び声を上げたくなるに決まっているではないか。
じっとりと汗で濡れる尻を掴まれ、そこを揉まれながらピストンを受けるリリィはただ快楽に酔った叫びを上げる少女と化していた。そこに年齢など関係ない。ただ愛する人に抱かれる幸せを感じる女が一人いるだけだ。
「イクっ♡ きちゃいますっ♡ あぁっ♡ イク、イクイクイク……♡」
自分を取り繕う必要は無い。心のままに本心を晒し、恥ずかしい言葉も平気で口にする。
きっと彼はこんな自分でも受け入れてくれるから、何も心配する必要なんて無いのだ。
「あっ♡ おおきいっ♡ おおきいの、くるっ♡ トナカイさんのおちんぽでっ♡ イかされちゃうっっ♡♡♡」
「ぐ、うっ……! 俺も、そろそろ……っ!」
彼の肉棒が大きく膨らむのが分かった。射精だ、射精の時が来るのだ。彼の愛を受け止められる時が来るのだ。
期待に胸と子宮がときめく。心臓は高鳴り、感覚は更に敏感になる。膣もぎゅっと締まり、彼に感じて貰おうと必死になっていることが分かった。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
壊れると、リリィは思った。こんなに幸せで、気持ち良い事をされたら、きっと自分は壊れてしまうと本気で思った。
そして、壊れても良いと思った。彼に愛して貰える幸福に比べれば、他の何も怖くは無いのだ。
それが自分が壊れてしまうことでも、あるいはソロモンのことでも……彼が傍に居てくれれば、もう何も怖いと思わなくなっている。
「い、イクっ♡ とにゃかい、さっ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡」
ドラマや映画の様に愛の言葉を囁いてからの絶頂と言うロマンティックな行為を試みようとしたリリィだったが、最後まで言葉を紡ぐよりも早く絶頂を迎えてしまった。
震える膣が絶大な快感を自分に与え、頭の中が真っ白になる。しかし次の瞬間、彼女は更に快感の高みへと追い込まれることになった。
「はひぃぃぃぃぃっっ♡♡♡ で、でてるぅっ♡ トナカイさんのせーし、でてるぅぅっ♡♡♡」
魔力の結晶であり快感の象徴でもある彼の精液がおびただしく自分の膣に放たれる。今まで自分が達していた絶頂などまだまだ浅いと言わんばかりにリリィの感覚は更に高みに押し上げられた。
彼の愛が体に染み込み、誰が主かをはっきりと自覚する。この世で自分の事を一番愛してくれる男は誰なのかを、リリィは幼い体でしっかりと感じ取った。
「……大丈夫? 疲れちゃった?」
「は、ひ……♡ わらひは、だいじょぶれす……♡」
「でも、呂律が回ってないよ? 本当はしんどいんでしょ?」
「らいじょぶ、ですよぉ……♡ ね、トナカイさん、もっとしましょ? もっともっと、きもちいいことしたいんです……♡」
若いを通り越して幼い少女であるリリィが囁く誘い文句に苦笑したマスターだったが、彼女が望むのならばともう一回戦を開始するつもりで彼女の尻を強く掴む。しかし、その行動は両隣に居たジャンヌたちに阻害され、彼女たちによって布団に押し倒されてしまった。
「はい、リリィ、今夜はここでお終い。セックスは終わりね」
「えっ!? な、何でですかぁ!? ここからが良い所だったのに……」
「リリィの気持ちも分かりますが……今日はマスターにゆっくり休んで欲しいんですよね……」
「俺に……?」
裸のジャンヌとオルタがぴったりとその体をマスターに寄り添わせる。柔らかく温かな三人の聖女の肌に体を包まれたマスターは、恐れ多さにぶるりと体を震わせた。
「……あんた、最近毎日無理してるじゃない。疲れでぶっ倒られたりしたら、迷惑するのは私たちなんですからね」
「ですからマスター、今日はゆっくりとお休みください。せめてもの手助けとして、私たちが全身であなたを癒して差し上げます」
「聖女たちの肉布団よ? ありがたすぎて、涙流すんじゃない?」
「あ、あはははは……たしかにそうかも……」
大きな胸が両腕を包み、その肢体でマスターの体を包み込むジャンヌたちの体は最高の掛布団になっていた。
自分の上で寝そべるリリィの体も子供特有の体温のお陰で温かく、重さも気にならない程度しかない。
三人の聖女たちを布団として扱うこの行為には、流石のマスターもオルタの言う通りありがたすぎて少し引く位であった。
「……何してんのよ? さっさと眠りなさいよ。今晩は勘弁してやるけど、次の機会には枯れるまで絞りとってやるから覚悟しときなさい!」
「ふふっ! オルタは口が悪いですけど、マスターの事を心配してるんですよ? もちろん、私も同じ気持ちです。私たちの奉仕で、少しでも体の疲れを癒して下さいね……」
「そう言う事なら……私も我慢します。大好きなトナカイさんの為ですもんね!」
左右と上、三方向から三人の聖女たちが顔を近づける。綺麗な彼女たちの顔がすぐ近くにある事に赤面したマスターに向けて、ジャンヌたちは優しい声で囁いた。
「「「おやすみなさい、マスター……どうか、良い夢を見て下さいね……♡」」」
眠りを促すその声を聞いた途端、マスターの意識が遠のいて行った。相当に疲れがたまっているのか、あるいはこの聖女布団が心地良すぎるのか、はたまたそのどちらもなのかははっきりとは特定できないが……とにかく、マスターはジャンヌたちに感謝の思いを抱きながら、心地良い微睡の中へと意識を沈ませていったのであった。
「……リリィ、腰動かすんじゃないわよ? 抜け駆けは許しませんからね」
「んっ……♡ トナカイさんの精液、私の中にまだ残ってます……♡ 栓がされてるから、外にも出せませんし……♡」
「それ、ちょっと羨ましいです。良いなぁ……」
マスターが眠りに就いた後も、聖女たちの会話は終わらない。マスターを起こさぬようにしながら、小さな声で話し合う。
「これで、私たちは全員解放されましたし……カルデアに帰ったら、チーム
「げっ! あんたたちとチーム? 地味に嫌なんですけど……」
「チーム? チームって何ですか?」
傍から見れば楽しそうな姉妹の会話にしか見えないやり取りを繰り広げながら、彼女たちは夜が更けるまで楽しいおしゃべりを続けたのであった。