※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

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ネロVSエリザベート

 

「せやぁぁっっ!!!」

 

「ふんっ!!!」

 

 ローマの中に出現した日本の町、その中で繰り広げられるエリザベートとネロの戦いはその激しさを増していた。

 武器のぶつかり合う金属音を響かせ、衝撃波と砂煙を上げながら激突する二人は、お互いの動きを観察しながら戦いを続ける。

 

「このぉぉっっ!!!」

 

 ランサーであり長柄の武器を持つが故にリーチに秀でるエリザベートが武器を振り回してネロに攻撃を仕掛ける。遠心力を活かした強烈な一撃を側面から見舞うエリザベートであったが、ネロはそれを上手くいなすと一歩踏み込んでエリザベートの懐に潜った。

 

「せいっっ!!」

 

「ちっっ……! っっ……!」

 

 ネロの間合いの中に入ってしまったことを悟ったエリザベートは直ぐにバックステップを踏んで後退した。しかし、スピードに優れるネロの鋭い斬撃を躱し切ることは出来ず、僅かに体を斬られてしまう。

 痛みに表情を歪めるエリザベートに対して嗜虐的な笑みを浮かべたネロは、そのまま後退する彼女を追いかけて前へと跳躍した。

 

「逃がすと思ったか? 甘い甘い甘ぁぁいっっ!」

 

「くっ!? このぉっ……!」

 

 長槍を振るいなんとかネロを引きはがそうとするエリザベートであったが、ネロは剣で攻撃を弾いて再び攻撃の間合いの中にエリザベートを捉えた。今度は逃がさないとばかりに繰り出された攻撃を何とか槍で防ぐも、痺れた腕で支える槍を狙いすましたネロの一撃にエリザベートは武器を弾き飛ばされてしまう。

 

「ああっ!?」

 

「貰ったっ!」

 

 敵の武器を吹き飛ばし、がら空きになったエリザベートの体にトドメの一撃を繰り出すネロ。勝利を確信した彼女であったが、エリザベートは瞬時に判断を下すと腰から生えた竜の尾を振るってネロの体を弾き、一度距離を取ることに成功する。

 

「ふふふ……惜しい、惜しい。後一歩で終わりだったものを……だが、悪足掻きもそこまでだな」

 

 強靭な尾での一撃を受けたネロは近くにあった壁に叩きつけられるも、まるでダメージを受けていないかの様に立ち上がって笑っている。

 武器を取りこぼしたエリザベートは苦々し気な表情を作ると、胸の内の感情のままにネロに向かって叫んだ。

 

「ネロっ! アンタ、いい加減にしなさいよ! 今の自分が誰からも愛される存在だと本気で思ってるの!?」

 

 己と彼女が夢見、目指していたアイドルと言う存在からほど遠い姿になってしまったネロを見ながら、エリザベートは涙を浮かべた。

 ネロの心の中にあった、『皆を愛し、皆に愛される』と言う思いがソロモンに踏み躙られていることを思うと悔しくて堪らない。彼女をライバルと認め、同じ夢を持つエリザベートだからこそ、彼女の今の姿を他人事だとは思えないのだ。

 だが、ネロはそんなエリザベートの叫びを一笑に付すと、普段の彼女からは考えもつかない冷酷な声で言った。

 

「……誰からも愛される……? そんなこと、余は望んでいない。余は、ソロモン様に愛していただければそれで良いのだ……!」

 

「なっ……!?」

 

「……あれだけ愛したローマの市民も、最後には余を裏切った。人は裏切る、余の愛を理解しようとしないで、ただ自分の望みを押し付ける! そんな者共の愛などいらぬ! 余は、ソロモン様だけに愛してもらえればそれで良い! ソロモン様だけの歌姫(アイドル)でいられればそれで良いのだ!」

 

 ネロのその言葉にエリザベートは頭をハンマーか何かで殴られた様な衝撃を覚えた。あのネロが、傍若無人の我がまま皇帝が、ソロモンからの愛だけを求めている……そのことが、エリザベートに凄まじいショックを与えていた。

 

 ソロモンからの愛が欲しい……ネロのその思いは、彼女が心の底から欲しい物に手を伸ばしているが故に生まれる願いではない。その逆、ネロは()()()()()()()()()()()

 裏切られることが怖いから誰も愛さない。人生の大半を裏切りと謀略と共に送り、終焉を反乱によって迎えたネロは、それでもその人生に一応の納得をしていた。辛い過去があったとは言え、自分の思いに正直に動き、自分の愛を周囲の人々に振りまく彼女だからこそ、数々の人々の心を魅了してきたのだろう。

 しかし、今はその逆だ。ネロは全てを諦めている……裏切られることが怖いから、信じることが怖いから、それを放棄する。そうやって自分を傷つけない物だけを周囲に残し、自分に形ばかりの愛情と優しさをくれるソロモンに盲目的に従っているのだ。

 

「なんでよ……? アンタ、なんでそこまで堕ちちゃったのよ……!?」

 

 ソロモンに命じられるがままに踊り、与えられた衣装を着る。それが良いことなのか、自分の望むことなのかも関係なく、ただ彼の言うがままに従い続ける。そんなの、ネロ・クラウディウスではない。自分が認めた好敵手は、そんな操り人形の様な少女では無いはずだ。

 自分の知る物とはかけ離れた姿を晒すネロに対して、エリザベートは茫然と呟いた。だが、当のネロはそんな彼女の思いを理解することも無く、ただ真っすぐに突っ込んで来る。

 

「余は堕ちてなど居ない! 余は、自分の在るべき舞台を見つけ出しただけだ! ソロモン様のお陰でなっ!」

 

 この戦いに決着をつけるべく、ネロは手にした愛剣を振るう。武器も防具も無いエリザベートは、その一撃を受けて敗北するはずだった。

 

「ふざっけんじゃ……ないわよっ!」

 

 だが、怒りの感情と共に顔を上げたエリザベートは、全身に魔力を漲らせてネロを睨む。そして、憶することなく彼女へと突っ込んで行った。

 

「何っ!? 正気か、貴様っ!?」

 

 予想外のエリザベートの行動にネロは面食らった。武器も無く、格闘技に精通しているわけでもないエリザベートの無謀な行動に失笑を浮かべたネロは、迷うことなく攻撃を続行する。

 この一撃でエリザベートの体は斬り裂かれ、戦いに終わりがやって来る……はずだった。

 

「クラスチェンジっっ!!!」

 

「なっ!?」

 

 だが、エリザベートが行った行動に対し、ネロはもう一度面食らうことになる。なんと、目の前にまで迫った彼女の姿が一瞬のうちに代わり、ビキニアーマーを纏ったRPGの女戦士の様な姿になったのだ。

 いきなりのエリザベートの変身に驚いたネロは、エリザベートが繰り出した大剣での一撃に対処することが遅れてしまった。重く、巨大な剣での一撃は見た目通りに強烈であり、何とか防いだものの予想外のダメージを受けてしまったことにネロは舌打ちをした。

 

「ちっ……! まさか、そんな奥の手を残していたとはな……!」

 

「どう? 少しは驚いた? アイドルにはサプライズが付き物、でしょ?」

 

「ああ、確かに驚いたな……だがっ!」

 

 乱れた呼吸を整え、再びエリザベートへと突進して行ったネロは、変わらぬ動きで連続して攻撃を繰り出していく。エリザベートは何とかそれを凌ぐも、反撃に出る余裕は無さそうだ。

 自分の攻撃をギリギリで防ぐエリザベートの姿を見たネロは、自分と彼女の間には大きな力量の差があることを悟って内心ほくそ笑んだ。いかにクラスを変えようともその差が埋まることは無い。むしろ、同じセイバー同士ならば経験の差で自分の方が有利のはずだ。

 

「ここだぁっ!」

 

「あっ! きゃぁぁぁぁっっ!!!」

 

 両手で剣を掴んだネロは、思い切りそれを振りかぶってエリザベートの防御をこじ開けた。がら空きになった胴に蹴りを叩き込めば、エリザベートの小さな体は凄まじい勢いで後ろへと吹き飛んで行く。

 壁を壊し、地面を転がったエリザベートは何とか体勢を立て直すと、今度はハロウィン衣装を纏ったキャスタークラスに変身して煌びやかな魔力の光弾をネロに向けて放った。

 

「はっ! てやぁぁぁぁっ!!!」

 

「ふんっ! そんな攻撃などっっ!」

 

 マシンガンの様に放たれるエリザベートの光弾。しかし、ネロは一切焦る事無くその攻撃を全て躱す。

 エリザベートの攻撃を剣で切り払い、僅かな動きで回避しながら徐々に彼女に接近して行くネロは、嘲る様な言葉をエリザベートへと向けた。

 

「無様だな、エリザベート! そんな手ぬるい攻撃で余を止められると思ったか? 所詮貴様は、余の足元に這いつくばるトカゲに過ぎんのだ!」

 

「っっ……!」

 

 一瞬の跳躍でエリザベートの目の前にまで迫ったネロは、愛剣【原初の火】を振るって彼女を追い詰めた。ネロの一撃を杖代わりのフォークで受け止めるエリザベートの必死な表情を見ながら、なおもネロは彼女に嘲りの言葉を投げかける。

 

「それがお前の目指す姿か? 砂埃にまみれ、美しさも愛らしさも無い必死の形相を浮かべる今の貴様の姿が、貴様の目指すアイドルと言う奴なのか!?」

 

「………」

 

 力負けし、徐々にネロの剣に圧されて行くエリザベート。だがしかし、彼女は決して諦める事無く武器を掴んでいる。

 必死になってネロに抗うエリザベートは、自分の敗色が濃厚になっていることを理解しながらも自分のあらん限りの力を振り絞ってそれを覆そうとする。この状況でも決して折れぬ彼女の心を支えるものに興味を持ったネロは、僅かに口調を和らげてエリザベートに尋ねた。

 

「なぜ抗う? なぜそこまで戦える? ……お前は何故、余に立ち向かうのだ?」

 

「そんなの……決まってんじゃない……っ!」

 

 埋めようも無い差、覆せない戦局……それを理解しながらも、エリザベートの瞳から光が消えることは無い。

 強く輝く光を湛えた瞳をネロへと真っすぐ向けたエリザベートは、彼女に対して自分の戦う理由を凛とした声で答えた。

 

「アンタが、アタシの友達だからよっ!!!」

 

 その叫びにはエリザベートの思いの全てが籠っていた。時に争い、時に協力し、共に戦って来たネロは、エリザベートにとっては紛れもなく友であり、大切に思う仲間の一人なのだ。

 光り輝く笑顔と薔薇の花の様な美しさをその身から放ち、周囲の人々を笑顔にしていたネロ。そんな彼女が闇に堕ちた姿など見たくは無い、かつての彼女を取り戻したい。

 大切な友達を助けたい……そんなエリザベートの切なる思いを表す叫び。だが、その思いも今のネロには届かない。

 

「ふふっ……! そんなことの為に戦っていたのか! そんな、ちっぽけな感傷の為にっ!」

 

「ぐぁっ……!?」

 

 腕に力を籠め、原初の火を振り抜いたネロはエリザベートの防御を打ち崩して斬撃を見舞った。全霊の彼女の一撃を受けたエリザベートの小さな体が舞い上がり、地面に叩きつけられる。

 地面に転がるエリザベートを蹴り飛ばし、その腹を踏みつけたネロは、嘲笑混じりにエリザベートに語り掛ける。

 

「決着はついたな……! 余の勝ちだ」

 

「ぐっ……うぅっ……!」

 

「安心しろエリザベート、お前を殺しはしない……その美しい友情に免じ、命だけは助けてやろう。そればかりか、余が直々にお前を躾けてやる……ソロモン様に仕える立派な奴隷になれるよう、余がしっかりと調教してやろう。お前のその気高い心がいつ折れるのかを楽しみにしながらな!」

 

「がっ、ぐっ……! そん、なのっ、お断りよ……っ!」

 

 怒りの表情を浮かべるエリザベートが拒絶の言葉を口にしながらネロの脚を掴む。長く鋭い竜の爪を突き立て、皮膚を抉る様にしてネロの美しい脚を引っかく。

 しかし、そんな痛みも今のネロにとっては心地良く感じられていた。瞬時に回復する引っかき傷を見ながらエリザベートの無駄な抵抗を嘲笑うネロは、何者かが地を蹴る音を耳にしてその方向をちらりと見やる。

 

「うおぉぉぉぉぉっっ!!!」

 

 ネロが目にしたのは巨大なる咆哮と共に自分に飛び掛かる影であった。決死の行動なのだろうが、その突進は余りに緩慢過ぎる。

 その場から動かず、ただ剣を横薙ぎに振るったネロは、自分の楽しみを邪魔する無粋な男をその一撃で吹き飛ばす。地面を転がっていく丸い陰には目もくれないまま、彼女は乱入者に向かって声をかけた。

 

「ああ、心配するな……貴様はこの後すぐに殺してやる。そう慌てなくても余はお前を忘れたりはせぬ」

 

「え、エリザベート……逃げろ、逃げるんだ……! ここは私が時間を稼ぐ! お前はクレオパトラを連れて逃げてくれっ!」

 

 ネロに無謀な突進を仕掛けたカエサルが荒い呼吸を繰り返しながら剣を構える。エリザベートへ逃げる様に頼む彼は、決死の覚悟で捨て駒になろうとしていた。

 地に塗れ、土埃を体に纏いながらも懸命に自分に立ち向かおうとするカエサルの姿を見たネロは、薄ら寒い笑みを浮かべた後で彼に向き直る。

 自分とまともに戦えるとでも思っているカエサルの傲慢を断つべく、その命を奪おうとするネロ。原初の火を構えた彼女が、一歩前に踏み出そうとしたその時だった。

 

「……いいえ、カエサル。そんな必要は無いわ。だって、もうアタシたちの勝ちは決まったもの」

 

「……何? それはどういう……!?」

 

 意味深なエリザベートの言葉を聞いたネロが立ち止まり、訝しげな表情を浮かべてその意味を問いかける。

 ハッタリか、それとも何か策があるのかとエリザベートの次の行動を読もうとしていたネロは、自分の視界が急に歪んだことに呻き声を漏らした。

 

「なん、だとっ……!? これは、なんだ……!?」

 

 視界が歪み、色が明滅する。ぐらぐらと頭が揺れる様な感覚に襲われたネロは、エリザベートが自分に何かをしたことを悟った。

 吐き気、寒気、脱力感……全身が思うように動かなくなって来たことに動揺するネロの姿を見るエリザベートは、ねっとりとした液体を滴らせる爪を光らせながら()の言葉を思い出していた。

 

『……良いか? ほんの少量で良い、こいつの効き目は保証してやる。引っかき傷でも何でも良いから、この毒をあのローマ皇帝に食らわせてやれ。そうしたら、後は……』

 

「ホント、効き目抜群じゃない。アイツってば、こう言うことは本当に得意よね……」

 

 防御に秀でたシールダーであるマシュすらも昏倒させた毒、その効き目は確かであった。五枚の爪に浸したそれを引っかき傷と共にネロに味合わせただけで、彼女は今酩酊としているのだ。

 地面にフォークを突き刺し、何とか立ち上がったエリザベートだが……ボロボロの体には、今のネロを制圧するだけの力は残されていなかった。

 

「エリザベート……っ! 貴様っ、貴様ぁぁぁぁっっ!!!」

 

「ふ、ふふふ……良い様じゃない、ネロ……かかって来なさいよ……!」

 

 体を蝕む毒の痛みを耐えながらネロがエリザベートへと向かって足を踏み出す。この毒には自分を殺すだけの効果は無い。せいぜい意識を昏倒させ、気を失わせる位の物だろう。しかも、そこに至るまでには体に注がれた毒の量が少な過ぎた。

 勝てる。この不快感に耐え、エリザベートを切り捨てれば後は何とでもなる。戦う力の無いエリザベートもカエサルも、人形の様に何の反応もしないクレオパトラも自分の敵では無いはずだ。

 この場での一番の脅威であるエリザベートを排除すべく、ネロは一歩ずつ彼女へと近づいて行く。しかし、自分に死を与えようとするネロの姿を見ても、エリザベートの表情からは不敵な笑みが消えることは無かった。

 

「ネロ……アンタの言う通りよ。アタシはアンタには勝てない。アンタの方が強い……でもね、アタシは一人じゃないの」

 

「っっ……!?」

 

 ネロの視界がまた歪む。だが、今度は視界全体が歪んだ訳ではない。見ている景色の一部分、丁度エリザベートの隣の空間が歪み、彼女の体を支える様に動いていた。

 

「……よく頑張ったな、お嬢。後は約束通り、俺が決めてやるよ」

 

「あっ……!?」

 

 闇に響く男の声。その声と共に姿を現した男の姿を見た瞬間、ネロは体を強張らせ、目を見開いた。

 

「悪いな、華の皇帝様……けど、戦いの場に卑怯も糞も無いってことで勘弁してくれよ」

 

 長く続いたこの夜の舞台。カエサルとネロの追走劇から始まり、エリザベートとの死闘を経てクライマックスを迎えたこの舞台に幕を引く人物がついに現れる。

 冷たい視線をネロに向け、番えた矢の狙いを定める最後の役者の登場に動揺を隠せないネロは、毒の効果も相まって何の抵抗も出来ないでいた。

 

「……弔いの木よ、牙を研げ……!」

 

「あ、あ、あ……!?」

 

 目の前の弓兵が魔力を解き放つ。緑衣の弓兵(ロビンフッド)が宝具を解き放とうとする予感を感じながらも何も出来ずにいるネロに対し、エリザベートが真っすぐに視線を向けながら言った。

 

「ネロ……()()()()()()()()

 

 ネロがその言葉を耳にした瞬間、彼女の体にロビンフッドの放ったイチイの木の幻影が纏わり付く。全身を絡め取られ、身動き出来なくなったネロは、体の中で何かが弾ける感触と共に悲鳴を上げた。

 

「……祈りの弓(イー・バウ)

 

「あ、ああぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 標的が溜め込んでいる不浄を増幅させる効果の宝具がネロに炸裂し、彼女を蝕んでいた毒の効果を飛躍的に上昇させた。

 死ぬほどでは無い、しかし意識を保っていられないレベルの毒の痛みを受けたネロは、仰け反る様にして悲鳴を上げるとそのまま地面に崩れ落ちる。

 

「こんな……馬鹿な……? 余が、負けた……? 嘘、だ……」

 

 自分の敗北を認められず、涙ながらに呟いたネロはその言葉を最後に意識を失った。完全に動かなくなったネロの体を迅速に縛り上げて拘束したロビンフッドは、次いでエリザベートを気遣う。

 

「ったく、無茶し過ぎじゃねえの? こんなズタボロになっちまって……」

 

「そう思うならもっと早く助けに来なさいよ! ……あいたたた、大声出すと傷に響くわ……」

 

 文句をつけた後で蹲って戦いの傷を痛がるエリザベートを見たロビンは苦笑を浮かべながらも安心した。あそこまで元気に動き回れるのならば心配は無いだろうと判断したロビンは、浮かべた笑みを引っ込めながらもう一人の侵入者に視線を送る。

 

「さて……一応助かったと礼は言っておくけどよ、お前のことを完全に信用したわけじゃねえからな?」

 

「………」

 

 エリザベート同様に傷だらけの体をしたカエサルに油断ならない視線を送りながら一応の礼を口にしたロビンは、彼の背後に居るクレオパトラを指さしてから再び口を開く。

 

「……着いて来いよ、ファラオ様に免じて傷の手当てをしてやる。んで、お前の知っていることを洗いざらい話せ、良いな?」

 

「元よりそのつもりだ、緑の弓兵よ。……お前とエリザベートの助力に感謝する。お前たちが来てくれなければ、私とクレオパトラは終わっていた」

 

 拘束したネロを担ぎ、エリザベートの尻を叩いて帰ることを伝えたロビンは、カエサルのその殊勝な態度に少し驚いていた。

 普段の彼はもう少し尊大なはずだったと思ったのだが……そんな思いを抱えた彼に対し、カエサルは自嘲気味な笑みを浮かべて口を開く。

 

「今、私が私らしくないと思ったな? ……当然だ、私はカエサルであり、カエサルでは無いのだからな」

 

「……待て、そりゃどういう意味だ? 事と場合のよっちゃあ、お前をマスターの所に連れて行く訳にはいかなくなる」

 

 カエサルの意味深なその言葉に警戒心を露にするロビン。そんな彼に対して、カエサルは簡潔な言葉でその正体を口にした。

 

「……私は、カエサルの体からこそぎ落された部分……言わば、カエサルの贅肉が意思を持った存在だ。君たちの知るカエサルと同じ容姿を持ち、霊基パターンを持ちながらも性格は少し変わっているのはその為なのだよ」

 

「贅肉、だと……?」

 

 にわかには信じられないその言葉を聞きながら、ロビンは嘘を言っている様には見えないカエサルの顔をじっと見つめ続けていた。

 

 

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