流石にやりすぎた感が否めない気がするな……
――死ぬ時に後悔が無かったかって?まぁ、そうだな……無かった、って言ったら噓になるわな。
特に俺なんて死を覚悟してから実際に死ぬまで結構かかったしな、その間にもっとこうしときゃ良かったって思う事もあったっちゃあった。
え?何を後悔したんだって?……そうさなぁ、現れては消えてった幸せに出来なかった女の事とか、知らず知らずの内に自分で殺してた息子の事とか、あとは……
……果たせなかった約束、とかだな
「兄貴たちもマスターになるぅ!?」
「うん、そう♪」
ルンルンとした様子で俺に驚きの提案をしたダヴィンチちゃんは、近くにあったモニターを見ると満足げに頷く。
言葉の意味は理解できてもその理由までは分からない俺は彼女に質問を投げかけた。
「ま、待ってよダヴィンチちゃん! なんでそんな事するわけ?」
「そんなの君や女の子たちのために決まってるだろう?」
「お、俺の為……?」
「そういう事だぜマスター、ちょっと考えてみればわかんだろ」
ダヴィンチちゃんに代わって話を引き継いだのはどこか諦めた様子のロビンフッドだった。ロビンはマシュを指さしながら話を続ける。
「ソロモンの奴が刻んだ淫紋令呪は女を狂わせる魔性の魔術……だが、それを利用すればこっちの陣営の強化も出来る」
「マシュの忠誠度が上がってる事を言ってるんだね?」
俺の言葉にロビンは頷く。ダヴィンチちゃんの研究で分かった事だが、最初に刻まれた時から形が変わっていたマシュの淫紋令呪は俺への思いに反応してその力を発揮しているらしい。
淫紋令呪の効果をわかりやすくまとめてくれたダヴィンチちゃんによると、普通の令呪と違う点は4つだ。
1つ、刻まれた者はマスターに絶対の忠誠を誓う。好感度がマックスになり、そこから下がらないという事だ。
2つ、マスターに恩義を感じやすくなり、忠誠度の上りが強くなる。好感度の上限が100から無限になり、ほんの少しの行動で一気に上昇しやすくなる。そして、上がれば上がるほどマスターへの忠誠は絶対の物へとなっていくと考えよう。
3つ、刻まれた者は性的興奮を感じやすくなり、常に昂る。これを利用してマスターが女を抱き、それによって忠誠度を上げるという行動が可能になるのだ。
4つ、淫紋令呪が強化されればされる程、刻まれた者とそのマスターの能力は向上する。基礎能力の上昇や更なるスキルの入手、魔力の強化などの恩恵が得られるのだ。
この中で一番大事なのは最後の4つ目の事項、淫紋令呪によるサーヴァントとマスターの強化だ。この効果は非常に強力なもので、新たに計測したマシュのステータスは以前と比べると二回りほど上昇していたのだ。
それだけではない。精神強化EX、魔術耐性EXと言う様な新たなスキルも習得していた。この二つは文字通り精神面が強化され自分の意思を持ち続けることが出来るのと、相手の魔術に対して耐性を得るというものだ。つまり、寝取られ対策のスキルなのだろう。
EXランクのスキルだけあってその効果は絶大で、ダヴィンチちゃん曰く今のマシュを再びソロモンが堕とすには聖杯の力を借りるしかないらしい。全能の神器、聖杯……それを使い、マシュの持つスキルをリセットしてから再び抱くという行動がソロモンの出来る唯一の手だ。
しかし、ダヴィンチちゃんはそれも不可能になるだろうと言っていた。どうやらあと1週間もすればマシュは聖杯の効果すら無効に出来るスキルを習得するだろうと彼女は見込みを立てているらしい。
もしそれが本当だとしたら……俺は恐怖すら感じる。聖杯は時代を歪ませるほどの力を持つ物だ、その効果を受けないなど正気の沙汰では無い。
しかし、万能の天才がそう言うのだから間違いは無いだろう。俺も、そう思う程の力を自分とマシュが得ている感覚はある。
俺の方はマシュに比べて大きな力の強化などは無い。しかし、俺はマシュと違って何人ものサーヴァントと契約できる。何人もの淫紋令呪を刻まれた英霊のマスターとなることが出来るのだ。
ダヴィンチちゃんは言う。もしも順当に皆を取り戻し、俺が淫紋令呪の効果で強化されていった場合、俺はソロモンをも超える魔術師になるかもしれない、と……
今までの能力を遥かに超えた英霊を操り、常識はずれの魔術を操る魔術師に俺がなるかもしれないと彼女は言うのだ。
だから、俺はこれからも皆を取り戻したら今まで通り俺がマスターになるつもりだった。しかし、ダヴィンチちゃんはそんな俺の思いをあっさり切り捨てると妙な提案をしてきたのだ。
その理由が俺の為とはどういう事だろうか?まだ理解できていない俺に対してロビンは詳しい説明を開始する。
「良いかマスター、カルデアに居た女英霊はざっと数えても50人近くは居た訳だ。ちょっと特殊な奴を省いてもそのくらいはいたのはマスターだってわかってんだろ?んで、問題は今のマスターがその全てを受け止められるかって事だ」
「今の俺って……前から出来てたじゃないか、何を今さら?」
「分かってねぇなぁ……マスター、ざっくばらんに行っちまうとだな。『あんた一片に何人の女を抱けるんだ?』って話なんだよ」
「……あ!」
「やっと気が付いたか、妙なとこ鈍いからなあんた」
ロビンの話を聞いていてようやく分かった。そう言う事なのだ。
淫紋令呪を強化するにはその人を抱くしかない。抱けば抱くほど強くなるのだから誰だってそうする。
しかし……俺の体は一つだけだ、そして体力にも限界がある。何十人もいるカルデアの女性英霊を一人で相手することなど出来はしないのだ。
今はマシュ一人だから良い。しかし、これから先皆を取り戻し続けたら俺の体の限界が来てしまうだろう。ダヴィンチちゃんが心配しているのはそういう事なのだ。
「あんたは人類最後のマスター、あんたが倒れたら話になりゃしねぇだろ? だから、その負担を分散するために俺たちもマスターになるって事だ」
「でも、そんな事出来るの?」
「何の魔術適性も無いカルデアの研究員がマスターになるよりかは現実的だろうさ。今までサーヴァントがマスターになったっていう前例は確認されているし、不可能じゃない」
「少なくともクー・フーリン君はキャスタークラスで現界出来るほどの魔力はある。彼ならマスターの役目にうってつけだろうさ」
「……俺とスパルタクスは分からんけどね」
俺は二人の会話を聞きながらクー・フーリン兄貴がマスターとなった姿を想像する。ランサーの時はちょっとあれだが、周りを見てそれをフォローする人の好さと目利きは随一だ。
それにキャスター時の冷静な人を導く姿勢も加わったならまさにマスターとしては完璧だろう。少し嫉妬もしてしまうが……
「大丈夫です先輩! 私は先輩専用の
マシュの言葉に違和感を感じてしまうのは俺が疲れているからだろうか? 具体的には耳で聞いた声と実際に文字にした場合とで意味が違っている様に思えるのだが……
「……あれ? そういえばその兄貴はどこ?」
「そういえばさっきから見て無い様な……?」
「み、皆! 大変だ!」
兄貴を探して部屋を見まわしていた俺たちの前にやって来たのはDr,ロマンだった。 息を切らせて部屋に入って来たその様子はただ事ではない。ロマンは慌てている自分を一度落ち着かせると、大声で緊急事態を告げた。
「新たなサーヴァント反応を検知! 敵の第二陣が来るぞ!」
「……サーヴァント反応は一つだけ、他には魔力の反応は無いよ」
「思ったより遅かったね。おかげでカルデアの復旧もある程度は済んだ。こうやって敵の襲撃に際して作戦が練れる程度にはね」
俺たちはブリーフィングルームに集まって話し合う。議題はもちろん、今回の襲撃者への対策だ。
この戦いをどうしのげばいいのだろうか? そう考えていた俺に対してオリオンが話しかける。
「なぁなぁ! これってチャンスだろ!? またマシュみたいにやって来た奴を抱いて、元に戻してやれば良いじゃん!」
「話がそう上手く行くとは限らないぜ。今度は男の英霊が来ることだって考えられる」
「あ、そっか……」
「いや、多分それはねぇよ。今度もまた女が来る」
冷静なロビンの指摘に対して反論したのはクー・フーリンだった。一体何故そんなことを言えるのかと言う俺たちの視線に対して、兄貴は自分の考えを述べる。
「今回の襲撃者は俺たちを襲いに来たんじゃねぇ、マシュの嬢ちゃんの援護が目的だ」
「わ、私のですか?」
「ああ、恐らくだがソロモンの奴はマシュの嬢ちゃんが俺たちに奪還された事に気が付いてねぇ。せいぜいなんかトラブルがあって嬢ちゃんが捕まったくらいにしか考えてねぇんだよ」
「……なんでそんなことがわかるんだ?」
「増援が来るのが遅かった事、来てる奴がたった一人だって事を踏まえりゃこう考える。本気でマシュを心配してるならもっと早く来るし、俺たちを叩き潰すつもりなら多くの軍勢で攻めてくるだろ?」
「な、なるほど……」
兄貴のその考察に俺は舌を巻く、慌てふためく俺に対して兄貴は瞬時にそこまで考えを進めていた。本来なら、その役目は俺がすべきなのに……
「……さてマスター、ここでお前に質問だ。ここに攻めてくるサーヴァント、お前はどんな奴だと思う?」
「えっ!?」
俺に対する突然の質問、相手の情報がまるで無いと言うのに何故こんな質問をしてくるのだろうか?
(……いや、違うな)
兄貴の目を見た俺はすぐに自分の弱気な考えを打ち消す。俺を試す様な目をしていると思った兄貴の目は、俺への信頼で溢れていた。
もう答えを出すのに十分な材料はそろっている。あとはお前が落ち着くだけだ……目でそう語る兄貴を見て俺は思考を落ち着かせると、今までの情報から相手の正体を探る。
「……キャスターとライダー、アーチャーでは無いと思う。この三つは屋内での戦いには向いてないし、キャスターは単独での戦闘は向いてない」
「よし、まず一歩だな。ほかに何かわかるか?」
「アサシンも違う。もしもアサシンなら気配遮断を使ってくるだろうから、カルデアに存在を察知されるはずが無い。バーサーカーも違うと思う。マシュの捜索と援護だなんて命令を完全に実行できる頭脳のあるバーサーカーはそうはいないし、いたとしても命令違反のリスクが大きすぎる」
「……つまり先輩は、敵の正体はセイバーかランサーのサーヴァントだと思っているわけですね?」
「加えて、敵はかなりの実力者だ。ソロモンが俺たちを舐めているとしても、単独でカルデアに送り込んで問題ないと思うほどの英霊だよ」
「具体的に誰だって想像は出来るかい?」
「………」
俺は頭の中でソロモンに奪われた仲間たちの顔を思い浮かべる。セイバー、もしくはランサーの強い英霊……思い当たる奴はたくさんいる。
例えば、騎士王『アルトリア・ペンドラゴン』。彼女の聖剣は強力無比、敵として現れたならば苦戦は必至だろう。
もしくは彼女のIFの可能性、獅子王『アルトリア・ペンドラゴン』かもしれない。ランサーである彼女もまた強敵だ。
だが、俺はその答えに納得が出来なかった。彼女たちではこの戦いに向いていない。それは、彼女たちの宝具が問題だ。
彼女たちの宝具は強力すぎる。俺たちをカルデアごと粉砕するつもりならば良いだろう。しかし、ソロモンの目的はあくまでマシュの無事を確かめつつ俺たちを殺すことだ。 もしもマシュが俺たちに捕まっていた場合、カルデアを破壊するわけにはいかなくなる。そうなると、例に挙げた二人だと、宝具を開放することが出来なくなってしまうのだ。
今回の襲撃者は恐らく対人宝具持ちのサーヴァント……そこまで考えた俺は目を開けて自分の予想を皆に伝えた。
「……3人までは絞り込めた。あくまで俺の予想だから当たっているかはわからないけどさ」
「そこまで絞り込めたんですか!?」
「ああ……まず第一の可能性。ソロモンが俺たちを殺すことを最優先にしてるとしたら、送り込まれるのは『沖田総司』だ」
幕末最強の人斬り集団『新撰組』、その一番隊隊長である沖田総司ならば狭い屋内での戦いはお手の物だろう。
彼女の三段突きを思い出すと身震いがする。しかし、彼女が送り込まれてくる可能性は正直低いと思った。病弱のスキルを持つ彼女がうっかり倒れなどしたら、ソロモンにとってマシュの二の舞になってしまうからだ。
彼女が来る可能性よりかは他の二人が来る可能性の方が高いだろう。そう思いながら俺は二人目の人物の名前を挙げる。
「次がセイバー、『シュヴァリエ・デオン』。マシュを助け出すことに重きを置いているならば彼女……って言って良いのかは分からないけど、彼女だろう」
自由奔放な王妃、『マリー・アントワネット』の付き人として補佐をこなすデオンならばマシュを助けつつ俺たちを殲滅することなど朝飯前だろう。しかし、この可能性も正直考えにくい。
彼女は強いが、先に名前を挙げた沖田総司と比べると戦力としてはあまりに補佐向き過ぎる。こちらに戦力があると少しでも思っているならばソロモンは彼女を送り込まないだろう。
俺の本命は最後に名前を挙げる三人目の人物……彼女の顔を思い浮かべた俺はちらりと前に座るクー・フーリンの顔を見る。
兄貴は俺の顔を見続けている。その表情を見ていると俺の心がチクリと痛んだ。俺は今から彼にとって非情な事を言おうとしているからだ。
だが、兄貴は俺の視線に気が付くとゆっくりと頷いて話を促す。すべてわかっていると言わんばかりのその行動に、俺も意思を固めた。
「最後の一人だけど、俺は正直来るのはこのサーヴァントだと思ってる。あらゆる事を考慮すると、彼女が来る可能性が一番高いんだ」
そう、高い戦闘能力を持ち、あらゆる状況に対応できる冷静な思考と豊富な経験を併せ持つ対人宝具を持ったセイバー、もしくはランサーの女性サーヴァント。
そこまで条件を絞り込めば、該当する人物は一人しかいないだろう。高まる緊張感の中で、俺は彼女の名前を口に出した。
「影の女王、『スカサハ』……彼女がここにやってくるサーヴァントだ」
「……兄貴、大丈夫?」
「ああ、お前が思ってるよりかは平常心を保ててるぜ」
カルデアのゲートの前でやって来る英霊を待ちながら俺は兄貴に話しかける。本心から俺は兄貴が心配だった。
スカサハは兄貴の師匠だ。そして、前に本人から聞いたが……男女の関係にあった事もあるらしい。メイヴに突っかかれたスカサハが、「セタンタの童貞を奪ったのは私だぞ」と彼女を挑発している所も見た。
それが本当なのかはわからない。でも、スカサハはクー・フーリンと言う男にとって大切な人である事は間違いないだろう。
強く凛々しい自分の師が敵に捕らわれ、しかも奴隷と堕ちてしまった。仲間を奪われたというよりも、彼にとっては本当の意味で寝取られたと言った方が正しいだろう。
俺が兄貴の立場だったら動揺しないはずが無い。しかし、以外にも兄貴は涼しい顔をしており、いつも通りの笑顔を俺に見せながら言った。
「マスター。サーヴァントなんてのは召喚されたら最後、主の為に命を懸けて戦うのが運命だ。生前の友が今日の敵なんてこと、いくらでもあり得る」
「でも、今回は事情が……」
「分かってるよ。でもな、俺のやる事は変わらねぇ。お前を守って、敵を倒す。んで、師匠の事はお前に任せるさ。きっと助け出せんだろ?」
「兄貴……」
すっきりとした兄貴らしい考え方、しかし、今はそれが痛々しく感じられる。
本当なら敵に屈した師の姿など見たくないだろう。こんな形で戦う事に納得など出来るはずも無いだろう。
だが、光の御子は俺を守るためにこの場に居てくれている。その思いに応える方法はたった一つだ。
「……勝とう、それでスカサハを取り戻そう。絶対に!」
「なんだよ、まさかそれ今決めた訳じゃねぇよな? 俺ははなっからそのつもりだったぜ?」
兄貴の冗談に笑みを浮かべて見つめ合う。ほんの少しだけ救いを感じたその時、ゲートが輝き始めた。
『来るぞ! 皆、準備は良いかい?』
ドクターのその言葉に全員が身構える。徐々に強くなる輝きを目にしながら俺はサーヴァント達に指示を飛ばす。
「スパルタクスと兄貴は前線に! ロビンは二人を援護出来る位置で射撃を頼む! マシュ、いつでも宝具を展開できるように準備!」
「応ッ!」
「さぁ、叛逆の時間だ!」
「しんどい戦いになりそうだね、こりゃあ!」
「了解しました!」
四者四様の反応を示すサーヴァントを見た後で俺は光り輝くゲートを睨む。その輝きが最高潮に達し、弾けて消えた後に立っていたのは……予想通りの人物であった。
「……ほぅ、随分な歓迎だな。予想はしていたが、まだ戦力が残っていたか」
「……スカサハっ!」
「お前が我が主に歯向かう愚か者か、降伏し頭を垂れるなら良し、楽に心臓を穿ってやろう」
冷たい視線を俺に送り、鋭くにらみつけるスカサハ。その瞳にかつてあった温もりは消え失せ、ただただ冷たい氷の様になっている。
その姿を見て居られなかったのか、俺の前に出てきたマシュは大声で彼女に叫んだ。
「スカサハさん、目を覚まして下さい! あなたはソロモンに操られているんです!」
「……マシュ、どうやらお前は我らが主を裏切った様だな。これは驚きだ、この者たちに主への忠義を誑かすほどの魔術が使える者が居ようとは」
「違います! ソロモンが私たちを魔術で狂わせたんです! わからないんですか!?」
「何を言う、私こそは忠実なるマスターの僕……グランドキャスター、ソロモン様に使えるサーヴァント、スカサハだ。お前こそ今までマスターから受けた寵愛を忘れたのか?」
「……おいマスター、スカサハの奴、なんか変じゃねぇか?」
「ああ、それは俺も思った」
肩に乗るオリオンに対して返事をする。何かスカサハの様子がおかしい。ただソロモンに淫紋令呪を植え付けられて狂ったのとは違う、妙な違和感を感じるのだ。
「……マスター、もしかしたらスカサハは俺たちの記憶が無いのかもしれないぞ」
「ロビン、それってどういう意味?」
「さっきマスターと話したスカサハはまるでお前さんを初めて見る様な口ぶりだったろ?それどころかカルデアに関する記憶すら無い雰囲気だぜ、ありゃあ……」
ロビンの一言に俺は感じていた違和感の正体に気が付いた。確かにその通りだ、スカサハは俺の事を誰だかわかっていないのだ。
恐らくスカサハはかつての記憶を消されてしまったのだろう。そして、新たな記憶を植え付けられたのだ。
だから自分の事をソロモンに使える忠実な部下だと思っているし、俺たちに対して初対面の様な素振りを取ったのだ。
マシュの事は一緒に捕まり、奴隷として過ごしていた時があるから覚えていられる。記憶があるのはソロモンに関する事だけなのかもしれない。
「まぁ良い。マシュ、お前を連れて帰った暁には再び主に忠誠を誓わせてやろう。共にソロモン様に抱かれればその温もりを思い出すだろうさ」
「そんな……スカサハさん……」
完全に堕ちきっている。一片の情さえも見せない目つきで俺たちを睨むスカサハには、俺たちは憎き敵以外のなんでも無いのだろう。
こんな状態のスカサハを元に戻す事なんて出来るのか?軽く絶望しかけた俺たちだったが、希望は意外なところから芽を出し始めた。
「……待て、お前……まさか、セタンタか?」
「……俺の事が分かるのかよ?」
「ふふっ、私を誰だと思っている?弟子の顔など一目見ればすぐに思い出すさ」
愉快そうに笑うスカサハはそう言いながら手に持った槍を兄貴に向ける。そして、何処か恍惚とした表情で語り始めた。
「最高だ……! ここまで心躍る出会いが私を待っていようとは想像もしていなかった。この命を下して頂いた主には感謝してもしたり無い!」
そう言いながら自分の秘所へと手を伸ばすスカサハ。今まで俺たちは気が付かなかったが、彼女の服装にもソロモンのいやらしい改造が施されていたようだ。
全身をぴっちりとしたタイツの様な物で覆っていたスカサハの戦闘服、マシュがほぼ全裸とも言える格好をさせられていたのに対してぱっと見はそれは変わらない。
しかし、すぐには気が付かないところにソロモンはスカサハの尊厳を踏みにじる様な細工を施していた。
「くっ…♡ ふぅん…♡ はぁっ……♡」
スカサハの秘所を隠す布は存在していなかった。代わりにそこを覆い隠す様にして女性器に突き刺さる棒状の物が存在するのみだ。
その棒状の物が振動するバイブだと気が付いたのは、スカサハが自身の手でそれを掴み、自慰行為を始めてからだった。
ーーーヴヴヴヴヴ…………ッ!
「あぁ…♡ 昂る、昂る…っ♡ これほどの快感、何時振りだろう…?」
バイブの振動音が、淫らな水音が、スカサハの嬌声が響く。かつての知的な彼女からは想像もつかない痴態を見るマシュの顔からどんどん血の気が引いて行く
「嘘……こんな、ひどい……」
「くぅっ♡ イクっ♡ イクうぅぅぅっっ♡」
一際大きな声を上げたスカサハが背中を反らして仰け反る。足元にむわりと匂う水たまりを作った後で、スカサハは俺たちに蕩けた視線を向けた。
「……あぁ、すまないな。どうにも興奮すると落ち着くのに一度達しなくてはならないんだ。主のくれたこの服はその為に大いに役立っているよ」
「……正直、あんたのそんな姿なんざ見たくなかったぜ」
クー・フーリンが俺たち全員の思いを代表して述べると共に一歩前へ出る。敵となったかつての師匠を見るその瞳は怒りに燃えていた。
「マスター、悪いがここは俺にやらせて貰うぜ」
「そんな! 一人じゃ無理です! 私たちも一緒に……」
無謀とも取れるその言葉に対してマシュがクー・フーリンを落ち着かせようとするが、俺はそれを遮ると彼の顔を見た。
「……限界までは見守るよ。でも、俺たちは兄貴を失うわけにはいかない。分かってるよね?」
「ああ、その辺の判断はお前さんに任せるよ。だから、少しだけこの場を俺に預けてくれ」
「……分かった」
頷いた俺に対して無言の礼を述べた兄貴はそっと前へと歩いて行く。マシュは俺に対して何も言わないが、その視線はこれで良かったのかと語り掛けてきている。
その答えはこうだ。良い訳が無い、本来なら全員でかかるべきだ。しかし、それと同時に言わなきゃならないことがある。
それはきっと後ろで俺と同じく兄貴を見送ったロビンフッドや、狂化されたスパルタクスも分かっている事だろう。同じ男ならば感じるものはあるはずだ。
男なら、たとえ何を犠牲にしたとしてもやりぬかなければならない時がある。ケルトの大英雄「クー・フーリン」にとって、今がその時なのだ。
だから俺は彼を見送った。彼を信じて、彼を戦いへと送り出した。後は、彼がやり遂げるだけだ。
「……待たせたなスカサハ、相手をしてやるよ」
「お前ひとりで戦うのか? 随分と余裕があるじゃないか」
「はっ! ソロモンの傀儡に堕ちたあんたなんざ俺一人で十分さ! さっさとその悪夢を終わらせてやるよ」
「悪夢……ふふ、そうか、悪夢か……」
兄貴と問答を続けたスカサハは何やら楽し気に呟くと高笑いを始める。ひとしきり笑った彼女は槍を手に持つと、幸福そうな顔でこう言った。
「私にとってこの戦いは幸せそのものでしかない。勝てば主の寵愛を受けられ、負けたとしてもお前に殺して貰えるのだからな……まさに夢の様だよ。悪夢を見ているのはお前の方だろう、セタンタ?」
スカサハのその言葉は的確だ、クー・フーリンにとって今の状況は悪夢でしかない。
それに、スカサハと違いこの戦いに勝っても負けても不幸な出来事が起きることは間違いないのだ。しかし、クー・フーリンは心を挫く様なその一言を受けながらも笑みを浮かべる。
「戦いの後に何が残るかなんて考えやしねぇよ。あるのはただ、目の前の勝利への渇望だけだろ?」
「ふふ……そうだな、そうであった。しかし、お前ほどの相手ならばこれは邪魔にしかならないだろうて……」
そう言いながらスカサハは己の膣に力を込めて挿入されていた異物を排出する。床に転がり振動を続けるバイブを蹴り飛ばすと、彼女は槍を構えて戦いの姿勢を取った。
「さぁ、始めようセタンタ。狂おしい程に甘美な殺し合いを…!」
「あぁ……あんたとの約束を果たさせて貰うぜ」
己の武器を構えた二人は睨み合い、向かい合う。一気に膨れ上がった殺気と戦いの緊張感が最高潮に高まった時、二人は同時に叫んだ。
「その心臓……!」
「貰い受けるっ!」
槍のぶつかり合う激しい音、目の前で行われているのは神代の世界の最強とも名高い槍使い達の本気の決闘。
光の御子と影の女王の戦いが、今、幕を開けたのであった。
「せあぁぁっ!」
「おらぁっ!」
幾度となくぶつかり合う二人の朱槍、何合もの鍔迫り合いを繰り返す二人の戦いは熾烈を極めた。
双方譲らない互角の戦い……だが、その様相はいつものそれとは大きく違っている。
何と言うか、スカサハの戦い方がいつもと違うのだ、所々に見える隙をクー・フーリンは的確に突き、彼女にダメージを与えている。
きっとスカサハは記憶を失った影響で戦い方に変化が生じているのだろう。体に染みついた記憶が自分に槍を振るわせるが、かつて誇った技を完璧に覚えているわけでは無い。だから隙が生じる。
それでも互角の戦いと俺が評したのは、彼女の受けるダメージが悉く回復されている事と、兄貴がその一撃を食らえば即決着がつくほどの攻撃をスカサハが繰り出してきているからだ。
きっと淫紋令呪の効果だろう。身体能力の増強と自動回復のスキル……戦闘続行のスキルも有しているかもしれない彼女は、いつもとはまた違う脅威を持って俺たちに襲い来る。 勝負はどちらに転んでもおかしくない。そう思った時であった。
「ふむ……このままでは決着がつきそうにないな。ならば……」
そう言ったスカサハが一歩下がると、彼女の体から膨大な魔力が迸り始めた。鋭い殺気を伴うその行為に対してクー・フーリンも対応策を取る。
「……宝具で勝負を決める気か、良いぜ、乗ってやるよ!」
クラウチングスタートを思わせる姿勢を取ると目線の先にスカサハを捉える。互いに必殺の一撃を繰り出そうとしている師弟が目を見開くと、同時にその場から掻き消えた。
「この一撃、手向けと受け取れっ!」
「刺し穿ち、突き穿つ……!」
ロケットの様な加速をつけて飛び上がったクー・フーリンは空中で槍を構える。真っ赤な魔力が迸るそれを全力の力を込めて握りしめている。
対するスカサハも同じように朱槍に魔力を込めてその一撃を迎え撃つ。互いの全霊の一撃はほぼ同時に繰り出される事になった。
「
「
轟音、爆発、烈風……俺たちを吹き飛ばすほどのそれらを必死に耐えながら戦いの行く末を見守る。
二人の宝具の衝突の余波はしばらく続き、それらが消え去った後で残っていたのは……
「ちっ、やっぱ無理だったか…!」
「ふふふ……惜しい惜しい、お互い仕留め損ねた様だな。しかし……」
クーフーリンもスカサハもお互いに無事だった。細かな傷はあるものの戦いに支障は出ない様だ。
しかし、その手からは己の武器である朱槍は消えている。同等の威力を持つ二つの宝具はお互いにぶつかり合い、相殺して消え去ったのだ。
もちろん時間を掛ければ復活もするだろう。しかし、兄貴の今の状況は最悪だった。
「セタンタよ、赤子でも分かる単純な計算だ……1引く1は0。では、2引く1は?」
「くっ……!」
スカサハの手に握られたもう一本の朱槍を見ながら兄貴が声を出す。そう、スカサハは二槍の使い手だ。例え一本の槍を失ったとしてももう一つの槍がある。
だが、クー・フーリンは違う。ただ一つしかない朱槍を失った今、彼には師にあらがう術は無いのだ。
「今度こそ決着だな。結局、お前は私を殺せる男では無かったという事か」
残念そうに呟いたスカサハは投擲の構えを取る。必ず心臓を穿つ因果逆転の槍は放たれたら最後、兄貴の心臓を射抜くだろう。
それは必ず阻止しなくてはならない。俺は傍らに控えるマシュを見ると、指示を飛ばす。
「マシュ、宝具を展開っ! スカサハの攻撃を防ぐんだ!」
「はいっ!」
それを予期していた様に瞬時に飛び出したマシュは自分の盾を構えて宝具を展開する準備を始める。
マシュの宝具『
今、彼女の槍は一本しかない、単純計算にして威力は半分、十分に可能性はある。
「……真名、開帳ーーー!」
マシュの盾から光が溢れる。このスピードなら宝具の開放は間に合う、スカサハの一撃より早く盾を展開できるはずだ。
確かな勝機を感じた俺は心の中で拳を握る。武器を失ったスカサハが相手ならば十分に勝ち目はある。あとはこのまま上手く事が運べば……
「……ようやく、離れたな」
だが、俺の思いに反してスカサハは薄ら笑いを浮かべた。自らの全力の一撃を受け止められそうになっているというのに余裕を感じるその行動に俺が違和感を感じた時、クー・フーリンは叫んだ。
「マシュ! 戻れ! 来るんじゃねぇ!」
「えっ……!?」
駆け出す勢いを止められないマシュに対して兄貴は叫び続ける。必死の形相でマシュを自分から遠ざけようとしている彼は俺を見ながら叫んだ。
「スカサハの狙いは俺じゃねぇ! 狙われてんのは……」
「セタンタ、残念だがもう遅い」
俊敏な動きで槍を構えたスカサハは投擲の目標を兄貴よりも奥に定める。その時、俺に冷たい氷の様な何かがまとわりついてきた。
「お前を倒せば詰みになる事に気が付いていなかったわけではあるまい、カルデアのマスターよ。盾を自分から遠ざけたのは最大の失態だったな」
スローモーションの映像の様にスカサハの手から投げられる槍を見ながら俺はすべてに気が付いた。狙われていたのは……俺だったのだ。
最初からそうだったのだ、今の今までスカサハは俺を殺す機会を狙っていた。それが出来なかったのは自分の宝具を防げるマシュが俺の傍に居たからに過ぎない。
そのマシュが俺の傍から離れた瞬間を狙って、スカサハは必殺の槍を俺へと向けたのだ。なぜこんな簡単な事に気が付かなかったのだろう、この場で一番死んではならない人間は俺だったと言うのに……
「先輩っ!!!」
マシュが俺に向かって手を伸ばすのが見える。だがもう遅い、彼女は間に合わない。この場における最大の盾は、スカサハの攻撃を防げる場所に無い。
スカサハの手から放たれた槍を見て俺は覚悟を固めた。もうどんなことをしても俺は助からないだろう。なぜならば、彼女の槍は因果逆転の槍……心臓に当たったという結果を作ってから放たれる呪いの朱槍だからだ。
俺がどんなに逃げようとも、ロビンやスパルタクスが俺の盾になってくれようとも関係ない。ゲイ・ボルクは俺を追尾し、障害を破壊して俺の心臓を穿つだろう。
(ドクター、ダヴィンチちゃん、マシュ、皆……ごめん……)
俺は自分の愚かさを呪い、救えなかった皆の顔を思い浮かべながら目を閉じる。そして、やって来る死を待ち続けた。
「……ざけんじゃねぇ、ざけんじゃねぇぞ!」
だが、俺に覚悟していた痛みが襲い来ることは無かった。代わりに聞こえてきたクー・フーリンの怒号に恐る恐る目を開けば、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「ば、馬鹿な……そんな、そんなことが……!?」
俺と同様にスカサハも驚きで目を見開いている。その眼が見つめているのは、自分の投げた槍を瞬時につかみ取り、手から血を流す弟子の姿であった。
何が起きたかは完全には理解していない。だが、その光景を見た時、俺は大体何が起きたかは察することは出来た。
信じられない事に、兄貴はスカサハが投げた槍が完全に彼女の手から離れる前にそれを掴んだのだ。故に槍は俺に向かって飛んでくる事は無かった。
もしもこれを行ったのが他の英霊だったならば、槍はその人物の腕を引きちぎり、手を貫いてでも俺へと向かってきただろう。しかし、槍を掴んだのはクー・フーリン……正式なゲイ・ボルクの使い手の一人だ。
スカサハ同様に朱槍を使う身である彼だからこそ出来たその離れ技、槍自身が投げられたと知覚する前にそれを掴み取るなど普通ならば無理だろう。
「ありえない……何故、何故だ…!?」
驚愕し狼狽えるスカサハもこの事態を完全に受け入れて居られない様だ。目を見開いて目の前に立つ自分の弟子を見ていた彼女だったが、その眼が更に見開かされた。
「あっ……!」
ゴスッ、と鈍い音を立ててスカサハの腹部に兄貴の拳がめり込む。背中側に向かって衝撃が抜けるほどの一撃を受けたスカサハは体をくの字に折って声を漏らす。
「がっ、はっ……」
「教えてやるよ、なんで俺があんたの一撃を止められたかを……それはな、あんたが自分の流儀を捨てたからだ」
気を失う寸前のスカサハに向かってクー・フーリンは語る。自分が師の一撃を止められたその理由を……
「目の前の敵から注意を逸らすだなんて真似、前のあんたなら絶対にしなかった。戦っていたはずの俺を視界から外した瞬間、あんたは自分の流儀を捨てたんだ。そんな奴、例えどんなに技が優れていようとも怖くは無いね」
「……あぁ、そうか……私は、自分から負けを選んでしまったのか」
兄貴の言葉に納得したスカサハは、崩れ落ちながら自分 を倒した弟子に向かって笑みを向けると賛辞の言葉を投げかけた。
「セタンタ……よくぞこの師を倒した。お前の勝ちだ……あとは、この愚かな師にお前の手で死を与えてくれ……それが私の、最後の願い……」
その言葉を言い切る前にスカサハは気を失った。地面に倒れ伏し、動かなくなった師を見ながら、兄貴は呟く。
「……こんな勝ち方認められっかよ。あんまふざけた事言ってんじゃねぇぞ、馬鹿師匠が!」
その横顔は、どこか寂しそうだった。
「あっ! くぅっ……くはぁぁっ!?」
後ろからホムンクルスに抱かれたスカサハが嬌声を上げる。彼女は腕と脚をホムンクルスの体内に埋め込まれ身動きを封じられた上で、そのホムンクルスに犯されていた。
「ああああぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴にも近い絶叫を上げたスカサハの体からがくりと力が抜ける。しかし、ホムンクルスはそんなことも意に介さずに彼女を突き上げ続けた。
「ぐっ……くっ、あ、あぁぁぁぁっ!」
リズミカルに子宮を押し上げる男性器の感覚に耐えようと歯を食いしばったスカサハだったが、もにゅもにゅと手を伸ばしたホムンクルスに豊かな胸を揉みしだかれると辛抱堪らないと言った様子で喘ぎ声を漏らす。俺たちは、そんな彼女の様子を見ていた。
俺たちが見ているのはスカサハの記憶だ。ダヴィンチちゃんの発明を使って、今、俺たちはスカサハが堕ちた時の記憶を彼女の脳内から呼び出して見ているのだ。
それは決して見ていて気分の良いものでは無い。しかし、英霊の中でも格別強い彼女をソロモンがどうやって堕としたのかを知る事は、今後の戦いにとっても重要な事だ
「くぅぅぅん……はぁぁ……っ」
「良い様だな、影の女王よ」
快感に震えるスカサハの前に姿を現したソロモンは彼女の姿を見て愉快そうに笑う。そして、その顔を覗き込みながら話し始めた。
「お前の持つ様々なスキルを全て性的感度の上昇へと書き換えてやったが……それでも堕ちぬとは流石と言うべきだな」
「……ふん、こんなもので私を堕とせるとでも思っているのか? むしろ退屈なくらいだ」
体を震わせながらもスカサハは必死に強がる。しかも、それはただの強がりではない。固い決意を伴った宣誓としてソロモンに告げているのだ。
「……何だったらこの木偶人形に代わってお前が私を抱くか? ……失敬、お前の粗末なものでは私を満足させられるはずもないか」
挑発と侮蔑の言葉を持ってソロモンを睨むスカサハ。その表情からは余裕すら感じられる。
実際は厳しい所なのだろうが、それを感じさせないところが彼女らしいと俺は思った。
しかし、その侮蔑を受けたソロモンは冷たい視線で彼女を睨むとその頭を両手で掴む。そして、無情な宣告を行った。
「……いい気になるなよ影の女王。私がここに来たのはお前とお喋りするためではない。お前に止めを刺しに来たのだ」
「ぐっ……!」
ソロモンの手から魔力が放出されるとスカサハが一瞬顔を歪めた。苦しそうな顔をしたスカサハは目の前に居る憎き敵を睨みながら問いかける。
「一体、私に何をした?」
「分からぬか? ……ふふふ、分からぬか! それもそうだろうなぁ!」
愉快そうに笑うソロモンを見るスカサハの表情に一瞬だけ怯えが映る。しかし、それを吹き飛ばして気丈に耐えようとした彼女に向かって、ソロモンは自分のしたことを解説し始めた。
「今、私はお前の記憶を一つ消させて貰ったのさ! 一体どんな記憶が消えたのか、お前にはわかるまい?」
「な、なんだと……?」
「この話をしている間にもまたいくつか記憶を消したが……お前は自分のどんな記憶が消えたのか分かっているかな?」
「ぐ……う……」
そう語るソロモンの言う事は嘘ではない。実際にスカサハの内面を見ることが出来る俺たちには、彼女の中から幾つかの思い出が消え失せる様がはっきりと見て取れた。
そしてそれはスカサハにもそうなのだろう。しかも、自分のどんな記憶が消えているのか分からない分、数段性質が悪い。何か大切な事を思い出せないもどかしい思いをスカサハは抱え続けているのだ。
しかも、彼女にとってはそれはただ記憶を消されるという事以上に重い意味を持っていた。
スカサハは死ねない身だ。死者と生者のはざまの存在として長い間を影の国で過ごしてきた。そんな彼女の生きてきた証明こそが自分の記憶なのだ。
もし、彼女が自分の記憶を全て失ったとしたら、それはスカサハが生きていたという事実が完全になくなるのと同義だ。
もう彼女は生者の世界に行くことは出来ない。新たな思い出を作る事は出来ない。かつての在りし日の思い出こそが、彼女の心の支えとなる生きて来た証なのだ。
そんな彼女の記憶を消すと言うのはあまりにも残酷だ。自分が何者かも思い出せなくなったスカサハは、延々と孤独と恐怖に怯えて生き続ける事になるだろう。それが分かっているスカサハの表情がみるみると変わって行く。
「や、やめろ……止せ……」
「良い表情になったな。安心しろ、今私が消しているのはお前が英霊へとなってからの記憶……お前の生きて来た証を消す事にはならないさ、だが……」
ソロモンの笑みが告げる。自分に従わなければ次に消えていくのは英霊になる前の記憶だと。それを察したスカサハは顔を背ける。しかし……
「ひぃぃぃっ!?」
自分を抱くホムンクルスが突如腰を跳ね上げ始めた。弱っている心に快楽での追い打ちをかけられたスカサハには先ほどまでの耐えてやろうという気概が欠片も見えない。
与えられる暴力的な快感に甘い声を漏らすスカサハに対して、ソロモンはさらに追い打ちをかける。
「どうやらお前は私に忠誠を誓うのが嫌らしいな……ならば、望み通り生きる屍へと変えてやろう」
「あぁぁぁぁぁっ!?」
ソロモンの手から魔力が発せられる度にスカサハの記憶が消えていく。まるで泡が弾けるかのように次々と消えていく自分の思い出を感じたスカサハは涙ながらにソロモンに懇願した。
「た、頼む……やめてくれ……っ」
「……『頼む』? 『やめてくれ』? ……どうやら、影の女王はまだ自分の立場が分かっていないらしい」
「やめてください! お願いしますっ!」
恫喝する様に笑うソロモンに対してとうとうスカサハは下手に出た言葉遣いで情けを求める。この瞬間、彼女の心は完全に折れてしまった。
びくびくと震えるスカサハをソロモンは非常に楽しそうな目線で見つめる。もう俺たちの知る気丈な彼女は何処にも居ない、ここに居るのは、ソロモンの脅しに負けて心を折られた哀れな女性だ。
「ならば問おう、お前は私に淫紋令呪を刻まれ、私の奴隷となって忠誠を誓う事を望むか?」
「……は、はい……誓います。だから…」
「……どうやら嫌々私に従う様だな。私は優しいからそんな酷な真似はしない。代わりにお前の記憶を…」
「刻んでください! お願いします! 私をソロモン様の奴隷にして下さいっ!」
「ククク……そうか、そんなにも私の奴隷へと身を落としたいか……ならば」
誇りも何もかもをかなぐり捨てて自分に懇願するスカサハを見たソロモンはその下腹部に手を置く、そして、そのまま彼女に質問を始めた。
「誓うか? この私に永遠の忠誠を、望むか? 我が奴隷として快楽の虜になる事を……」
「はい……誓います。望みます! 全てはソロモン様の御心のままにっ!」
「良し良し……では望みどおりにしてやろう」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ……♡」
光がソロモンの手から発せられたと同時にスカサハの声が更に甘く蕩けたものに変わる。そっと彼女の下腹部から手を離したソロモンは、そこに刻まれた淫紋令呪を見ながら満足そうに呟いた。
「さぁ……これでお前も我が僕だ……おい」
「ひぅんっ……♡」
ソロモンの命を受けたホムンクルスがスカサハを体に取り込んだまま立ち上がる。
歩み出したソロモンに付いて行くホムンクルスが脚を進める度、子宮を肉棒で突かれるスカサハから嬌声が上がる。
「あぁ……♡ あぁぁぁ……っ♡」
「スカサハよ、喜ぶが良い。先ほどお前の記憶を弄った時に、お前の最も大切な記憶は我が魔術で保護しておいた。これからどんな事をされてもその記憶は消えることはないだろう」
「はいぃ……あ、ありがとうございます。このスカサハ、ソロモン様の優しさに感無量でございます……!」
「うむ、お前が喜んでくれたなら私も嬉しい。さて、お前に初めての仕事をやろう。心配するな、とても簡単な仕事だ。お前はただ、そのホムンクルスに抱かれたままこの城の中を一周してくるだけで良い。我が僕へと堕ちたその姿を見せつけ、私に抵抗することがどれだけ愚かな事か英霊どもに教えてやれ、良いな?」
「は、はい……このスカサハ、身命を賭してその任務をやり遂げてみせます…」
「ふふふ……愛い奴よ。だがしかし、そんな簡単な任務ではお前も退屈だろう。少しだけ……ほんの少しだけ、お前に努力する余地をくれてやる」
「え……?」
恐怖の色を浮かべたスカサハに対してソロモンは自分の右手に刻まれた令呪を見せつけると、それを使用しながら彼女に命令を下す。
「令呪をもってスカサハに命ずる。絶頂する度に自身の記憶を一つ消せ」
「ひっ……!」
無情、あまりにも残酷なその仕打ちにスカサハは涙を浮かべながら恐怖した。しかし、ソロモンは更なる命令を下していく。
「重ねて令呪をもって命じる。そのホムンクルスに子宮を突かれる度に絶頂しろ、さらに命じる。絶頂する度に絶大な幸福感を得ろ、以上だ」
「い、嫌……いやぁぁぁぁぁぁっ!」
泣き叫びホムンクルスから逃れようとするスカサハ、しかし、彼女の抵抗はなんの意味も為さなかった。
あまりにも恐ろしい命令を下された事に絶望した彼女はぼろぼろと大粒の涙を流しながら叫び続ける。そんなスカサハに対してソロモンは言い聞かせる様にして語り掛けた。
「そう怯えるな……さっきも言ったが、お前の最も大切な記憶は消えはしない……他の記憶は完全に消え失せるがね」
「あ、あぁ……ソロモン様、どうかご慈悲を……」
「駄目だ。これは偉大なるソロモン王に逆らった罰なのだからな。安心しろ、記憶が抜けたお前には私が新たな記憶を植え付けてやる。空っぽの抜け殻になる恐れはないぞ」
「いやぁ……やめて……やめてぇ……」
恐怖の余り、スカサハの股間からは黄金水がアーチを描いて流れ出ていた。泣きじゃくり、情けない姿を見せながら失禁したスカサハにかつての面影はどこにもない。
まるで子供の様に震えるスカサハを愉悦に富んだ目で見つめた後……ソロモンは、ホムンクルスに命令を下した。
「あぁぁ……」
ホムンクルスが脚を踏み出すと共に自分の体が持ち上げられる。次には自分の子宮めがけて巨大な肉棒が繰り出され、自分はなすすべなく絶頂させられるだろう。そうなれば大切な記憶が一つ消される。それが分かっていたスカサハは必死に耐えようとした。歯を食いしばって快楽に飲まれぬように……
だが……
「はひぃぃぃぃぃぃっ♡♡♡」
とんっ、と子宮を叩かれた瞬間、そんな我慢は吹き飛んでしまった。抗い様の無い快感に流されて体を震わせながらスカサハは絶頂してしまう。
与えられる幸福感に身を包まれて蕩けそうになるも、同時に消え去った記憶の事を考えて恐怖に飲まれる。そんなスカサハの内心など察する気の無いホムンクルスは、主の命令通りに歩みを進めていく。
「ふあぁぁっ♡ あひぃぃっ♡ あぁぁぁぁっ♡」
一歩、また一歩とホムンクルスが歩く度にスカサハの子宮が肉棒に押し上げられ、絶頂へと導かれる。言い様の無い多幸感に酔いしれながらも彼女の頭の中からは次々と記憶が消え去って行った。
「狂う……くるってしまうぅ……♡」
かつて戦った強敵の、育て上げた弟子たちの、共に戦った仲間たちの顔が次々と消えては思い出せなくなる。とても悲しい事なのに、自分は絶頂の幸せに酔いしれてそれを悲しむことも出来ない。
そんな歪んだ快感に押しつぶされたスカサハは気が狂いそうになっていた。すれ違う者に手を伸ばしては必死に助けを求める。
「たしゅけて……だれか、たしゅけてくれぇぇっ……♡」
牢に捕らわれている者たちに手を伸ばしては哀願を求める。スカサハは忘れてしまっていたが、それはかつて共に戦ったカルデアの仲間達だった。あまりにも酷い変わり様を見せるスカサハに対して彼らは絶望に染まった視線を送るも、スカサハはその視線に気が付く余裕すら無くただ先へと連れてかれて行く。
「ますたー……ましゅぅ……たす、けてくれぇ……っ!」
覚えのある人間の名前を口にしたスカサハだったが、次の瞬間には二人の事を忘れてしまっていた。同時に彼らと過ごした楽しい思い出も心の中から消え去る。
「はひぃ…♡ ひぃぃ……♡」
そうやって城の内部を半分ほど歩いた頃、スカサハの脳裏には殆どの記憶が残っていなかった。もはや大切な思い出を失った事すら思い出せないスカサハに対して、ホムンクルスは更なる責めを敢行する。
「ほぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
ホムンクルスの体から生み出された二本目の剛直がスカサハのアナルを貫いたのだ。あまりの衝撃と快感にスカサハは獣じみた叫びをあげる。
膣とアナル、二穴を穿たれたスカサハはもう正気を保つ事すら困難になっている。だが、気を失う事は許可されていない。ただただ、与えられる快感に震えるだけである。
「しりっ、あながぁっ、すごいぃっ……ま、まえもふかくつらぬかれて、すごいぃっ♡」
口から洩れるのは快楽に溺れた自分の思い。恥ずべき事のはずなのに、何故か心の奥から悦んでいる自分がいる。
一歩ホムンクルスが歩む度にスカサハから英雄としての思いが剝ぎ取られ、ただの雌へと堕とされて行く。今のスカサハはそれすらも幸せと感じてしまう程に堕ちきっていた。
「もっとぉ……♡ もっとふかくついてくれぇっ♡ もっとわたしをきもちよくしてくれぇ……♡」
ついには自分からホムンクルスへと快楽を強請る始末、甘い声で鳴きながら体の自由になる部分を揺らして必死に快楽を得ようとしているスカサハだったが、ふと自分を抱えるホムンクルスが歩みを止めた事に気が付いて切ない声を上げる。
「なんでだぁ? なんで突いてくれないんだぁ……? 犯してくれ、私をおかしてくれよぉ……っ!」
駄々をこねる子供の様にいやいやと首を振りながらホムンクルスに甘えるスカサハ。少し前まで快楽に耐えようとしていた自分が居たことも忘れて必死になってホムンクルスに自分を犯す様に頼み込む。
だが、ホムンクルスはびくともしない。まさか機能を停止してしまったのではないかと心配になったスカサハだったが、自分を貫く剛直が一瞬動いたのを感じて甘い声を上げた。
「うっ、あぁん……♡」
ぴくりと震えたホムンクルスは間違いなく生きている。では、何故動いてくれないのか?
顔を持ち上げて頭上のホムンクルスの顔を見つめていたスカサハはふとある可能性に思い当たると納得した様に頷くと、彼に語り掛ける様にして呟く。
「私がどこか気取っていることが気に食わないんだな……? まだ女王だとか、英霊だとかに縛られてるとお前は言うのだな……?」
その言葉を肯定する様にしてホムンクルスはスカサハの膣を責める。確かな意思疎通が出来ている事に歓喜したスカサハはホムンクルスに対して質問を投げかけた。
「なら、どうすれば良い? どうすれば私を再び抱いてくれると言うのだ?」
その質問にホムンクルスは黙って答えない。まるで自分で考えろと言わんばかりの視線を感じたスカサハは顔を赤く紅潮させると身震いをしてから彼に告げる。
「で、では、これならどうだ? ……んっ!」
ぷるっと震えたスカサハはその場で放尿して見せた。 ちょろちょろと自分の股間から流れる黄金水をホムンクルスに見せつけるとスカサハは胸を張って答える。
「どうだ? こんな浅ましい真似をする女が女王だと思うか? 英霊の誇りをまだ持っていると思うか? こんな私は、お前が犯すべき淫らな女ではないのか?」
期待を持ってスカサハはホムンクルスに尋ねる。自身の放尿が終わり、足元に黄色い水たまりが出来た後で、スカサハはホムンクルスが再び動き出すことを期待したが……
「……まだ、ダメなのか?」
寂しさを感じさせる口調でスカサハが尋ねる。彼はまだびくとも動かないでその場に立ち続けている。
まだ自分は浅ましい雌になり切れていないのだ。そう考えたスカサハは更に恥ずべき行為に出る。深く息を吸い込み大声を出す準備を整えた彼女は、城中に響くような大声で卑猥な言葉を口にした。
「頼む! この雌犬に慈悲をくれ! 濡れそぼった蜜壺と不浄の穴に太い肉棒を突き入れて犯してくれっ!」
言い切った彼女は再びホムンクルスを見つめる。しかし、彼は動き出そうとはしない。また駄目だったかと落胆したスカサハだったが……
「わっ……!?」
ぽふ、と自分の頭を撫でるホムンクルスの手に不思議な安心感を覚える。自分をよしよしと撫でるその手はその調子だと言っている様だった。
「そうか……これでいいのだな! だが、まだ足りないと言う事か?」
今度は膣をぐちゅりと責められる。これが肯定の意味だと分かっているスカサハは彼の言いたいことを理解した。
「そうか! 今の言葉では気取っている様に聞こえたのだな!? では、もっと浅ましい言葉で強請るとしようか……♡」
スカサハは今までの自分の使っていた言葉を封印して下品な言葉を出来る限り考える。その中で、自分の今求めていることを表す言葉を繋ぎ合わせると、先ほどよりも大きく、熱に浮かされた声で叫んだ。
「私のおまんことけつまんこをぶっといおちんぽでぐちゃぐちゃに掻き回して気持ち良くしてくれっ! 体が切なくて切なくてたまらないんだ! お前に抱かれないと思うと気が狂いそうだ、だから……っ!」
そこまで言った時だった。スカサハの頭を撫でていたホムンクルスの手が自分から離れると、手のひらを見せつける様にして自分の顔の前に差し出されたのだ。
スカサハがその手を見てみると、手のひらの中央にはぱかりと開いた穴が開いていた。さらにそこを覗き込んだスカサハは喜びの声を上げる。なんと、そこには小さな歯と舌が突いていたのだ。
「んきゅぅぅっ♡」
その手が自分の乳房を鷲掴みにすると、無遠慮に揉みしだき始める。手の中央にある口に乳首を挟まれたスカサハはそこを甘噛みされた事に嬌声を上げた。
「すごいっ♡ 両方の胸を揉まれながら、乳首を吸われているぅ……っ♡」
その快感は長きに渡って生き続けて来たスカサハですら感じた事の無いものであった。 胸に与えられる極上の快感に酔いながらも、自身の二穴に結合されている肉棒が動かない事に物足りなさを感じる。
「……お願いだ、私を奴隷にしてくれっ! お前のおちんぽで狂わせて、おちんぽ以外何も考えられない肉便器に堕としてくれっ! 私の躰は、その為にあるんだっ!」
恥も外聞も誇りも、何もかもを投げ捨ててスカサハは心からの懇願を叫ぶ。それを聞き届けたホムンクルスは目を光らせると、彼女の思いに応えるべくその一歩を踏み出す。
「はぁぁ♡ きた、きたきたきたぁっ♡ これだ、これだあぁっ……♡」
ゾクゾクと背中を震わせるスカサハ、今まさに肉棒を深く突き入れられようとしている彼女の目には、ホムンクルスから与えられる快楽しか映っていない。
記憶が消えてしまう事も憎き敵の手に自分が堕ちている事も忘れた彼女の中には確かに忘れない記憶もある。しかし、それすらも快楽によって押し流され、頭の中から消え去っている。
もうここに居るのは影の国の女王である英霊スカサハではない。快楽と肉欲に溺れたただの雌だ。
「あぁぁぁぁぁぁんっ♡」
待ち望んだ一突きを子宮に受けたスカサハは即座に達する、その熱が引かぬ合間に尻穴も穿たれた彼女は再び達した。更にその後に突き入れられる膣の肉棒の感触と引き抜かれる尻穴の排泄感に三度達した彼女は舌を放り出して喘ぎ続ける。
「はへぇ……♡ ほぉぉっ♡ いい、ぞぉ♡ すごいぃ……っ♡」
呂律の回らない舌でホムンクルスを褒め称えるスカサハ。その眼は焦点を失い宙を彷徨い続けている。
快感によって失われた眼の光。しかし、それを取り戻す程の快感を与えられたスカサハは声の限りに叫んだ。
「ひぃぃぃぃぃんっ♡ あひゃぁぁぁぁっっ♡ はへぇっ♡ あへぇっ……♡」
「お前のちんぽはさいこうだぁ……♡ 私にとって一番大事なのはこのちんぽだぁ……♡」
「絶頂すれば記憶が消えて行くはずなのに、お前にイかされる度にこのちんぽがくれる快感が私に刻み付けられていくんだぁ……♡」
「もう他の記憶なんて必要ない……このちんぽがあればいいっ♡ このちんぽがいいっ♡」
「これから先も私の事を抱き続けてくれっ♡ 私にこの快感を与え続けてくれぇっ……♡」
もはや自分が何を言っているのかも理解できていないだろうスカサハは下品なおねだりと絶頂を繰り返している。
そこから先、スカサハにとっては最高の時間が流れ続けた。再び出発地点となった廊下にたどり着くまでの間、スカサハはゆうに100以上の絶頂を感じたのであった……
「……戻った様だなスカサハ、気分はどうだ?」
「はぁ……♡ 最高の気分です、マスター♡」
ゴールである城の廊下に辿り着いたスカサハは自分に対して優しく問いかけて来たソロモンに対して従順な姿勢で答える。この城を一周する間に身も心も完全に躾けられてしまったスカサハをソロモンは愉快に見ていた。
「それは良かったな。では、次の仕事をお前に命ずる」
「はい。何なりと申しつけ下さい……」
少しだけ名残惜しそうにしながらもスカサハはソロモンに恭しく頭を下げる。と言っても、彼女の体の大半はホムンクルスに取り込まれているのだが。
「……お前の次の仕事は城の見回りだ。中を徹底的に調べて怪しい所が無いか確かめろ」
「は、はい……」
「だが……この城は広い。迷っては良くないから案内役を用意しよう」
「え……? ま、まさか……!?」
「そうだな……お前を抱いているそのホムンクルスなどが適役か。そのままの姿勢で徹底的に城の中を調べて来い。一部屋一部屋念入りにな」
「は、はぁぁ…♡ はぁぁぁぁっ……♡」
「どうせならそのホムンクルスはお前の世話役とするか、お前の仕事に付き人として付き添う様にしてやろう。それで構わないか?」
「はいっ♡ マスターの慈愛にこのスカサハ、天にも昇る気持ちです!」
「よいよい、では分かり易い様にしておいてやるか」
そう言うとソロモンはそのホムンクルスを撫でた。すると、白かった彼の体は青く染まって行き、他のホムンクルスとは完全に見分けがつく様になったではないか
「これで良し、では仕事に励むがよい」
「はいっ、かしこまりました♡ マスター……♡」
夢見心地で返事をしたスカサハの淫紋令呪を最後に一撫でした後、ソロモンは廊下の向こうへと消えて行く。残されたホムンクルスとスカサハは、その背中を見送った後でさっそく主の命を遂行し始める。
「ではイクぞ♡ 共にマスターの期待に応えようではないか! ……む?」
そこでスカサハはある事を思った。そして、頭上の青いホムンクルスの顔を見ながら言う。
「……これから先、『お前』呼びではちと不便だな。何せ、我らは一心同体の身……名前を付けてやらんとさすがに可哀想だ」
スカサハのその提案に対して青のホムンクルスは嬉しそうに反応すると彼女の胸を揉みしだく。相棒が嬉しそうな反応を返したことに喜んだスカサハは、さっそくその名前を吟味し始めた。
「ふむ……体が青いからアオ、とかでは安直すぎるか……何かいい名前はと……」
色々と考えていたスカサハだったが、自分の中でとある名前を思いついてホムンクルスを見る。
思い付いたその名前は彼女にとって大切なものだった気がする。ならば自分に至上の快楽を与えてくれるこの相棒に相応しいだろうと思ったスカサハは、嬉々としてその名前をホムンクルスに提案した。
「『せたんた』と言うのはどうだ? どこか可愛らしいだろう?」
その名前の案にホムンクルスは満足げに唸った後でスカサハの膣を突く。それが肯定の意味を持っている事を知っていたスカサハは、笑顔で彼に向かってその名を命名した。
「良し、決まりだな! 今日からお前は『せたんた』だ! よろしく頼むぞ!」
「Grrrr……♡」
「そうかそうか! そんなに嬉しいか! 私もお前が喜んでくれて何よりだ!」
自分の二穴を太い肉棒でぐちゅぐちゅと掻き回して喜びを伝えてくる青のホムンクルス……せたんたに対して、スカサハも笑顔を浮かべながら放尿する事で喜びを伝える。
所謂『嬉ション』と言う奴を嬉々として行う彼女にとって、これしきの行為など恥ずべきものでは無いのだろう。むしろ快感のスパイスとなる事を喜んでいる節がある。
「では行くぞせたんた! 一つ一つの部屋をしっかりと見て回らなくてはな!」
「Gyaooo!」
スカサハの号令にせたんたは力強く一歩を踏み出す。同時に子宮と直腸にペニスを突き入れられたスカサハは快感に喘いだ。
すでに令呪の効果は消えている為、突かれる度に絶頂することは無い。しかし、逆にそのおかげで余裕を持ってせたんたの与えてくれる快楽を味わうことが出来た。
「はぁぁ……♡ いかんいかん、お前のちんぽに酔いしれて仕事をおろそかにする訳にはいかんからな! しっかりと仕事をこなした上で愉しむぞ!」
熱い吐息と共に吐き出したその言葉は立派なものだ。しかし、スカサハは分かっている。この仕事に何の意味もない事など。
もともとソロモンの魔術によって生成された世界のはざまにあるこの城を見つけ出す事など不可能に近い。さらに魔術王直々の結界まであるのだ、侵入者などいる訳がない。
つまり先ほどのソロモンの命令の真の意味は、『そのホムンクルスと共に好きなだけセックスを愉しんでこい』と言う事だ。
それをわかっていながらスカサハは気を引き締める様にせたんたに告げる。まるでその名前を持つ他の誰かにかつてそう言っていた様に……
(せたんたよ、私の躰を存分に味わうが良い……♡ 私もおまえのちんぽをたっぷりと味わうとしよう、お互いに快楽を貪ろうではないか……♡)
口には出さない思いを心の中で相棒に伝えるスカサハ。せたんたはそんな彼女の思いをまるで受け取ったかの様に唸ると、彼女の二穴を貫きながら一歩、また一歩と城の中を徘徊して行った……
「……なんて酷い。スカサハさんが、あんな目に遭っていたなんて……」
その記憶を見終えた後、マシュが悔しそうにつぶやく。この映像を見ていた面々は思い思いの反応を見せていた。
悔しそうに俯くマシュ、フードを被って伏し目がちになっているロビン、顔から笑みの消えたスパルタクス。
そして、兄貴はと言うと、振り上げた拳をどこに振り下せば良いのか分からない様にして固まっていた。
「……まさかあの師匠がここまで見事に堕とされるなんてな。さすがは魔術王、聞きしに勝るくそったれだな」
「クー・フーリンさん……」
マシュも彼になんと言葉をかけていいのか分からない様だ。この場に居る全員が黙り込む中、次に口を開いたのはやはりと言うか兄貴であった。
「……頼むぜマスター、あの馬鹿師匠の目を覚まさせてやってくれ」
「……その事なんだけどさ」
俺はこの記憶を見ていた時に決めたとある決断を口にする。それは、きっと他でもないスカサハの為になるはずだ。
「今回は、俺じゃなくて兄貴がスカサハを抱くべきだよ。そっちの方が良い」
「なっ……!?」
俺の一言に兄貴は目を見開いて驚いた。しかし、他の面々は俺の言葉を納得した顔で認めてくれている。
「……そうだな。今回はあんたの出番だと思うぜ」
「私もそう思います。スカサハさんが忘れなかった一番大切な記憶……それって、クー・フーリンさんの事だと思うんです。だから彼女はセタンタと言う名前を憶えていた……」
「ソロモンが残した貴重な隙だ。そこを突けるのは君しかいないんだよ、クー・フーリン君」
「……マジかよ、おい」
困惑したような兄貴の様子を見た俺は一歩前に踏み出す。そして、思いの丈をぶちまけた。
「……言ってたじゃないか。今度の現界では、昔の女たちにすこしでも甲斐性を見せるって……今がその時なんじゃ無いの?」
「マスター……」
「我々も出来る限りのバックアップをする。だから、君にこの役目を任せたいんだ。頼むよ、クー・フーリン君」
ダヴィンチちゃんや俺、マシュとロビンの言葉を受けた兄貴は黙り込んで下を向いていたが、突如諦めた様にして肩から力を抜くと笑みを浮かべて手を叩いた。
「……ったく、しゃあねぇなぁ! ここまで言われたらやるっきゃねぇだろ! まぁ確かに? 昔の女を抱くんだから俺が最適だと思うけどよ」
そう言いながら部屋の入口へと向かう兄貴、振り向きざまにサムズアップをした後で、部屋から出て行く。
俺はその背中を見送った後で、隣に居たドクターに声をかける。
「……気が付いた?」
「ああ、彼、ドアから出た後、笑ってなかったね」
周りの雰囲気を気にする兄貴の良い所でもあり悪い所でもある癖、おちゃらけて場を和ませる反面で、自分が重圧を背負い込んでしまっている。
仕方が無いだろう。今回の相手はあのスカサハ、自分の師匠だ。彼女の運命を自分が握っているのならば、兄貴が緊張するのは当然のことである。
「……精神波動を見ながら最適なシチュエーションをピックアップするよ。マシュ、ロマン、手伝ってくれるかい?」
「ああ、もちろんさ!」
「私もお手伝いします!」
「俺はモニタリングしながら令呪でバックアップしてみるよ!」
「俺たちは……失敗したときに全力でスカサハを止める係かな? 絶対にそうあって欲しくないけどな」
「……大丈夫さ、絶対に」
大丈夫だ、スカサハは必ず戻って来る。なにせ彼女を救う為にケルトの大英雄、光の御子が全霊で動くのだから。
(……信じてるよ、兄貴!)
俺は頼りになる兄貴分の事を信じて、スカサハの心が解放されるのを待った。