※この作品はR-18です。

カルデア女英霊奪還作戦   作:野比のび太

72 / 147
愛情少女は夢の中(アルテラ)

 部屋に入ったマスターが見たのは、自分の掌を見つめながらそれを何度も開いたり閉じたりしているアルテラの姿だった。

 

「……ああ、お前か」

 

 自分の気配を悟った彼女がマスターへと視線を送る。意外な事に、その視線には憎しみや怒りと言った感情は籠っては居なかった。

 

「私を抱きに来たのか?」

 

「……うん、そうだよ」

 

「そうか……当然だな。お前にはそうする理由がある。私は裏切り者で、お前の仲間を屠った存在だ。憎しみをぶつけるだけの理由は存在している」

 

 ロムルスのことを指しているであろうアルテラの言葉を聞きながら、マスターは彼女が座るベッドの上へと腰かけた。

 

「そんな風に思ってはいないよ。俺は、アルテラを憎んでなんかいない」

 

「……優しいな、お前は。ソロモンならば怒りの形相で私を責めるだろうに」

 

「え……? 今、なんて……?」

 

「ソロモンならば怒り狂って私を責めるだろうと言った。事実、失態を犯した英霊が無残な仕打ちを受ける所を何度も見たことが……」

 

「いや、そうじゃなくって……ソロモンのこと、呼び捨てにして良いの?」

 

 平然とソロモンを呼び捨てにしたアルテラに対し、マスターは驚きの表情を浮かべると共にそう尋ねた。

 今までカルデアから連れ去られ、淫紋令呪を刻まれたサーヴァントたちは全員ソロモンの事を様付けして呼んでいた。彼に対し、圧倒的な敬愛の念を抱いていたわけである。

 しかし、アルテラは違う。淡々とソロモンの事を呼び捨てにする彼女の様子に驚くマスターに対し、アルテラは何てことの無い様にこう言った。

 

「ああ、そのことか……確かにソロモンは私のマスターだ。しかし、私はあいつを好意的には思えない、それだけだ」

 

「好意的に思えないって……だって淫紋令呪も刻まれて、それに……」

 

「……確かに私は奴に抱かれ、淫紋令呪を刻まれることにも納得した。それを霊基に深く浸透させることもな。だから私はあいつには逆らえない。だが……決して、忠誠を誓ったわけでも無い」

 

「なに、それ? ……かなり特殊なケースってことなのか……!?」

 

 アルテラの言葉を受けたマスターは彼女が比較的普段の状態に近い事を喜んだが、それと同時に大きな危機感にも襲われていた。

 淫紋令呪を刻まれたサーヴァントたちは、決してマスターに絶対の忠誠を誓っている訳ではない。せっかく取り返したマシュたちも、もしかしたらどこかで自分への不信感を募らせている可能性があると言う事に気が付いて震えあがったのだ。

 アルテラが特殊なのか?それともこう言ったケースも普通に存在するのか? そのどちらの可能性も存在する現状に苦悩するマスターであったが、アルテラが何かを呟いている事に気が付いて彼女の言葉に耳を傾けると……。

 

「……痛かったしな」

 

「へ?」

 

「抱かれた時、あまり気持ち良くなかった。女は好きな相手に抱かれた時、幸せを感じるものだと聞いてたが……ソロモンに抱かれても痛いだけだった。だから、私はあいつのことはあまり好きではないのだと思う」

 

 少しだけ言いにくそうな表情を見せながらそう呟くアルテラ。その言葉を聞き、彼女の横顔を見るマスターは、ダ・ヴィンチちゃんの言葉を思い出していた。

 

 淫紋令呪だけでは英霊は屈服しない。心を蕩けさせるほどの快楽が無ければ、完全にその心を掌握したとは言えないと彼女は言っていた。アルテラがソロモンに忠誠心を抱いていない理由はそこにあるのだ。

 つまり、ソロモンはアルテラを満足させられなかったのだ。彼からしてみればアルテラに淫紋令呪を刻んだことで十分に満足していたのだろうが、アルテラは彼とのセックスに不満を抱いていたわけである。

 

 感情を表に出すことをあまりしないアルテラは、そのことをソロモンに気取らせることが無かった。だから、ソロモンはアルテラの忠誠心を高めさせることも出来なかった。まあ、その事に気が付いていたとしても、彼がアルテラを満足させられていたかは別問題ではあるのだが。

 

 アルテラは案外乙女な所がある。自分が普通の存在ではないことを理解しながら、その普通に途方もなく憧れている……可愛い名前で呼ばれたり、普通の女の子扱いをされると分かり易く喜ぶのだ。

 ソロモンの事だ、アルテラを普通の女としては扱わなかったのだろう。破壊の化身だとか、軍神の子などの呼び方で呼びながら彼女を抱く姿が容易に想像出来る。

 

「ぷ、くく……あはははは……!」

 

「……そうだろうな。笑うだろうな。……裏切り者の私が苦しみを得ていたと知れば、普通は笑うものだ」

 

「そ、そうじゃなくって……あはは! 今の話、面白かったからさ!」

 

「え……?」

 

 安心感と素直な愉快さを表に出しながらマスターは、笑う。そんな彼の言葉を聞いたアルテラは、目を丸くして驚いていた。

 今度は先ほどとは逆の様相を呈する二人は、ベッドの上でただ座ったまま時を過ごす。やがて笑い声を収まらせたマスターは、眼尻に笑い涙を浮かべながらアルテラへと向き直った。

 

「アルテラ、もう少し話をしようよ。俺、もっとアルテラの話を聞きたいな」

 

「私の話を、聞きたい……? 私は面白い話など出来ない、お前の望む様な話など話すことは出来ないぞ?」

 

「そんな事ないよ! ……俺は、もっとアルテラの事を知りたいんだ。アルテラが何を思って、何を望んで、何を考えているのか……それを知りたい」

 

「っっ……」

 

 笑みを湛えた、しかし真剣な表情を見せるマスターは、アルテラの目を真っすぐに見つめてそう言った。

 その言葉に軽く動揺を見せたアルテラであったが、ぱくぱくと口を開け閉めした後で声を発し始める。

 

「……そ、ソロモンたちの情報は話せない。私はただローマの始末を請け負っただけで、基本的には何も知らないんだ」

 

「そんなのどうだって良いよ。聞けたら助かる情報だけど、今知りたいのはアルテラのことだから」

 

「お、面白い話など出来ない……お前を喜ばせる話など、私には不可能だ……」

 

「それもどうだって良い。俺にとって重要なのは、今まで知らなかったアルテラのことをもっと知れるってことなんだ。俺が聞きたいのは笑い話じゃなくって、アルテラの話なんだよ」

 

「はぅ……」

 

 マスターの手が、頬に触れる。大きく、柔らかく、温かいそれが、冷たい自分の頬をそっと撫でる。

 自分の視線を固定させ、お互いに見つめ合う様な状況にされたアルテラは、彼が自分に視線を逸らさせることを許していないことを触れた手の感触から察した。顔を背けようとすれば彼の手が動き、無理にでも自分と見つめ合わせようとして来るのだ。

 

(……深い、青色……吸い込まれる様な、感覚だ……)

 

 彼の優しい瞳と見つめ合うアルテラは、そんな感想を胸に抱いていた。彼ならば、自分の全てを受け止めてくれるのではないかと言う思いまで抱いてしまいそうになる。

 

「……わかっ、た。少しだけ、頑張ってみる……」

 

 少しだけ迷い、そしてたどたどしく決意を固めたアルテラは、口をゆっくりと動かして拙い口ぶりで話を始める。マスターはそんなアルテラのことを黙って見つめて話を聞き続けていた。

 話す内容は本当にどうでも良い話ばかりだった。己の、数少ない感情や思いを声に出して説明するアルテラは、一言ごとに彼が自分の理解者に近づくことに不思議な充足感を覚える。

 

(理解……? 私を人間として理解する……? なんだ、この気持ちは?)

 

 理解出来ない感情、破壊の為の機械にも等しい自分を人間として扱おうとする目の前の男は、とても愚かに思える。

 しかし、瞳を合わせて話をする間に自分の胸の中に何か暖かな気持ちが生まれていることを感じている。

 理解出来ない感情だが、決して不愉快では無いとアルテラは思った。

 

「……すまない。もう、何を話せばいいのか分からない」

 

「うん、そっか……沢山話をしてくれてありがとう。さて、そろそろ始めようか?」

 

 十分か、もう少し長くか……はっきりとした時間は分からないが、それくらいの時間は話に使っただろう。

 アルテラの話を聞いて満足したマスターは、とうとう行為に及ぶべく自分の服を脱ぎ始めた。アルテラもそれに倣い、次々と服を脱いでいく。

 全裸になった二人はまた少しの間見つめ合うと、マスターの導きの元で口付けを始めた。

 

「んっ……」

 

「ちゅっ……んんっ……♡」

 

 マスターの舌がアルテラの口の中へ潜り込む。彼女の舌の付け根からじっくりと揉み解す様に舌を絡ませ、唾液を循環させる。

 アルテラが息苦しく無い様に何度か呼吸の為の休憩を挟みながら、マスターは長い接吻の時を彼女に味合わせていた。

 

「ぷはぁ……っ! まだ、続けるのか……?」

 

「うん。アルテラはキスは嫌い?」

 

「好きでも、嫌いでも無い……あまり、こう言うことはしなかったから……」

 

 口付けなどソロモンはしなかった。ただ体を弄ばれた記憶しかない。

 愛のあるキスなど彼とはしたことが無かった。当然だ、ソロモンにとってはアルテラはただの下僕で、奴隷の一人でしかないのだから。

 奴隷に愛情を抱く主人など存在しない。ソロモンにとって重要なのは、自分の望む能力と魅力的な躰があるかどうかだった。

 そのどちらをも併せ持つアルテラであったが、それでも自身の性格から彼のお気に入りになることは無かったのだ。

 

「不思議、だな……お前は、あまり意味のない事をしているはずだ。だが……こうしていると、なんだか落ち着くんだ」

 

 何度も重ねられる唇、回数を追ってキスを交わす度、アルテラの心の中の温もりが徐々にその温度を増す。

 燃え盛る様な熱ではない。陽だまりの中で微睡む様な温もりが、そこにはあった。

 

「はんっ……♡ んっ、んんっ……♡」

 

 マスターの舌の動きに応える様にアルテラも舌を動かす。これもまた拙い動きではあったが、彼女なりに懸命にマスターに応えようと必死になっての行動であった。

 唾液が、舌が、心が絡む……たっぷりとキスを続けている内に、なんだか本当に一つになってしまった様な感覚に襲われてしまう。

 

 まだ口付けだけだと言うのに、本格的に体を重ねた訳でも無いのに……それなのにアルテラは、自分がはっきりと興奮していることを感じていた。

 

「……もう、良いだろう? 少し辛くなって来た……」

 

「わかったよ。それじゃあ、触るね……!」

 

「んっ……♡」

 

 ふわりとした優しい手つきでマスターがアルテラの胸に触れる。

 あまり大きくはない、されどEXクラスの『天性の肉体』のスキルのお陰で崩れることの無い美しい体を保持するアルテラの乳房は、とても整った形をしていた。

 

「あっ、くぅぅ……っ♡」

 

 優しい動きでマスターがアルテラの胸を揉む度、彼女の口からは辛抱堪らないと言った声が漏れた。今までに無いほど自分が興奮していることに、アルテラは少し驚きを見せる。

 見つめ合い、唇を重ね合っただけでここまで体が蕩けてしまうものなのかと思いながら、アルテラはマスターによって与えられる柔らかな快感を享受した。

 

「はぁっ……♡ ふぅっ……♡」

 

 胸全体をじっくりと揉まれ、薄い胸を刺激される。乳首も優しく摘ままれて、コリコリと抓られている。

 優しい快感と鋭い快感、その二つをマスターによって与えられながら、アルテラは自分の発情した体に触れられる悦びを初めて感じていた。

 

(そう言えば……ソロモンは、尻穴から弄り始めたな……)

 

 ソロモンとの情事を思い出したアルテラは、彼がまず手を付けたのは自分のアヌスであったことを思い返した。

 無表情なアルテラの表情が歪む所が見たいと言われ、何の前触れも無く穿たれたその瞬間は、アルテラに痛みと共に忘れえぬ忌まわしい記憶として焼き付いていた。

 ソロモンは無理やりに尻穴を穿られた後、魔術や令呪で感度を上昇させていたっけかと思い返したアルテラは、マスターにされていることがそれと全く逆のことであることに気が付いて目を細めた。

 

(感情を引き出そうとしている所は同じなのに、こいつの手は凄く優しいのだな……)

 

 体が、思考が、表情が、蕩ける。心を繋ぎ、一つになったかの様な感覚をマスターに与えられたアルテラの体が快感に震える。

 ソロモンの下に居た時とは違う、痛みや屈辱で表情を歪ませているのではない。温もりと快感で心を蕩けさせるアルテラは、この感情の名前がなんであるかにようやく気が付いた。

 

(これが……女の幸せ、なのか?)

 

 愛する人に抱かれ、快感を得る。心と体を一つにし、もっと深くで繋がり合う。

 そんな女としての普通の幸せを今、自分は感じているのだ。その事に気が付いた時、アルテラの体はより一層その熱さを上昇させた。

 

「あぁっ♡ んんっ♡ はっ、はぁぁっ♡」

 

「凄い……! アルテラのここ、ぐちゃぐちゃになってるよ。柔らかく解れて、びしょびしょになってる……!」

 

「はふぅっ♡ いわ、ないでくれ……流石に、恥ずかしい……っ♡」

 

 触れられた秘所は既に濡れそぼり、今までに無いほど蕩けていた。自分の体が彼の怒張を受け入れる準備を整えていることを自覚したアルテラは、期待と共に顔を赤く染める。

 その期待に応える様に入り口に亀頭をあてがわれた時、アルテラの心臓は激しく音を鳴らして大きく鼓動を刻んだ。

 

「来る、のか……? 私の中に、入って来るのか……?」

 

「うん、そうだよ……! 準備は、良い?」

 

 大きな肉棒を見たアルテラは、少しだけその大きさに怯え、怯んだ。しかし、それ以上に湧き上がる幸せな感情のままに首を縦に振って彼に了承の意を示す。

 一拍後、ゆっくりと挿入されたマスターの肉棒を膣に受け入れながら、アルテラは口を大きく開けて嬌声を上げた。

 

「あ、あぁぁっ♡ うあぁぁぁぁぁぁぁっっ♡」

 

「ぐっ……! きっつぅ……っ!」

 

 膣が広がり、最奥までマスターの肉棒が達する。呻き、喘ぐアルテラは未知の感覚に体を震わせた。

 

「あ、うっ♡ くぅぅぅっっ……♡」

 

 子宮が震え、膣がうねる。胸の奥がかぁっと熱くなり、心臓の鼓動がうるさい位に高鳴っている。

 マスターに力強く抱きしめられたアルテラは、その鼓動が彼に伝わっているのではないかと思い、恥ずかしさに顔を赤らめた。

 

「はっ、はっ……♡ う、あ……♡」

 

 腰と頭に手を添えられ、優しく強く抱きしめられる。すっぽりと抱き留められた体は結合していることも相まって本当に彼と一つになってしまった様に思える。

 そしてそれ以上に心が繋がっている様な感覚を覚えるアルテラは、しっかりと自分を抱きしめたまま動かないでいるマスターにむけて声を発した。

 

「動かない、のか……?」

 

「もう少しこうしていたいんだ。アルテラの体の温度とか、柔らかさを感じていたいから……」

 

「そうか……わかった」

 

 彼がそうしている様に、自分も彼の体温や体の感触を味わう。温かく、引き締まった体に身を預けたアルテラは、不思議な幸福感に浸っていた。

 幸せだった。破壊の機械にも等しい自分が、こうやって普通の女の様に抱きしめて貰えることは幸福と思えた。

 見つめ合い、キスをし、抱きしめ合う……徐々に心と体の密着度を高めて行った二人は、あらゆる意味で深く繋がり合う存在となっているのだ。

 

(変だ……膣が疼く……。堪らなく、こいつが欲しいと強請っている……これは、なんだ?)

 

 理解出来ない、されど不愉快ではない感覚。いや、じりじりと脳と体を焦がす感覚は、紛れもなく心地良く感じられていた。

 段々と口から洩れる息が甘く、そして熱くなる。欲しいと言う思いを自覚してしまったアルテラは、もうその思いを留めることは出来なかった。

 

「マスター、頼む……動いてくれないか……? もう、厳しい……」

 

「……ごめん、もう少しだけ待って。キスならしてあげるからさ」

 

「は、んっ……♡ んんん……っ♡」

 

 性器を結合したままマスターと唇を重ねたアルテラは、頭の中が真っ白になるほどの快感を感じ始めた。鋭い快感では無いが、それでも自分の心を満たすだけの気持ち良さがある。

 

 心と体がふわふわと浮かぶ様な感覚を覚えながらその気持ち良さに微睡むアルテラであったが、徐々にまた性器が疼き始めたことに体を震わせていた。

 

(もう……無理だ……っ♡)

 

 今すぐに欲しい、女としての快感が。体と心を繋げ合った彼に文字通り抱いて欲しい……。

 アルテラは唇を離すと荒い息を繰り返しながら彼の目を見る。少し前まで気恥ずかしかったその行動も、今はなんてことの無い様に思えた。

 

「頼む、もう限界だ……! 私のことを、抱いて欲しい……!」

 

 自分がこんなにも大胆なことを言うなんて思いもしなかった。アルテラは、マスターに自分を愛するように懇願しながらそんなことを思う。

 彼女のその願いに頷いたマスターは、アルテラを抱きしめたままようやっと重い腰を動かし始めた。

 

「あっ、くあぁぁぁぁぁっっ♡♡♡」

 

 脳内で、電撃が弾けた。

 バチバチと音を立てて頭の中を焦がす快感の強さに目を見開いたアルテラは、荒かった呼吸を更に荒くさせて喘ぐ。

 

「うあぁっ♡ あぁっ、あぁぁぁぁっ♡」

 

「凄い声だね……そんなに気持ち良いの、アルテラ?」

 

 アルテラはずちゅん、ずちゅんと音を立てて自分の膣を抉るマスターに向けて一心不乱に首を縦に振った。待ちぼうけを食らった体の全てがこの快楽を待っている状態にされ、焦らされ続けた果てに得た快感はアルテラの想像を遥かに超えたものだったのだ。

 膣と脳が蕩け、意思と体が快楽に漬け込まれている。抗い様の無い快感と言う物をアルテラは初めて体験していた。

 

(す、ごい……っ♡ 私の全てが溶けてしまいそうだ……っ♡)

 

 自分を抱く彼の手によって、身も心も蕩けさせられてしまった。繋がり合い、抱きしめられれば、このまま彼と混じり合ってしまいそうな気分になる。

 自分を心地良くしてくれる彼と一つになる……そんな想像をした瞬間、アルテラの感度は更に跳ね上がった。

 

「ふあぁぁぁぁっ♡ む、りだぁっ♡ こわれ、るぅ……っ♡」

 

「もう少しゆっくりにしようか? そっちの方が、アルテラも楽しめそうだしね」

 

「あ、あっ……♡ たのむぅ……っ♡」

 

 マスターの腰の動きが緩やかになる。鳴り響いていた腰のぶつかる音も小さくなり、与えられる快感も落ち着いたものになった。

 しかし、それでもアルテラの体はかなりの気持ち良さを感じている。それが落ち着いたことで、よりはっきりと自覚出来るものに変わっただけだ。

 

「あっ♡ あっ♡ あんっ♡」

 

 単調でゆっくりとした腰の動きに合わせ、自分の膣の中を肉棒が出入りする。水音が響き、肉がぶつかる音が鳴り、アルテラの口からは嬌声が漏れる。

 激しい快感で翻弄されなくなったはいいが、これはこれで感じるものの度合いが違う。段々と快感に慣らされ、逃げ場のなくなる様な責め方はじりじりとアルテラの心と感度を高めて行った。

 

「う、あ……♡ 気持ち、良い……っ♡ んむっ♡」

 

 嬌声が溢れる口をマスターの唇で塞がれる。口内に入り込んだ舌が縦横無尽に動き、アルテラに優しい快感を伝えて来る。

 腰を動かされ、膣を責められながらのキスはまた新たな快感をアルテラに教え込んでいる。抱かれ、包まれ、突き入れられた状態で子宮を突かれれば、身も心もじゅくじゅくに蕩けてしまいそうな錯覚に陥ってしまう。

 

(もう何が何だか分からない……♡ ただ、全身が気持ち良い……♡)

 

 全身が熱を帯び、表情は快楽に蕩ける。漬け込まれた快楽が体の中で芽吹き、女としての最上の幸せをアルテラに届ける。

 嬲られることも無い、崩れぬ体形を弄ばれることも無い。ただ一人の女として扱われ、本来得られるはずの快感を与えられるだけだ。

 

 これが本当のセックスなのだとアルテラは思った。愛を伝えあい、この幸福感に男女で浸ることこそがこの営みの真の理由なのだと理解した。

 涙や屈辱、悲鳴に満ちたセックスしか知らなかったアルテラにとってそれは衝撃的であり、それでいて全てが満たされる様な感覚であった。自分がただの女としての幸福を得ていることを喜ぶアルテラに、その時はやって来る。

 

「あっ♡ なにかが、くるっ……♡ いままで感じたことの無い、大きな何かがくるっ……♡」

 

 アルテラの体の最深部、女を司る象徴部分である子宮が激しく疼き出した。

 欲しがる様な疼きではない、何かを求めている訳ではない。その逆……満たされ、快楽を飲み込んだ子宮が、満足げな咆哮を上げるかの様に震えているのだ。

 

「あ、あぁっ♡ う、あぁっ♡」

 

 知らなかった、こんな快感は。体全てが子宮になってしまったのではないかと思えるほどの快楽がそこにはあった。

 じっくりと時間をかけて繋いだ心が、真の快楽を教え込まれた体が、女としてのアルテラの全てが、幸福を感じて動き始める……未知の熱に浮かされたまま、アルテラは体を大きく反らせて喉も裂けんばかりに叫んだ。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ♡♡♡」

 

 高い、とても高い場所に押し上げられる。降りれなくなってしまうのではないかと思う程の高く深い絶頂を迎えたアルテラは、マスターの腕の中で華奢な体を震わせていた。

 

 ソロモンに与えられた暴力的な快感とは違う。全身の隅々まで行き渡り、アルテラの全てを温かくしてくれる快感の爆発に喘ぎ、恍惚とした表情を浮かべる。

 長く続いた絶頂の時は、段々と微弱になるアルテラの体の震えと共に終わりを迎えようとしていた。それと同時に、アルテラの意識が急速に遠のいていく。

 

(あぁ……私は、どうすれば良い……?)

 

 幸せだった。もっと味わいたかった。戻りたくなんてなかった。それでも……深く浸食された彼女の霊基は、現在の主への謀反を許そうとはしてくれない。

 この温もりをもっと感じていたのに、それは許されないことなのだと頭の片隅で理解するアルテラは、自分を襲う微睡へと意識を預ける。

 

(もう、目覚めなければ良い……そうすれば、この幸せな感情のままでいられるのに……)

 

 意識が途切れる寸前にアルテラが思ったのはそんな悲しくも素直な思いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ、は……?」

 

 意識を取り戻したアルテラが見たのは、暗い部屋の光景だった。

 薄暗く、何も見えない独房の様な場所で覚醒したアルテラは、自分が閉じ込められているのだと思う。

 自分はまだ裏切り者の扱いなのだと少し心を痛めたアルテラであったが、そんな彼女の前にマシュが姿を現した。

 

「目が覚めましたか、アルテラさん。あまり良い寝起きではなさそうですね」

 

「マシュ……すまない、手間をかけたな」

 

 後ろめたい感情を覚えたアルテラはマシュへと謝罪の言葉を紡ぐ。

 マシュはきっと自分に対して怒りの感情を持っているであろうと思ったアルテラであったが、そんな彼女に対して、マシュは意外なほどに爽やかな笑みを見せた。

 

「そんな顔しないでください! これでやっと()()が始められるんですから!」

 

「は……? 競技、だと……?」

 

 困惑するアルテラであったが、いつの間にか自分を閉じ込める柵が消失していることに気が付いて更にその困惑を深める。

 しかし、そんな驚く時間も勿体無いとでも言う様にマシュに引っ張られたアルテラは、全裸のままマシュの導きに従って歩き続けた。

 

「お、おい、どういう事なんだ? 私を自由にして良いのか?」

 

「ええ、良いんですよ。なにせ、これからあなたを賭けた勝負が始まるんですから!」

 

「勝負? さっき言っていた競技と言う奴か? それは一体……?」

 

 先ほどから抱えていた疑問をマシュに尋ねようとしたアルテラは、急に眼前に眩しい光が灯ったことに驚いて顔を覆った。

 次に彼女が目を開いた時……そこには、今までアルテラが抱えていた疑問が吹っ飛んでしまう程の光景が広がっていた。

 

「ここ、は……!?」

 

 広く、荘厳な闘技場。アルテラが見たのはそれだった。

 今までに何度か秋の祭りで見た様な闘技場が、アルテラの目の前に広がっているのだ。

 

「余の愛するローマ市民たちよ! よくぞこの場に集ってくれた! 今宵、貴様らは新たなる伝説の目撃者となる! その栄誉を深く噛み締めよ!」

 

 聞き覚えのある声に顔を上げれば、そこには主賓席で声を上げるネロの姿があった。

 いや、彼女だけではない。よく見れば、彼女の傍にはカエサルとクレオパトラの姿もあるのだ。

 

「これは、どう言う事だ……?」

 

 100、200では済まない数の観客たちに裸の姿を見られることを恥ずかしがりながら、アルテラはこの異常な事態に困惑する。

 そんな彼女の肩を優しく掴んだマシュは、己もその魅力的な肢体を観客たちへと晒しながらゾクリと来る様な甘い声で語り掛けて来た。

 

「アルテラさん……あなたは賞品なんです。これから、あなたを巡って二人の男性が戦うんです。あなたは、勝った男性の物となるんですよ」

 

「私が、賞品……? なんだそれは……?」

 

 マシュが口にした言葉の内容を理解出来ないアルテラは、ただ茫然とした表情を浮かべるだけだ。困惑し、固まる彼女に向けて、マシュはなおも話を続ける。

 

「そんなに硬くならないでください。勝敗を決めるのはアルテラさんなんですから……それに、そんなに心配すること無いですよ」

 

「え……?」

 

 疑問しか存在しない頭を振ったアルテラは、マシュの顔をただ唖然とした表情で見つめている。そんな彼女に対し微笑みかけたマシュは、そっとある方向を指さした。

 

「あれは……!?」

 

 マシュが指差した先を見たアルテラは、またしても驚愕した。そこには、自分に淫紋令呪を刻んだ相手が立っていたのだ。

 彼もまた茫然としたままこの闘技場の光景を眺めている。予想だにしないソロモンとの再会に驚くアルテラの顔を掴み、マシュはまた別の方向を向かせた。

 

「っっ……!?」

 

 そこに居たのは、つい先ほどまで自分を抱いていたはずのカルデアのマスターだった。ソロモンや自分とは違い、平然としている彼の姿を見たアルテラはこの場で自分を求めて争う二人の人物の顔を交互に見つめる。

 つまり、そう言う事なのだ。ここでソロモンとマスターは戦い、自分の所有権を争おうと言うのだ。

 

 何が何だか分からないアルテラは、唯一理解出来たその事実を噛み締めてその場に立ち尽くしていた。

 そんな彼女に向け、妖しく笑うマシュは耳のすぐ傍で甘美な声で囁きかける。

 

「とっても簡単ですよ……あなたが、あなたの望む未来を選ぶだけ……ね? 簡単でしょう?」

 

「私が、望む……?」

 

「ええ、そうですよ! ……まあ、最初から全てが決まり切っていることですけど、一緒に観客たちが盛り上がる様な素敵なショーにしましょうね!」

 

「どういう意味、なんだ……?」

 

 全てが理解出来ない状況に放り込まれたアルテラは、目の前で笑うマシュの姿を大歓声の中で見つめ続けることしか出来なった。

 ただ……今から自分が自分の手で自らの運命を決めると言う事だけは理解出来た。振り返ったアルテラは、何かが始まる前にこの場に集った二人の男性を見る。

 

 動揺と平静、二つの真逆の様相を現すソロモンとマスターの姿を見ながら、アルテラはこのショーの始まりをただ待ち続けたのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。