争奪戦、開始
1573年、オケアノス……広大な海とその中に点在する数々の島々によって構成されるこの地で今、異変が起きようとしていた。
それは唐突に始まった。このオケアノスで活動する海賊の一人、フランシス・ドレイクが率いる海賊団がとある港町を襲撃したのである。
別段、それがおかしな話と言う訳では無い。彼女たちは海賊だ、何かを襲い、奪う事によって生きている荒くれ者の集まりなのだ。
だが、今回のそれは今までの物とは明らかに違った。今までの襲撃が奪う為に襲うと言う物だとすれば、今回の襲撃は殺す為に襲うと言う表現がぴったりだった。
食料も宝石も貴重品にすらも目もくれず、ドレイクたちは港町を蹂躙した。襲い、殺し、何もかもを破壊するその様は、正に
町人や警備隊の抵抗も虚しく、一つの町を廃墟に変えたドレイクたちは生き残った者たちに底冷えする様な笑い声を聞かせながら、ある言葉を残す。それは、彼女たちが探し求めている人間に関することだった。
「緑色の髪をした優男と耳の尖った年増の女を見つけたらアタシたちに差し出しな。そうしなきゃ、この破壊は延々と続くよ」
その言葉通り、ドレイクたちは翌日からも次々と港町を襲っては住民を虐殺し、街を廃墟に変えて行った。その悪逆さに人々は怯え、次は自分たちの番なのでは無いかと不安で夜も眠れない日々を送る羽目になった。そんな日々を送る内、海兵や他の海賊たちもそんな彼女たちの悪行を見かね、とうとう協力してドレイク海賊団との決戦を決意した。
軍備を整え、確実に彼女たちに勝てるだけの戦力を揃えたはずの連合軍であったが、彼らは戦いの日に世にも恐ろしい経験をすることになる。
ドレイクたちの船『
最初の砲撃戦で多大なる損害を受けた連合軍であったが、真の悪夢はこれからであった。接近し、船に乗り込んで来たドレイク海賊団のメンバーは、白兵戦でも恐るべき強さを見せつけて来たのだ。
愛らしい衣装を纏いながらも尻穴に棒状の何かを突き入れた少女たちは、無垢で狂った笑顔を浮かべたまま次々と海兵たちを屠った。斬り裂き、打ち抜き、血に塗れる少女たちは小悪魔の様に鮮血に染まりながら笑顔を見せる。
見上げる程の大男たちが相手にならないとばかりに海の荒くれ者共を打ち殺す。腕力と武力が桁違いな男たちは、船の上にいくつもの死体を積み上げて行く。
顔に傷を負った幼子が、一見するとお淑やかそうな美女が、妖艶な雰囲気を醸し出す大柄な女性が、獣の様な出で立ちをした俊足の弓兵が……連合軍の軍艦の周りの海を乗組員たちの血で真っ赤に染め上げた。
戦いは呆気なく終わった。十分な軍備を整え、確実に勝てると思われていた連合軍は、ものの一時間足らずで再起不能な程の被害を受けてしまったのだ。
捕らえられ、引き摺られて皆の前に晒し者にされる指揮官の前に二人組の女性が姿を現す。彼女たちの姿を見た時、連合軍の兵士たちは愕然とした。
「……これで、私たちに逆らう事の愚かさが分かったでしょう? あなたたちでは、私たちに勝つことなんて絶対に出来っこありません」
そう連合軍を嘲笑ったのは、まだ年端も行かぬ少女であった。しかし、今の彼女の格好は、いやらしい娼婦を通り越したあまりにも淫らなものだ。
腕も足も曝け出し、首筋から臍に至るまでの中央部分を隠す衣類は何も無い。肩から乳房、そして腿と秘所を僅かに隠すぴったりとした布切れを纏うだけの彼女は、淀んだ笑顔を見せながら連合軍の指揮官を蹴り飛ばした。
「あぐっ……!?」
小悪魔の様な少女に蹴り飛ばされた指揮官は、地面に頭をぶつけて呻き声を上げた。
そんな彼の背中を踏みつけ、身動きを取れなくしたもう一人の女性……フランシス・ドレイクもまた、淫らな衣装を身に纏って恐ろしい笑みを浮かべている。
両腕の肘と両脚の膝までを覆う黒い革の手袋とタイツ。ドレイクが纏う衣類と呼べるようなものは、それしか無かった。
巨大な彼女の乳房を隠すのは一枚の前張りのみ、両胸の頂点に張り付いたそれは、手袋とタイツと同じ色をした黒色のハート型をしていた。
尻穴には悪魔の尾を模した様な張り子が挿入され、小さな振動音を響かせている。秘所を隠すのも乳首を隠すのとまったく同じ前張りが一枚のみだ。
「……ほら、アタシの奢りだよ。たっぷりと味わいな……♡」
今、ドレイクは秘所に貼られている前張りを剥がして、そこから黄金水を放った。股座の間で倒れ伏す指揮官の頭目掛けて放尿する彼女は、彼を嘲笑いつつ侮辱の言葉を口にする。
「どうだい? 美味いだろう……? アタシの小便と敗北の味、存分に堪能しな……♡」
戦いに敗れた指揮官を徹底的に侮辱するドレイク。指揮官は、彼女への憎しみと屈辱で胸を一杯にするも、次の瞬間にはドレイクに心臓を射抜かれて絶命していた。
煙を吐く銃をしまい、小便の最後の一滴までを指揮官に浴びせかけたドレイクは、彼の亡骸を思い切り蹴飛ばして海へと落とす。そして、未だに船上に残る男たちに向け、舌なめずりをしながら言った。
「アタシたちが探している人間を連れて来い。それ以外にこの暴挙を止める方法は無い……アンタらがもたもたしてると、アタシたちはオケアノスにある街を全て廃墟に変えちまうよ?」
僅かな生き残りと、そこから選抜されたガタイの良い男たちを連れて出港したドレイクは、その後も凶行を続けた。この戦いを生き残った船員たちは、この恐ろしい出来事を人々に伝えて彼女たちの言う通りにすべきだと主張した。
連合軍の大敗北により、もうドレイクたちに立ち向かえるだけの戦力は何処にも残っていなかった。誰もが彼女たちを止めることなど不可能だと悟った。
であるならば……もう、彼女たちの要求を飲むしか無い。彼女たちの探し人を見つけ出すしか、道は残っていなかった。
こうして、謎の男女二人組の捜索は開始された。だが、オケアノスの人々の奮闘も虚しく、二人は痕跡すらも見つからないでいる。
そうしている最中にもドレイクたちは町を襲い、人を殺し、気に入った男たちを攫っては淫らな宴を開いては彼らを惨殺し……その悪名を轟かせ続けていた。
オケアノスの人々は思う、ドレイクは恐ろしい悪魔になったのだと。だからこそあの様な恐ろしい所業が行え、人知を超えた力と部下を手に入れたのだと……
人々は思う、そんなドレイクたちが探している二人組とは何者なのかと。人々はその二人のせいで自分たちはこんなにも恐ろしい目にあっているのだと思っては、顔も名も知らないその二人に怨嗟の思いを募らせた。
暴力と殺戮が渦巻くオケアノスの海もまた、そんな異変を感じ取っているのか荒れ模様を呈していたのであった。
「……ああ、最悪だ。なんで、どうして、オレがこんな目に遭わなきゃならないんだ……!?」
海に浮かぶ立派な海の上で、情けない言葉を口にする青年が一人。目に涙を浮かべ、この世の絶望が全て襲い掛かって来たかの様な表情をしている彼の両隣には、一組の男女が居た。
「そんな事言ってないでさっさと船を操りなさい! 見つからない様にしながらね」
「無理難題を言うんじゃない、この魔女! ああ、何でオレはお前なんかに召喚されてしまったんだ……?」
「はは、まあ運が悪かったと思って諦めなよ。うん、ある意味では君は途轍もなく幸運なのだからさ」
「貴様も! 軽薄に笑ってないでこの状況をどうにかする方法を考えろ! でなければ、オレたちは……オレたちはぁぁっ!!」
発狂気味の青年に対し、男女は案外冷静に見える。しかし、彼らもまた焦っている事は確かだった。
もう、自分たちがこの特異点に居る事は露見している。ドレイクたちに見つかってしまえば、戦力の少ない自分たちなどあっという間に敗れ去ってしまうだろう。
逃げるのだ、そして援軍を待つ……それが、今の自分たちに出来る最善の策だった。
「……おい、お前たちの言う通り、本当に援軍は来るのだろうな?」
「ええ、恐らくね……じゃなきゃ、世界は終わりよ」
「ふん……! なら、もう少し粘ってみるか。無理そうならば、最悪その柩を壊すのも手だ」
「それをしたとしても凌げるのは一時的なものよ。もう一度彼が召喚されて、一緒に柩もソロモンの手に渡ったら今度こそお終いね」
船のマストに寄り掛かる黒衣の男にそう答えた女性は、厳重に保管されている件の柩に視線を向ける。文字通り、世界を滅ぼすだけの力を持つそれこそが、ドレイクたちの狙っているものであった。
「これが敵の手に渡るのが先か、私たちが
そう呟いた女性は待つ、世界と自分たちを救う救世主の到着を。自分自身が加担しているこの悪夢を終わらせる為には、彼らの力が必要なのだ。
終わりの前に始まりを、滅びの前に救済を……荒れる海の上で、4人の男女はただその時を待ち続けた。