どうせ授業に間に合わないんだし、このまま茜ちゃんといちゃついておこう。
という事で、授業中誰も寄り付くことのない屋上にて二人、寄り添いあいながら過ごしていた。そこで俺は好きなようにしていた。例えば、茜ちゃんの頭を撫でてみたり首筋に顔を埋めてクンクンしてみたり、バードキスをしてみたり。
その度にかわいらしい声を漏らしては喘ぎ、恥ずかしそうに悶えている茜ちゃんの様子を見て興奮していた。
が、4時限目の終了のチャイムを耳にして、ハッと我に返った。
「っと、そろそろ戻ろうかな」
「……ぅ、ん……もう、終わりかよ」
「もう昼休みになっちゃったからね。そろそろ戻らないと心配されて大変な事になるしね」
男性が少ないだけあって、朝から登校していた男子の一人がいきなり授業に出なくなったらそりゃもう心配されること間違いなしだ。もしかしたら探しているかもしれない。
そうなるとこのまま茜ちゃんといちゃついてるのは少々まずい。
俺も説教を喰らうかもしれないが、それ以上に茜ちゃんの立場がまずい事になるかもしれない。なにせ、数少ない男子と屋上でセックスしてるんだから。
……いや、ここは逆に奨励されるかもしれないのか?
俺が茜ちゃんを彼女です! と声を大にして言いだして。既に中出ししてしまった身としては責任を持てと言われてもしょうがない感じだが、この世界では給付金が支給されることになってるし。
こんな考えをしてる時点で結構なゲス野郎な気がしてならないが、これがこの世界のルールなのよね!
「それじゃ、メアドだけ交換しない?」
「あ、あぁ……わかった」
「またここでしようね」
「バッ!? 別にここじゃなくてもイイだろが!?」
「あはは! じゃあ、君の家でヤる?」
「んなっ!?」
顔を真っ赤にして黙り込んでしまった茜ちゃんをよそにメアドを交換し、立ち上がる。
二日目にして二人目の女の子のメルアドゲット。茜ちゃんは現役女子高生で、牧野先生とは
この字面だけ考えるとホントに最低な男に思えるかもしれないが、この男性が少ない世界において俺みたいな奴が一人くらいいても良いだろって感じになっている。
茜ちゃんに別れを告げて教室に戻る。
「あぁ、保志君!!」
「うぉっ? ど、どうした?」
「どうしたじゃないよ! 今までどこにいたんだい!? トイレに行ってもいなかったから心配してたんだよ?」
「あー……」
眉を寄せ詰め寄ってくる智治の姿を見て、俺は何も言えなかった。
屋上で金髪の女子とセックスしてましたなんて、こんあところで言えるわけないだろううが! 周りの女子は可愛い子が多いが、こんなことをここで言ってしまっては恰好の的になるのは目に見えている。
さすがに、この教室の中にいる女子全員を相手にするつもりはないし、普通に考えてできるわけがない。ハーレムを目指そうと思ってるわけでもないしな。……ここで言えば、それこそこのクラス以外の女子とも相手をしないといけなくなるような気がしてならない。
「4時限目の授業はあまり興味がなかったんだ」
「えぇ……? そんな理由で納得しろってこと?」
「すまん! 興味が無いのはホントだし、何より……暇だからな」
「ふぅん……」
両手を組んで怪訝そうな視線を送ってくる智治。
あははと愛想笑いをするしかない俺。なんか、俺と智治が夫婦みたいな感じになってるのは気のせいだろうか? 約束事を破った夫と、追及する妻。案外、間違ってないような表現だが勘弁してほしい。
智治がストッパーになってくれるのは歓迎するが、そういった意味合いでの歓迎はしていないからな。普通に、男女で交際をしていきたいんだ。……俺が交際と言うと軽い言葉に感じるのはしょうがないが。
「ま、保志君がそういうんだからそうなんだろうね。じゃ、お昼ご飯でも食べようか」
「お、そうだな」
「ちょっとお待ちになってくださいませんか」
「あん?」
智治と二人で弁当の包みを解こうとした瞬間の事だった。
いつの間にか近寄っていた女子の存在が俺たちに声をかけてきたのだった。
この事態に、俺たち二人を遠巻きに見ていた女子たちがざわざわと喋り始めた。
昨日今日しかこの高校を経験していないが、世が世だ。女子が男子に声をかけるなんてこと自体珍しい事だろうし、ましてやこんなに堂々と声をかけてくるなんて。
と、思い女子を見てみると見事な巻き髪。
日本人離れしたスタイル、顔だち。茶色がかった髪色。
かなりの美人さんだが、昨日この子を目にした記憶がない。
……何だったら、昨日のうちに話かけてきてそうな勢いだけど。
「え、っと……君は?」
「おやおや、クラスメイトの名前すら憶えていらっしゃらないんですか?」
「すんません」
「はぁ……良いですか?
「はぁ……よろしくお願いします?」
この世の中にしては珍しく高飛車な女子がいるなぁなんて考えながら、弁当を包んでいる布を解いていると、目の前で同じように布と格闘していた智治が、これでもかと言わんばかりの溜息を吐いていた。
「はぁぁぁぁ……それで? どうしたんですか、西園寺さん」
「あぁら、これはこれは智治さん。貴方には話かけてません事よ?」
「君に僕の名前を呼ぶことを許した覚えなんてないんですが」
「あら? そうでしたか? ごめんなさいね、おほほ!」
なんだろう。
一瞬にして険悪な空気出来上がったと思いきや、そう思ってるのは智治だけで、何某お嬢様は機嫌良さげに高笑いをしていた。よくもまぁ、このご時世そこまで自信満々にしていられるものだ。
「ところで立川さん」
「はい? ……なんですか?」
両手を腰に当て、威風堂々としている女子にたじろいでしまう。
もしかしたら茜ちゃんとの交わりを見られてしまったのか。それとも昨日の牧野先生との事がばれてしまったのか。
「授業に興味が無いとは聞き捨てなりませんわ! 貴方は学年でもトップクラスの成績を収めていることは私も存じ上げております。そんな貴方が学業をおろそかにするような発言をされると困るのです!」
「あっはい」
「良いですか! ここは勉学をするところであり――
良かった。
とりあえずこのお嬢様の話を聞き流しておいて。
……昔、同級生にこんなお嬢様なんていたか? この世界になって男性が少なくなったことに関係あるのか? ま、このお嬢様が本当に由緒あるお嬢様かどうかは知らないが、適当に話を合わせておくことにしよう。
「まぁ、俺が勉学を疎かにする云々の話は俺個人の話だとして。君は俺に何か用があるのかい?」
「は、あ、いえ……その……」
「うん?」
目を逸らし、モジモジする西園寺さん。
このタイミングでいきなりどもられても困るんだが。
「……つい、話かけてしまったんです」
「え?」
「ですから! ……つい、貴方に話しかけてしまったんです。貴方の不甲斐ない所なんて見たくありませんでしたから」
「おっと、あんまり保志君の事を悪く言うようだったら」
「ふん! 別に立川さんの事を悪く言おうなんてつもりはありませんわ! このクラスの男子として、あるべき姿を見せていただきたいと思っているだけですので! それではごきげんよう!」
おほほほ! と笑いながら去っていった西園寺さんの後姿を見送りつつ、手にしていた弁当を包んでいた布を思い出して開いていく。どこか釈然とない気持ちが蟠りとして残っているのが感じられるが、無視して昼食を取ろうとする。
溜息が漏れそうになり、それを抑えて智治の様子を見ると、憮然とした表情を浮かべて俺の事を見ていた。
「お、どうした?」
「どうした、じゃないよ……もう、ホント……そんなに無警戒だったっけ?」
「……まぁ、取りあえず昼飯食おうぜ? な?」
「……はぁぁ」
俺が止めた溜息を、智治は俺に対して吐いていた。
昼にもなり、冷めてしまった弁当の味が、いつもより悪い感じがしたのは気のせいだろうか。