印象深いお嬢様の事を調べてみたらホントにお嬢様だった。
何を言ってるか分からないかもしれないが、彼女の親が現西園寺グループの総裁を務めているんだから。
何故彼女の親がと言うと、普通に調べたら年齢も載っていたからだ。
名前は『西園寺
……現実と二次元は乖離しないといけないのは理解しているが、そもそも男女比がおかしい時点で、ね? お察しな訳ですわ。
しかし、西園寺グループはかなりの資産運用しているらしい。
そのご息女である雅さんがどうしてこんな学校に通っているのか分からないが、周辺近くの高校で、一番男子の数が多いのがこの高校と言うのは要因の一つなのだろうか。……ま、こういった話は推測するんじゃなくて本人に聞ければ良いんだが、あいにくそこまで親しいわけじゃない。
「お前ら、席につけ」
「ん?」
なんて考え事をしている間に次の授業、数学担当の先生が入ってきたわけだが。
……残念ながら2日目ではあるが、彼女のような先生を見たことはなかった。まぁ、男性教員も女性に代わってるんだ。性格が同じだとしても見た目そのものが違うんだ。
しかし、数学の教師にはあまり良い記憶はないんだが。
肩までかかるかかからないか程度に延ばされた黒髪から覗く白いうなじ。
大人の魅力を感じさせる一因になっているが、目の下に堂々と存在する濃いくまが教師の疲れを象徴しているような気がする。が、どんよりしているように見えても、普通に綺麗な人だなぁという印象ではある。
「さて……今日はお休みの香坂先生に代わって、私がお前らの授業を受け持つことになった。知らない生徒はいないと思うが、私は2年生の数学を担当している金本だ。どこまで授業が進行しているのか分からんから、取りあえずプリントを持ってきたから配布する」
いきなりのプリントに、クラスの女子が一斉に声を上げる。
が、そこまで大きな声でもなかったからか、先生は構わずプリントを配布し始めた。
メンドクサイとか横暴だとかが聞こえてくるが、やれと言われたものはやるしかないだろう。前から順に渡されてきたプリントを目にして驚いた。
これ、内容が完全に高校1年生の物じゃないんだが。
最初から最後まで、全5問で構成された問題に目を通す。
……残念ながら、1年生が解ける様な内容じゃないんだが。と思ってちょろっと周囲の女子の様子を確認してみると、ほぼほぼ全員が苦しそうな表情をしているというか。シャーペンの進みは悪いようだ。
申し訳ないが俺にとっては簡単な問題だからすぐに解いてしまって寝させてもらおう。午前中の茜ちゃんとの運動が少し疲労として蓄積されているからこその判断だ。まぁ、この程度の問題なら、少しでも先の予習やら塾に行ってる連中が解けるだろう。
……今までの俺がどうかは知らないが、この世界で男が頭が良かったってたかが知れてるだろうしな。
――――
――
「……そこまで。後ろからプリントを前に回してくるんだ」
は!?
テストを終わらせてから授業時間終了になってしまった。
30分くらい寝ただろうか。気付いたら授業も後半、今日一日最後の授業が終わろうとしているが、特に何も感慨深いものはない。そもそも昨日なんて校内散策と称して牧野先生とセックスしてただけだし。
プリントに涎が付いてないのを確認して、後ろから回されてきたプリントに自分の用紙を一番下に、前に回した。
……さっきもそうだが、プリントを受け渡しする瞬間に手が触れ合うのは偶然なんだろうか。怪しまれないようにしてるのか、触れられてる時間はほんの数秒なんだが、一瞬指に絡まってくる感覚が少しきつい。
別に前後の女子がかわいくないとか、そういう事じゃない。
何故か少し汗ばんでいるのが気になるんだ。
男子に対する緊張でもしてるのかどうかはしらないし、ジメッとした感触が汗じゃないかもしれないという件については考えないようにしている。さすがにデリカシーはあるだろうと信じて。
で、プリントが先生の元に集まり、ペラペラとプリントを捲っていく先生だったが、ある用紙のところで少し固まっていた。そしてチラリと俺のいる方向に視線をよこしてきた。
……もしかしなくても俺の事だろう。情け容赦なく問題を全部解いたから疑問に思ってるかもしれない。
が、意外な事に先生は何も言わないでそのまま帰って行ってしまった。
ちょうど授業の終り時間という事もあり、採点に向かったのだろう。
少し、先生が俺に向けてきた視線に粘っこいものを感じたのは気のせいだと信じたい。ホント、神頼みの連続だな(白目)
「ふむ……立川は後で職員室に来るように」
「は? あ、はぁ……分かりました」
「よし。では、本日の授業についてはここまでとする」
そう言い残し、金本先生は去っていった。
授業が終わり、生徒が思い思いの姿を曝け出し始めたとき。
「おぉほっほっ! 立川さん! さきほどの問題、どうでしたか!」
「簡単だったね」
「は!? ……あ、はい……そうですか。まぁ、私もそのように感じておりました! 立川さんも同じように感じてくださっていたとは、さすがですわね!」
口元を隠して笑う西園寺さん。
俺に話かけてくる奴と言えば智治ぐらいなもんだったから別にいいんだが、周囲の女子の視線が大変な事になっている。嫉妬で人に攻撃ができるんだったら、このクラスほぼ全員から攻撃を受けているに違いない。
それぐらいの注目を浴びているというのに気にせず話かけてきてくれるこの人も凄いが……可愛いからよしとしよう。高校生なんだ。これぐらいの元気と純粋さがあて良いと思うんだ。
親父臭いと思われるかもしれないが、そもそも精神年齢はこの中で一番の年寄りだからな。
「それにしても、あの問題……1年生の問題じゃなかったよね」
「え? そうだったのか?」
「……保志君がいつ勉強してるのかが気になるな」
「うぅむ。何も考えないで解いてたからなぁ」
呆れた、と一言残して智治は次の授業の準備に向かってしまった。
金本先生は後でと言っていたが……いつ行けば良いんだろうか? とりあえず放課後にでも行くとするか。どうせ次が最後の授業だし、その後の事を言っていたんだろうと一人納得する。
智治はあの問題が1年生のものではないと言ってたし……恐らくあの問題を解いたことに対する質問でもされるんだろう。特に苦労しないで解いてしまったし、その後すぐ寝てしまったのも見られているだろうから、より一層不可解に思ってるはずだ。
男だから塾にも行ってない。
多分、母さんの事だ。もし俺が塾に行きたいと言っても反対するだろう。まぁ、最初から行きたいとも思ってないが。
もしかしたら家庭教師だったら……? 憧れの家での教師プレイができるのか? 初日に牧野先生とセックスしておいてこういうのもなんだが、家で教師と秘め事はできるってのは興奮ものだ。
家には母さんもいるだろうし……そういったシチュエーションも燃えるものを感じる。
そんなバカな事を考えていたら、最後の授業中ずっと悶々とした時間を過ごすことになったのだった。