第17話
さて土曜日だ。
週休2日の恩恵を受けている高校生と言うのは非常に楽でいいものだ。
が、逆に言ってしまえばそれだけの時間を与えられているということで。この時間に勉学に励もうが自堕落に過ごそうが、各人の自由ではあるものの、これからの将来を決めてしまう大切な時間でもある。
ま、俺は昔この時間を有意義に使うことが出来なかったからこんな事になってるんだろうけれども。
とまぁ、残念な俺の回顧録はどうでも良いとして。
取りあえず今日の予定としては図書館に行こうかと思っている。それからCDショップ。ゲームなんかも見に行こうと計画している。
と言うのも、この世界における歴史だけじゃなく、他の分野においても違いがあるかもしれないからだ。例えば戦国時代の武将たちは女性オンリーだったかもしれない。となると、逆に上杉謙信は男だった説になっているんじゃなかろうかという勝手な推測。
男のロマン。なんて言葉も女のロマン、なんてことになってたし。
スマホだったらすらすら調べられたかもしれないが、俺の手持ちにあるものと言えば昔懐かしのガラケーのみ。十分に満足できるだけ情報を収集できてない。
で、ネットを使うのも良いかもしれないが……この辺の散策も兼ねて敢えて俺は図書館に行くことにしたのだった。
出かけると言った瞬間に母親に全否定されると言う事案に計画が頓挫しかけたが、母親にキスをしてしまうという事故が発生。カチンコチンに固まってしまった母親の姿を見て、申し訳ないと思いつつもそのまま家を出てしまった。
いやぁ……まさか母親とキスをしてしまうとは。
マイマザーも恥ずかしすぎて顔を真っ赤にしていたし。そのまま唇に左中指を添えていたのはどういう意味合いを含んでいたんだろうか。意味が深すぎるのか浅すぎるのか判断に困るなぁ……
「さって、何があるかなっと」
で、最終的には折れてくれた母親の運転のもと、図書館までやってきた俺氏です。歩いて行くと言っても聴かない母親のごねりを最小限にすべく、車で送ってもらう事に。
「え……っと、受付は」
「いらっしゃいませぇ」
眼鏡をかけた知的美人が出迎えてくれた。
ホント、この世界の女性は俺にとって綺麗な人しかいないから困る。
男性の数が少ないから、本当に一つかみの女性しかピラミッドの頂点に立てないなんてルールがこの世界にはあるんだろうかと疑問に思ってしまう。
「こ、こんにちわ」
「はい、こんにちわ。今日は本を借りに来たのかなぁ?」
服の上からでも分かるくらいに胸が大きい。
少し揺れただけでオッパイがプルンと、プリンみたいに揺れるんじゃないかって思うほどの大きさ。両手で持ち上げるとかなりの重量を感じそうだが……服の中が凄く気になる。
ゴクリと咽が鳴ってしまう。
ついついの事に『あ』と思うも、目の前のお姉さんはニコニコと対応してくれるだけ。それが逆に、裏で何かエロい事を考えてるんじゃないかって妄想を激しくしてくれる。
まぁ、そうなんだろうけど。
――思った通り、昔から女性が活躍し続けていたとの事。
で、男性が一気に少なくなったのは世界大戦のときらしい。戦闘やら講和のための犠牲になった男性が多くいたらしい。そもそも世界的に見て男性の総数が少ないときにこういった出来事があったんだから日本としては溜まったものじゃないだろう。
まぁ、それで今の日本があると考えると、その時の首相はかなり頑張ったんだろうが。
ずっと本を読んでいると腹が減ってきたので時計を見ると、もう既に時間は昼になろうとしていた。3時間ぐらいぶっ通しで本を読んでいたのかと思うとアホらしく感じてしまうが、昼食分のお金は持ってきている。
取りあえず、読み切れなかった分を借りて出ようと思い受付に行くと、そこには2人の女性が。さっきまで1人だったのに、何で増えたんだろうと思いつつも本を差し出す。
「はい、この本を借りるのね?」
「お願いします」
「はぁい、ちょっと待っててねぇ」
受付にいるだけなのに視線を感じる。
長い列になっているわけでもないのに俺に視線が集中している。この集中率は……いやまぁ俺が原因なんだろうが。取りあえず俺はカウンターの中でキーボードを叩いている女性の胸に集中していた。
ここまで胸が大きい女性はこの世界で出会ったことが無いだけあって、ちょっと興奮している自分がいる。ホント、この世界に来てから性欲があり得ないぐらいに高くなっている。今だってズボンの内側で勃起しているペニスの亀頭が擦れて痛い。
もう1人の女性はスラッとしているようだ。
胸はそこまで大きくないようだが、キリッとした顔立ちがなんとも綺麗な女性。ホント、この世界の女性は年齢が全く分からない。……さすがに首筋やほうれい線が出てればそれなりに分かるが、一切そういうのが見えないからなぁ……
「はい、期間は1か月だから忘れないでね?」
「わかりました。ご丁寧にありがとうございます。あと、もしよかったこれ……」
「え? ……それじゃあ、またねぇ」
「はい」
2人いるとは思ってなかったから1人しか渡さなかったが、あれはノートの切れ端に俺の携帯のメルアドを書いたものだ。俺の見た目が見た目だけでに半信半疑になるかなぁと思ったものの、それは家に帰ってからお楽しみ。
取りあえず次はCDショップとゲームショップがある商店街に。
考える間でもなくCDは女性がアーティストになっているんだろう。前の世界で有名だったグループも女性になっているかと思うと寂しい思いになるものだが、まぁ、しょうがない。
で、ゲームはどうなっているんだ?
女性が主人公で、ヒロインが男性みたいな構成になってるんだろうか。まぁ、RPGだとそうだろうなぁ。まさかこの世界にもBLみたいな要素は無いだろうが……あっても百合的要素か?
とにかく、母親から渡された小遣いを使ってタクシーに乗り込むのだった。
……良い訳じゃないが、この世界の男性は通常タクシーを使うらしい。
それも、男性が運転手をしている『男性専用タクシー』を。ちなみにこのタクシーには監視カメラや防犯ブザー云々が備わっているらしく、痴女対策はばっちりらしい。
子供を心配する母親のニーズにできる限り答えた結果が現状らしいと、ドライバーが誇らしげに言っていたのは気にかかるところだが、お目当ての商店街に到着。降りようとしたところで『頑張れよ』と声を掛けられたのには顔を顰めてしまった。
商店街に行くだけで何を頑張れと。
「いらっしゃいいらっしゃい! コロッケ美味しいからこっちにおいで!」
「はぁいお兄さん、ここでたこ焼き食べていかない?」
「お肉安いから寄ってよ! おまけつけるから、ね?」
少し狭い商店街。
昔ながらのお店が立ち並んでいる中に新しい店が出来ていくという形。
その店の店員さんは基本女性。立ち寄ってるお客も基本女性。逆に男性の姿を探すのが難しい。そりゃあこの場においては唯一の男性にしか思えない俺に視線が集中するわけだ。
中には綺麗な人もいるし、可愛い系の女性もいる。『おっかあ』と言っても過言じゃない人やベヒモスも存在する。残念ながらベヒモス、お前はダメだ。
「このコロッケ、美味しいね」
「お、男の子なのに珍しいね! これ、おまけにやるから食べてきな!」
「ありがと!」
色んな人にちやほやされる。
コロッケも一つしか買ってないのに2つもおまけをくれた。
俺が退散した後には客が集中しているように見えたが……男性効果ってやつかな? 男の子なのにってのは何を意味してるんだろうか。まさか、コロッケみたいな油ものも食べないとでも言うのか?
「……君、1人かい?」
「はい? そうですね」
「なんでここに君みたいな子が1人で来ているんだい? 親御さんと一緒じゃないと危ないよ?」
「あ、はい」
途中、交番に駐留している婦警に呼び止められ、お話をされてしまった。
ピシッと着こなしている制服がなんとも……クールビューティなお姉さんに似合っていてなんとも可愛らしい。
「これからCDショップにでも行こうと思ってたんですけど……お姉さんみたいな人と一緒に行けたら良かったな」
「んなっ!? ……え、っとぉ……まぁ、その、私は勤務している身だし、警察だし、周囲の目もあるし」
「それじゃあ、お姉さんが休みの時にでも……」
「ふぁっ!?」
驚いて固まってしまったお姉さんの手に、予め用意しておいたメルアドを書いた紙を握らせススッと退却。その足でそのままCDショップを散策し、ゲームも次いで確認。
……が、ほとんどの商品が女性アーティスト中心であり、男性が関与しているものは店頭に飾られていたものの、そのほとんどが完売状態。どんだけ男性に飢えているんだと。
ゲームについては、基本的な内容については大差ないものの、主人公がほとんど女性。ヒロインが男性になっているものが9割9分を占めており、とてもじゃないが俺の食指は動かなかった。
いやぁ……娯楽も制限されるとなると、本当にエロい方面でやっていくしかなくなるなぁと、改めて認識させられた土曜日だった。