『○○市内の電車内において痴女行為をした女性を現行犯逮捕――』
『マンションのベランダに干してあった男性物の下着を盗んだとして、30代女性が窃盗容疑で――』
『本日、国会において一夫多妻制度導入に向けた議論が展開される模様です。子を為した夫婦には補助金が支払われると言う詳細等が明記されていますが、それに対して男性保護委員会会長の堀牧氏はどのような対応をとるのか? 今後の展開が気になるところです』
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朝のニュースの内容に呆然としながらも朝食を摂っていた。
何だろう……いつの間に世界はおかしくなったんだろうか?
それともあれか? これは俺に対するドッキリで、テレビ局のスタッフが遂にトチ狂った内容で俺を驚かそうとしてきているのか?
いやまぁ、それだと我が母上殿の若々しさの証明の何の足しにもなっていないのだが。てか、そうだとしてもカレンダーから新聞から、何から何まで準備するものなのか?
ニュースの内容にしたって録画したものじゃなくて現物だろうし。適当にザッピングしてみても似たような内容のお話ばかり。正直、何が何だかさっぱりだ。
少しながら行儀が悪くなってしまうが、スマホで検索でもしてみるか。
手軽で素早く検索できる。そんな機械を求めてましたっと。
……ガラケーしかないやん?
そうか、十年前だったか……持ち運びやすさでいったら良いかもしれないが、それぐらいしか今の俺には利点が感じられん。
「もう! 男の子がご飯を食べながら携帯弄っちゃダメでしょ!」
「ごめん」
「……ヤス君、今日はなんだかいつもと様子が、体調悪いの?」
「いや、そんな事はないけど」
「もし体調が悪かったらすぐに言ってね? 学校もお休みしないと」
「え? べ、別に大したことじゃないから! ね?」
「そう? なら良いんだけど心配で……」
何だろう、この過剰なまでの心配性は。
昔っから大事に育ててくれた母親だったけど、さすがに体調が少し悪いくらいで学校休めなんて言ってくる人じゃなかったはずだが。やっぱり、さっきのニュースの内容が関わってくるんだろうか?
それにしても男性保護委員会、か。
そんな委員会なんて無かったはずだがなぁ。ニュースを見る限り、国会にも幅を利かせてるみたいだし。
……いやいや! それを言ったら一夫多妻制度の推進なんざ、日本じゃあり得んだろう!
女性が男性をレイプとか、男物の下着の窃盗とか。何が何だか……今もまだ夢を見続けてるって言ってもらった方がどれだけましか。
しばらくしてニュースも終わり、朝食も終えてしまった。
何の気もなしにゆっくり食べ進めてたが、時間は既に8時を越していた。
確か、あと少しで朝のHRやってた記憶が。完全に遅刻するパターンだが、まぁいいや。……遅刻を心配して起こしてもらったのは良いんだが、特に何も言ってこないってことはそこまで大した事じゃないのか?
部屋に戻って高校指定の制服に着替える。あまりの懐かしさに昔の事を思い出し、少し着替えるのに時間がかかってしまった。
「ま、取りあえず学校に行ってくるよ」
外は少し雨空模様。
自転車でも行けなくはないが、ここはバスで移動しよう。少し頭の整理もしたいところだし。
「歯磨きはした? ハンカチは持った? ティッシュは大丈夫?」
「大丈夫だよ。全部ちゃんと持ってるよ」
「本当に? 女性に何かされそうになったらこの防犯ブザー使うんだよ?」
「う、うん」
「じゃ、車出すから待っててね」
俺はどこの御令嬢だ。
「いや、良いよ。この時間でもバスはあるでしょ? それに乗ってくから」
「え……ダメよ! バスなんて危ないじゃない! 良いから、お母さんが車出すから待ってるのよ!」
「あ」
バスって言った瞬間、血相変えて飛び出していった母親の背中を呆然と見ていた。
これじゃあ本当に御令嬢になっちまった感じだな……
家から高校まで徒歩で40分。バスを使えば20分少々。自転車だと30分くらいってところだったか? 十年前の事でも、三年間通った高校までの道のりは忘れちゃいなかった。
いつもは自転車で、雨の日は危ないし面倒だからいつもバスを使って登校してたもんだが。
何だかなぁ……まるで違う世界に来ちまったみたいな感覚だ。
変わらない実家に変わらない両親、変わらない日本。だと思う間もなく違う日常を既に味わう羽目になるなんて。まぁ、全く変わらない高校生活を送らされるってのは憂鬱だったし、これはこれで面白いのかもしれないが。
……普通の高校生活を送りたいもんだなぁ。
「ヤス君! 準備できたよ! さ、乗って乗って!」
「はぁい」
「ヤス君、本当に何でもないの?」
「ん? 体調の事? 全然問題ないけど」
「えっと……それは良い事なんだけど、普段と違うっていうか……」
車の中。
母さんが隣で運転していて、俺は助手席に。
自分で運転できるのであれば俺がするけど、今の俺は高校生の身分らしい。
さっき制服のポケットを漁ってるときに出てきた高校の時の身分証に俺の顔写真が載っていた。この幼さがまだ残っている写真は、さすがの高校生である。
しっかし、いつも通りの話をしてると言うのに、母さんの反応が芳しくない。
高校の時から同じような話し方だったと思うが……何か変だろうか? それとも、高校の時は読まなかったはずの新聞を堂々と助手席で読んでる俺がおかしいか? 俺が偶に変わった行動を取るのは変わってないはず。
何々?
『法案として挙がっている一夫多妻制度については、夫側が申請を上げなければ妻になることが出来ない。また、妻が二人目以上になる時には国から補助金が出る対象となります。また、現在においても子供が産まれる度に同じように補助金が出るようになっていますが、補助金以外の項目においてもサポートできるよう詳細を纏めていく方針』か……ますます日本じゃないな。
確かに少子高齢化が進んでいる日本でも子供が産まれたからと言って補助金が出るなんて聞いたことがない。つまり、俺が今いるここは、俺が過ごしてきた時代背景が全く違うと言う事。
そういった違いを示してくれる事項をピックアップし、ドンドン読み進めていく。
『男性、女性の割合が遂に1:20まで低下。世界各国において非常に由々しき問題だとして取り上げられており――』
「ふぁっ!?」
「んー? どうしたの、ヤス君」
「いやいやいや……いや、なんでもぉ?」
「ふーん……本当に大丈夫かしら?」
まさかまさかのって感じだ。
はっきりとした違いをここで見つけてしまった。
まさか極端に男性の数が少ない世界だなんて……と言うことは世界人口も変わってくるはず。歴史的な問題も浮上してくる。今まで活躍した人物とか、将軍とか、天皇とか武将とか歴史的人物全員が。もしかすると女だったって事になるのか?
確かに俺がいた日本でも上杉謙信女性説とかあったが。もしや全員が女だったなんて事にはなるまい。
「ねぇ、母さん」
「なぁに?」
「母さんって、父さんとどこで知り合ったの?」
「……気になるの?」
「え? ま、まぁ……俺も将来の事を考えて――」
「もう! ヤス君は男の子なんだから俺なんて使っちゃダメよ。お淑やかに、ね?」
「あっはい」
良い感じに話を逸らされてしまった。
……え? 何、もしかして男女比が可笑しいだけじゃなくて、男女の貞操観念も変わってたりするのか?
あー……だからこその女性が男性を強姦ニュースか。納得したわ。