一人湯船につかって先ほどの事を思い出す。
同い年、同じ学年にいる女の子が、俺が寝ている最中にズボンを下ろして勝手にフェラをしていたと。完全に痴漢者の考え方ですわこれは。改めてあの時の状況を思い出してみると、女子が寝ている間にパンツを下ろされてクンニされていたってことだし……
そう考えると俺頭おかしい(確信)
『保志様が噂通りの方で良かったですわ。取りあえずこれは、受け取っておいてください』
『噂……? でも』
『保志様? ね?』
『アッハイ』
なんて流れでお金を手渡されてしまった俺氏。
確かにお金も何も貰ってない男子がフェラされてるのを許すってのは、この世界の観念的におかしいのか。と言うか、俺の噂って何だったんだろうか。授業をサボって屋上でセックスしてたけど、サボってたってのが女子にしてみれば恰好の噂の的になっていたんだろうか。
まぁ……数少ない男子の中で、一人だけ変な行動を取り始めたら噂されるのも致し方なし、か。以後は積極的に動き過ぎないようにしないと。
と、なるとだ。
俺が学校の中でセックスをする機会が愕然と減ってしまう。公然と授業をサボるわけにもいかないし、授業中に先生に一人男子が呼び出されるって構図もまた可笑しい話。いや、別に可笑しくないだろけど、女子の噂の的になるのはなぁ……
恐らくだが、無理にでも金を渡してきたのは、単に俺が本当に寝てる間に襲われたって話をしてもらいたくなかったからだろう。それ以外の感情、思惑がそこにあったとしても俺には分からないしなぁ。
「もしかして……」
今日、寝ようとしたら寝込みを襲われる可能性があるって事か?
そもそも、彼女のメイドとしての仕事時間って決まってるのか? いくら何でも夜中まで働いてくれって条件じゃないと思う。が、夜になっても帰ろうとしない所を鑑みるに、泊まり込みでこの家にいるんだろう。
男性が少ない世界だ。
このまま既成事実を作って許嫁にでもしてしまおうって魂胆もあったりするんだろうか? さすがに、リアルでお金持ちのお家柄なんだったらもっと上流階級の付き合いとかあったりするんじゃないだろうかっていうお上の人の、ねぇ?
普通に迫られても照れる。
風呂にも入った。あとは寝るだけだ。
別に風呂に入ってる最中は外で変な音もしなかったし、何も無かったって事だろう
さすがに母親がいるから夜這いに来ることはないだろうが、注意しておこう。
「ふぁ……ぁ、寝よ」
携帯をマナーモードにして就寝。
智治ぐらいしかメル友はいないし、それも普段から緻密に連絡を取り合ってる仲でもないので特にマナーモードを切る必要もない。例の女性たちも夜中にメールを送ってくるってことはないだろう。
ま、明日は日曜日だから少しぐらいの夜更かしは問題ないんだけどな。
……それにしても、ちょっとは学校での素行、改めようかなぁ。
――で、朝を迎えたわけだけども。
特に夜中、何かをされた形跡はなかった。どころか、俺自身朝6時に目が覚めてしまったので、寝起きを襲われることも無かった。
腹が減ったので部屋を出てリビングに降りてみると、早い時間だというのに朝食の準備を始めているあきらの後姿があった。が、近くに母さんの姿が見えないという事はまだ寝てるんだろうか。
「よぉ、朝早いんだな」
「あ、保志様。おはようございます。お母上が今日お仕事なので、朝食の準備をしていたところです」
「ん? 仕事……? 今日、母さんって仕事だったんだっけ?」
「あら、お母上のお仕事を知らないんですか?」
「あ、ああ。もし、あきらが知ってるんだったら教えてくれないか?」
「ええ。私は構いませんけど――」
「ダメ」
と、後ろから母さんの声が聞こえてきた。
と思ったら急に抱き着かれてしまった。何故、とは思ったが母さんの愛情表現なんだろうかと思いつつも、背中に当たる柔らかな双丘の感覚にドギマギする羽目に。後ろから抱き着かれたまま、頬ずりされつつ何故ダメなんだろうという思考がぐちゃぐちゃに入り混じっていた。
ダメ、とは……本当に俺に言えないような仕事なんだろうか?
「別に隠すような仕事ではないですが」
「ダメダメダメ! ヤス君はまだ知らなくても良いの! まだ高校生なんだから、このまま純粋に育ってほしいし……」
「いえ、ですがこのまま自分の親の職業を知らないまま過ごすというのは、周囲の子から世間知らずの烙印を押されることになるかもしれないんですよ?」
「うぅ……それは……」
あきらは母さんの仕事を知っていて、特に仕事内容は問題ないような話しぶり。
これは単に母さんが自分の仕事を打ち明けるのを恥ずかしがっているだけなんじゃ……?
「母さん、俺は別に母さんが何の仕事をしてても気にしないよ。それより、家のために仕事してくれてるってことだからね。いつもありがとう」
「ヤス君……!」
「うわっぷ! んぐ……ふぁ、だから、母さんの仕事教えてほしいなぁ」
今度は前から抱擁された。
ふくよかな母性の塊を顔に感じ、加えて良い匂いをかぎ取ってしまった。どこか安心するような香りはまさに母親と言ったところか。あ~^安心するんじゃぁ。
「うんっとね、お母さん、男性保護委員会に所属してるんだ……」
「え、そうだったの?」
「う、うん……黙っててごめんね」
「ううん。母さんの事、知る事ができてよかった」
「う~~! ヤス君んん!!」
「わっ!」
母親が幼児退化している件について。
そしてぐいぐいと胸を押し付けてくる。
年齢を感じさせない胸の柔らかさ。息子の俺ですらつい興奮してしまいそうになってしまう。が、いくら若返って世界の常識が変わってしまったとは言え、さすがに母親をそういう対象として見ることはできなかった。
母親じゃなかったらかなり好みの女性なんだけどなぁ……
「でも、男性保護委員会ってどんな仕事してるの?」
「え? うんとねぇ、簡単に言うと男性を守ってあげるお仕事なんだけどねぇ……」
「言葉通りです。男性を保護するために設立された委員会。警察が全ての犯罪を監視しているとするならば、男性保護委員会は男性が犯罪に巻き込まれる可能性を抑えようとする組織なの」
「へぇ……」
確か、少し前に現役を引退した柔道家の人が委員会の会長に就任したって話を耳にしたなぁ。この世界の男性が持っている性に対する意識を考えると、確かにこの委員会の存在は大きいだろう。普段から守られているっていう意識があるのとないのとでは精神的に違うしな。
ただまぁ、基本的に女性が男性を守るっていう構図になるのは致し方ないか。
これで委員会に所属してる女性が男性に何か問題を起こしてしまったら大変なんだろうけども。
「あ、ところでそろそろご飯って」
「もうそろそろです。ご飯が炊けたら――」
と、甲高い電子音が数回鳴り、ご飯が炊けたと炊飯ジャーが教えてくれる。
それじゃあ――そう言ってご飯の準備を始めてくれるあきら。その姿を見ていると、何故かドキドキしてしまう。昨日フェラしていた時のあきらの表情、雰囲気があまりにも違った。まぁ、エロと普段の雰囲気が同じってのはあまりにも味が無さ過ぎるとは思うけれども。
で、昨日も思ったことだがかなり飯が美味い。
単純にご飯が美味しいし、味噌汁、目玉焼き、鮭、お浸しに沢庵。何の変哲もないただの朝食だが、日本人であることを実感させてくれる。口の中で酸っぱさが広がる梅干しが食欲を促してくれる。
「嗚呼……美味い」
「ふふ。どんどん食べてね」
ご飯が進む進む。
母さんのご飯も美味しいが、胃袋から掴まれてしまっている気がする。
で、昨日の如く母さんの表情は悔しそうに眉を寄せている。そんな感情を魅せつけられても息子としては如何ともしがたい。いつまでメイドとして雇っているのか、その期間は分からないが、母さんと3人でいる間はずっとこんな感じになるのだろうか。
しばらくして、朝食を食べ終えた母さんは仕事に行ってしまった。
今家にいるのは俺とあきらの2人だけ。変わらぬ笑顔を浮かべているあきらだが、内心うずうずしているはず。まさかこうして2人きりの状況ができるとは思ってなかったのか、最初からこのタイミングを狙っていたのか。
……まぁ、男性保護委員会の仕事が何時までなのか知らないから大っぴらに変な事は出来ないだろうが。てか、委員会の定休日っていつなんだ?
「おっと……メールか」
朝食を食べ終えた後にダラッとしていたら携帯にメールが来ていた。
結構早い時間にメールが来ていたようだが、誰からだろうかとメルアドを見て知らない人の物だったことに気が付いた。さりげなくあきらに内容が見られないように携帯を隠し、メールを確認。
短くまとめられた文章は、指定場所で会いましょうという事だけ。
このメールが、図書館で会った人なのか、それとも婦警の人なのかはわからないが……今日も今日で楽しめそうだ。