先生との情事を終え、帰りの準備ができたときに携帯を見てみたら何と十数件の着信が。1件は智治からのものだったが、残りはすべて母さんからのものだった。
授業が終わって結構経ってるのに帰ってこない息子の事を心配しているのだろうが、さすがにこれは心配のし過ぎじゃなかろうか? いや、朝のニュースを思い返す限りじゃこれぐらいの心配が一般的なんだろうか。
今の所、クラスメートとかすれ違った女性を見てきたが、そこまで不細工というか、デブの人とかってのを見ていない。まぁ、これも主観が入っているからなのかもしれんが。
つまりだ。
もし俺が強姦とかに遭った場合。本当に暴力に訴えてくるものを除いて普通に対応できるかもしれないというわけだ。が、まぁ……これも未経験者が語る程度のお話で、実際どういう環境になるのかわからないしなぁ。
いきなり知らない人に抑えられ、セックスさせろ! と怒鳴られ中出しを迫られる……その後の認知の問題とか慰謝料の問題になったら普通負けるのは男の方なんだが、基本的にこの世界では男の方が勝つんだろう。
「それじゃ、帰りますね。今日はありがとうございました」
「な、なんで君がお礼を言うんだ!? こんな、お金を払ってでもしてもらいたかったのは私の方だ! ゴムまで貰って……あ、いや、その……私は教師だし、それに、こんな年増の女にこんな事を言われても嬉しくないだろうが、凄く……気持ちよかった。ありがとう」
「先生……そんなに卑下しないで。俺も、先生と一緒にいたこの時間が凄く楽しかったし、先生の中――凄く気持ち良かったよ」
「ッ――!!」
一気に赤面してしまった牧野先生。
確かにちょっと気障な台詞を吐いてしまったという自覚はある。
だが、こんなに顔を赤くするほどなのか? 逆にこんな世界でも凄い恥ずかしい事を言ってしまったような感じなんだろうか。
「そ、そんな事を言わないでくれ……歳の差もあるんだ……なのに、これじゃあ、君の事を本気にしてしまうじゃないか……」
「あー……」
俯いてモジモジする牧野先生。
ちなみに、先生みたいに焼けた小麦色の肌にショートカットが似合う女性は好みだ。前の世界だったら速攻お付き合いを申し込んでるレベルで。でも、この世界の標準だと男性が少ないせいもあってモテないんだろう。それを言ったら大半の女子はモテない事になるが。
加えて男性が女性に対して抱いている感情を考えると……そういう現状になってもしょうがないんだろう。
「そ、そうだ! 今日はもう遅いし、私が送っていこう!」
「え、良いんですか?」
「ああ、早く帰ったほうが親御さんも安心するだろう。もし何か言われても私から言っておこう」
「ああ、それなら、僕が頼み込んで進学先について聞いていたと言ってもらえれば大丈夫です」
「何……? 君は、進学するのか……?」
「え?」
なんだろう、この空気。
怪訝な表情で見つめられても何もでないぞ?
……いや、この世界の倫理観念と男女比率、法律とかを考えると大学に進まない男性が普通なのかもしれない。
結婚の義務化すれば良いんじゃないかと思わないでもないが、昔そういう話題が上がったそうだが、ここでも男性保護委員会が出張ってきてやれ男性の人権だとか語ったらしい。多くは、男性との縁が無い女性が男性と結婚する機会が減ってしまうという内容だったが。
多分に僻み妬みが混じっているだろう内容だなぁ……
「まぁ、進学については個人の自由だし、家庭の問題もあるだろう。君がそう言うのであれば大丈夫なんだろう」
「ちなみに、先生はどこの大学出身なんです?」
「ん、私は日本体育大学だな」
「え、結構良いところなんじゃないですか?」
「はは……体を動かすことだけが取り柄だったからな」
自嘲気味に微笑む先生を、俺はどうすることもできなかった。
(いや、メンドい……)
自信持てる持てる持てるって!
なんて熱く励ました所で惹かれるだけだろうし、まかり間違って先生が俺にぞっこんになるというエロゲ仕様が発動しても困る。いや、実際こんな綺麗な人とだったらいいんだが……いかんせん、性格的に暗い所があるんだろうか?
その感情の爆発が今日の朝の押し倒しにつながった?
まぁ、押し倒した所で止まったってのが先生の人となりと言うか……初心で妄想に身を任せることができない引っ込みタイプの性格をよぉく表していたが。
「それじゃあ、帰り道、よろしくお願いしますね」
「ああ、任せてくれ!」
「ただいまぁ」
「ヤスくぅぅぅぅん!!!!」
「うわ」
先生の車で送ってもらい、降りる直前で別れのキスを交わしてきたが、案の定頬を紅く染めてフリーズしてしまった先生をそのままに家の中に入ったのだった。
が、玄関に入ってすぐに母さんが抱き着いてきた。ずっとここで立って待っていたのだろうか? あれだけ携帯に着信が残っていたんだ、ここで待っていてもおかしくはないんだろうが……
「どうしたんだよ……ちょっと、大げさじゃない?」
「そんな事ないよ! ヤス君がいなくなったんじゃないかって……何か、悪い事に巻き込まれたんじゃないかって心配してたんだからね!!」
「あ……うん、ゴメン」
よく見てみると、母さんの瞳が赤くなっていた。
まさか、泣いてたんじゃないだろうか?
……完全に自分の欲望を発散させるためだけに動いていたが、さすがに母さんを泣かせるなんてのはいけない。まさかここまで心配してるなんて思っても無かったが、いざこうして目の前で泣かれてたかもしれないというのを実感すると、かなりの罪悪感が込みあがってくる。
「ゴメン……ゴメンね……」
「ひっ……っ、ホント、心配したんだからぁ」
しょうがないなぁと思いつつ、抱き着いてきて離れない母さんの頭を撫でる。
サラサラの髪の毛は、手を差し込んでも一切絡まってくることなかった。
はぁ……マザコンでも何でもなかったんだが、同じ肉親でもこうして若返っていると別人にしか思えない。それに、こんなに心配性じゃなかったし。
まだ少し愚図ついている母さんだったが、両手で目元を擦りながら俺から離れてくれた。ホッとする反面、目を擦ったらばい菌が。なんて事を考えていた。
「……それで、今までどこにいたの?」
「学校だよ。先生に話を聞いてたんだ」
「何の?」
「これからの、将来の話を少しね。良い大学があれば進学でもしようかって」
「ダメよ!」
「うぇっ」
まさかのダメ出しである。
こんなに瞬間的に反対されるとは思ってなかった。
昔の俺は、自分のやりたい事しても良いけど良い大学には行きなさいよ? なんて笑みを浮かべられたもんだ。もちろん、その後ろには鬼が透けて見えた気はしたが。
「大学なんてどんな人がいるか分からないんだから、高校卒業したらずっとお家にいよう? ね?」
「ま、まぁ……まだ高1だし、3年後どうなってるか分からないけど、少しでも選択肢を広げておきたいし。それに、母さんを楽にしてあげたいから」
「ヤ、ヤス君……」
まさに怒ってますといった表情を浮かべていた母さんだったが、最後の俺の言葉には感極まってしまったようで、両手を胸に当てて喜んでいた。
俺としては豊満なバストが強調される形になってしまっているのに目がいってしまいそうになる。さすがに肉親を欲情を含んだ目で見ることはできない。
「あー……それで、今ジャージ着てるのは、学校で飲み物零しちゃって。結構かかっちゃったからジャージで帰ってきたんだ」
「そうだったんだ……それじゃぁ、すぐに洗っちゃうから洗い物全部だしてね」
「わかった」
制服はクリーニングの方が。
と思ったが、そもそも男子の制服をこの世界で世に出したら大変な事になるのだろう。いや、普通にクリーニングしてくれるだろうが。洗われる前に誰とも知らない女性にクンカクンカされると思うと気が気じゃない。
せめて店員のプロフィールと画像を一覧で見せてみろ。
「もうご飯の準備できてる?」
「先に食べてても良いわよ。洗濯してくるから」
「はーい」
さて、弁当も食べたが、こうして母さんの手料理を食べるなんていつぶりだろうか。昔は何気なく食べてたもんだけど、一度社会人になって地元を離れてからお袋の味が恋しくなったのが何回あったことか。
えっと……今日のメニューはっと――
――スン、スン……はぁぁ……ヤス君……良い匂い」