(サンフェスを無事に乗り越え、早くも数日が経ち)
今年も夏のコンクールに向けての本格的な練習が始まった。その前に中間試験もあった。もちろん、私に優子…今まで触れて来なかったが、みぞれと…今は訳ありで吹部にはいない希美の元南中出身の2年生組は何事もなく乗り切った。
黄前ちゃんと麗奈ちゃん、葉月ちゃんとサファイアちゃん達1年生組にとっては、今年が初めての北宇治での中間試験だったわけだが…聞かなくとも無事に乗り切っているだろう。
話をコンクールの話に戻すが…吹奏楽コンクールといえば、甲子園のような吹奏楽最大の大会。毎週水曜夜のゴールデン帯で放送中の某バラエティー番組でも、よくコンクールの練習などを編集した特集が放送されることがあるが…。
北宇治高校は、ここ10年府大会止まり。しかも銅賞という残念な状態なのだった。ということで…。
滝「今年はオーディションを行いたいと思います。 私が演奏を聴いて、大会に出るメンバーと編成を決める…ということです」
北宇治高校では、合計55名の上級生が優先的に出場してきた。そこに降って湧いたオーディション。当然、反対の声も多かったが…。
滝「3年生が1年生より上手ければ良いだけのことです」
いつも通りの粘着イケメン悪魔こと滝先生は、私達吹部にそう毒舌を吐き捨てた。
(いつも通り、3年3組教室に集まり、オーディションに向けて練習中のユーフォ・チューバ・コントラバス組)
葉月「ユーフォは3人だし、全員合格だよね」
梨子「チューバだって、全員選ばれちゃうかもよ?」
葉月「いや~…私初心者ですよ? 無理ですよー、ムリムリ…」
(笑顔でそう謙遜している葉月の後ろから物凄い形相をしたあすかが近付いてきた)
(ムニュ)
葉月「ふにゅ!」
(葉月の頬を指一本で突(つつ)いたあすか)
あすか「よく考えるのだ!! 上手い人がレギュラーになるシステムだよ?
逆に言えば、下手だと来年も再来年もレギュラーの保証がないってこと!
だから…今年レギュラー取るつもりで頑張る!!
冬に凍死するキリギリスのようにならないためにも」
(そう久美子達にアドバイスしたあと)
後藤「課題曲、自由曲の譜面とCD貰って来た」
(そのCDを聴く一同)
久美子「…」
夏紀「その曲は、ダイナミックで…。 私は思った…やっぱ滝先生は本気で全国を目指していると…。
って考えてる?」
久美子「!? な、夏紀先輩? は、はい。 でも、どうして分かったんですか?」
夏紀「さぁ…なんでだろうねぇ」
私は、真剣に課題曲と自由曲のCDを聴きながら、黄前ちゃんが思っていたことを言い当てて、黄前ちゃんに不思議がられたが、適当に誤魔化した。
(譜面が渡され、各自練習開始)
久美子「〜〜〜♪♪」
夏紀「…上手いね。
ユーフォ始めたのいつって言ったっけ?」
私に話しかけられ、ユーフォの演奏を止めて返事する久美子ちゃん。
久美子「小4からです」
夏紀「7年か…そりゃ差もつくか…」
久美子「…?」
葉月「“差”って何ですか?」
梨子「あー…それより、指番号振っておいてあげたから、練習してみて」
私の“差”という単語を聞いて、それが何のことか気になって聞いてきたので、気まずくなったのか指番号を振ったプリントを渡し始めて、話を逸らした梨子。
言えるはずもない。仮に“あの話”を黄前ちゃん達1年生組にしたところで…。何も意味ないのだから。
そう…。北宇治吹奏楽部の“闇”を払拭することなんて。