県祭り。毎年6月5日から翌6日にかけて行われる京都府宇治市の祭り。灯火を消した暗闇の中で行われる暗闇祭の一つ。ちなみに、これは某サイトで検索したにわか知識なのだが…。
『宇治の平等院の南門から100メートルぐらいのところにある県神社の祭礼で、6月5日の深夜、明かりのない暗闇の中で、梵天(ぼんてん)渡御と呼ばれる儀式があり、町内の男集が、梵天と呼ばれる神輿を担ぐ。
この神輿の通過する間は、家々も明かりを落として、それを迎えるため、「暗闇の奇祭」と呼ばれている』…らしい。
そんな県祭り数日前ということで北宇治高校の音楽室は、祭りの話題一色。私のすぐ傍でも優子が香織先輩を祭りに誘おうと話しかけていた。
優子「香織先輩!! あの…よかったら、県祭り一緒に…」
香織「ごめん、あすかと一緒に行こうって言ってて」
優子「…ぐぬぬ~」
夏紀「…はぁ~」
呆れ顔になりながらも、私が代わりに一緒に祭りに行こうかとあからさまに深い溜め息を吐いた、音楽室のその少し離れたところでは…。
久美子「付き合ってる…? 秀一と!?」
葉月「…」
緑輝「どうなんですか?」
久美子「…いや付き合ってないけど」
葉月「!」
夏紀(…ふ~ん…)
黄前ちゃん達の会話をこっそり盗み聞きしながら、どうやら黄前ちゃんと秀一くんは幼馴染みであることが察しが付いた。
それからあの葉月ちゃんの態度を見て、原因は分かっていないが、秀一くんのことを葉月ちゃんは好きになってしまったのだろうと私は推理して、微妙にほくそ笑んだ。
(塚本秀一。今年入部してきた新入部員の1人。トロンボーンを担当している)
緑輝「緑、安心しました。
葉月ちゃん、行きましょう!!」
葉月「いや私、別に塚本が好きとかじゃなくて!!」
久美子「…えっ? 好き? 秀一を!?
葉月ちゃんが!?」
(ガタッ!)
(久美子のその驚きの返事を、椅子から立ち上がって内緒にするよう黙らせる葉月)
葉月「…///」
(回想。サンフェスが終了した数日後、滝からオーディション開催のことが発表された日の翌日の帰りの電車内にて…)
葉月「…じゃ、私ここだから」
(隣に座っていた久美子に、目的地に着いたので別れの挨拶をして、チューバが入った巨大なバッグを抱えて外のホームに出ようとした葉月)
(ガッ!)
葉月「うわぁぁ…!!」
(ガシッ!)
葉月「!? あ…」
秀一「大丈夫?」
葉月「…///」
(チューバ入りの巨大バッグを抱えていた影響で、電車乗車出入り口の段差に躓いて転びそうになった葉月を間一髪で助けた秀一。片手にはフランクフルトを持っていた)
秀一「オーディション、頑張ろうな」
葉月「…うん…///」
(別の日。葵が吹部を辞め、晴香が部活を休んでいた日の帰りの電車内にて…)
葉月「…久美子、あんまり力になれないかもだけど、何でも話してよ」
久美子「…ありがと」
秀一「おわっ!?」
葉月「わぁっ!?」
(目的地に着いたので、久美子に別れを告げ、ホームに出ようとした葉月。またもや出入り口でフランクフルトを持った秀一と出くわす)
葉月「…///」
(秀一が乗った電車出発。その電車を頬を染めながら駅のホームで見つめていた葉月)
(回想終了)
緑輝「…ちゃん? 葉月ちゃん!?」
葉月「…はっ! な、何?」
(数日前の何度かの秀一とのやり取りのことを思い出していて、川島サファイアの返事に驚いて反応する葉月)
久美子「大丈夫?」
葉月「だ、大丈夫大丈夫。 で、何だっけ?」
緑輝「だからー…。 県祭り、一緒に行きたいなーなんて思ってませんか?
恋ですよ!」
葉月「あ、アハハ…」
(ハートマークの手形を作りながら葉月に見せるサファイア。それを見て苦笑いする葉月)
緑輝「全ての音楽は恋から始まるんです。
愛と死は音楽にとって永遠のテーマ」
葉月「だから違うんだってば~!」
久美子「…」
(後編に続く…)