(夏紀が久美子と顔を会わせていた頃…)
香織「私はもう納得してるから。
先生は、私より高坂さんがソロに相応しいと判断した」
(某公園のジャングルジム前で会っていた優子と香織。麗奈がソロパートに選ばれた件について香織に聞いていた優子)
香織「これからは金賞目指して頑張る。 違う?」
優子「でも…」
(そう優子に言って、その場を立ち去ろうと優子に背中を向けた香織)
優子「……。
香織先輩!! 諦めないで下さい!!
香織先輩の夢は絶対に叶うべきなんです!!」
(両手を祈る形で組み、香織にそう告げた優子)
香織「…ありがと」
優子「…!」
(香織にそうお礼を言われ、突然1年前、香織と初めて会った時のことを思い出す優子)
香織「…そういえば、知ってた?」
優子「? 何がですか?」
香織「いや…。実は私…。
夏紀ちゃんが黄前ちゃんのことを誘ってたとこ偶然見ちゃって…」
優子「……え?」
(場面は夏紀と久美子がいた某ファーストフード店に戻り…)
一体どこで気付かれたのか。気付かれないように、十分予防線は張っていたつもりだった。
しかし、遂に“例の件”がバレようとしている。たった今、この場で。
黄前久美子ちゃんという、1人の女の子に。何のことかって?私と優子の同性愛の関係のことだ。
こうなることを予想せず、私が不用意に彼女を誘ったのがイケなかったのか。
今更後悔しても、もう遅い。私は目の前にいる黄前ちゃんに、どうこの場を切り抜けるために上手い嘘を吐くか、思考を巡らせていた。だが…。
久美子「…上手い嘘を吐いて、この場から逃げようとしても無駄ですよ?」
夏紀「え? な、何のことかなぁ?」
久美子「誤魔化さないでください!!
こないだのサンフェス練習時、夏紀先輩…。
優子先輩の方を睨んでたじゃないですか!!」
夏紀「え? そ、そんなことあったかなぁ?
黄前ちゃんの気のせいじゃ…?」
何とか誤魔化すために、あれやこれやと抵抗を試みた私だったが、黄前ちゃんは私が普段知っている黄前ちゃんとは、まるで別人のようだと錯覚させられるほどに質問責めしてきた。
久美子「優子先輩と、本当はどういう関係なんですか!?
“犬猿の仲”というのも、本当は嘘なんですよね!?」
夏紀「お、黄前ちゃん…ここ、ファーストフード店で…。
周りにお客さんがいるんだから、あまり騒がない方が…」
久美子「…!
分かりました。 そうですね。
じゃ…。 明日、優子先輩にも直接聞いてみます。
夏紀先輩と本当はどういう関係なのかを」
夏紀「…いや、だからそういう問題じゃなくて…!」
最早これまでだった。いくら言い訳を重ねても、黄前ちゃんは聞く耳を持ってくれそうにない。
観念して、私は彼女を自分の部屋に誘おうと言葉をかけようとした…。そのときだった。
(誰かがファーストフード店に入って来た。その人物は息を激しく切らしている)
夏紀「…!」
久美子「…噂をしていたら…。
ちょうどいいところに現れてくれましたね…。
優子先輩…」
優子「ハァ…ハァ…」
その数時間後…。私と優子の“契約”のことが、遂に黄前ちゃんに知られ…。
“契約”は崩壊を迎えた。