(久美子に、夏紀と優子の秘密の関係がバレた翌日)
滝「これで、この音楽室の音は毛布の力で、より響かなくなります。
響かせるには、より大きな音を、正確に吹くことが要求されます」
私達は、滝先生から『使わなくなった毛布があったら持参してください』という指示を受けていて、その使わなくなった毛布を音楽室の床一面に敷いていた。
しかし、私はそれどころではなかった。なぜなら、黄前ちゃんに私と優子の秘密の関係がバレてしまったのだから。
あの子のことだから、失言でもしない限り、周囲に言い触らしはしないと思うが…。それでも、いつ周囲にバレてしまうのかと気が気でなく、私は時々黄前ちゃんの方をチラ見していた。そんな中だった。
優子「先生!!
滝先生は高坂麗奈と以前から知り合いだったって本当ですか?」
香織「…!」
私と同じく、昨日のことで不安に駆られているはずなのに、突然麗奈ちゃんが滝先生と知り合いだったことについて、滝先生に質問している優子。優子の傍で、香織先輩が真っ先に反応している。
優子「噂になってるんです!!
先生が贔屓したんじゃないかって」
滝「…」
(優子のその疑問に、無言で優子と向き合う滝)
麗奈「…何だっていうの? 先生を侮辱するのは止めてください」
夏紀「…!」
優子のその空気を読めない発言に、麗奈ちゃんが怒りをぶつけてきて私は更に不安が強まった。
麗奈「なぜ私が選ばれたか分かるでしょ。
香織先輩より、私のが上手いからです」
優子「なっ…?
アンタ…自惚れるのもいい加減にしなさいよ!!」
夏紀「…!」
久美子「…」
夏紀「…」
麗奈ちゃんのその強気な発言に腹を立て、麗奈ちゃんに詰め寄った優子を止めようと、言葉を発しようとした私。しかし、黄前ちゃんの無言の視線を感じ、黙ることにした。
こうしていないと、この騒動に紛れて昨日の一件のこともバラされてしまう恐れもあったからだ。その時だった。
香織「…めて…」
優子「香織先輩がアンタにどんだけ気遣ってたと思ってんのよ!!」
香織「止めて!!!!」
優子「!?」
(香織のその言葉を聞いて、急に大人しくなる優子)
麗奈「…ケチつけるなら…私より上手くなってからにしてください」
(ガラッ!)
久美子「…!」
夏紀「…」
音楽室を出て行った麗奈ちゃんのあとを追いかけるように、続けて音楽室を出て行った黄前ちゃん。その黄前ちゃんのあとを、密かに追う私。
麗奈「…」
久美子「…麗奈…」
麗奈「…ウザい…」
久美子「え?」
麗奈「ウザい! ウザい!!
何なのあれ!! ろくに吹けもしないのに何思ってんの!? そう思わない!?」
(ガバッ!)
久美子「わっ…!」
(突然久美子に抱きついてきた麗奈。そんな麗奈の行動に慌てる久美子)
麗奈「…ねぇ…久美子。
私、間違ってると思う?」
久美子「…思わない」
(その後、グラウンドが見渡せる小山の頂上にある休憩場所に移動し…)
麗奈「…滝先生がこの学校に来るって話聞いてね、だから推薦蹴って…。
私、滝先生のこと好きなの。
LIKEじゃないよ、LOVEの方ね」
久美子「…えぇ~…」
麗奈「…こんな時期に顧問のこと悪くいうなんて…信じられない」
(そう言って、仰向けに寝る麗奈)
久美子「…ソロを譲る気は?」
麗奈「ない。 ねじ伏せる」
久美子「…」
(そんな2人の会話を離れた場所で見ていた人物が1人…)
夏紀「…」
私は、崩壊した“契約”を修復できるかもしれない黄前ちゃんの重大な秘密を目撃してしまい、一旦どうするか考えるため、その場をあとにした…。