※この作品はR-18です。

響け!ユーフォニアム〜中川夏紀の憂鬱〜(未完)   作:森島響

21 / 32
第20話『再オーディション』

(夏紀が久美子とお互いの秘密を共有する仲になった夜から翌日…)

 

夏紀「…このまままた銅取ったら、私と葉月ちゃんがオーディション落ちた意味ないんですけどー」

 

後藤「…」

 

梨子「…」

 

 表向きは、いつもと変わらない日の昼下がり。しかし、私は、いつもの3年3組教室で、またやる気を失って、いつもの窓際でだらけていた。後藤くんと梨子達が気まずそうにしている。そうなっている原因は…。

 

(数時間前)

 

「やっぱりさ、贔屓するつもりなくても、知ってる知らないじゃ違うと思うんだよね」

 

「結局、高坂さんをソロにするためのオーディションだったって話もあるらしいよ」

 

「高坂さんのお父さんて、有名なトランペット奏者なんでしょ?」

 

「じゃあ先生、嫌とは言えないね」

 

(校内の各場所で、滝先生が麗奈に贔屓でソロパートを任せたことを気にくわない女子部員達が悪口を交わしている)

 

(挙句の果てには…)

 

「いっくよー!」

 

(バッ!)

 

(ボフッ!)

 

(音楽室にて。滝先生の指示で敷いていた毛布を勝手に片づけて、1人の女子部員がその毛布の山の上に飛んで遊んでいる)

 

「アハハハ!」

 

(その時…)

 

(ガラッ!)

 

「…あ…」

 

滝「………」

 

「………」

 

滝「…どうして片づけてるんですか?」

 

「あ…いえ…これは…」

 

滝「…私は取って良いなんて一言も言ってませんよ!!」

 

「………」

 

滝「…敷き直しなさい」

 

「…はい…」

 

(そんな感じで、吹部は今、かなりピリピリムードになっていた)

 

緑輝「あすか先輩は…」

 

葉月「…! だね!! あすか先輩なら皆のことノせてくれそう!!」

 

夏紀「…」

 

夏紀(フッ)

 

 緑ちゃんと葉月ちゃんのその提案を聞いて、あすか先輩だったら何か進展させてくれそうな予感を感じた私も、一瞬笑みを浮かべた。

 

(その頃、副顧問の松本先生との二者面談を終えた久美子は…)

 

久美子「…はぁ~…。 緊張したぁ~…」

 

(某所の廊下で、一息吐いていた)

 

久美子「…ん? あれは…。

 香織先輩…?」

 

(久美子が外を見ると、そこにはトランペットの練習をしていた香織の姿があった)

 

香織「~~~♪♪」

 

久美子「…ソロのところだ…」

 

(その時…)

 

(ピタッ)

 

(バッ!)

 

久美子「ひゃっ!」

 

(突然、何者かが背後から冷えたミネラルウォーターのペットボトルを太ももに当ててきた。情けない声を上げながら、久美子は慌ててその人物の方を振り返る)

 

あすか「…へっへ~♪ 驚いた?」

 

久美子「…もう! ビックリしたじゃないですか!」

 

あすか「ごめんごめん」

 

(そうあすかとやり取りしながら、一緒に外で練習中の香織のことを見つめる)

 

香織「~~~♪♪」

 

あすか「…オーディションに不満があるとかじゃない。

 ただ、納得してないんだろうね、自分に」

 

久美子「…あすか先輩はどっちが吹いた方が良いと思ってますか?」

 

あすか「それは答えられないかな。 私的な意見はノーコメンツ」

 

久美子「…」

 

あすか「…」

 

(あすかがそう答えたあと、数秒ほど、お互い沈黙が続き…)

 

あすか「……正直、心の底からどうでもいいよ。

 誰がソロとか、そんなくだらないこと」

 

久美子「…」

 

(そんなあすかの闇を感じながら、久美子はその後、あすかと別れた)

 

(その日の夕方…)

 

(ザワザワ…ガヤガヤ…)

 

(パンパン!)

 

(部長の晴香が手を叩いて、音楽室の吹部部員達を静まらせた)

 

晴香「皆に話があります。

 最近先生について、根も葉もない噂をあちこちで聞きます。

 このままじゃ、銅どころか銀も怪しいと私は思っています」

 

「………」

 

「………」

 

(静かに晴香のその話を聞いている部員達)

 

晴香「不満があるなら裏でコソコソ話さず、ここで手を挙げてください。

 オーディションに不満がある人」

 

優子「…」

 

「…」

 

「…」

 

晴香「…」

 

(香織こそが選ばれるべきだと思っていた優子は、真っ先に挙手。他の部員達もそれに続いて手を挙げる。それを無言で確認する晴香)

 

(ガラッ!)

 

滝「…おや…今日は随分静かですね。

 この手は?」

 

優子「…オーディションの結果に不満がある人です」

 

香織「ちょっと…優子ちゃん…」

 

夏紀「…」

 

 タイミングを図ったかのように、音楽室にやって来た滝先生に、例のオーディション結果の件のことを話した優子。

 私は、チラッとそんな優子の後ろを見つめ、香織先輩が麗奈ちゃんが真ん中の席に座っている中で、小さな声で優子のことを注意していた。

 

滝「…そのことで…今日はお話があります。

 希望者には、再オーディションを行いたいと考えています」

 

「!」

 

「!」

 

(滝先生のその発言に、驚きの表情を浮かべる部員達)

 

滝「来週全員の前で演奏し、全員の挙手によって合格を決定します。

 全員で決定する。 これなら異論はないでしょう。

 聞きます。 再オーディションを希望する人」

 

(数秒、沈黙が流れる中…)

 

(スッ…)

 

香織「…ソロパートのオーディション、もう一度、やらせてください」

 

 私達は、そんな香織先輩の勇気ある決断とも取れる挙手に、またもや不穏な空気に包まれていた…。

 ただ1人…ほくそ笑んでいたあすか先輩を除いて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。