季節は夏真っ盛りに差しかかり。暑い日々が今年もやって来た。私は、相変わらず吹部部員達と一緒にコンクールに向けて練習中である。
それより…。例の再オーディションに香織先輩がエントリーした件についてだが…。あれから今のところ、またもや何も事件は発生していない。
そう。香織先輩こそソロに選ばれるべきと考えている優子は、あれから新たに不満を持ち込んではきていなかった。
その代わりに、その余波によるものなのかは分からないが、吹部内で練習不足の部員が何名かチラホラ出て来ていた。
(音楽室で練習中の吹部)
滝「…止め!」
(一同、演奏を止める)
滝「…塚本君、そこ、出来るようになって下さいと言っているはずです」
秀一「…」
滝「…明日までに出来るようになっておいて下さい」
秀一「……はい…」
(その日の昼…)
(教室が熱帯地獄のため、とても暑くていられない状態だったので外で昼食を摂ることになった久美子、葉月、川島サファイア)
葉月「高坂さんも来るんじゃない?
ご飯、一緒に食べる?」
緑輝「そうですね。
ご飯は大勢で食べた方がおいしいですしね」
久美子「…ありがと、呼んで来る」
(麗奈がいる場所に向かう久美子。その道中、優子に鉢合わせする)
久美子「わっ!」
優子「どう思う? この音、どう思う?」
久美子「え? 音…って…あ…」
(優子にそう言われた途端、聞き覚えのある麗奈が吹くトランペットの音色が流れてきたのを聞き取る久美子)
麗奈「~~~♪♪」
久美子「…良いと思います。
音大きいし綺麗だし、ソロに相応しいと思います!」
優子「……だよね。
1年でこの音って…ずるいよね…反則だよ…」
(そんなやり取りをして、優子と別れたあと…)
麗奈「!」
(久美子に気付いて、久美子の方を振り返る麗奈)
麗奈「何?」
久美子「いや…お昼、もう食べたかなって思って」
麗奈「さっき香織先輩達と食べたの」
久美子「…あ、あ~…」
(麗奈のその返事を聞いて、微妙な反応をした久美子)
麗奈「香織先輩、凄く気遣ってくれて」
(数分前…)
(香織と昼食を食べている麗奈)
香織「北高吹奏楽部として一緒に演奏することに変わりないから。
良い演奏しようね」
麗奈「…はい」
(香織に昼食時にそう言われたことを久美子に教える麗奈)
久美子「良い人なんだね、香織先輩」
麗奈「うん…だからちょっとやりにくい」
(お昼休憩終わり。音楽室に戻ってきて…)
(麗奈が通り過ぎていくのを黙って見つめている優子。その優子を離れた場所で見つめる夏紀)
夏紀「…」
優子「…」
(回想。1年前…)
香織「もう1年を無視するの、やめてあげて下さい」
「…」
「…」
香織先輩「…お願いします! お願いします!」
優子「…」
(1年を無視し続ける先輩部員達に、無視をするのを止めてもらうよう、何度も謝罪している香織。その香織を教室前の廊下で見つめている優子)
(回想終了)
(正面玄関の下駄箱置き場前にて、1年前の出来事を思い出していた優子)
優子「…」
夏紀「…優子」
優子「!? ひゃっ…!
って…何だ、夏紀か…」
夏紀「余計なこと考えてないよね?
悲しむのは香織先輩なんだからね?」
優子「…分かってるよ…そんなこと…」
余計なことを考えていそうだった優子に、私は忠告した。しかし、優子は分かってるの一点張りで、本心を曝け出そうとはしてこなかった。
(翌日…)
(コッ…コッ…)
(久美子が登校してきて、廊下を歩いている)
久美子「…ん?」
(通り過ぎようとした教室内から声がしたので、その教室を覗き込む久美子)
久美子「…!」
麗奈「話って何ですか?
オーディションの話ですか?」
優子「……私、どうしても香織先輩にソロを吹いてほしいの」
(教室内にいたのは、麗奈と優子だった。オーディションの件で重要な話をしている2人)
(ガバッ!)
優子「…だから…お願い!!」
麗奈「!…」
久美子「…」
(香織に再オーディション時に、わざと負けてほしいと麗奈に頭を下げて頼み込んで来た優子。その優子に驚く麗奈と、それを教室前の廊下で覗き見していた久美子)
(そして…早くも再オーディションの日がやって来た…)