(コンクール予選翌日の朝。久美子の部屋)
久美子「…スゥ…スゥ…」
(久美子、ベッドで寝ている)
(ピピピピピ…)
(タンッ!)
(ピ…)
(久美子、目覚まし時計を止める。針は朝の5時を指していた)
(数分後…)
(プァー…)
久美子「スゥ…スゥ…」
麗奈「………」
(北宇治高校に向かう電車の中で、先に乗車していた麗奈の肩に寄り添って熟睡している久美子)
(更にその数分後…)
(ガチャ)
(学校に到着し、下駄箱のロッカーを開け、上履きを取ろうとしている久美子)
(数秒後…)
(コッコッ…)
(久美子と麗奈、横一列に並びながら廊下を歩いている)
久美子「どこ行くの?」
麗奈「職員室。 音楽室の鍵ないと、開かないから…」
(職員室到着。久美子と麗奈、朝早く学校に来ていた滝先生と室内にて遭遇)
麗奈「あの、音楽室の鍵を…」
滝「鍵なら、鎧塚さんが先に持っていきましたよ」
久美子「鎧塚さん…?」
麗奈「オーボエの鎧塚みぞれ先輩。
いつも私より早く来てるの」
久美子「いつも…?」
(久美子と麗奈、職員室から出る)
麗奈「失礼しました」
(パタン)
(麗奈、職員室のドアを静かに閉める)
久美子「…もしかして早く来てるのって、滝先生と話すため?」
麗奈「…そうよ」
(久美子にそう問われ、頬を染めながら正直に答える麗奈)
(音楽室に向かうため、階段を登っている久美子と麗奈)
(~~~♪♪)
久美子「…ん?
いい音…」
(音楽室から流れてきた楽器の音に気づいた久美子)
久美子「だけど…。
なんか蛋白……あっ!」
(いつもの癖で失言してしまって、口を手で押さえる久美子)
(音楽室前に到着)
久美子「失礼します」
(ガラッ)
(久美子、音楽室のドアを開ける)
みぞれ「………」
(室内には、オーボエを持って個人練習中だったみぞれがいた)
みぞれ「珍しいね。 今日は2人…」
(若干微妙な間を空けてから、久美子と麗奈にそう返事するみぞれ)
麗奈「はい、今日は2人なんです」
みぞれ「………そう」
(またも、微妙な間を空けてそう無関心な返事をするみぞれ)
久美子「…あのぉ、鎧塚先輩っていつもこんなに早く来てるんですか?」
みぞれ「……うん、来てる」
久美子「練習、好きなんですねー」
みぞれ「…さぁ、知らない」
久美子(その音色は美しい女性の声と形容されるオーボエ。
チューニングが難しい上に、一番細い所の内径が4mmしか無く、息の調整に技術を要する)
(心の中で誰かに説明するかのようにオーボエの解説をする久美子)
(数分後…)
(麗奈のお気に入りの場所で練習を終えた久美子が音楽室に戻ろうとすると、優子と香織が登校してきた)
優子「おはよ。
今日は黄前も一緒なんだ」
(そう朝の挨拶を交わして、2人と別れたあと)
麗奈「…そういえば、鎧塚先輩って優子先輩と仲良かったと思う」
久美子「…」
(確かに、麗奈の言うことは嘘ではないと思っていた久美子)
(更に数分後、大勢の生徒が音楽室に集まってきた中…)
優子「みぞれは、夏休みの宿題終わった?」
みぞれ「半分くらい」
優子「ねぇ、お盆休み暇? 一緒にやらなーい?」
久美子「…!」
(優子とみぞれが仲良く会話している光景を後ろで眺めながら、脳内で、麗奈と優子が言い争いしていた時のことを思い出していた久美子)
(数秒後、音楽室前の水道でユーフォの手入れをしていた久美子)
希美「ちょっと」
久美子「うわっ! はい!」
(予選会場で見かけた希美先輩が声をかけてきたので、驚いて返事する久美子)
希美「あすか先輩、いる?」
(そこにタイミングを図ったかのように夏紀がやって来る)
夏紀「ちょっと希美! 7組で待っててって言ったじゃん!
変な真似して厄介なことになったら、困るのはアンタなんだよ!?」
希美「…分かった…」
私は、久美子ちゃんに話しかけていた希美に気づいて、希美に厳しく忠告した。これも、過去のある出来事があったからだ。
(パン!)
夏紀「黄前ちゃん、今見たこと…あすか先輩には内緒にして貰えない? お願い」
久美子「………」
私は、両手を合わせながら、久美子ちゃんにこのことはあすか先輩には黙っておいてもらえるようにお願いした。久美子ちゃんは無言だったが、多分お願いを了承してもらえたと思ってよいだろう。
(その数時間後…)
(音楽室でいつもの全員合わせての演奏練習が終わって、いつもの3年3組教室にて基礎練していた久美子ら)
あすか「…久美子黄前!」
久美子「…あ、はい!」
あすか「さっきの音楽室でもそうだったけど…。
今日集中出来てないでしょ!
何かあったの? お姉さんに言ってごらん? 悪いようにはしないからー」
久美子「悪いようにしますよね…」
あすか「生意気ー。 このー」
(ムギュ)
久美子「あいたたた…」
(あすかに右頬をつねられ、痛がる久美子)
(そこに夏紀がやって来る)
夏紀「あすか先輩」
夏紀「…先輩に相談があるんです」
あすか「…なになに? 恋? 恋の相談?」
夏紀「…違います」
私は真剣な表情で、あすか先輩のふざけた返事の回答に即否定した。そう否定した途端、あすか先輩は真面目な顔つきに変わった。
あすか「…今、練習中なんだけど」
久美子「…」
(真面目な表情をしているあすかが珍しかったのか、いつもの席に座りながらあすかの顔を眺めている久美子)
夏紀「…」
(コッ…)
希美「…」
私が3組教室前の廊下で待っていた希美に目配せし、あすか先輩達の前に姿を現す希美。
梨子(…!)
梨子もすぐ希美のことに気づき、驚いた表情を浮かべている。
(バッ!)
(希美、あすかに向かって突然頭を下げる)
希美「私、部活に戻りたいんです!」
あすか「……はぁ…?」
(私は、心の中で、またもや新たな修羅場が幕を開けることを予感していた…)
ついに鎧塚先輩と希美先輩も同小説に本格的に参戦です。橋本先生初登場の部分はカットさせて頂きました。後々、どこかで改めて描写します。