(花火大会当日の朝)
(コッ、コッ…)
(朝練で音楽室を使うため、いつものように職員室に鍵を取りに行く久美子と麗奈)
(数秒後)
麗奈「おはようございます」
滝(………)
(ノートPCでコンクール予選時の他校の演奏が録画された動画を見ていた滝先生。ヘッドホンを付けて演奏に聴き入っているので、久美子と麗奈の朝の挨拶に気付いていない模様)
久美子「…明星工科だよね…?」
(滝先生が見ている動画に映っていた他校は、明星工科という関西強豪校の模様)
麗奈「………」
(スッ…)
(音楽室の鍵が見当たらなかったので、またみぞれが先に音楽室に来ているのだろうと思ったのか、黙ってその場を立ち去る久美子と麗奈)
(コッ、コッ…)
(音楽室に通じる階段を登っている音)
久美子「滝先生、全然気づかなかったね」
麗奈「…多分、私達に足りてない所とか、凄い考えてるんだと思う…」
久美子「…明星かぁ~…シードだったんだよね? 今年も」
(そう会話を交わしている間にも音楽室到着)
(ガラッ)
みぞれ「………」
優子「…あれ、2人とも早いんだね」
(また一足先に音楽室でオーボエの練習中だったみぞれ。同じく優子も一緒にいた)
久美子・麗奈「「………」」
(優子にそう気にかけられるも、無言の久美子と麗奈)
(ガタッ…)
(自分達の楽器入りのバッグを指定席に置く久美子と麗奈)
みぞれ「…優子。 仲悪いの? その2人と」
久美子「え? えぇ~…?」
(みぞれにそう勘付かれ、慌てている久美子)
みぞれ「…」
(返事が返ってこない優子の方を見るみぞれ)
(フッ…)
麗奈「そうなんですか? 先輩」
優子「…どうなんだろうね、後輩」
(お互い、微妙な笑顔で疑問を投げかけ合う麗奈と優子)
久美子「…えぇっと…仲良いっていうか、悪いっていうか…」
(バッ!)
久美子「…そう! 普通!
先輩と後輩って感じです! たぶん」
(両手で謎のポーズを取りながら、慌てふためきながらそうみぞれの回答に答える久美子)
みぞれ「………」
(フッ…)
優子「………」
(みぞれは無言だったが、久美子のその返事に納得したのを察したのか、笑顔になる優子)
(ボソッ…)
優子「…希美のことなんだけどさ……」
みぞれ「……!」
(久美子と麗奈に聞こえないよう、耳打ちしながらみぞれに希美の件を話す優子)
優子「希美がね、部活に戻りたいって言ってきたらしいの」
みぞれ「……そう」
(何か思うところがあったのか、希美の件を知って、複雑そうな返事をしたみぞれ)
(数時間後…)
(演奏練習を終え、帰路に着こうとしていた久美子、葉月、サファイア川島)
久美子「…あ…水筒忘れた…。
先行っててー」
(教室に忘れた水筒を取りに校内に戻った久美子)
(数分後…)
久美子「………」
(音楽室などがある3階まで階段で登ってきた久美子)
みぞれ「………」
久美子「! わっ…鎧塚先輩? どうしたんですか」
(立入禁止のため、施錠されている屋上に通じる門がある階段前で口をハンカチで押さえていたみぞれ。みぞれの存在に気づいて慌てる久美子)
みぞれ「気持ち悪い…」
久美子「………」
(気持ち悪いと訴えたみぞれの背中を優しく擦ってあげる久美子)
(~~~♪♪)
久美子(…ん? この音…)
(~~~♪♪)
久美子「南中のフルートの音だ…」
(向かい側の校舎に通じる外通路の方から、1年前のことを思い出しながら、関西地区コンクール予選会場で聴いた南中のフルートの音だと口に出した久美子)
みぞれ「…吐きそう…。
この音、聞きたくない…」
(フルートの音がトラウマだったようで、そう言い残して、またも吐き気を催して口を押さえながらその場をあとにするみぞれ)
(数秒後)
(フルートの音がする外通路の方に行くと、フルートの主の希美がいた)
希美「あ! ユーフォの子だ!」
(久美子に気づいて、フルートの演奏をやめる希美)
久美子「フルート、上手ですね」
希美「南中じゃ、My楽器持ってないとフルートやらせて貰えなかったから…親に言って買って貰ったの」
(そう説明し、再度フルートを演奏しようとする希美)
久美子「好きなんですね、フルート」
希美「…好き! 大好きだよ!」
久美子「………」
(その日の夜…)
「わいわい…がやがや…」
(花火大会に来ていた北宇治吹部メンバー達。もちろん全員で、ではなくみんなバラバラの場所で仲良い生徒と、である)
夏紀「ねぎ焼2つね!」
「毎度ありがとうございます! 2個で800円になります」
私は、希美と一緒に花火大会に来ていた。お腹が空いたので、食欲を満たそうと、ちょうど近くにあったねぎ焼の夜店でねぎ焼を2つ買った。
(数分後…)
希美「…クシュンッ!!」
夏紀「どうしたの? 風邪?」
希美「いや、ただのクシャミよ…。 誰か私の噂してるのかな…」
(突然クシャミした希美を心配する夏紀)
夏紀「この辺で食べながら花火見よ」
希美「…うん」
私は、人通りが少ない場所まで歩いて、希美にそう言った。だが、なぜか希美の方は微妙な返事だった。
夏紀「どうしたの? 何か微妙な返事だけど…」
希美「……あすか先輩のことだけど…」
夏紀「またその話? 今はその話は一旦止めにしようって、昨日言ったでしょ」
希美「分かってるけど…」
夏紀「過ぎてしまったこと、今になって真剣に悩んでも仕方ないじゃん。
今はああでも、次第に時間が解決していってくれるよ」
希美「……そうだね…。
ごめんね、夏紀まで私の部活復帰のお願いに同行してもらっちゃって…」
夏紀「そんなことないよ。 だって希美は私にとって…」
(その時…)
(ヒュ~…)
(ドーン!!)
(パチパチパチ…)
希美「……私にとって…何?」
夏紀「え? あー…いや…」
“希美は私にとって憧れの人”と私は希美に言おうとしたのだが、突然上がった花火の音でかき消されてしまった。希美に何と言ったのか聞かれたが、恥ずかしくなりすっとぼける私。
希美「またすっとぼける気? 夏紀のそういうところ、中学時代から全然変わってないんだから!」
夏紀「ごめん、何て言おうとしたか今の花火の音でビックリして忘れちゃって…」
希美「……もう…」
私は、今の花火の音にビビッて忘れてしまったと希美に適当な嘘を吐いて、何とかその場を切り抜けた。
女性《いよいよ、フィナーレです!
早打ち、5号玉、スターマイン!
源氏ロマンス、光源氏は永遠に!》
(ヒュ~…)
(ドン!ドドン!ドン!)
夏紀・希美「「わぁ~…」」
女性アナウンスさんの解説で、私と希美は、突然打ち上げられた大量の花火に仲良く目を興味津々に輝かせていた。きっと、他の北宇治吹部のみんなも別の場所でこの花火を見ていることだろう。
(スターマインが打ち上がる数分前の別の場所にて…)
久美子「…麗奈はさぁ、ずっとトランペット一筋なんだよね? トランペット好き?」
麗奈「うん、好き」
(ドン!ドドン!)
(花火が打ち上がる中、お互い浴衣姿で花火大会に来ていた久美子と麗奈。かき氷を食べている)
久美子「…希美先輩の件…」
麗奈「え?」
(突然希美の件を話し始めた久美子の方を見つめる麗奈)
久美子「…なんであすか先輩、復帰の許可出さないんだろ…」
麗奈「…私はあすか先輩の判断は正しいと思う」
(食べ終わったのか、いつの間にかかき氷が詰まっていたカップが空になっている)
麗奈「やめた方が悪い」
麗奈「辞めるって事は逃げるってことだと思う」
麗奈「逃げたのが、嫌な先輩からか、同級生からか、自分からか分からないけど、とにかく逃げたの」
麗奈「私だったら逃げない。
嫌ならねじ伏せればいい」
麗奈「私達は全国に行こうと思ってる。
特別になるって思ってるんだから」
(久美子と麗奈が希美の件を話し合っている頃…)
希美「…クシュンッ!!」
夏紀「どうしたの? 風邪?」
希美「いや、ただのクシャミよ…。 誰か私の噂してるのかな…」
(先程のクシャミは、久美子達が希美の話をしていたからの模様)
(再度久美子と麗奈サイド)
久美子「全国に行ったら特別になれるのかなぁ…」
麗奈「分からない。 けど、そのくらい出来なきゃ特別にはなれない」
久美子「…そうだね」
麗奈「一緒に来ようね、来年も」
(数秒後)
女性《いよいよ、フィナーレです!
早打ち、5号玉、スターマイン!
源氏ロマンス、光源氏は永遠に!》
(ヒュ~…)
(ドン!ドドン!ドン!)
久美子・麗奈「「わぁ~…」」
(大量に打ち上げられた花火に恋人つなぎして感激している久美子と麗奈)
久美子・夏紀《この時間は永遠ではない》
久美子・夏紀《大好きな友達ともいつか離ればなれになって、》
久美子・夏紀《どんなに願っても全ては瞬く間に過去になっていく》
久美子・夏紀《今というこの瞬間を容器に詰め込んで冷凍保存出来ればいいのに…》
(夏紀と希美サイドに場面が戻り…)
希美「…夏紀、どうしたの?」
夏紀「え? ううん、何でもない」
希美「そう?」
私は、別の場所でこの花火を見ていた久美子ちゃんと同じことを思いながら、花火大会の終わりを見届けていた…。
今年最後の更新でした。来年はもしかしたらしばらく更新できないかもしれません。更新できる余裕が出来たら更新します。では、また来年、良いお年を。