(サンフェス前日の夜。いつも通り、夏紀の部屋に一緒にいる優子)
優子「…何? 明日、サンフェス本番なのにこうして私呼びつけて」
夏紀「…」
優子「…悪いけど、いつものヤりたいんなら、今夜は遠慮したいわね。 よっぽど溜まってるんだろうけど、私の方は明日のことで頭いっぱいでそんな気分じゃないの」
夏紀「…」
優子「…さっきから、後ろ向きながら黙ってないで、何か言ったらどうなのよ!?」
(ベッドから立ち上がり、背中を向けながら黙っていた夏紀の肩を力強く掴む優子)
夏紀「…はぁー…」
優子「な、何? その深い溜息は?」
夏紀「…全く自覚がないって、こんなに怖い気分になったのは初めてだよ…」
優子「だから、一体何のこと言ってるのよ!?」
(焦らしプレイをされているかのようで、夏紀に対して言葉に更に苛立ちを見せ始める優子)
夏紀「……じゃ言うけど」
その言葉を発した瞬間。前回、この部屋で優子と逢瀬を交わしたあの日以来…ずっと表に溢れてこないように、心の片隅に必死に隠していたものを、私は優子の方に身体を向けて一気に爆発させた。
分かりやすく言うと、とても卑猥な表現になってしまうのだが…。例えば、男が好きな女の子に口で股間をご奉仕された途端に誤って暴発してしまった時のような状態だ。
夏紀「私なんかより、香織先輩の方がいいってわけ!? 私とこう何度も密かに愛し合ってる仲なのに!?」
優子「なっ!?」
夏紀「1年前、北宇治吹部に一緒に入部した日から…。
アンタは部活で顔を合わせる度に香織先輩とだけは一番楽しそうに話してた!」
優子「…あ、あれは…ただ香織先輩に憧れているだけであって…決して香織先輩が好きというわけじゃ…」
必死に否定しようとし始めた優子のその言葉を遮るように、私は更に追い討ちをかけた。
夏紀「その“憧れ”という感情こそが、“好き”っていう表れじゃないの!?
実はね、私…これまで…何度もあの人と楽しそうに会話しているアンタを見て…密かに嫉妬の眼差しを向けていたの」
優子「え…?」
夏紀「全く気付いてなかったみたいね。
当然よね。 表向きでは私達は周囲に犬猿の仲と思わせておいて…こう密かに密会していることを隠すように誓いを立てているんだもんね。
そりゃ、そんな偽りの不仲ごっこしている私なんかより、香織先輩にお熱になっちゃうのも無理ないわよねぇ?」
優子「…」
夏紀「どうなの? 急に大人しくなっちゃったけど?
黙ってないで何か言ったら?」
優子「…」
(長い尋問をされ、耐え切れなくなったのか涙を流し始める優子。それに態度を変えて戸惑う夏紀)
夏紀「…ちょ、ちょっと…何泣いてるのよ…。
ただ私は、私なんかより香織先輩のことが好きなのかって聞いただけで…決してイジメていたわけじゃ…」
優子「………私は…てる」
夏紀「え?」
優子「だから! 私は! 香織先輩より、夏紀のことが一番愛してるって言ったのよ!!」
夏紀「…」
(優子のその返事を待っていたかのように、険しい顔を止めて、母性を感じさせる微笑みを見せた夏紀)
夏紀「あーあ! 止めた止めた! こんな茶番みたいな尋問。
第一、私のキャラに似合わないし」
優子「夏…紀?」
夏紀「そうだよ…。 ずっと気だるさを感じてたんだ。
アンタが香織先輩と仲良さそうにしているのを見て…私は勝手に、私を差し置いてアンタの好きな気持ちが香織先輩に移っちゃったのかと誤解してただけだった。
でも違った! だから今日はその誤解が本当なのかどうか確認するために、アンタをここに誘ったの」
優子「…それって…もし…誤解じゃなかった場合はどうしてたの…?」
夏紀「その時は…明日のサンフェスを終えたあとに、吹部のみんなに私達のこの同性愛関係を公表して…そのまま辞めちゃおうかとまで思ってた。
だけど、その必要はなくなった」
そのもう1つの“吹部を辞めるかもしれなかったルート”のことを優子に公表したあと、私は言葉を続けた。
夏紀「…だから…もう…香織先輩とのことは…許してあげる。 さぁ、これでチャラ! はい、おしまい!」
そう発言した瞬間、これで今夜は解散…する予定でいた私だったのだが…。このあと、今度は優子側からのまさかの大胆な行為が待っていた…。