そこは当たり一面草原・・・いや、元草原だったという方が正しい。何故なら今立っているのが草じゃなく、土だからだ。いったいどうしてこうなったのか?
その場にドシャと音を立てて、地面に倒れた男がいた。その男は、爽やかな青年のような顔立ちをしているが、その顔や体にはたくさんの切られた傷痕があった。両手に二本の刀を持ち、服も十か所以上切られていて隠されていた彼の傷だらけの体が見え隠れしていた。
そして、その青年の前には一人の男がいた。少しひげを生やし目の色が紅く、目つきが少し怖い印象だ。ぱっと見は三十代に見えるその男も傷だらけだった。一メートル近くある刀を地面に刺して杖代わりにして、かろうじて立っていたが青年が倒れたのを見て安心したのか。
「負けだな、俺の・・・」
そう呟いて彼も倒れた。
この世界ではある大きな戦いがあり、その中でこの二人は必ず戦う約束をしていて時々会ってはこうして対決をしていた。その約束とは、今倒れている青年が目の前にいる最強の漢に勝つものであり、漢もまたその戦いを受けて立っていた。今回は十回目ということもあり、普段は二人ぐらいしかいないギャラリーもそれなりに多かった。九戦全敗だった青年が初めて勝利をつかむかもしれなかった瞬間は、先に地面に倒れたことにより先送りとなってしまった。
倒れた二人をギャラリー達は、近くにある漢の家に運んだ。すぐに手当てをすると、二人から寝息が聞こえてほっとした。今回の戦いは激しさと意気込みが違っていて、今までは青年は挑んでいくが漢に返り討ち。というパターンだった。
一応、万が一の時は体を張って止めよう。という考えを持ってギャラリー達は見ていた。そうでもしないと二人は止まりそうもないことは仲間でもある彼らがよく知っていたからこそ、二人とも無事で彼らは心底ほっとしていた。
青年を客間で寝かせて、紅い目の漢は自室に寝かせた。家の隣には漢の妻が団子屋をやっており、仲間達はそっちに行って戦いの感想を話し合った。青年が寝ている客間には彼らの荷物があり、旅支度が入っている布袋だったり、皆の得物だったり、何種類もの薬を入れている肩掛けのついた大きな木箱だったりいろいろだ。
その荷物の一部に光が出ていた。この光は二人が戦っている時から光っていたが弱弱しかったので誰も気づかなかった。青年と漢の得物がここに置かれた時にそれが強くなった。
その光が強くなっていき、ついには団子屋にいた皆が気づくほどになった。慌てて、皆で二人の様子を見に行くと漢は変わらず寝ていたが、青年の姿と一本の刀がなくなっていた。必死になって周辺を調べたが、結局見つからなかった。
この時まだ誰も気づかなかったが、ある荷物の鏡が光っていた。