疲れは寝てもとれない。三MENです。
本章もこれを書くのが久しぶり・・・今回は浜松城到着までです。
来週が終われば、少しはペースが戻せそう・・・。
京のある寺にて。
「ん?どうした?・・・ほう、なるほど」
そこには吉野がいた。
「逃がすなと言っただろうが・・・まあ、いい」
その吉野のそばには鬼が数匹いた。京に鬼・・・それはそういう事だ。
「こうなった以上仕方あるまい。くくく、はははは!さあ、どうする?貴様はどうするつもりだ!」
どこを見ているかはわからない。だが、とても愉快に、とても卑しい笑いをした。
「ここは我のものになった。信虎の奴は・・・まあいい、所詮あやつはただの駒だ。どうなろうが関係ない。あの男の刀に鬼血を浴びせるんだ。それで我は・・・は、ははははは!」
笑い声が響く。
光璃と熱い愛の交じり合いを終えた次の日。ついに駿府に向けて出陣するために全勢力が門に集まった。だが、その前に久遠が京に残ったエーリカの事を話した。
『皆、今から話すことは全部事実だ』
そう言って話したことは、エーリカが鬼を操っている黒幕・吉野の仲間だったこと。だが、アキラに誑され、好きになり、妻になりたい気持ちを持っていること。その為に吉野を裏切って自分達側になった事。最後にエーリカの希望で京に残り、吉野は自分達がいない時を狙って京を襲いに行っていることだった。
『そんな、エーリカさんが・・・』
『まさか、そんなことが』
エーリカと特に親交が深いアキラ隊の皆はショックだった。観音寺城で、京で、小谷で話をしたり、交流を深めたから尚更だ。鬼を操る側にいたこともショックだったが、
『エーリカは、自分から残ると言った』
久遠の悔しそうな顔で言ったこの一言が、更に大きなショックを与えていた。吉野と操る数多くの鬼相手にたった一人で戦う事になるからだ。自分達は駿府に行かないといけないし、鞠に駿府を返してあげたい。彼女らにできることはただ一つ。
『『『『『お願い!生きていて!』』』』』
これだけだった。
久遠の話が終わり、出陣式が始まった。織田・松平・浅井が三河の浜松城まで行く。長尾・武田が下山に行く。そこからは小波の句伝無量を使って連絡を取り合うという流れだった。
「光璃、美空。駿府で会いましょう」
「ねえ、アキラ。無茶をしちゃだめよ」
「しちゃダメ」
「当然ですよ。鞠とともに動くのですから、いきなりいなくなるなんて・・・な、何です、その目は」
「「「・・・自覚しない夫」」」
正室三人にジト目で見られ、何も言えなくなった。
「うふふ、言われてますね。アキラ様」
「でも、それがアキラなの!」
笑う葵に頷く鞠。それを言われ、更にダンマリなアキラ。
「だが、そっちも気をつけろよ・・・特に光璃」
「大丈夫よ、こいつの手綱は私が握るから」
「美空に?猿に握らせた方がまし」
「よし、その喧嘩買った!」
「・・・アキラ、鬼がいる」
二人のいつも通りの口喧嘩を見て、少し安心した。心の中は苦しい気持ちでいっぱいだが、美空が緩衝材がわりになってくれそうだ。
「行きましょう!鞠の故郷を取り戻しに!」
「うん!皆!出陣なの~~!」
鞠の一声で、兵達は威勢のいい声を上げた。一番大きな声を出したのが、アキラ隊の兵達だったのはご愛嬌。
浜松城に向かう途中、久遠、真琴、葵、鞠、アキラの五人は作戦を立てたが、本陣を危険にさらす作戦でもあった。提案者はもちろんアキラだ。
「アキラの作戦は、本陣が危険になるが」
「駿府の鬼を押し込めるには、兄様が立てたこの作戦しかないと思います」
「・・・私もそれ以外にないと思います」
その作戦は、本陣の兵を浜松城から掛川城、更に田中城へ移動するが、その道中の兵を南北に分散させて扇状に隊列を立て、そこから鬼を駿府屋形へ押し込めるというものだった。鬼を多く倒すという意味ではいいかもしれないが、大将を守る兵も減らすという事だ。
「それで、鞠。どうします?」
そして、作戦をするか決めるのは久遠でも真琴でも葵でもない。この駿府奪還の戦いの大将は今川氏真・・・鞠だ。だから、彼女が決めないといけない。
「苦しい戦いになるのは分かるの。でも、駿府だけじゃない。これからの日の本の為に、アキラの作戦を使うの!」
大将としての決断と未来のための判断をしっかりやった。
「よく言いました!来なさい、小波!」
「っは!おそばに!」
アキラの声に一瞬で姿を現した小波。
「この戦い、あなたの句伝無量がカギになります。使わせてもらいますよ!」
「は!ご主人様のご指示に従います!私も、鞠様の為に全力を尽くします!」
「いい返事です。では、この作戦を下山に伝えてください」
お守り袋に手をやって、作戦を伝えた。
その頃の相模の城。
「姉様、連合軍が駿府へ向けて出陣したと報告が入りました」
「そうなるわよね。予想通りだったわね、サイ」
「当たり前だ・・・全く、親ならクビラを見習うべきだ」
「クビラ?誰それ?」
「越後で知り合った友だ。あの男は自分の妻と娘をとても大切にしている」
「それは北条もですよ・・・あの、私達はどうしましょう」
「どうもしないわ」
この当主の返答に驚く朧。
「え?何もしないのですか?」
「言いたいことはわかるわ。相模に入る鬼をどうするか?でしょう?」
「東の人鬼も気になりますが、西から来るであろう鬼への対処も必要と思います」
「朧の言う事も一理ある。でも、東は大丈夫だろう。北の独眼竜にも意識・・・あの男よりは弱いだろうけど」
「あら?あなた、自分の世界で独眼竜に会ったことあるの?」
「少なくとも朔夜と同じくらい強い」
「姉様と同じ!アキラといい、その男といい、サイといい、あなたの世界はどれだけ強者がいるのですか!」
「朔夜と同じかそれ以上がごろごろいたな」
自分より強い当主がごろごろいる世界。想像できなくなり放心した朧。
「絶句した朧は置いておいて、鬼への対処はしておきましょ」
「当然だな。ただでさえ、こっちもいい隣人がいないんだ・・・私としては連合に加わるのも一つの手だと思うがな。鬼の対処も慣れているし、私以上の一騎当千もそれなりにいる。何よりアキラが味方になるのは、今後の北条のためにもいいと思う」
「う~ん。でも今はやめておくわ。北条にとって大事な相模。連合に加わっちゃったら、北条の相模じゃなくなっちゃうしね」
「全く・・・「御本城様~(シュタ)」、姫野か」
「連合から使者が参りました。名月様に景勝に樋口の娘。だったかな?」
「名月ですって!」
溺愛する姪の名前ですぐに意識を取り戻した朧。
「ふ~ん。名月がね~」
「姉様!すぐ迎え「やめんか、シスコンが(ゴン)」あいた!」
「えっと、しすこん、って何ですか?」
「姉や妹を溺愛することだ」
「ああ。名月は姪だけど、それなら確かにそうね~。朧、しすこんね~」
「な、何が悪「対等の立場に立つと言ったのは誰だったかしら?」・・・う」
「朧いじりもほどほどにしろ。それで、どうするんだ朔夜?」
「わ、私、いじられていたのですか!」
「わかってるわ・・・姫野、追い返して」
「な!ね、姉様!」
名月に会えないことに大声を上げた。
「あの、本気ですか?」
「ええ、本気よ。駿府を攻めてそっちに鬼が来るから気を付けろ。というものでしょうし。顔を合わせたら返答をしないといけないけど、追い返せばする必要ないしね」
「でも・・・」
「今度会えばいいじゃない。私達が今大事なのは相模。断っておけば向こうも私達を警戒するし、その間の時間が大きなものになるわ」
「そういう事だ。姫野、頼んだぞ」
「は、はあ、分かりました(シュタ)」
「はあ~、名月に会えないなんて」
「全く、さっさと妹達と鬼の対処に行ってこい!」
「・・・はい(トボトボ)」
「名月が絡まなければ立派なのに」
「それが朧の持ち味よ。それはそうと、親の例を出した時に何で私を出さなかったのかしら~?」
「・・・自分の胸に聞いてみろ」
「おっぱいが大きくて聞こえな~い」
『そういうところが例に出せないところだ・・・と言っても自重しない癖に』
場所が変わって同じころの下山城。
「お待たせして申し訳ございませんでした。お屋形様、美空様」
「問題ないわ」
「うん」
「では、軍議を始めましょう」
城の一室で一二三、湖衣、光璃、美空の四人が集まって話し合いを始めた。
「兵の皆の禍根はなさそうです。あの頃の戦いを良き思い出として語りあう姿もありました」
「何回も戦ったからこそ、兵達の間でも通じ合うものがあったのだと思います」
「そうね」
「(コク)」
アキラの想いとライバルとして美空と光璃は通じ合った。だから、兵達のその考えも理解できた。
「下山に侵攻しようとする鬼は何とか阻止しております」
「え?手練れがいるのに、何とかなの?」
「我が隊・吾妻衆はぶつかるための隊ではありません」
「うん、情報収集が主」
「なるほどね。あいつがいないのが結構響いているわね」
美空の言葉に少しだけムッとした三人。
「失礼いたしますが、アキラ様とその隊を比べるのは失礼かと思います」
「・・・そうね。あいつ自体とんでもないけど、部隊の皆も結構とんでもなかったわね。悪かったわ」
アキラとその隊は名高い武将の二人からしても異質すぎる隊だ。それを比べてしまったことに謝罪した美空。その時に一二三宛てに句伝無量が届いた。
「失礼・・・分かった」
「ん?アキラの草?」
「はい、小波からです。あちらの作戦が届きました」
その作戦を伝えると美空は当然怒った。でも、駿府の今後の事を考えた作戦でもあるため光璃に抑えられ我慢するしかなかった。一呼吸置いたところで、話が進んだ。
「そう言えば、北条ってどうなっているかしら」
「その事も句伝無量で確認したら、彼の人は出ないそうです。以前聞いた当主の護衛の話では、相模を大切にするのが一番らしいです」
「それなら空達は追い返されるかもしれないけど、それはそれでありがたいわね」
娘二人が無事に戻ってこれそうなことに、内心ほっとした美空。
「北条は敵が多い」
「佐竹を中心にした連合もおりますし、北には伊達もいるのでこちらに意識する暇もないと思います」
「佐竹には英雄もいますし、連合の邪魔はないでしょう」
「なるほど、私達はアキラ達と息を合わせて行動。といったところね」
美空の言葉に三人とも頷いた。出陣準備をさせに湖衣が出ていって、残った待ち時間でアキラの話をした三人。
「伊達と聞いて思い出したけど、幽から聞いた話じゃアキラって向こうの世界の独眼竜に育てられたらしいわね」
「光璃も春日から聞いた」
「こちらと向こうの伊達・・・どちらがお強いのでしょうか?」
「あっちじゃない?アキラがあれだし」
「うん、そう思う」
「夫殿は、どんな世界にいたのか。武人として興味があります」
「「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン」」
一二三の言葉に、光璃も美空も心から頷いた。
浜松城に着いたアキラ達。既に夜なので、作戦を武将達に伝えてその日は終わりなのだが、
「和奏達が文句を言っている?」
「ああ、暴れたいと言っている」
織田勢を指揮している壬月が苦い顔で言った。隣の久遠も苦い顔をしていた。
「気持ちはわかるな。越前以降、大きな戦いが今までなかったから、思いっきり戦いたいのだろう」
「あの作戦は扇上に広がりながら鬼を押していく。本陣より現場の網役の方が暴れられるのですが」
「だが、私が言っても本陣の方が手柄がある、と思って聞いてくれないんだ」
「・・・分かりました。私が説明してきます」
立ち上がったアキラに謝罪する壬月。
「すまんな」
「このお代は、今度あなたの体で」
「ああ、いいぞ。私もお前の妻だ。抱かれたい気持ちは皆と一緒だ」
冗談を真で返されて唖然とするアキラ。
「・・・つまらないですね。てっきり恥ずかしがると思ったのに」
「ははは!残念だったな」
「やれやれ、行ってきます」
「アキラ、我も忘れるでないぞ!」
「鞠もなの!」
二人の妻のブーイングを背に受けて、アキラが部屋を出ていった。
『くっそ・・・越前を思い出してしまったではないか!アキラの馬鹿者が!これじゃあ、またあいつに抱かれた時を夢で見そうではないか!』
結構恥ずかしかったみたいで、誰も自分を見てないのを確認して股を擦りつけた。割れ目から水が少し出ていたのは壬月だけの秘密だ。
三若のいる部屋にいったアキラ。
「失礼します」
「あ、アキラ!」
「アキラく~ん」
「アッキラ様~!」
アキラの姿を確認するや否や、雛と犬子は抱き着いた。
「和奏は抱き着かないのですか?この二人は抱き着いたのに」
「い、今はいいんだ!」
だが、うずうずしているのが分かる。
「和奏ちん、遠慮はしない方がいいよ~」
「そうそう!抱き着いちゃおうよ!」
「お前らは少しは遠慮しろ!」
「ふふふ。あなた達との漫才も見たいところですが、今はあなた方の立ち位置について話をしようと思いまして」
抱き着いている二人をはがして三人の前に座った。
「壬月さんから聞きました。本陣で暴れたいとか」
「「「(・∀・)ウン!!」」」
「では、本陣よりも暴れられる場所がある。ついでに手柄もとれる場所がある。と言ったら?」
「「「何それ!」」」
その後、しっかり言質をとって網役でいいと言わせた。ただ、アキラの説明を聞いて分かったのは雛だけで二人は分かっていなかったことに呆れ汗を流したのは内緒だ。
部屋に戻ると、さっきまでいなかったアキラ隊の頭脳が二人いた。
「壬月さん。三若達、網役でいいとのことです・・・ただ、三人とも自分達を抱くよう強く言ってきました」
「おやおや、私を抱いた後はあいつらもか。体持つか?」
「大丈夫ですよ、壬月様。私達が保証します」
「三日三晩、ずっとでも大丈夫な方です」
詩乃と雫の言葉に、なるほどと納得した壬月。
「詩乃、雫、それはさすがに無理ですよ」
「では、軍議を始めましょう」
「はい、まずは・・・」
「無視しないでくださいよ!」
アキラの文句はその場にいた全員が無視したため、結局アキラの方から引き下がることになった。
その後の軍議で網役の配置、その網役の兵の数と進み方。下山から降りてくる武田・長尾軍との連携。これらの確認をして解散になった。解散となる前に、
「アキラ様、決して無茶をしないでください!」
「アキラ隊愛妾連合一同、心からお願いします」
「ええ、もちろんです」
「「・・・はあ~~」」
溜息を吐かれた。その溜息に笑う久遠が最後の号令をかけて、本当に解散となった。
『・・・ため息をつかれる理由、分かりますけどね』
彼女達がそうなる理由、アキラは分かっていた。
吉野が逃がしたのは何かはもう予想できますよね?
何気に壬月を照れさせました!ついに駿府へ向けて出発です!