※この作品はR-18です。

戦国恋姫 盲目のサムライ   作:一日三食MEN

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 どうも!久しぶりの次の日の更新、三MENです!

 本当はこの話を八十六振り目に入れたかったのですが、ちょっと長くなったためここになっちゃいました。

 ついに、信虎の最後です!





八十七振り目 決着、決別・・・そして、決意

 

 アキラと信虎の戦い。

 「く、くそ!」

 「ほらほら、どうしました?」

 「こいつ、いい加減に!」

 「当てられない方が悪いですよ」

 どんなに信虎が攻撃しても、簡単にアキラがかわしてしまう。鬼の力を使った渾身の一撃もよけて、その後に必ずこう言う。

 

 『遅いですね。あなた、のろまです』

 

 更に怒りがまし、感情に任せた攻撃になっていく。アキラの手のひらに踊らされている信虎。もはや、勝者が見える戦いだった。

 

 「あ、兄上、すごいでやがる」

 「夕霧お姉ちゃんもあんなに苦戦したのに」

 「アキラ。うん、すごい」

 姿が見えないように木と草の陰に隠れて見ている武田三姉妹は唖然としていた。特に夕霧と薫は信虎と戦って死にかけた。相手の力が分かっているだけに、今のアキラの戦いに驚いていた。

 

 戦いが始まって十分ほど経過した。

 「ふ、ふふふ、だが、どんなに攻撃を与えられても鬼の我を倒せない!」

 そう笑いながら言う信虎に、アキラは訊ねた。

 「・・・二つ聞きます。一つ目、どうして鬼の力がいいのですか?」

 「愚問だな!人間を超えた力だ!その力を手に入れ、さらなる強さを手に入れるためだ!貴様こそ武人ならわかるだろう!その思いが!」

 「ええ、サムライとして強さを欲する気持ちはわかります。私もその時期がありましたよ・・・でも、そこまでして手に入れたくないですね。綾那の言った通り、必死な努力をしてこそ強くなり、本当の力を手に入れられます。楽に手に入る力など、欠陥だらけなものですよ。現に、あなたは私を傷つけていない」

 「それは貴様も同じだ。どんな傷をつけても貴様は我を殺せない!」

 その発言に、アキラは無言で信虎の間合いから出て刀をしまった。

 「どうした?傷つけられないことに諦めたのか?」

 「・・・二つ目の質問です。娘三人の事をどう思っていますか?」

 「下らんことを聞くものだな。娘だろうと従わなかった時点で殺す、それだけだ」

 「つまり、自分にやったことに腹が立って殺しに来た。と言う事ですか?・・・くだらない。呆れるしかありませんね」

 「ふん。聞きたいことも終わりだな。死ぬ準備もできたみたいだし、晴信の悲しむ顔を早く見させてもらおう」

 「・・・私はこの世界に来て分かったことがあります」

 今度は二本ではなく一本、つまり紫微垣を抜いた。

 「上に立つものはあらゆるものを自分の肩に乗せる覚悟を持つことを」

 「何を言っている」

 「上に立つものは自分を信奉する者をしっかり見る必要があることを」

 「独り言か?」

 「そして・・・」

 閉じていた目を開けた。

 

 「上に立つものは・・・自分に関わって死んだ者の命と信念、それを生涯肩に乗せ、その者達をいつまでも忘れてはいけない!死なせたらそれ相応の覚悟と決断を持たなければならないことを!私はこの世界に来てそれを学んだ!」

 

 紫微垣を信虎に向けた。

 「それをやらない貴様は上に立つ資格はない!娘達の苦渋の決断の意味にすら気づけない貴様は選ばれていない!今の貴様は武田信虎ではない!ただの野良の鬼だ!」

 壬生の血と紫微垣により力が介抱され、開けられたアキラの目はいつもの黒い目ではなく、壬生の一族が感情が高まった時のみに出す紅い眼だ。アキラは壬生の血をそこまで使えるくらいの体に作り上げていた。

 「覚悟するがいい!光璃の、夕霧の、薫の、そして家臣や民達の悲しみと苦しみを全部まとめてお前にぶつける!」

 アキラが居合の体勢に入った。

 

 そのアキラの言葉を聞いた三人。

 「アキラ、ありがとう」

 「兄上。母上を、止めてくれでやがる」

 「お兄ちゃん、お願い」

 アキラの宣言に嬉しい気持ちを持ったが、同時に覚悟も決めた。母の最期をしっかり見届けること。そして、自分の思いを最後に伝えることだ。

 「光栄に思いなさい。本来ならあなた如きに出す技ではないのですが、全力で倒さないと光璃達や春日達、民達の苦しみを伝えられません。見せてやりましょう・・・光璃の呼び名である甲斐の虎。その虎であなたに葬りましょう」

 そう言われて完全に信虎は恐怖した。目の前の存在は自分の持つ強さでは絶対にかなわない。本能でそれを悟り、その恐怖からついこの名前を呼んだ。

 「し、し、白川!我を守れ!」

 

 駿府屋形の中。今だ、梅と兵は白川と交戦中だった。

 「皆さん!無事ですか!」

 「疲れてますが、死人はいません!」

 「ですが、倒せるかどうかと言うと」

 「・・・悔しいですが、そうですわね」

 兵の言葉には、悔しいが同意だった。梅の持つお家流、それを使えば倒せるかもしれないが屋形を壊してしまうこと間違いない。鞠が待ち望んでいるこの屋形への帰城、それができなくなるかもしれない。

 「ハニーにああ言った手前・・・どうすれば」

 壁に追いやっているが、倒せそうもない。そう思った時だった。

 「ぐる!」

 いきなりその壁をぶち壊して、部屋から出ていった。

 「な、何が!」

 「分かりません!」

 「お、追いますわよ!鞠さんのところに行くのかもしれません!」

 「「「っは!」」」

 ぶち壊した壁の穴を通って梅達は追った。穴は外まで繋がっており、そのまま外に出ようとした時だった。梅は驚くべきものを見て、足を止めた。

 

 

 アキラは信虎にあの奥義を放った。

 

 「無明神風流殺人剣!奥義、白虎!」

 

 そう叫んで刀を抜いた。すると、本当に白き虎が現れた。それを見た三姉妹は唖然とした。

 「と、虎!は、ハニーがだ、出し!」

 同じく、それを見た梅が呆然とした。

 「わ、我を守れ!白川!」

 「ぐ、ぐ、るるる」

 信虎の前に立った白川だが、この時だけは鬼の力より野生の本能が上回ったが、逃げたくても既に恐怖で体が動けず震えていた。

 「ぎゃぎゃぎゃ!!!」

 白川に白虎がぶつかり、そのまま潰した。すぐに絶命し、あっという間に白川はチリとなって風に飛ばされていった。目の前の光景に絶句する信虎だが、白虎の姿がなくなり危機は脱したと思った。

 「ふ、ふふふ!これでお前の技はやぶれた!」

 大技を出して大きな隙があると思い、アキラに近づこうとした時だ。

 

 「信虎」

 

 だが、アキラは焦っても戸惑ってもいない。冷静に信虎の名を呼んだ。

 「な、何だ!これは」

 近づこうとしたが、体が動こうとしない。なのに、アキラに近づけている。

 「動けないのに、どうして、近づくんだ!」

 

 「あなたも、触れたでしょう」

 

 「ま、まさか、これが」

 やっと理解した。まるで掴まれてアキラに吸い寄せられるこの感覚。これが本当の白虎の奥義だと。白虎とはその目に見られたものをつかみ

 

 「白虎の爪牙を」

 

 絶対に防ぐことのできない白虎の牙でかみ砕く。それがこの奥義だ。だが、この最後の牙にアキラは自身の力であるヘルバーストを使っていた。つまり、紫微垣にはアキラの必殺技グランドクロスのその力が宿っている。その牙で

 「があああああああ!」

 信虎を斬りつけた。動けないまま、なす術もなく斬られた信虎はその場で倒れた。アキラの目が黒に戻って目を閉じた。

 

 その瞬間を見た光璃達。

 「す、すごい。あんな技を持っていたなんて」

 「あ、兄上。と、とんでもないでや、やがる」

 「か、勝った。よね」

 倒れて動けそうもない信虎を見て勝ちを確信した。そして、

 「・・・行こう」

 「そうでやがるな」

 「・・・うん」

 三人はアキラのところに向かった。

 

 同じ瞬間を見た梅。

 「( ゚д゚)ポカーン」

 この状態だった。やはり、白虎が白川を潰したのが衝撃的だったのだろう。でも、そのおかげで彼女の目の前を三人が通ったのだが気づけなかった。

 

 信虎の最後となった。

 「信虎。私の力が入った刀で斬られた以上、そこからどんどん凍りついていき最後は命をも凍らせて散らせる。つまり、死ぬしかない」

 だが、その凍り付きが三好の三人の時より遅い。

 「さすがは武田信虎の鬼ですね。抗う力で凍らせる力が全身に行くのが遅い。認めましょう、あなたは確かに力ある武将だった」

 「くそ、くそ、くそ!!」

 そう言うアキラに一太刀浴びせたいが、大きな一撃だったため体を動かせない。その悔しさを持ちながら凍っていくのを待つしかなかったその時だ。

 「母様!」

 「母上!」

 「お母さん!」

 「な!あ、あなた達!」

 三姉妹がその現場に現れたのは。信虎に意識を集中していたので三人、特に光璃がこの場にいることに驚いた。

 「貴様ら。何故、ここに」

 「話したかった。もう一度・・・最後に」

 「母上、どうして鬼になったのでやがる!」

 「私達、ずっと、ずっと仲良く暮らしたかったのに!」

 信虎もこれは驚く。三人は凍りかけている母のそばに座った。

 「仲良く・・・か。下らん、この乱世に必要ない。必要なのは人を超え、人を屈し、そして誰も逆らえない力のみ!」

 「「「・・・・・・」」」

 三人の顔が悲しみだけでなく、辛さが増すその時だった。ずっと狂気にかられ人を殺すことが楽しいという顔から、人らしく笑った顔になったのは。

 「だが、その仲良くが我を追いつめ、倒した。長尾と和平を結び、織田との同盟に入り・・・そいつの妻となった。悔しいが、認めるしかない」

 「母様。光璃は、光璃は、間違ったことしかしていなかった」

 「・・・貴様はいつも我と違う選択をした。逆らうものを処罰しようとせず、夕霧を後継者にせず、力で兵や民を屈服させることもしない。甘い、甘い・・・だが、その甘さがこれからの武田、いや日の本に必要な力になるのかもな」

 光璃の言葉を聞き、否定をせず、自分と逆の考えを持つ娘を肯定した。それを聞き驚く光璃。同時に、涙があふれ出た。

 「母上!夕霧は姉上が当主になった事は正しいと思ってるでやがる!姉上が当主になったからこそ、民は喜んでいるでやがる!」

 「お母さん!お母さんがいなくなっても私達は忘れなかった!優しかった、あの、あの頃のお母さんを!」

 「当主になれなかったというのに後悔しないで、光璃を支えようとするのか夕霧。薫は薫でいつまでも昔を忘れないとは、二人ともそう言うところを直せというのに結局直さずじまいか」

 夕霧と薫も涙があふれ出た・・・三人のその涙が信虎の顔に落ちた。

 「・・・不思議なものだ。最後の技を食らい、鬼の力を持っても治せない。このまま死ぬしかない時はこれ以上ない悔しさがあったのに・・・お前達がこの私をまだ母と呼び、母と思ってくれる。それが分かっただけで、その悔しさが消えていく。むしろ、人の頃に捨てたはずの忘れていたものを思い出す」

 既に胸のところまで凍り付いた。後は首から上だけとなった。

 「・・・最後はその思い出したものを娘達に伝えたらどうです?」

 背を向け、アキラがそう言った。

 「ふん、乗せられてやる・・・光璃・・・夕霧・・・薫」

 氷がついに顔まで来た。

 

 「・・・倖せに、なれ。母の、願い、だ」

 

 ついに顔も氷に覆われた。凍ったその顔は、三人が思い出の中で見た顔だった。

 

 『母様って、やっぱりすご~い!』

 『絶対に母上よりも馬を乗れるようになるでやがる!』

 『見て見て!きれいなお花があったの!お母さん!』

 『・・・っふ。ああ、そうだな』

 

 そう・・・娘達に囲まれ、その娘達に見せる母らしい笑顔だった。人だったころの、自分達が愛した母だったころの笑顔だった。

 「「「母様(母上・お母さん)!!」」」

 その笑顔を見て凍った母の死体に触れようとしたが、その死体がこなごなに散った。だが、まるで信虎がそれをさせないがためにやったように見えた。鬼だから、その遺体に触れてはならない。それをさせないために・・・。

 「う、母、様。うう、ううう」

 「母、う、え。うう」

 「お母さん、お母さん。ううう」

 アキラは梅のいる場所に歩いて行った。白川が乱入してきたときにそちらの方にも意識を向けていたので、彼女がいることは知っていた。

 「梅、梅」

 「っは!あああ、は、は、ハニー!あ、「静かに、静かに」・・・え?」

 ずっと呆然としたため、現状が分からずアキラの言葉の意味が分からなかったが、

 

 「「「うううああああ・・・母様(母上・お母さん)~~~」」」

 

 三人が抱き合って泣いた。姿は見えなかったが、それで理由が分かった。

 「・・・分かりました。全て、終わったんですわね」

 「ええ。終わりました」

 梅はそれ以上聞かないで兵達に静かに退散させて、自分も静かに出ていった。今はただ、母を思う娘が全ての思いを吐き出す。それだけだった。

 

 『信虎、あなたは確かに存在した。人から鬼に堕ちたが、最後の最後に、母としての心を娘達に見せた。そう・・・娘を倖せに。その思いを告げて散った。その母としての信念を私は忘れません』

 

 背を向けながらでも、最後に娘達に見せた信虎の姿を覚えていようと決めたアキラだった。彼女らの悲しみも終わった。その後にアキラが、

 

 「連合の力のおかげで、ついに駿府を取り戻しました!」 

 

 そう高らかに叫び、周りから歓声が聞こえた。

 

 

 「やった!鞠様万歳!」

 「鞠さま!やったなの!」

 「鞠様、褒めてください!」

 その歓声が一番高かったのは、アキラ隊の兵達だったのは気のせいではない。その後、武田の本陣から春日と心がやってきた。三人を連れ戻しに来たが、二人は何も言わなかった。倒すべき敵とはいえ、母親が死んだのだ。複雑な気持ちを落ち着かせることが優先であり、説教は後でもいいからだ。

 でも高らかにそう言っても戦自体はまだ終わっていない。だが、駿府屋形の手前まで来たアキラ隊の前方に鞠の姿があった。勝ちは確定しているが、大将を前に出すのはまずいのでは?と一葉に訊ねた。すると、

 「己の駿府屋形に真の主として、今川の棟梁としてするべきことじゃ。鞠もそのことは承知しておる」

 納得のいく回答が来た。先導をすると張り切る梅を筆頭にアキラ隊の兵達も喜んで今川の旗・今川赤鳥を掲げて前を歩いた。ついに・・・

 

 「頭を垂れよ!この駿府の屋形に、ついに戻られた今川治部大輔殿に!」

 

 出会った時から駿府屋形を取り戻す。その信念をもって頑張っていた鞠の願いがついに果たされた。一葉の言葉に兵達、将達が頭を下げた。

 

 『よく頑張りましたね鞠。あなたほどの信念と心の強さ、これを持っているなら大丈夫でしょう。その姿は立派です』

 

 無邪気な笑顔を出しながらも、その裏で必死に頑張り、必死に耐え、必死に前に進む姿を見てきた鞠に、アキラも頭を下げた。

 

 

 だけど、まだ全てが終わったわけではなかった。鞠を久遠や隊に任せ、アキラはすぐにある場所に向かった。そこは葵が運ばれた屋敷だ。そう、彼女は信虎に鬼の呪いを受けた。その呪いをどうにかしないと、完全に終わったとは言えない。

 

 「葵、必ず助けますよ・・・誓いを果たすために」

 

 二人だけの誓いを果たす時が来た。

 




 鞠、ついに駿府屋形に戻りました!本当に、お疲れ様!
 
 信虎の最後の瞬間を三人に立ち会わせたい。と言う考えもあったためこの話にしました。姉妹が話した優しかった母の姿。それを見せたいという気持ちもありました。

 因みに信虎が凍るのを遅くしたのは突っ込まないでください。

 次回は葵を助けます!お楽しみに!
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