暑さは続くよ。八月まで・・・三MENです。
戦国恋姫の方の話をお待ちの皆さん。長らくお待たせしてすいませんでした。後三話ほどでアキラ過去編も終わります。これが終わったら、間章に入りますので・・・。
今回はアキラ大きな一歩を踏み出します。
『これは遊びなんだよ。僕が楽しむね・・・こんなのはどうかな?』
膝をついて辛い顔するアキラを楽しそうにする夢時人。指を鳴らすと柱を残して壁が上がっていき、そこには
『な、トラ!』
『あ、アキラはん!』
夢時人の百を超える兵に追いつめられていた紅虎がいた。階段を挟んでお互い必死に戦っていた。
「何と、あやつもいたのか!」
「あの兵達、クビラと戦う前の兵とは明らかに違います」
「・・・もしや、死者だった奴らじゃないのか?」
「可能性はありますね、歳世さんという例がありますし。どう見ても自分の意志で動いているように見えません」
「指揮っている男がいるのう。確か梵天丸やアキラに布をかぶせた男じゃな」
年上組の皆はスペードに視線を向けた。
『おい、スペード。まだそいつを倒してないのか?』
『大丈夫です。すぐにやります』
『ふん。まあいい・・・この死にぞこないを倒すとするか。僕はね・・・お前みたいな努力する人間が大嫌いなんだよ!努力すればできると思うようなお前がな!』
かかってくる時人に夢氷月天をくらわせたが、
『こんな技で倒せると思っているのかい?』
その氷をぶち壊して、アキラに攻撃した。
「そ、そんな!あれが効かないなんて!」
「じゃ、じゃあ・・・お頭のあの技も効かないってことに」
「へるばあすとが・・・う、嘘」
「こんなの・・・どうやって勝つんですの!」
「ダメ、どうしても負ける姿しか見えない」
「ううう、アキラは諦めないの・・・諦め」
「く、公方様」
「余は信じておる・・・必ず勝つと」
「はい。公方様の言う通りです。私達は信じ・・・ます」
「私もです!ご主人様なら・・・」
アキラ隊の皆は勝つことを信じているが、頭の中では敗けの未来が見えていた。それを見たくない怖さで体が震えていた。
『全く!イライラするんだよ。世の中は僕のように選ばれた者が上に行くことができる。お前はそれがない、ただの凡人なんだよ。僕のように才能ののないただのな!』
更に一撃食らわせたが、アキラは倒れようとしなかった。
『限界があるってのに、見ようとしないお前がな!最高に腹立たせるんだよ!』
もう更に一撃食らわせた。それでも、アキラは立っていた。
「旦那、様・・・辛いです」
「アキラ。もう、もう・・・」
「結菜お姉ちゃん。言っちゃダメ・・・私だって、言いたいよ」
「市、僕もだよ。だけど、兄様が、倒れないなら」
「うん、止めちゃダメ」
「・・・あれを見て止められないのは、苦しいでやがるよ」
側室の皆は苦しいアキラの姿に涙を流した。
『ええ、あなたの言う通りかもしれませんね。無駄な努力・・・そうかもしれません』
必死に顔を上げて、自分の本音を言った。
『一度は限界を超えて手に入れたいものを入れたかったのに、また限界にぶつかった。何故皆はそれにぶつからないのに私はぶつかるのか・・・正直ばかばかしくてやっていられませんよ』
誰も口を挟むことなくそれを聞いていた。
『でも、私は・・・ちっぽけでも可能性があるならそれにかけたい。どんなに無理だと言われようと、どんなに限界だと言われようと』
力強く言った言葉に
『私は、今より、そう、今よりも、もっともっと強くなりたい!』
全員の心に響いた。
『こんな私に誓いを残してくれた漢達の為にも、私はここで止まるわけにはいかない!どんなにあなたの言う通りでも、私は抗う!必ず前に進む!』
桐琴は頷いた。
「そうじゃ、強さはあやつの言う通りじゃ。才能ある者がより強い力を手に入れる。だが、アキラはそれがなかった。ひたすらに努力だけしてあれだけの強さを手に入れた。儂らの想像を超える努力をしてな」
「です!だから、アキラ様が負けることなんてないです!」
「ああ!俺らが追っている背中が倒れるはずがない!」
綾那と小夜叉も元気よく言った。
「そうだな・・・それが、アキラだ!」
「ええ、信じましょう!あいつの努力を!」
「うん!大好きなアキラ。信じないと!」
そして、当主達の言葉に暗くなっていた皆も少しだけ笑顔が戻った。
『私の最後の攻撃・・・それであなたを倒します!』
ヘルバーストを発動したアキラがそう言った。そして、氷繭星霜を使い攪乱させ戦いの中で見つけた隙を見つけて背後を取った。
「「「「「「よし!いけ~~!」」」」」」
皆が大声で叫んだ・・・だが、時人以外に一人だけ険しい顔をした人物がいた。
「え、確か、あの刀って!」
それは・・・小波だった。春日山城の千貫門破壊の時の彼女の刀の数を思い出した。そう・・・二本だった。ひよところは千貫門を壊したショックが大きく、綾那は敵兵を倒すのに夢中で、時人の方を向いたらもう鞘に納めていたため知らなかった。
『へ~~、まあ、頑張ったね~。二本使わせるなんて、ね』
だが、その隙すら作っていた隙だった。夢時人は北斗七星を二本にして、一本をアキラを刺して笑っていた。
「な、何だって!私達ですら気づかなかったあの隙すら作りだしていたっていうのかい!」
「信じられません・・・やっとの勝機すらワザと見せていたなんて!」
「・・・限界。ですかね」
「そんな、そんなことって」
「まけて、しまうんですの」
「ど、や・・・」
一二三に湖衣も驚いていた。やっと見つけた隙すらわざとだった。思わず悠季はあの言葉を呟いてしまった。空達ももう絶望した顔になっていた。
『わかっただろう・・・これが凡人の、限、界だ!』
力任せの一撃をアキラにたたきつけて、ついに倒れてしまった。
「・・・よく、頑張ったな」
「誰も責めないわよ・・・誰も」
「うん・・・立派だよ」
「私は、私は、信じたく・・・ない」
やはり、結果を知っている時人以外の全員アキラ敗北の文字が頭に出た。四人の当主は悔しそうに体を震わせていた。
「だよ、な・・・本当に必死だったのに」
「でも、勝てないね」
「うん、無理、だったね・・・ううう」
「柘榴は・・・う、ううう」
「でも、格好良かった」
「だぜ!、だぜ・・・い、嫌だぜ!負けてほしくないんだぜ!」
「無理だよ。見て分かるでしょう」
「何もいえないのれす」
若者組も元気がなく、涙を出す者が多かった。全員が暗くなった時だった。
『ほれ、あんさんが落としたもう一つの刀、持ってきたで』
アキラの前に紅虎がやってきて、落した刀を差しだした。
「え、あれだけの兵に囲まれていたのに!」
「持って、きたの?」
貞子と各務の言う通りだ。百近くいるあの兵を潜り抜けて持ってきたという事だ。
『アキラはん、あんさんの背中・・・あの筋肉質な傷だらけの背中。ワイ、見てしもうたんや。その背中を見たワイが言うんや・・・あんさんは絶対にまだまだ強くなれる!』
その刀には、紅虎のバンダナと同じ虎柄のバンダナが結ばれていた。
『自分を信じるんや!もっともっと強くなれるって!今アキラはんが持っているずっと頑張り続けた努力の太刀。そして、ワイの魂がこもったこの友情の太刀。これらを持って見せてやるんや!アキラはん、更に強くなった自分の姿を!』
そして、アキラは顔を上げた。見えてしまった・・・紅虎の背中に十以上の刃が刺さっていたのを。
「ただでは済まないと思っていたが、こ、こんなに刺されていたのか!」
「あんなに、あんなになってまで・・・アキラ殿の為に」
「無茶しすぎだが、よく持ってこられたな!」
「う、うう、も、もう・・・我慢できません」
麦穂や秋子も涙が出始めた。その中で
「も、もしかして、この人が・・・旦那様の刀に魂を込めた」
「双葉様?どうしました?」
「何か知っているのですか?」
「ちょっと!あの人が倒した兵が起き上がったわよ!」
双葉の様子に市と真琴が気になったが、結菜の叫びに全員が顔色を変えた。その兵達に向かって紅虎が構えに入った。そして、アキラも立ち上がった。だが次の瞬間、紅虎が一気にすべての柱を壊し・・・瓦礫の壁を自分とアキラの間に作った。
「ちょ、ちょっと!あ、あんなことをしたら!」
「覚悟を決めたでやがるな、兄上の戦いに邪魔が入らないようにもして」
夕霧の言葉が全員の空気を重くした。
『な!なんてことを!トラ!』
『なあ、アキラはん・・・ワイな、あんさんに出会って本当に良かったと思うておる。あんさんの背中を見て勇気づけられたんや!』
まるで最後の別れみたいなことを壁の向こうから話す紅虎・・・そして、
『わいにとってあんさんは最高の親友(ダチ)や!頑張りや!』
この言葉が聞こえた。その後、アキラが叫んでも紅虎の言葉がなかった。
『・・・く、くううう、トラ~~~!!!』
力強く握られた拳を地に叩きつけて叫んだ。この悲しみのアキラを見て、ほぼ全員が完全に現実と見るようになり、共に見ている時人と夢時人の事も段々忘れていった。それほどまでに彼女らの心が痛く響いた。
「うわ~~~ん!おがじら!」
「おがじらが、おがじらが!」
「アキラ様。う、うううう!こんな、別れが、あった、(ぐす)なんて」
「ハニー!ああああ、と、とても悲しいですわ!!うううわあああ!」
「と、止まりません・・・ううう」
「アキラ、た、大変なの!!!ああああん!」
「・・・く!主様!」
「某も・・・ううう」
「親友が、最後の言葉を、ぐす」
「・・・ご主人、様。うううう、ひっく」
「お姉ぢゃ~~ん!お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!」
「・・・( ノД`)シクシク…」「泣いていい。う、あああ~~~ん!!」
アキラ隊では一葉と幽もまた泣いていた。白百合と時人の二人以外は全員涙を流した。正室、側室、愛妾、そして仲間・・・もはや関係なかった。皆がアキラの心の痛みに涙した。
「・・・越前で言っていた苦しんだこと、とはこのことか。煩い同行者だったが、向こうはそれほどまでに大きく見ていた。その事にやっと気づいたのが・・・この時だったのか。これは、苦しいな」
越前で殿をともにやった際に聞いた話を思い出した桐琴。手が強く握られていた。そして、アキラは友情の太刀と努力の太刀を持って立ち上がり構えた。
「アキラ様、また戦うです!」
「立ち直ったのはいいが・・・二本に戻ったからって勝てるのかよ?」
小夜叉の言葉は最もであり、全員が思っていた。
『ふふ、美しい友情・・・とでもいうのかな?そんなもの、無意味だという事を見せてあげる!この北斗七星の力でね!』
夢時人が刀の力を十二分に使った技を放った。
『北斗七連宿!』
春日山城千貫門を壊したあの技である。手加減はしても、あの門を壊したのと同じくらいの威力をアキラにぶつけた。二本の刀でところどころ防御したが大きなダメージを受けた・・・が、刀を地に刺して倒れなかった。
『はあ、はあ・・・はあ』
『本当に、どうして、そこまで』
倒れないことに分からない顔で問いかけようとする夢時人だったが、アキラがまたヘルバーストを発動した。だが、それをぶつける相手は・・・自分自身だった。
「な、な、な!何をしているんだ!」
「あ、あんなことしたら自分を凍らせてしまうわよ!」
「や、やめて!お願い!」
「死ぬつもりですか!葵は・・・そんな姿見たくないです!」
「そうですよ!美空お姉さまや・・・私達を置いていかないでください!」
「ですわ!私だって・・・まだ想いを伝えてないですのに!」
「どや!空様や名月様・・・あ。愛菜もも、もっと、愛されたいですぞ!」
「やめてやめて、貞子は、貞子は!!」
「アキラ!止めて!各務は見たくない!」
凍り始めるアキラを見て、久遠達は号泣しながら必死に見えない壁を叩いて止めようとした。だが、止まらず氷は足元から腰まで来た。すると、
『強くなりたいか?』
夢には映らなかったが、そんな声が聞こえ、ある話が彼女らの頭に直接聞こえた。
『どういうことです?私に強くなりたいかって』
『ああ。お前さんが覚悟を持っているなら、話してやろうと思ってな』
それはアキラと寿里庵の話だった。
『覚悟?』
『あんたはサムライの血をひかない人間だ。大方、庵曽新は限界や強くなれないと言ったんだろう』
『はい。でも、本当にあるのですか?』
『あいつがそう言うのは、教えてないツボがあるからだ・・・それは体を苦しめ傷つける危険なツボだ。そういうツボは教えないように俺がしたんだ』
『・・・教えてください』
『超冷点と言うツボだ。氷系の技を使うあんたが、限界を超えた今以上の力を手に入れるにはそのツボ以外ない』
そのツボの説明に入った。体中にあるそのツボを針で刺して、自分自身にヘルバーストをぶつける。そうすればツボの効果で莫大な熱量を作り出す作用を最大限まで高めて、限界を超えたさらなる大きなエネルギーを手に入れるという話だった。限界を超える可能性に声を荒げたアキラ。ただ・・・
『だが、可能性が低い。まずは絶命してもおかしくないほどの激痛があんたを襲う・・・それに耐えきったとしても、その力を手に入れられる可能性はわずかに十分の一、いや二十分の一と言ってもいいかもしれない』
条件があまりにも厳しすぎるのだ。
『手に入れたとしても、その時間は5,6分・・・四半刻を更に五分の一にしたくらいの時間だ。しかも、その力はとんでもなく膨大すぎて体が耐えきれなくなり、体中の骨や筋肉や細胞をどんどん壊していくぞ』
しかも、クリアしてももてる時間は短く、体がボロボロ・・・その表現すら生ぬるいくらい体を痛めつけるツボだった。
『最後にその時間が過ぎてしまった時、あんたの体は戦うどころか二度と立ち上がれない・・・下手をすれば起き上がることも指を動かすこともできなくなる体になるぞ。本当に、やるのか?』
『・・・ええ、時間がないんです。助けたい仲間がいる・・・限界を超えて、更に強くなりたいんです!』
この話に全員が絶句した。白百合や一二三、悠季といった、アキラを利用価値の高い男程度としか見ない彼女らも驚愕の表情を浮かべた。これほどのリスクが高すぎることをしていたなんて思わなかったからだ。肩のところまで氷が昇っていき、絶命レベルの激痛に耐えながら叫ぶアキラの姿に壬月・春日・桐琴達まで見るに堪えられなくなり、壁を叩きながら叫んだ。
『わかった。だが、俺は針師として活動してないから腕前は庵曽新(あいつ)より下だ。痛みを最小限にして刺すことができない。刺す痛みもあんたを『構いません!』それほどの覚悟を持っているなら、やるぞ!』
そして、全身にある超冷点を刺して、その刺した針を抜く。全身を一気に襲った痛みに、大きな悲鳴を上げて倒れる音が聞こえた。
「双葉と夕霧が見つけた傷は、これだったのか。何と無茶を」
「全身にあるそのツボに刺すなんて・・・どれだけの激痛だったのでしょうか」
一葉と幽は背筋がぞっとしたのか体を震わせた。それは皆も一緒だった。
『気を失ったか。俺は鬼っ子を探しに行くからそのまま寝ていろ』
アキラがこの部屋で倒れていたのは、この激痛に耐え切れなかったためだ。
話が終わり、ついに氷が顔まで行き・・・アキラが完全に氷に覆われた。
『『『『『『『『・・・・・・お願い』』』』』』』
必死に涙を出しながら願った。うまくいくように・・・死なないでほしいと。
アキラが氷漬けになり、それを見て死んだと思った夢時人が背を向けようとした時に部屋全体が氷に覆われた。その現象に皆は涙を止めた。
「や、や、やややや、やったのですね!」
「だね・・・あれだけ苦しんでいたのに。心から尊敬するよ」
「とんでもない忍耐力ですね・・・驚きです」
湖衣の言葉に一二三と悠季が感服した。
『あなた・・・心が醜い割には、かわいらしい顔をしているのですね。その顔、見えますよ』
氷がはじけ飛び、アキラの姿が現れた。
『親友が・・・私の友が命がけで教えてくれた。先を進むべき限界を超えた力への道筋を!』
立ち上がった姿に歓声が響き、思わず万歳をする者もいた。
「「「「「「「や、や、う、ひっく・・・や、やった!!!」」」」」」」
大号泣して、閉じられていた目を開けたアキラを笑顔で見た。
『二つの目と心の眼、両方揃った私に負けはない!覚悟はいいですね、時人!』
賭けは成功した。彼女達はここから先、アキラの本当の強さを目の当たりにする。
彼女らは、アキラの苦しみを見続けたせいで一つの認識違いをした。それはこの戦いを現実と見ているがために、この時のアキラの強さと現実のアキラの強さが同じと見ていた事だ。
アキラ・・・友の思いを持ってついに限界越え。
次の話で時人戦終わりです!
今更ですが、この章、序盤以外はSDKの原作通りの展開ですいません・・・やはり過去はあの展開以外思いつかなかったですし、変えたくなかったです。