今回はこの二人です!
因みに、今回から京を離れて尾張に行きます!では、どうぞ!
アキラは今、馬に乗って移動している。
「アキラ様。一緒に食事してくれますよね?」
「ええ、もちろんです」
「美濃まで来てくれるんですよね?」
「岐阜城まで、となりますが」
「その間、毎日一緒に寝てくださいますよね?」
「・・・一人ではないですが」
彼の後ろには、葵が背中からギュッと抱きしめてべったりくっつき、閨に入る一歩手前の蕩けている顔になっている。
「葵様があそこまで女性らしくなってしまわれた・・・」
「でも、殿さんとっても嬉しそうです!」
「あんな葵様を見るなんて今までなかったですね」
「はい。それに私にも声をかけることが多くなりました」
後ろには悠季と綾菜・歌夜・小波がついてきている。松平勢が揃っている隣では
「せっかく京にいれたのに、もうちょっといたかったでやがるな」
「仕方ないよ。余り甲斐から離れるのも危ないし」
「夕霧様、薫様!辛抱なのれす!」
夕霧・薫・兎々がいた。計七人の嫁と一人の武将と共に今は京を離れて、尾張に向かっているのだ。
何故彼女らが京を離れたのかというと、当主がいつまでも自分の国を離れるわけにはいかないからである。だが、日の本の中心であるボロボロとなった京の建て直しを放っておくわけにはいかない。越後は、次期当主の空と彼女を支える名月に愛菜。更に立場・発言力の強い沙綾に護衛の貞子がいる。だから、当主の美空がある程度離れても問題ないが甲斐・三河はそうはいかない。
甲斐は当主代理や影武者の夕霧や薫に四天王の兎々が先に戻り、三河は当主代理が出来る人材がいないため葵自らが戻る必要があるのだ。そして、アキラと綾菜・歌夜・小波はその見送りと岐阜城までの護衛・・・というのは建前で、葵が少しでもアキラといる時間が欲しいため一緒に来てほしいと申し出たのだ。
実際、建て直しといっても方針を決めている段階なので、アキラは何をすればいいのかすらまだ決まってないので、葵のこの申し出を受け入れた。
「アキラ様・・・ずっとこのままでいたいです」
「ははは、そうですね」
だが、同じ馬に乗り、背中から抱き着く申し出は出発当日いきなりだった。若干の苦笑いと冷や汗を流すアキラ。
「羨ましいな~。葵様」
「薫も頼めばやらせてくれるでやがるよ」
「綾菜もやりたいです!歌夜と小波もやりたいですよね!」
「えええ!え、えっと、あの、か、帰りなら」
「その、あの、草の私が、あんなにくっつくなんて・・・」
「お二人はもう何回も裸で密着していたのではなくて?」
「「きゃあああああ!い、言わないで(ください)!」」
「な、何回もれすか!と、とんれもないれす!」
羨ましそうに見る薫と綾菜。夕霧もああは言っているが、うずうずしている。綾菜の言葉に慌てる歌夜と小波だが、更に慌てることを悠季に言われ、それを聞いた兎々は驚いた・・・そんなドタバタもあったが、数日後に無事尾張に着いた。
「ふう、到着ですね・・・やはり、ここが一番落ち着きますね」
「うん!薫も躑躅ヶ崎館が落ち着けるね」
「綾菜は岡崎城です!」
清洲城が見える位置に馬を止めて、その城を見て心を撫でおろして思わず呟く。その呟きに背中から薫が、前から綾菜が頷いた。
「城に行きましょう。城で泊まっていいと、久遠が先に伝えていますので」
「です!出発です!」
笑顔で綾菜が城を指差した。
その伝えるために清洲城に向かった使いが、
「やっほ~~!おかえり~、アキラ君!」
アキラに抱き着いた雛だ。当主と壬月・麦穂がいない状態で今この清洲城を守っているのがこの雛だ。彼女一人で大丈夫か?と思うが近いうちに麦穂も戻ってくる予定らしく、京が一段落すれば壬月も戻ってくる。久遠はまだ先だが、今のところはそれで間に合っている。
「あれ?雛だけですか」
「ああ、犬子のこと?犬子は岐阜城の方を守っているよ・・・というか、アキラ君知らなかったの?」
「ええ。和奏は壬月さんの手伝いで残っているのは知ってましたが」
「ぶーぶー、雛も犬子もお嫁さんなんだからちゃんと知っていてよ~」
「ええ、すいませんでした。では、お願いしますよ」
「お~け~」
アキラの手を掴んで城に入っていく。
「それにしても、まさか久遠姉様のいない時にこの城に入るなんて」
「それだけ、私達を信用してくれている。という事ですね」
「久遠殿の居城は綺麗でやがる」
「上洛の時に入ったけど、余りいれなかったからよく見れなかったよね」
「れも!躑躅ヶ崎館の方が綺麗れす!」
「兎々、いきなりどうしたです?」
「別に差をつける必要はないですよ」
「ご主人様!草の入っている様子はありません!」
一人一人、思い思いに話しながら、彼女らも城に入った。
それぞれお互い別行動をしようと解散した。葵は悠季と三河に戻ったらどうするか話し合うために、薫は兎々と城の中を見て回るために、歌夜と小波は尾張にあるアキラ隊の長屋を見たい。とのことでアキラについていった。
「な~~んにも、することがないですね~」
「本当でやがるな」
そんな中、街に出た綾菜と夕霧。明日には岐阜城に向けて出発するため、遠くに行くことが出来ないので馬を使う事も出来ない。
「綾菜、まだ同盟じゃない時にこの街に来ましたけど、あまり変わってないです」
「いろんな店があるでやがるね。それに皆楽しそうでやがるな」
「はい、久遠様がしっかりしている証拠です!」
「甲斐の城下を見ている気分でやがる」
「そうですね!あっちも民が笑顔だったです!」
「・・・久遠殿も姉上も、仲良くなれてよかったでやがる。もし、兄上がいなかったら、姉上の予想通りの歴史の進み方だったら・・・二人は」
笑顔の民達を見て、少し感慨にふける夕霧。そんな彼女の肩を叩く綾菜。
「大丈夫ですよ!そんな歴史はなくなったです!」
「綾菜・・・そうでやがるね。よし、しっかり楽しむでやがる!」
「じゃあ、向こうに行くです!」
「案内、頼むでやがるよ!」
二人とも、この時だけ武将・当主代理という肩書を無くしてただの綾菜と夕霧として笑顔で走り出した。
だが・・・、
「綾菜。ここ、どこでやがる?」
「えっと、わからないです!」
綾菜に道案内を任せたのが間違いだった。戦場では敵の場所を超人的勘で見つけ出す彼女だが、こうした遊びや楽しみは勢いとノリでいろんな場所に行く。後先考えずに動きまくった結果・・・迷子になり、しかも今いる場所は林の中だ。ここが地元の三河なら、本能で城の場所までたどり着けるだろうが尾張ではそれも無理だ。
しかも、日が暮れ始め夜になろうとしていた。
「とりあえず、今いる場所を確認するでやがるよ」
「はいです!では、早速」
「待つでやがる!やっぱりだめでやがる!」
早速どこかに行こうとした綾菜を止める。ただでさえ、勢いでここに来たのだ。このまま行かせたら確実に戻ってこない。と思ったからだ。
「??どうしてでやがる?」
「真似するなでやがる!というか、方向が分からない今、変に動くのは危険でやがる!」
「綾菜、今までもいろんなところに適当に行ったけど、最後にはちゃんと殿さんやアキラ様のところに着いたですよ」
「何でそんな行き当たりばったりで最後は着けるでやがるか!」
綾菜のデタラメに唖然とする夕霧。
「そんな勢いでうまくいくはず「アキラ隊はいつもこうですよ?」・・・もう、諦めたでやがる」
「??どうしたです?」
「いや、何でもないでやがる」
綾菜が原因でやがる!と言えなかった。
「じゃあ、どうするです?」
「焚火を作るでやがる。煙で気づいてくれるでやがるから」
「はいです!」
早速、木の枝を集め始める二人。
「いいでやがるか!ちゃんと、乾いた枝を拾うでやがるよ!「大丈夫です!綾菜、こういうのは慣れてるです!」・・・頼むでやがるよ」
ひょいひょいと枝を拾う姿に不安になる夕霧だった。
だが、綾菜はちゃんと水気のない乾いた枝を拾ってきた。おそらく、歌夜からそうするよう教えられていたのだろう。焚火を作って、それを真ん中にして向き合うように座った。
「少しは先を考えないと、これから先を生きていけないでやがるよ」
「う~ん、綾菜は今が楽しければいいです!」
「それが、この結果でやがるよ・・・そう言えば、綾菜は葵殿の将でやがったな。どうして、兄上の部下になったでやがる?」
最初は今後の彼女の事を考えて説教をしたが、一つの疑問が出たので訊ねた夕霧。それを聞いて、少し顔が険しくなった綾菜。
「・・・綾菜、前にその事で悩んだです。少し前ですが、越後で殿さんとアキラ様、一度喧嘩したです」
「え?あの二人が?」
確かに葵とアキラが少し距離をとっている時期があるのは夕霧も見たことあるが、喧嘩までしたとは信じられなかった。
「はい、越前で美空様に助けられて越後に行って、アキラ様は越後も同盟に入れられないかと提案したけど、殿さんは早く三河に戻りたいと言って喧嘩になったです」
「・・・まだ夕霧達と会う前の事でやがるな」
「そうです。綾菜は殿さんもアキラ様もとっても大事だから、その二人が喧嘩してほしくなったです。でも、歌夜からどちらかを選ばないといけないと言われてとても困ったです」
それを聞いて夕霧は思い出した・・・かつて甲斐を、民を苦しめて自分達姉妹と残った春日達で追い出して、駿府を乗っ取ったが最後には母の顔でなくなっていった母・信虎の事を。
『姉上達と共に甲斐の為、民の為に追い出したことに関しては後悔してないし、母上は夕霧を当主にしようとしていたが、それを断って姉上を当主にした事も後悔してない。でも・・・母上と共に甲斐にいたかった。追い出した時に見たあの背中を見て、追いかけたかった気持ちはあったでやがる』
辛い気持ちになったが、顔には出さないでそのまま話を聞いた。
「どうすればいいか分からない。って歌夜に言ったら、こう言われたです。松平の将でもない、本多忠勝でもない、ただの綾菜で考えて決めろって!そうしたら、すぐに答えが出たです。アキラ様と一緒にいたいって!」
「なるほど、そこから兄上の部下になったでやがるな」
「そうです!」
頷きながら笑顔に戻って、元気よく言った。
「そして、決めたです!綾菜はこれからもただの綾菜として生きていくって!自分の考えと思いに正直に生きていくって!」
それを言った綾菜の姿は夕霧には眩しかった。特に、甲斐・信濃の国主・武田光璃晴信の妹という立場の彼女にはとても輝いて見えた。
「すごいでやがるな。夕霧には真似できないでやがる」
「そんなことないです!だって、綾菜は夕霧の方がすごいと思っているです!」
「夕霧が、でやがるか?」
「アキラ様や薫様から聞いたです!たくさんいろんな仕事を全部一人でやっていたって!兵の人達が心配するくらい、光璃様の為に頑張っていたって!」
「そんなことないでやがるよ。夕霧はただ武田の為に」
「それって、光璃様の妹としてやっていたですか?それとも夕霧の意思でやっていたですか?」
「は?何をいきなり・・・」
だが、夕霧はそこで言葉が止まった。武田の為・・・それが姉の為にやっていたのか、自分の意思にやっていたのか。今まで両方同じと思っていたが、綾菜の話で考えさせられた・・・少し考えて、結論を言った。
「夕霧は・・・夕霧は、武田を立て直す姉上を自分の意思で支えたいと思ったでやがる。だから、自分の意思でやっていたでやがる」
光璃を支えたいと言う気持ち、それは間違いなく自分の意思。自分のやると決めた気持ち。当たり前のようにやっていたが、実は忘れていた思い。それを確認できた。
「・・・(ぼそ)ありがとうでやがる。綾菜」
「はえ?何か言ったです?」
「何でもないでやがるよ」
感謝の気持ちをこっそり聞こえないように言った夕霧。
「さて、夜になってしまったでやがるな。いい加減に「話は終わりましたか」終わったでやがる・・・・・・「へ?」」
お互いの気持ちを語り終わったところに、二人の聞き覚えのある声が聞こえた。二人ともえ?っという顔でその声がした方を向いた。
「「あ、あ、アキラ様(兄上)!」」
「綾菜、あなた、またやったのね・・・」
「と、殿さんまで!どうしてここにいるのです!」
そこにはアキラと葵がいた。葵は三河時代と同じ状況なのか、すぐに綾菜の仕業とわかった。
「それはこっちのセリフです。ここは久遠の家の裏の林ですよ」
「「・・・・・・え?」」
「久遠姉様の家でゆったりしていたのですが、煙が見えてやってきたら綾菜と夕霧さんが話をしていたので(せっかく二人っきりだったのに・・・たっぷり愛してくれる数少ない機会だったのに)」
そこまで言われて、綾菜の言葉を思い出す夕霧。
『綾菜、今までもいろんなところに何も考えないで行ったけど、最後にはちゃんと殿さんやアキラ様のところに着いたですよ』
本当に着いていた。ちょっとだけ離れていただけで、彼女の言った通りだった。何故この二人が久遠の家にいるのかは、最初からこの家で泊まる予定のアキラに葵がついてきたのだろう。二人だけになって抱かれる気でいたようで、邪魔者が入ってしまいがっかりした。
『帰るべき場所があれば何も考えないで帰れるってことでやがるか!と、とんでもないでやがる!』
改めて綾菜のとんでもなさに絶句した夕霧だが
『でも、夕霧も甲斐だったら姉上のところに、躑躅ヶ崎館に、絶対に帰れる自信があるでやがる・・・たまには何も考えないで、ぱっと出した答えも重要という事でやがるね。夕霧もたまには武田の将のではなく、ただの夕霧として考えることも大切という事でやがるね。まさか、綾菜から教わるとは思わなかったでやがる』
学ぶべき事もあったので、心でまたお礼を言った。その綾菜は、
「全く、三河でどれだけ暴走したと思っているの?」
「ふえええ~~ん!殿さん、ごめんなさいです~~」
「夕霧さんまで巻き込むなんて・・・何より、アキラ様との甘い蜜時をしようとした時だったのに!」
葵はアキラとの情事をする前に邪魔されたことが相当腹立ったのか、めったに見せない怒りの顔で怒っていた。その顔を見て正座で泣きながら謝罪していた。
『だけど・・・行き過ぎるとああなるという事ですね。本当に綾菜からいろいろ教わったです』
土下座で頭を下げまくる綾菜を見て、汗を流しながら反面教師の部分も必要だと分かった。呆れる余り、語尾が綾菜になっていることに気づいてない。
「夕霧、大丈夫でしたか?」
そんな彼女に、アキラが声をかけた。
「大丈夫でやがる!夕霧はいつもの夕霧でやがる!」
その質問に、笑顔で返事をしたのでアキラも笑顔で返した。
その日は夕霧も久遠の家に泊まり、葵が望んだアキラとの夫婦の愛の営みは出来なかった・・・因みに綾菜はというと、
「お願いです~~!許してくださいです~~!(ぐううう~~~~)」
罰として晩飯抜きにされ、アキラの作った食事を食べているところを見せつけられた。夜寝る時は、久遠の屋敷の庭にいる虫の音より、綾菜の腹の虫の音と空腹を訴える声の方が高く響いたという・・・ちゃんちゃん♪
綾菜は真っ直ぐに、夕霧はいろいろ考えた中で決めてから、勢いで行く。という感じなので、シンプルな時も必要だと気付かせたかったのです。それを気づかせるのは綾菜しかいませんですから・・・ただ、全てがそれでいいというわけでもない。それもまた綾菜が身をもって教えました。
次回は薫・葵か悠季・小波のどちらかにしようと思っています。ちなみに、どちらもR18にします。では、ごきげんよう。