鬼目の狂とゆやの家。ここで暗い空気を作る二人の女がいた。
「アキラ、どこにいるんだ?」
「アキラ様、どうしていないの?」
一人はまだ少女のあどけなさが残る女性、時人。もう一人はおしとやかそうだけど影がありそうな顔をしている女性、朱雀。
「二人とも元気出して。ほら、食事だよ」
そんな二人の世話をしているのは、壬生一族特有の顔立ちを持つ女性、庵樹理華。
その三人を少し離れた場所で見ているものがいた。一人はアキラをずっと支えていた眼帯をつけた大男・梵天丸・・・伊達独眼竜正宗の名を持つ有名人だ。
「あいつがいなくなって三日。あの二人・・・いや庵樹ちゃんも入れれば三人か。あの子もあの二人が自分以上に落ち込んでいるから落ち着いているだけだ。三人とも、アキラは大きな精神的支えだったんだな」
「そうね。アキラさんは厳しいけど、隠れた優しさを持っていたわね」
「でも、一刻も早いところ手がかりの一つでも見つけないと、自暴自棄になりかねないですね。特に朱雀さんは危険です。時々アキラさんの幻覚が見えてしまうのか、何もないところに話しかけることがありました」
その梵天丸と話をしているのは狂の妻・ゆやと壬生京四郎の妻・朔夜だ。因みに狂は朝酒を飲みながらアキラの心配をしていた。
「狂に負けて、灯に治してもらってもまだぼろぼろだった。そんな状態で動けるはずがねえ。太四老時代の時人と戦い終わった後と同じくらいの酷さだったからな」
「アキラさんの事もそうだけど、サスケ君の刀がなくなっていたのも気になるわね」
「私が思い当たるのは京(壬生京四郎)が二人の結婚祝いにと上げたあの鏡ですね。壬生の里に里帰りしたときに見つけた。と言っていましたけど、いったいどこで見つけたのでしょう?」
だが、話し合いは三人の不安定な精神を解決できそうになかった。
ところ変わって、壬生一族の里では二人の男と一人の女性が話し合っていた。
「それでは、村正様の作ったもので間違いないと」
「あくまで推測だけど、それが一番の有力な線だと思うんだよ」
「あちきも同じ意見だね。どうしてこうなったかはさすがに知らないけど」
この壬生の里の中心的人物・辰怜と壬生京四郎、そして上半身をさらして胸のところにさらしを巻いている女性・四方堂だった。まず辰怜が京四郎に疑問をぶつけた。
「でも、何故その鏡があいつの・・・太白の小屋の中から見つかったんだ?」
それは、あの鏡が見つかった場所だった。京四郎は頭をひねりながら答えた。
「完全に推測となるけど、村正さんはこの鏡を先代・紅の王の壬生京一郎兄さんにあげようとしたんじゃないかな?兄さんの危険を知り、誰よりも里の未来を不安にしていたからね。でも、普通にあげると確実に怪しまれる。刀であろうとなかろうとね。そこでいつもそばにいるあの子を使った。あの子からだったら、あくまで運頼みだけどうまくいくかもしれない」
なるほどと頷きながら、次は四方堂が質問した。
「あの獣(梵天丸)と同じくらい大きいあのサムライ君のところにそれがあった。それについてはどう説明するんだい?」
「これも推測だけど、村正さんは変に勘繰られないように本当にただあげただけ。しかし、壬生の里をいろんなところに行けるあの子は太白さんのところに行って子供達と遊んだ際に鏡を忘れて帰った。でも、太白さんは紅の王の面会は出来ないし、太四老にもお願いを言える立場でも物事を頼める立場ではない。だから、仕方なく預かる形で置いていたんじゃないかな?」
ここで言葉が区切られた。三人は考えをまとめるために静かになった。
「かなり無理矢理な推測だけど、正直否定はできないな」
「僕も無茶があるかな?と思ってはいるけどね」
苦笑いをしながら話す京四郎。
「それで、その鏡はいったいどんな効果があるんだい?」
「アキラ君がいなくなったところから考えると・・・鏡に映した者をどこか遠いところ。もしくは全く別の世界に移動」
「「別の世界に移動?」」
辰怜と四方堂の言葉が重なり、二人の顔もまたわからない顔になった。
「何とか里を守りたかったが、王の立場を持っている人を倒すわけにはいかない。それに狂を連れて里を出る事も決めていた。だからこそ、最後の手段としてこの鏡を作ったけど、すぐ効果を発揮するわけにはいかない。そこで、自分の作る四本の刀を鍵にして、全部そろってやっと効果が出るようにしたと思うよ」
「なるほど、そうすればいつか狂か。もしくは他の誰かが先代を倒そうとしたときに、四本集めて鏡を使えば別世界に行かせることができるな」
「鬼の子が実力で先代を倒しちったけどね。そう考えれば、四本の刀と鏡が一緒にあった部屋で寝ていたモミアゲ君がいなくなったのも理解はできるねん。その推測も納得はあまりできないけどね」
でも、まだこの推測には穴がある。四本の内の刀・紫微垣がなくなった理由にならないのだ。
「それなら、どうして紫微垣までなくなったんだ?鏡に映ったのはあいつだけなら、その刀まで一緒になくなる理由にならない」
でも、その穴を京四郎は分かっていた。
「アキラ君を主として認めたから、一緒に行きたかったんじゃないかな?」
紫微垣の今の持ち主はサスケだが、前の持ち主は京四郎であり狂と戦うために訓練として、その刀でアキラと戦ったことがある彼だからこそわかったことだ。
「主として?」
「壬生一族でも、サムライでもないのに?」
「僕はあれを使っても彼に負けたことがある。紫微垣も僕が負けるなんて想像してなかったと思う・・・けど、同時に破った壬生一族でもサムライの血筋でもないアキラ君に興味を持ち一緒に戦いたいと思った。実際、負けてからは対話ができなくなったからね」
「つまり、共にいきたいがために追いかけた。ということか」
辰怜の言葉にうなずく京四郎。ここで、四方堂が話をまとめた。
「じゃあ、話をまとめると、紫微垣以外の村正の作った刀を一本見つけて同じようにすれば・・・モミアゲ君の行った世界に行けるということかな?」
「やってみる価値はあると思う。でも問題はその刀だ。天狼、紫微垣、北落師門、今はなくなったが北斗七星にゆやさんの短刀。これと同等の力を持つ刀が果たしてあるかどうか・・・」
無言になる三人。村正が他にも刀は作っていることは知っているが、さっきの五本と同等の刀がない限りいけないということだ。
「僕は村正さんの生前住んでいた家に向かうよ。その前にあの三人に報告すれば、一緒に探してくれるはずだ」
「時人がいれば、どれが同等の刀か見分けがつくしね」
「私は里の方で、かつての村正様の遺品がないか調べてみる」
「うん、じゃあ早速行ってくる。こっちは頼んだよ」
「任せておけ。それに、村正様の事を調べるのも里の為になるしな」
「何かわかったら、こっちも使いを出すからね」
こうして話し合いが終わり、京四郎はアキラの行方不明を悲しんでいる三人のところに向かった。
特別編いかがでしたでしょうか?ちょっと無理矢理なところもありますが、アキラがあの世界に行ってしまった理由はこういうことです。
かなり先になりますが、この特別編をちょくちょくやっていき本編につなげようと思います。ただ、今は期待しないでください。まだ、何も構想できてないので・・・。
因みに時人・庵樹はわかっても朱雀って誰?と思う読者もいるでしょうが、実はちゃんと原作には登場しています。ただ、モブキャラと同レベルに出ているコマが少ないのでわかりにくいと思います。
次はこの三人のプロフィールか、間章に戻ろうかと思います。