アキラとアキラ隊のひよ・ころ・詩乃とエーリカの五人は、今小谷城を出て江南に向かっている。その理由は
『鬼がどこから来るか調べる必要があります』
詩乃のこの言葉からだった。鬼にいつまでも後手に回るわけにもいかないので、調査をしようと話し合いに参加した久遠達も頷いた。でも、小谷城で出せる兵は周辺の村や城を守らせているし、越前への注意もしないといけない。
そこで、今は自由に動けるアキラ隊の四人と鬼に詳しいエーリカの出番となった。
「観音寺城、でしたっけ?情報によると、その周辺から鬼が来るというのは」
「はい。お市様は直接鬼を倒しておられますし、何より久遠様と同じくらいの観察眼と判断力を持っています。十分に信用できる情報です」
「壬月様と互角の勝負ができるお方ですから、鬼を一人でも倒せますしね」
「尾張にいたころのお市様って、本当にお転婆でしたよ・・・それに、どこへ行くにも私も連れていかれて。でも、楽しかったですからいいですけど」
「あれはお転婆で片づけていいのですか?」
ひよのお転婆の言葉に詩乃が突っ込んだが、久遠の妹だからいいのでは?とこっそり思ったアキラ。それに、アキラならあれはお転婆の領域に入る。何しろ、その領域を簡単に飛び越えて暴れる連中が自分の世界にいるからだ。
「それより三人とも、壬月さんなら私も勝ったことありますが」
「「「お頭(アキラ様)は別です!何しろ、天人さまなのですから!」」」
「あの、隊の皆さんはどうしてアキラ様をとんでもなくすごい人!というような顔で見ているのでしょうか?」
「いいのです、エーリカ。結構美化されているみたいですけど、絶対に修正しないのですから、私は既に諦めています」
そんな雑談をしながら今回の目的を話した。観音寺城周辺の地図の作成、そして近隣にある村で鬼に関する情報収集。後は城下街に行って上洛の際の攻めるための情報として城の兵の数や備蓄等といった情報集め。これが今回の目的だ。
気楽に村までやってきたが、地図を創るためにいろいろ調べながらゆっくり進んでいたため、もう日が沈み暗くなっていた。アキラとエーリカは夜でも大丈夫だが、残り三人を連れてとなるとさすがに危険だ。鬼の数体程度ならともかく、ここら辺の鬼は十匹以上の集団になっているという話なので、彼女達を歩かせるのは危ない。
そこで、近くの村にある一軒の家に泊まらせてもらうことにした。その家の人から聞けたことは、情報通り鬼が集団で活動していることと、どこかに向かっているという事だった。実際に見た村人も何人かいたらしいので、十分に信用できる情報だ。
『やはり、人のいるところに向かって動いているようですね。そりゃ、食事は動くもの全てに必要ですからね』
そんな考えを持ち奈良が、お礼として堺で手に入れた金平糖をあげると、その甘さにとても喜ばれ、夜いきなり来たことで警戒もされていたが解くこともできた。
次の日、その集団を見たという場所に向かった。最初はアキラとエーリカだけにして非戦闘員の三人は置いていくつもりだったが、頑なに一緒に行く!と言ってきたため連れてきた。
その場所に着いて、一通り調査するとアキラがあるものを見つけた。
「ふむ、どうやらあの人達の話は本当のようですね」
「え?どうしてわかるんです?」
「これですよ」
「これって、足跡ですか?」
これを見て分かったのは詩乃とエーリカであり、ひよところはまだ?だった。
「この足跡は、明らかに動物のものではありません。つまり」
「これがあると言うことは、近いということですね」
移動に気を使わない連中だからこの足跡は間違いなく鬼のものと判断した。つまり、自分達は近づいているという事だ。そこからは慎重に先を進むと、案の定鬼の声が聞こえた。アキラは周辺への気配の察知に神経をやったが、隣のエーリカは不思議そうな顔をしていた。
「近いですね」
「はい。でも、少しおかしい気が」
「おかしい?」
彼女のその言葉にアキラは疑問を持った。
「鬼の声が、威嚇や周りの鬼を集める声と違って・・・私達で言う悲鳴でしょうか?そういう声を出しているような気がするのです」
エーリカに指摘され、改めて声を聴くが違いはさすがに分からなかった。だが、致命傷を食らって倒れる兵と同じような悲鳴だというのは分かった。
「行きましょう。三人は戻って「「「却下です!」」」。」
「あの、私もアキラ様の「「「一緒に行きます!!」」」。」
「私達もアキラ隊です!」
「私達は一心同体です!」
「あなたのそばを決して離れません!」
三人の決意はとても大きかった。力づくでも帰ってくれそうにない。
「・・・一瞬でも危ないと判断したらすぐに逃げること。いいですね」
「「「はい!」」」
三人の想いに負けて連れていくことにした。足跡をたどって森の中に入り、声が近くなり森を抜けた草原で何かが起こっていることが分かった。
「準備はいいですか!」
「「「「はい!」」」」
アキラも腰の刀に手をかけた。五人とも、真剣な顔になって森を抜けた。
そして、抜けた先にある草原で見たものは
「「ひゃっは~~~楽しいぜ(わい)!!」」
どこかで見た親子が鬼相手に無双しているシーンだった。
「「「「・・・(キョトン)」」」」
四人は呆気に取られた。そりゃ、鬼の十匹以上いる集団がたった二人でボコボコのズタズタのざしゅざしゅのぐちゃぐちゃにされているのを見れば、そうなるのも当たり前だ。
「ふ~~。すっきりしたわい」
「ああ、あいつをぶちのめせなかったイライラがなくなったぜ!」
二人の周りには、チリとなって消えていく鬼の死骸のみ。アキラは本気でどっちが鬼か一瞬分からなかった。
「・・・何しているのですか?」
「「何者だ(じゃ)!・・・って、ああああ!」」
「は~~~。とりあえず、鬼が鬼を全殺した・・・じゃなくてこの二人が鬼を全殺しにしたってことでいいんでしょうか?」
「・・・・・・はい」
現状の確認をして刀から手を離したアキラに、かろうじて戻ってきたエーリカも絞り出すような声で返答した。
「てめえ!何でここにいやがる!」
「儂らを追いかけてきたのか・・・ふふふ、いい度胸だ!」
「それはこちらのセリフです。桐琴さんと小夜叉はいったいどうしてここに?」
「「覚悟しやがれ~~!」」
質問を無視して襲い掛かってきたので、すぐに抜いた刀で二人の攻撃を防いだ。
「それで、どうしてここにいるのです?」
すぐに二人の槍の穂先を地面に叩きつけて、氷を作り地面にくっつけた。質問そっちのけで文句を言ってきたが、話に答えればちゃんと氷を壊すことと約束すると簡単に答えた。自分達の縄張りである尾張・美濃での鬼も大体狩ったので、遠くにいる鬼をぶち殺そう!ということだった。
『何か、この二人を見ると昔を思い出しますね。特に、桐琴さんは狂と少し似ているところがあります。どんなものにも絶対に縛られない生き方をしようとする姿勢が・・・ふふふ、本当に似てます』
その後、勝手に他国に入ったことを黙るのを条件にちょっとした交渉をした。鬼の様子や変化があったら教えてほしいこと、鬼の巣を見つけたら全殺ししてもいいからどこで見つけたか話すことを頼んだ。
ただし、桐琴の方もただでは動かなく、決して自分達森一家に指図しないことと鬼退治はアキラも同行することを条件にアキラの要求を飲んだ。
その後は自分達がなぜここにいるのかの経過を説明した。尾張を久遠と抜け出した話には桐琴も大笑いをした。
「がはははは!あの宿老二人を出し抜いて新婚旅行か!お主ら、似たもの夫婦じゃな!」
「ふむ、何かいろんなところで言われている気がしますが」
「「「言ってますよ」」」
「あなた方が言っているのですか!」
隊の三人は口を揃えて肯定した。
「それにしても、お主。相当の実力があるのはあれ(100件記念小説)で知っておったが、なかなか食えないやつよの!わしらに交渉を持ちかけるとは!」
「母~。俺は今ぶちのめしたいだが」
「かっかっか!まあ、こやつをいつかぶちのめしたいのはわしも一緒じゃ。近いうち必ずやらせてもらうからな!」
「ええ、受けて立ちます」
話も終わり、ちょうど初顔のエーリカもいたので紹介したらアキラの時と同じように初対面なのに威圧しながら話すと、彼女から心からの褒めの言葉を受け一瞬キョトンとした後すぐに小夜叉を連れて去っていった。
『悪評が自慢の森一家。と言われてますから、ああした賛辞は恥ずかしかったのでしょう。でも、嫌いではありませんね・・・四聖天の頃を思い出します。そう、天下を取ることが最強になると思っていたあの頃を。狂にその称号を上げようと思っていたまだまだ子供だった時の頃を』
思い出しながら空を見上げた。その青空に狂とあの三人の顔を見た気がしたアキラだった。
今回はここまでです!次辺りで本作品の第三章を終了にするつもりです。でも、ちょっと思った通りにすすめられない・・・くそ、文章力アップしたい。