「ここが・・・村正の家。そして、叔父さんの家」
辛そうな顔でその家を見る時人。彼女にとって、太四老時代に自分の父と言われていた男の家だ。複雑な気持ちになるのも無理はない。
「そうだよ。僕・・・そして狂にとっても忘れられない人だ」
「俺もあいつにはずいぶん世話になっていたな」
「わいもこの槍を手に入れられたのは、村正はんのおかげやし」
「村正さんってたくさんの人にすごい影響力があった人なのね・・・壬生にいたころはうちのお母さんと同じ裏切り者扱いで酷い噂しかなかったのに」
京四郎・梵天丸・紅虎の三人の話を聞いて、村正の人なりを初めて知った庵樹。
「・・・・・・」
ここに来てから、朱雀の様子がおかしい。アキラがいなくなり、時人とひどく落ち込み庵樹もそれに加わりかけた時に、京四郎からアキラの手がかりが村正の家にあるかもしれない。という話があってからは、ここまで必要最低限しか話さなかった。
今回の村正の家の捜索に参加したのは京四郎・時人・朱雀・庵樹・梵天丸・紅虎・真尋の七人だ。梵天丸は自分の仲間を見つけたいという気持ちから、紅虎もまた大切な親友を見つけたい気持ちから、真尋は紅虎の監視役兼自分がかつて村正とその恋人の姉と一緒に暮らしていた家の整理も含めてやってきた。
因みに狂はゆやの監視の下で双子の子守、京四郎の妻朔夜は近々出産予定なので二人の家を間借りして灯の治療を受けながら安静にしている。
「本当に、久しぶり」
「真尋・・・大丈夫か」
「はい、気持ちの整理は付けていますので」
「早速だけど始めるよ。村正さんの刀・・・いや、この際刀じゃなくてもいい。あの人が魂を込めて作ったものを見つける。それがアキラ君を追える唯一の手がかりだ」
「もちろん!絶対に見つけてアキラの後を追う!」
「ええ、壬生にいる兄弟達には話をして私も決心したわ」
京四郎の言葉に時人と庵樹は頷いた。だが、朱雀はずっと家を見ているだけでまるで話を聞いて・・・いや聞こえてなかった。
「朱雀ちゃん、どうしたんだい?」
「いえ、何でも「そんなわけあらへんがな。おかしいで?まるで真尋みたいに懐かしいものを見るような目をしていたで」・・・はい」
「ねえ、朱雀ちゃん。もしかして、ここに来たことあるの?」
冷静に対応しようとしたが、真尋の言葉に言葉を止めた。
「・・・・・・」
だが、言葉は出なかった。このままじゃラチが明かないので、とりあえず保留にして捜索を開始した。
男三人は外、女四人は中を捜索した。いろいろ力のある刀や槍等はすぐに見つかったが、どれも今紅虎が持っている北落師門と同等と言える力はなかった。村正の血を濃く受け継いでいる時人が確認したから間違いなかった。一時間後、休憩という事で茶を入れて庭の見える部屋で集まった。
「やはり、あの五つが特別だったと言うことか」
「うん、ゆやさんの短刀は最後の思いを込めて作ったけど」
「あの先代はんの危うさがこれらを作った理由だったということやな」
外にいる三人は周辺の探索もしたが、結局何も見つからなかった。中の四人も同じだった。
「ふ~~、全くあと一本だと言うのに」
「難しいわね」
「はい、そうですね」
「・・・ねえ、朱雀ちゃん。やはり、来たことあるんじゃないの?私は住んでいたからどこに何があるのか大体わかっていたけど、あなたもそんな動きだったわよ」
真尋の指摘にしばらく口を開かなかったが、意を決したのかようやく話し始めた。
「黙っていてすいませんでした・・・私、村正様と住んでいたことがあります」
「「「「「「え!」」」」」」
それは全員が初耳だった。
「といっても、京四郎さんや真尋さんが知らないのも無理ありません。何しろ、村正様と一緒にいたのは壬生を抜け出してここ暮らし始めた少しの間でしたから」
「ちょ、ちょっと待て!じゃ、じゃあ。朱雀ちゃんは」
「み、壬生一族!」
「その通りです。ですから、狂さんの事も知っています。ただ、あちらの方は私は知らないでしょう。村正様ばかりを見ていて私には全く興味を持ってませんでしたから」
朱雀の肯定に再度皆が驚いた。
「当時、私は村正様の世話役でした。まだ里が平和の時に、実は時人さんと会ったことがあるのですよ。でも、まだ赤ん坊の時ですから知らないのも無理はありません」
「・・・そんなこと父様は何も」
「向こうでは裏切り者の村正様。仲が良かった頃があったとはいえ、それを話すわけにはいきませんからね。唯一話せるのは最後まで一緒にいたひしぎ様でしょう」
思い出話で、やっと朱雀は笑顔になった。
「そ、それで、ここで村正さんは何かを作っていたとかなかったかい?」
「・・・作っていたかどうかは知りませんがが、一つだけ心当たりがあります」
京四郎の質問はもちろん誰もがワラをもすがる思いの質問だった。そして、朱雀はそれにあると答えた。
「そうか!あるんやな!」
「良し!さっそく」
「ちょっと二人とも待った!調べようにも、さっきあらかた調べつくしたよ」
「「あ・・・そうだった」」
立ち上がった二人を京四郎は抑えた。
「家の中の方はどうだった?」
「こっちもほとんど調べたよ。刀はあったけど、時人の確認済みで全部当てにならないってさ」
やれやれと言いながら肩を落とす庵樹。その時朱雀が手を挙げた。
「・・・一つだけ調べてないところがあります」
「朱雀ちゃん、本当かい?」
「はい・・・こちらです」
朱雀に案内されたのは、さっきいた村正の部屋の隣の部屋だった。
「私がここにいたころ住んでいた部屋です」
「ここって、私と姉さんが住んでいた部屋・・・」
「でも、ここって一番先に調べなかったかい?」
「ああ、その通りだ。朱雀、ホントにあるのか?」
「正直、あるかどうかは分かりません」
そういうと梵天丸に頼んで庭側の天井の板を一枚はがす様に頼んだ、すると、天井裏から一つの手紙が出てきた。
「この部屋で住んでいた時、ここに何かをしていたのを思い出しました。ただ、その時は何だったのかは分かりませんでしたが」
「この手紙・・・いったい何が」
そこに書かれていたのは、妹の死を悔やむこととその妹に上げたかったものがあると言うこと、そして狂の今後を心配すること。主にこの三つだった。
「妹にあげたかったもの・・・か」
「これが見つかったらそれを鎮明に見つけられる。その事を恐れてこの手紙を隠したのかもしれないな」
「じゃあ、もしかしたらそれが!」
「ああ、アキラ君のところに行ける最後の」
アキラに会える希望が見えて三人の顔が明るくなった。だが、そこでいきなり乱入者が出たため話が止まった。
「よう・・・久しぶりだな」
「あ、兄貴!」
その乱入者は庵樹の兄であり、目に鉢巻を巻いている時人と同じ元太四老の一人遊庵だった。
「ははは!庵樹があのダンマリ君(アキラ)の事を好きになったって庵奈から聞いた時は何の冗談だと思ったが・・・本当だったようだな!」
「う・・・な、何しに来たんだい!」
庵樹が照れているのを面白そうに見ていたが、ここに来た用事はちょうど皆の目的のモノの事だった。
「辰怜に頼まれてな。それに、伊庵のとこにいる兄弟達の確認もしたかったからついでだ」
「それで、どうしたんだい?」
京四郎の質問ににやけ顔で答えた。
「村正が作った遺品が見つかったんだとよ」
三人は着実にアキラに近づきつつある。
特別編2でした!朱雀・実は壬生一族は考えていたことでした。そして、実は彼女らは一つだけアキラに内緒にしていることがあります。
それは特別編3で明らかにします!