さあ、今回はいよいよ我々の認識の狸が登場します!
「アキラ様~~!殿さんが到着しました~~!」
鞠を拾って数日後、宿で一段落していると綾那が部屋に突撃してきた。
「ふむ、松平元康さんが到着したのですね」
「はいです!さあ、早く早く!」
「全く、綾那ったら・・・」
「問題ないですよ。これくらい元気な方が綾那らしいですから」
「く~~す~~」
綾那の大騒ぎがあったのに、約一名眠っている少女がいる。
「これだけ騒がしいのに鞠さんは目を覚まさない。大物なのかそれとも」
「大物ですよ。この子はとても器がでかい・・・」
まだ寝ている鞠を見て彼女柄の認識を思い返した。
『本来、駿府屋形を取り戻す協力者として久遠に頼むのはお門違い、いくら書状に書かれていても鞠にしてみたら母親の仇。この子はそれを理解したうえで久遠に頼むことにした・・・そんな子が小物なはずありません』
アキラは鞠の身の上をそれなりに理解したうえで、彼女の器は久遠に匹敵するくらい大きいと判断した。
「アキラ様!アキラ様!早くです!」
そのまま寝かせることにして、綾那に引っ張られて外に出た。
外に出ると、すぐに鬼殺しハンターの二人に会った。桐琴も小夜叉も服が鬼の血だらけになっていた。
「どうやら、満足したみたいですね」
「ああ、二百くらい狩ってきた」
「いや~~。楽しかったぜ~~!!」
目の下にクマを作った笑顔で戦果を報告してきた。
「ははは、それはよかったです。とりあえず、お二人は美濃に戻ったら寝てください。目にクマができていますし、せっかく綺麗でかわいい顔が台無しです」
「なああ!ななな、何を言うんだ!」
小夜叉がアキラの褒め殺しに照れた。そんな娘を見て親はからかう。
「かかかか、アキラよ。わしじゃなく各務に言ってやれ!」
「いえ、桐琴にも言いますよ。二人とも綺麗で可愛いですよ」
「///うううう~~!!」
「かかか!クソガキもついに色気がついてきたか!」
「う、うううう、うっせ~~!」
真っ赤になりながら、去っていく小夜叉。笑いながらその後を桐琴がゆっくり追っていった。
「殿さん殿さん!この方が綾那が光り輝く玉の中に入っていたアキラ様です!」
綾那の声が聞こえたので、後ろを振り向くとそこには一人の女性がいた。
「田楽狭間で舞い降りた天人。そして、久遠様の夫というのはあなた様でしたか。我が名は松平次郎三郎元康。通称は葵と申します。葵とお呼びください。久遠様の上洛の露払いをするべく参上仕りました」
「どうも、初めまして。織田久遠信長の夫アキラと申します・・・・・・え?」
挨拶をしてきたので返答して顔を見る。自分の前に現れた女性を見て唖然として・・・久しぶりに現実逃避をした。
『皆さんこんにちは!第二弾アキラ先生教えて!のコーナーです。まさか、二回目が出るとは思いもしませんでした。今回教える言葉は「明晰夢」というものです。これは夢を見ている実感があり、なおかつそこで見た夢を現実としての感覚で受ける夢の事を言います。例えば夢でたくさんの敵を倒した夢を見たが、それを現実の感覚で覚えている。そういうものをいいます。ですが、以前も言った通り私の体験によるもの』
「アキラ様!どうしたですか!」
せっかくの現実逃避も綾那の大声で台無しになった。
『やはり、現実でしたか。この女性がのちの徳川家康こと松平元康・・・ダメです、やはり受け入れられません!あのバカの父親がこれなんて!せ、世界が違うだけでここまで違うのですか!もはや別人として見るべきか?それとも今自分は夢を見て』
だが、中々受け入れられずにいるためまた現実逃避をし掛けた。
「アキラ様。頭を横に振って何があったのです?」
「・・・受け入れるというのは、覚悟が必要と実感したところです」
「?どういうことです?」
詩乃の疑問も、今は聞ける余裕がなかった。何とか落ち着こうと軽く深呼吸をした。
「あの?アキラ様?いったいどうしたのですか?」
「い、いえ、何でもないですよ。ただあなたみたいなとてもきれいでおしとやかで、できることなら包み込んで暖かい気持ちを持って守りたいと思える女性が、三河の国主をやっているとはすごいと思っていたところです」
しかし、まだ落ち着けていないため、動揺しながら本気で思っていたことが口から出てしまった。
「え、えええ!ちょ、ちょっと。あの、その」
「アキラ様・・・(じろ~~)」
「あ・・・すいませんでした。つい本音が」
「え、えええ!あ、アキラ様。そんな、私ごときをそのように見てくれていたなんて(てれ)」
『私の世界の徳川家康とギャップがありすぎましたので、つい思っていること全部言ってしまいました。だけど、この人が慌てたおかげで少し落ち着けました』
やっと冷静になって着たアキラ。その時、真っ赤になって俯いてる葵の後ろから
「田楽狭間の天人は誑しの神と聞いたことがあります!我が主の葵様を誑そうとするとは天が許してもこの本多弥八郎正信こと通称悠季が許しませんぞ~~!」
大声で現れたのは、眼鏡をかけた何とも腹に一物抱えてそうな女性だった。
『腹黒さは、灯よりかなり弱いこの女性は・・・ん?今、本多と言いました?』
「そんなつもりは無いのですが・・・それより本多と聞こえましたが、あなたは綾那とは親戚か何かですか?」
「こんな悪知恵しか働かないやつを親戚と認めたくないです!」
「それはこちらの言葉よ。全く、相変わらず面倒くさいわね~」
ぐぬぬぬ、と綾那。しれっと悠季。二人の間に火花が走る。どうやら親戚で間違いなさそうだ。
「二人とも!アキラ様の前で失礼ですよ!」
「ははは、いいのですよ。こうして喧嘩してぶつかる。それが仲のいい証拠です」
「「何を言ってるです(おっしゃいます)!!」」
「ね?葵さん。二人はこういうのがちょうどいいのですよ」
二人とも同じことを言ったことに、真っ赤になってお互い背を向けた。
「本当に申し訳ありませんでした。久遠姉様が最も大切で信頼しており、現足利幕府当主の義輝様とも懇意と聞いておりましたのに。このようなものを見せてしまって」
「大丈夫ですよ。こっちも落ち着けましたから・・・」
『どうやら油断は禁物ですね。久遠ならともかく、内緒のはずの一葉達との仲もことも知っている。どうやら、こういうところは強かな狸と見ていいでしょう』
やっといつも通りに戻れたところで、宿から鞠が出てきた。
「ふぁああ、アキラ~おはようなの・・・あれ?葵ちゃん?」
「な!あ、あなた様は鞠様!」
「わ~い!久しぶりなの!」
葵に抱き着く鞠。だが、抱き着かれた葵の方は鞠の存在にびっくりしていた。
「お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです。でも、どうしたのです?長久手のこのような宿で」
「・・・駿府屋形が乗っ取られたの」
「な、な、何と!そ、そのようなことが!」
この言葉に葵の顔が苦い顔になった。その後、詩乃が手紙の内容を一部ぼやかして駿府屋形の出来事を伝えた。手紙の中身を見ようと・・・いや、おそらくその手紙を何かの企みに使おうとした悠季が見せてくれと言ったが拒否した。案の定、舌打ちをした当たり正解だった。
「でも、鞠様を保護してくれて本当に良かったです。アキラ様、本当にありがとうございます」
「後は美濃に帰って、久遠に処遇を決めてもらうことになります」
「・・・鞠様。本当にいいのですか?」
「?どうして、そんなこと聞くの?」
鞠の質問に葵は言葉を詰まらせたので、続きはアキラが言った。
「鞠、葵さんが言いたいのはこういうことです。あなたの母の仇である久遠に頼って大丈夫なのか?」
「あ、アキラ様!」
「葵さん、鞠には遠まわしに言う必要はありません。むしろ、しっかり答えを聞くべくこちらもしっかり隠すことなく聞くことが大切です」
その言葉に、彼女の幼馴染である葵は何も言えなくなる。聞かれた鞠はというと、
「大丈夫なの!母様は戦で負けたの。それは久遠が勝てるよう知勇の限り戦いそして勝ったの。だから、鞠は久遠を恨んでないし、駿府屋形を乗っ取った信虎おばさんの事も恨んでないの。だって、鞠が弱かったから!でも、絶対に駿府屋形を取り戻してみせるの!そのために久遠のところにお世話になるの!」
自分の大きな思いと覚悟を持った言葉でアキラに返した。その言葉に葵は目を輝かせた。
「鞠様・・・すばらしい心です!この葵、とても感動しました!」
「・・・・・・」
葵は素直に感動した。アキラの方は
『この子は本当にすごい。自分の無力や今の立場をすべて理解してなお、負けを受け入れて前を向いている。悔しいが、かつての私では絶対にできません。狂に捨てられた。そう思った頃の私では・・・だけど、鞠は母を殺した久遠を素直に認め、自分の全てをかけて頼もうとしている。これほどの器と精神力の強さ。私は素直に負けを認めるしかない』
鞠のこの言葉に自分自身の過去を照らしあわせていた。そして、鞠の心の持ち方に素直に感服した。
「鞠、駿府を必ず取り戻しましょうね」
「鞠様!その時は必ずこの葵もお力になります!」
「うん!アキラ、葵ちゃんありがとうなの!」
嬉しそうにする鞠を横目に、葵は真剣な顔でアキラに向いた。
「アキラ様。鞠様の幼なじみであり、よき友として鞠様の事をお願いいたします」
「・・・ええ。私の人生をずっと共にしたこの二本の刀に誓って」
この両刀を出す。それはアキラの本気の証明であった。
「さて。話も終わりましたし、美濃に戻りましょう。葵さん先導は任せてください。さあ、帰りましょうか!」
そして、松平勢も引き連れて美濃に向けて出発した。
アキラ、ついに松平元康と会いました!そりゃ、自分の世界の家康があれじゃあ現実を見失うのは当然です。原作での鞠はマジのマジで素晴らしいと思います。うん!絶対に幸せにしよう!