ついに金ヶ崎の退き口が始まります。アキラの苦渋の話です。
とある森の中にて、ある武将が大将に報告した。
「御大将~。織田が敦賀と手筒山を落としたって情報がきたっす~」
「へ~、早いわね」
「何でも鬼がぱっと城から逃げたそうです」
「逃げる?あいつらが?そんな考えを持ってなさそうなあいつらが?」
「どういうことっすかね?」
「・・・調教師ね。そういう指揮をしていたということでしょう」
「調教師すか?」
「そう、それで織田の他には誰がいるの?」
「旗を見る限り、浅井に松平・・・二つ引き両の旗もあったらしいっす」
「公方様もね~、今は鬼とその連合の戦いを見物させてもらいましょう」
「その二つ引き両の旗の隣に、何やら面白そうな旗もあったって話っす」
「面白そうな旗?何よ」
「旗の真ん中に努力と友情って書かれていて、その真ん中に打つあう刀が描かれている旗っす。柘榴的には好感がもてる旗っす!」
「初めてね、そんな旗・・・多分例の男の旗ね。ふふふ、確かに面白いわね。いったいどういう狙いがあってそういう旗を作ったのか」
大将はニヤリと笑って、その戦いを静観することにした。
その森の別のところでは、詩を読み上げる一人の男がいたが、周囲に誰もいないので気づくことはなかった・・・。
越後の最後の戦い。一乗谷の戦いが始まった。
「ヒャッハー!!てめえら!死ぬ覚悟はあるか!( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \。ま、答えは聞かないがな!」
「おら!気合入れて殺されにこんかい!( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \。森一家共!敵味方関係ねえ!全員血祭にあげろ!」
「三河の勇者共よ!日の本を悪に染め、我が覇道を邪魔する鬼共の殺しつくすのだ!」
「三河衆!みんないくですよ!死ぬ覚悟はいいですね!」
「江北の皆!滾っている~!さあ、森と松平に負けないわよ~!全軍突撃~!」
森一家の相変わらずと松平の暗黒面と浅井のファンクラブ的なノリで連合の先鋒は鬼が押されている。というか、森一家に恐れて押されていると言った方がいい。
「押してますね」
「ああ・・・エーリカ、お前はこの戦いに何を望む?」
「望みですか?鬼を倒して、アキラ様とずっと一緒にいたい・・・それだけです」
「そうか。(一葉と会った時は何やら裏があるような一面が見えたが、今は違う。あやつが、誑して変えたのか?)」
まっすぐな思いをまっすぐな瞳で答えたエーリカに、少しだけ疑いを持っていた久遠は気のせいという形で受け止めた。
『私はもう決めた。だから、あの者が襲い掛かってきても・・・あの者?どういうこと?・・・まさか、私の一部消えている記憶の中にいる人物なの?そいつが私とアキラ様を離そうとした者・・・だめ、どんなに頑張っても顔も名前も思い出せない。でも、誰かいることだけは分かった』
エーリカは自身の消された記憶の中を必死に思い出そうとしたができなかった。
アキラはというと、今は隊を三か所に別れていた。射線を三方向から交差する一点集中射撃で鬼達を倒すという考えを出し、道の真ん中に足利衆、右に自分とひよと詩乃と鞠、左に雫と梅ところで配置して待機だった。
「ご主人様、ただいま戻りました」
そこに周囲を索敵していた小波が戻ってきた。
「よかった。ちゃんと戻ってきましたね」
「あ、はい・・・」
顔を赤らめるがすぐに報告に戻った。
「いない・・・ですか?」
「はい、この周囲一里は鬼の気配も姿もありませんでした」
「しかし、油断は禁物です。ここは敵地、敵の手の中にいるようなものです・・・いきなり出てくることも考えられます」
「そうですね。今は「!!」、どうしました小波」
小波の顔が突然険しくなった。
「先鋒の森一家の様子を見ていた伊賀衆の繋ぎが突然途絶えました」
「途絶えた?それはどうい「説明いいです。今は集まることを優先します!」」
詩乃の質問を遮って、隊の皆に命令を出した。
「わ、分かりました!」
「わかったの!」
「かしこまりました!」
『少なくとも、予想外の事態がこれから起こるとみていい。始まりましたね』
アキラは、始まったと感じ皆と共に足利衆のところに行った。
真ん中にいる足利衆と合流。すぐに事情を説明した。
「お主、この書状を本陣に届けろ!」
「は!」
一葉からもらった書状を一人の兵が受け取り、すぐに馬で走り去っていった。
「あの書状は?」
「予想外が起こった時にどうやって久遠を逃がすか、話し合ったじゃろう。その逃亡経路を書いた書状じゃ」
一葉の手の速さに感謝した。
「・・・ありがとうございます」
「礼は後じゃ。今は「来るの!」、さすが鞠じゃな。余も分かったぞ」
「は、それがしも」
「ま、まさか!急いで左にいるアキラ隊の皆を!「遅い!くるぞ!」く!」
嫌な気配に気づいたアキラは刀を抜いた。一葉・鞠・幽も得物を抜いている。
「そ、そんな!お気を付けください!敵は足元!地中から来ます!」
小波の言葉に答えるかのように鬼が地を割って現れた。
『『『『『ぐるおおおお、ごごごごご』』』』』
いきなりの出現に全員驚いた。アキラも地中から出たことに驚いたが、意識より先に体が動いていた。長年の戦いの記憶が、意識を止めてもなお体を動かした。
「皆!今は生き残ることを考えろ!」
襲い掛かってくる鬼達の前に躍り出て、一鬼一振りで斬っていった。
「っは!そうじゃ!皆の者!体制を取り直すのじゃ!」
「そうです!皆さん、アキラ様の言葉を忘れないでください!」
その言葉とは、隊を分ける前に言った言葉だった。
『あなた達はアキラ隊・・・私の隊の人間です。その隊長である私からの命令は一つ・・・必ず生きて私の下に戻ってきてください。そして、これは私とあなた達の誓いでもあります。いいですね!』
頭を下げてまで皆にそう言った。
「そうだ!お頭が俺達に生きろと言った!」
「なら、それに答えるのが俺達だ!」
「やってやるぜ~~!」
気合が入り、襲ってくる鬼達を迎撃する兵達。
「兵に負けておれん!幽、行くぞ!」
「ふふ、行かせてもらいましょう」
二人もまた鬼達の前に出てどんどん斬っていった。
「退却します。向こうの隊にも「いえ、見捨てます!」・・・そうですか」
まだ合流していない左のアキラ隊に伝令を出そうとしたが、詩乃が見捨てる選択を出した。
「今は生き残ることが第一です!そのためにも・・・あなたが「分かりました・・・だけど、悲しむのは全てが終わってからです」・・・はい!」
涙を出しながら、決断した詩乃の苦渋の選択。彼女の顔を見たからこそ反対できなかった。
「よし!今は左の事を考えるな!必ず、合流できる。そう信じるんだ!。今はこの窮地を脱することだけ考えろ!」
「「「「「はい!」」」」」
いつものしゃべり方ではなくなった。つまり、アキラも精神的にそれだけ追い詰められていた。
「烏!雀!血路を開くぞ!撃て!」
「・・・」「絶対に開きます!とお姉ちゃんも雀も言ってます!」
八咫烏隊の射撃により、鬼達の動きが止まった。
「あ、あれ?なんか鬼達、おかしくない?」
ひよの言葉の通りだった。
「アキラ。刀が光っているの」
「本当です・・・鬼達がこの刀を見ている?」
そう、鬼は攻撃をやめて、アキラの持つ二本の刀をじっと見ていた。
『そういえば二条館で三好の鬼がこの刀に引き寄せられる。と言ってましたね。それは今がチャンス!』
「いきますよ・・・夢氷雹天!」
アキラのこの言葉に空気中から雹があらわれ、動きを止めている鬼達に命中した。
『『『『ぐぐ、ごごごごご!』』』』
そして、その鬼が凍り付き粉々になって消えていった。
「退路が開かれた!皆のもの、生きるための道を進むぞ!」
一葉の言葉に生きている兵はその道を走り出した。
「・・・すいません。あなた方を連れていけなくて」
「いいんです・・・お頭、これからも生きてください」
「あっしらは嬉しかったです。お頭の隊になれて」
「こんな楽しい部隊はほかにないですからね・・・ありがとうございました」
だけど、全員が無事なはずなかった。手遅れの一撃を食らった兵は置いていかなくてはならなかった。
「私は、生涯あなた達の事は忘れません!」
刀を収め、血が出そうなくらい手を握り締めてその場を去るしかなかった。
アキラ達は退却した・・・その肩に悔しさ・辛さ、そして悲しさをのせて。
「あの兵達は私に生きてくれと言った。この隊に入れて嬉しかったと言った。ならば、その兵の思いを答えるのが隊長としての役目!絶対に・・・絶対に生き残ってやります!」
「そうです・・・それこそ、私の愛したお方です」
「そうじゃ、それでこそ余の愛した主様じゃ」
「うん!鞠の大好きなアキラなの!」
「生きましょう!皆の為にも!」
「ご主人様!私も皆さんと共に進みます!」
アキラの言葉に答えるように、皆が笑顔を取り戻した。
「!ご主人様本陣を見守っていた手のものから連絡が入りました!」
その時、句伝無量を受け取った小波が報告した。
「それで、久遠は?他の者達はどうです!」
「久遠様は松永弾正小弼が先陣をもって、敦賀を抜けているそうです!結菜様や浅井様、そして壬月様に麦穂様、三若の皆さんと退却しております!書状通りに朽木谷に向かっているそうです!」
その言葉を聞き心でほっとしたアキラ。だが、報告の小波は暗い表情だった。
「ですが、隊の前方にいた松平衆は行方知れず・・・あと、森一家も」
「小波、ありがとうございます。葵なら綾那に歌夜がいるので、大丈夫ですよ。あの二人が絶対に彼女を守っています」
「・・・はい!」
力強く返事をしたが、顔は暗かった。
「よし!久遠が無事と分かったなら、後は私達です!必ず美濃に戻ります!」
「「「「はい!」」」」
「それなら、余が殿をしよう」
「は!それがしも致します」
「・・・お願いします」
アキラの言葉に皆が心を一つにして、再び撤退を開始した。
『後は私達が生きて戻る・・・だが、悔しいです。守れなかった・・・助けられなかった。でも、あの兵達の望みを叶えるためにも、私は前を進みます。あの兵達が命を懸けて開いた道を・・・』
アキラにとって悔しく、痛い撤退となった。
アキラ、悔しさを持ち前を進む。
次回は逃亡途中です!