クビラが出ました。彼との話と綾那と鞠の悩みの話です。真面目要素が多いですので、今回は面白いところはあまりないかと・・・。
クビラとの再会後、アキラ達はクビラと少女が住んでいる家にお邪魔させてもらった。少女と綾那と鞠は二人の動揺に未だ疑問に思っている。
「お父さん、どうしたんだろう?」
「アキラ様もです。何かすごくびっくりしていました!」
「うん・・・でも、複雑そうな顔もしていたの」
「でも、本当に蹴鞠が上手ね・・・私も練習しようかしら?」
三人は家の庭で、少女の母親と蹴鞠をして遊んでいた。
「壬生のいたころに比べたら、そこまで立派とは言えませんが・・・あの子が楽しそうにしてくれるなら」
「・・・相変わらずみたいですね」
「ふふ、お互い様でしょう」
「そうですね」
二人はお茶を飲みながら、今までのお互いの事を話していた。そして、彼にとって忘れられないあの少女の話になった。
「それで、あの子・・・はどうしてましたか?」
「私が知っている範囲でよろしければ・・・あの病は私がまだいた頃には既に完治できる薬もできていて、それを飲んだはずですので死ぬ心配はありません。身体もそれなりに成長し友達も増えて楽しそうでしたよ・・・庵樹の弟の庵曽新という男と仲が良かったですね。先の話ですが、仮に夫婦になれても幸せにしてくれるでしょう。見た目はヤンキーっぽいですけど、相手を大切に思う気持ちはしっかり持っています。それに同じ壬生一族ですし、幸せな時間は長く続くでしょう」
「なるほど・・・よかった。本当に・・・よかった」
アキラからの説明に心からほっとして、頬に一筋の水滴を流して嬉しそうな顔になったクビラ。
「あなたが大丈夫というその男なら杏樹・・・いえアンテラを幸せにしてくれるでしょう」
「そこまで信用しないでほしいものですが」
「・・・あなたの方は結構変わりましたね。見た目は少し成長したように見えますが、あの時より優しさが大きくなったというか・・・まるであの頃の私のように、大切な人のために頑張っているみたいな」
「・・・まあ、否定はしません」
ぷいと横を向き、少し照れていた。
「お父さ~~ん!お父さんもやろうよ~!」
「あなた~、ほら、三人でやりましょうよ!」
「ふふふ、呼んでいますよ」
「さて、それなら行きますか」
笑顔のクビラも庭の方に行き、五人で蹴鞠を始めた。その光景をみるアキラ。
『まさか、クビラがこの世界にいるとは・・・私や庵樹達のように村正のあれを使ってきたのではなく、彼は死んでからここに来たということになる。もしや、あの世界で死んだ他の者もこの世界に来ているのでしょうか?』
そんなことを考えているところに綾那がやってきた。
「アキラ様・・・あの、お聞きしたいことがあります」
「おや?あなたは蹴鞠をしなくていいのですか?」
「五人もいたら、お庭が狭くなっちゃって蹴鞠ができなくなっちゃうのですよ」
「なるほど・・・珍しいですね。真剣な顔で聞いてくるなんて」
そう、綾那はいつもの明るい顔を見せず真剣な顔だった。
「あの・・・あの子が無事だったのはよかったです。でも、もし本当に死んでいたら、どうなっていたですか?」
「・・・あの夫婦に死体を渡して終わり。ですね」
「しかも、鞠様も言っていたです。まだ、ああいった奴はたくさんいると。そいつらを束ねている奴をどうにかしないといけないと・・・それまで我慢しないとダメなのですか?」
仇討ちをして当たり前な考えを持っていた綾那だから、鞠の言葉も理解は出来ても納得は出来なかったのだろう。
「ええ、今もこうしている間に自分の気分次第で斬ったり、理不尽な理由で殺しているあのような奴らはいるでしょう。でも、無能な上を何とかしないとあのような連中は増え続けます。その為にも私達が美空に春日山城を取り返せるよう力を貸すのです。美空だってこのような連中は作りたくないと思っているはずです。でも、その為には目の前の事を解決するだけじゃダメなのです・・・その根本を無くさないと、あの子のあの笑顔をいつも出せるような平和な日常は来ません」
アキラが顔を向けて蹴鞠をクビラと母親と鞠の四人で楽しそうにする少女を見た。綾那もまたその子を見た。
「分かったです。綾那、頑張るです!えいえいおー!」
どうやら、納得できたようでいつもの笑顔を出す綾那に戻った。
楽しい時間もあっという間に過ぎ、とりあえず旅籠に戻ることにした。
「ずいぶんと話し込みましたね」
「ええ・・・それにしても、あなたがまさか嫁を持つとは思いませんでしたよ。しかも、一人ではなく際限なく増やし続けているとは」
言い返せないのが、悔しいアキラだった。
「鞠はアキラのお嫁さんになれてよかったの!」
「そう言われるのを聞いていると・・・綾那もなった方がいいですか?」
無言で返した。さすがに言えない。勘弁してくださいとは。
「お姉ちゃん!また遊ぼう!(^O^)」
「うん!お父さんの言う事ちゃんと守ったらね!」
「は~~い!」
「それじゃあ、そろそろご飯にしましょうね」
「そうですね。では、頑張ってください」
「ええ、クビラ。あなたも・・・今度こそ守ってあげてください」
お互い手を握り、頷きあった。自分達の信念、かつては刀で語り合った二人が今回は握手で語り合った。
そして、旅籠に戻ってきて食事も終わりすぐに休んだ。そんな中アキラは起きている気配を感じてそっちに意識を向けた。
「鞠?どうしました?まだ寝ないのですか?」
「あ、アキラ・・・」
鞠が寝ないで、窓から月を見ていた。
「悩み事ですか?」
「・・・うん。あの子が無事で、本当に良かったけど・・・ずっと今まで知らなかった。あんなひどいことをする人がたくさんいるなんて」
「そうですね。小波の報告でも理不尽な無礼討ちで三人死んだらしいですからね」
「正しいことをしている人がどうして正しくない人に殺されるの?そう思って・・・そして」
言葉を区切って、そして最後にやっと本当に思っている悩みを打ち明けた。
「鞠は駿府を何とかしようと頑張ったのに、正しいことをしたと思ったのに、どうして皆・・・離れていっちゃったんだろうって。間違ったことをしちゃったのかなってそう思うようになったの」
辛そうな笑顔でそれをアキラに聞いた。
『・・・それはなかなか理解できないでしょうね。人は情より利で動くものが大半。駿府を乗っ取った武田信虎に多めの利をもらったからこそ、そっちに移動したのがおおよそでしょうし』
アキラにとってもなかなか答えにくいことだった。ずばっと言いたいが、それでもおそらく綾那のように理解できても納得できないだろう。納得できる物言いをしなければおそらくまだ悩み続けるだろうと考えたアキラは何とか見つけた言葉で答えた。
「鞠、あなたは間違ったことはしていません。そう、決して・・・」
「でも、鞠の傍にいた人は皆・・・」
口をふさいで、アキラは言葉を続けた。
「人々の正しい間違いの判断の基準何て曖昧なのです。あなたは必死になって駿府の為に、亡き母の為に頑張った・・・自分が精いっぱいやったことなのです。あなたは駿府を取り戻すという信念を持っている。その信念を持ち、立て直そうという一からやり直すことをやろうとしている。そんな大きな信念を持った鞠が、まっすぐに頑張っているのです。あなたの背中を見ていた私が・・・そして、皆があなたのやったことは間違っていないと言います」
「皆が・・・鞠を見て」
「ええ。アキラ隊の皆に久遠や一葉に葵も・・・皆あなたを見ています」
アキラが考えた言葉は鞠がアキラの背中を支えるように、皆が鞠の背中を支えていると感じさせるための言葉だった。綾那のように細かく言わなくても、鞠はさりげない一言でそれがどれほど大きな意味を持つのか理解する。まず間違っていないことを伝え、その後に仲間達も鞠のやったことは間違ってないと理解させる。それが、アキラの精いっぱいの慰めだった。
効果は抜群だったのか、すっきりした笑顔に戻った。
「ありがとうなの!アキラ、ずっと不安だったけどすっごくすっきりしたの!」
「そうですか・・・それはよかったです」
「・・・ねえ、一緒に寝ていい?」
「・・・いいですよ。存分に甘えてください」
うん!と今までで一番の心からの笑顔を出して、アキラと一緒に寝た。
そして、次の日の芸では・・・
「・・・なんとまあ」
「いよ!お猿さん!」
「かわいい~、でもすご~~い」
「これほどの槍の使い手は滅多にいない・・・もしや」
アキラが呆然としながら見ている先には槍の演武をする綾那・・・やはり猿の着ぐるみを着て。
「綾那すご~い。今までで一番かも」
「そうですね・・・鞠リン、負けていられませんよ」
「うん!鞠も頑張るの!」
その隣で鞠が蹴鞠演武を始めると、更に歓声は高くなり大喜びだった。
「お姫様~~!」
「本当にそう見えるよな!」
「うん、あの子になら踏まれたい!」
「お前・・・そんな目で見ていたのか」
何やら暴走しかけているのもいるが、見事に繁盛していた。
「お姉ちゃん~~、かわいい~~!」
「ええ、本当に・・・娘にしたいわ」
「あの頃を思い出します・・・いいものを見せてくれてありがとう」
クビラ親子もそれを見ていた。彼の頬には一筋の涙があった。
そして、演武が終わり旅籠に戻った。
「それにしても、アキラ様も太っ腹ですね!」
「うん!でもいいことだと思うの!」
「いいのですよ・・・平等な取引ですので」
アキラが一体なのをしたのか?それは今回の芸でもらったおひねりの半分をクビラの親子にあげたのだ。もちろん、彼は断っていたが・・・。
『お茶を飲ませてもらったお代ですよ』
と言って無理矢理納得させたのだ。こっそりクビラの耳元で「あの子のために使ってください」と呟いた。これがクビラがおひねりをもらうことにした最大の理由だった。
「それにしても・・・皆やはり不安でしたね」
「うん、早くいなくなった方がいいって言っていたの」
「美空様の頃に戻ってほしいという声も多かったです!」
「はい・・・私も変装をして情報を聞いていたのですが。美空様に早く春日山城に戻ってほしいという話が聞かれました」
小波も含めた四人で今回得られた情報を整理した。街の皆は美空に戻ってほしいことと、ころと朱雀からの情報で人望が全くない無能な晴景に謀反ができたのか?それを成功させたのは長尾政景という切れ者がいたから。という話をして、明日には引き上げることを決めていたので、最後に残り半分のおひねりをこの街で使い切ろうと思っていた時だった。
「すいません!お頭!しくじっちゃいました!」
「もう!だから、抑えなさいと言ったのに!」
ころと朱雀が旅籠に走りこんできた。焦っているところからすると、素性はともかく失敗したみたいだ。その証拠に呼び子の笛の音が聞こえてきた。
「仕方ありません。逃げますよ!」
「「はい!」」
「うん!」
明日には出る予定だったので、その準備は終わっていた。だから荷物だけを持って旅籠を飛び出した。アキラ達を追いかけてくる連中の中に、一人見覚えのある男がいた。そう、幻とはいえ蹴鞠を上げた少女を斬ったあの男だ。
「・・・先にいって。殿は鞠がやるの」
「・・・ええ、待ってますからね」
「鞠様!待っていますからね!」
鞠を置いて、皆そのまま走っていった。
「あの子は無事だった・・・でも、許せないの!あなたみたいな人達が何の罪もない人たちを好き勝手に殺すことを!これは、その人達の無念と苦しみを込めた鞠・・・ううん、私からの怒りの一撃なの!どれだけ辛い思いをしたのか、どれだけ苦しい最期を迎えたのか・・・自分で味わうといいの!随波斎流!疾風!烈風!砕雷矢~!」
隊のいる神社で待つアキラ。隣には朱雀ところ、アキラの膝には綾那が我慢できずに眠っている。
「アキラ様・・・探しに行かないのですか?」
「行く気はありません。待つ、と約束をしたから待つだけです」
「お頭・・・本当は探したいんじゃ」
アキラは首を横に振った。
「いいえ。それは鞠の信念に傷をつけます。自分から殿をかって出たのです。その思いを傷つけるわけにはいきません」
「だから、小波さんに頼んだんですね」
「今回の仕事で私達の存在を知られてはいけません。向こうは美空の少数の兵が潜入していたと思っている程度でしょう・・・今は待つのみです」
「・・・分かりました。私達もここで待っていいですか?」
頷いて、ただひたすらに三人は待った。そして、二人も疲れていたのか眠りについてしまい、朝方になりかけた時に・・・
「ただいま・・・なの」
小波が鞠を連れて戻ってきた。
「おかえりなさい・・・終わりましたか?」
「うん!絶対に美空を春日山城に帰して、あの街を平和にするように頼むの!」
「そうですね・・・小波もありがとう。今日は二人ともゆっくり休みなさい」
「・・・あの、自分はまだ大丈夫ですが」
「小波、夫の私に心配させる気なのですか?」
「わ、分かりました///」
「小波!一緒に寝よう!」
小波の手を握って神社に入っていった鞠。
「一安心ですね・・・越後が戻ったらもう一度クビラのところに行きましょうか。心配はしてませんが・・・あの子と鞠のためにね」
やっと落ち着けたおかげで、眠気が一気に強くなったのでアキラも神社に入って眠りについた。
春日山城のある部屋で
「うさ様。春日山の城下街で騒ぎがあったそうです」
「ふむ、そう言えば二人ほど城で働きたいと入ったものがいたな。なるほど、そやつらの仲間か」
「何が目的だったのでしょう?この荒れている春日山城に」
「・・・おそらくあのバカ殿だろう」
「美空様が?でも」
「ああ、正面からぶつかる主義のあのバカ殿が潜入みたいなことをする。あやつらしくない事じゃ・・・おそらく背後に誰かいるな」
「誰か?それはいったい・・・」
「さあ?それはわからん。でも・・・越前に行って戻ってきたところから考えると」
「あの?うさ様?」
「お主は空様と愛菜様の護衛を頼む。わしは政景様から見張られているから身動きが中々とれん」
「は!」
そして、しずかになった春日山の城下街にて
「お~~い、そこにいたのか!」
「もう~~、いたのか?じゃないよ、そっちが先にいなくなったんじゃない!」
「ははは、すまんすまん・・・それで、どうだった?」
「ええ。酷いものです・・・こっそり見ていただけでも無礼討ちが三件ありました」
「なるほど・・・無能なお姉さんをもって妹さんは大変だね」
「全くです」
「それで、気になっていたあの演武の人達はどうだった?」
「すごかったです。特に槍を持った少女はすごい槍さばきでした・・・おそらくこちらの陣営で勝てる人はいないでしょう」
「ほう~~、まさかその言葉が出るとは」
「ただ、蹴鞠をしていた少女が気になります。あの方・・・どこかで見たことがあるような」
「私は城の方に専念していたから知らなかったけど。そんなに気になるなら調べてみたらどうだい?」
「ええ。そうします」
「では、引き続き調査と行こうか・・・越後の龍がどう動くのか、そして、田楽狭間の天人。一体どこにいるのか・・・ね」
以上、記念すべき五十振り目でした!早いものでもうそこまで書いていたのですね・・・
二人の少女の悩み解決となりました。
200件特別小説書きたいと思います!・・・第二回王様ゲーム開催だ!