目の前が暗い、紅い一閃に視界を斬り裂かれ恐らく俺は死んだのだろう、身体は動かせず音も一切聴こえない。
しかし死ぬにしてはあっさりすぎる感が否めない、気になった場所に興味本意で侵入して初対面の少女に襲われ死亡とか体裁的につらい。
「壊れちゃった…期待したけど結局少し頑丈な人形だったわ。」
微かに少女の声が聴こえ始めた。さっきまでは何一つ音が聴こえなかったが少女の声に続いて炎の燃え盛る音も聴こえてきた。
同時に身体に違和感を覚える、手と足の感覚が徐々に伸びていく味わった事の無い感覚。
「んあ…」
変な声を漏らしながら目を開ける、やたら周りの炎が熱いなと思いつつ変な感覚をしている手に目を追いやる。
「……え?」
腕の先から炎が噴出し腕の形を造っていく。
腕だけでは無い、手足の失った部分を炎を固めて再生させているかのように炎が新たな身体を造り出していく。
「あはは!すごいすごい!火がくっついて再生するなんて初めて見たわ!」
目の前の少女は怯えもせずに珍しい物を見た子供の様に無邪気に喜んでらっしゃるが俺からすれば不可解且つ気持ち悪くて喜ばしくない。
「ほんとに治りやがった・・気味悪すぎだぞこれ・・」
腕と足の再生が終わり、斬り裂かれていたであろう腹も何事も無かったと言うばかりに傷が無い。
「でもね、コンティニューさせて上げるのは3回までだよ?」
俺が身体の異常に戸惑う間さえ与えないと言わんばかりに少女は再度レーヴァテインを豪快に振る、狙いは精密では無いがそれを単純な破壊力と攻撃範囲で補っているようだ。
咄嗟に近くに落ちていた剣を即座に拾って少女の振るうレーヴァテインごと少女を弾き飛ばした。
「「えっ!?」」
少女と共に俺も素っ頓狂な声をあげてしまう。俺がレーヴァテインに裂かれる前に彼女のレーヴァテインを受けた時には弾き返すことなど出来ずに埃の様に俺が吹き飛ばされてしまったくらいだ。
「お、おい大丈夫か?怪我とか無いよな?」
予想とは裏腹に豪快に壁へ吹き飛ばしてしまった。幸い、炎が無い所に吹き飛んだから良かったが、色々危険な少女とはいえ女の子を怪我させてしまうのは良くない。
「痛たた…凄いね、やり返されたのなんて初めてよ。」
「ああ、こりゃどうも。怪我は無さそうだな、良かった良かった。」
「レーヴァで斬っても平気な貴方ならもっと遊べそうねっ!」
「うわっ!?待て!この辺で終わりにしとこう、ほらこれ以上やると本当に怪我するぞ?な?」
レーヴァテインを再び持ち直し、少女は何故か優しく微笑う。
「大丈夫、だって私吸血鬼だし。傷なんていくらでも治っちゃうのよ。」
「ですよねえ…そうじゃないかと思ってたよ羽生えてるし弾幕放ってるしレミリアと雰囲気似てるし。」
「………お姉様と私が似てる?私があんなやつと?違う…そんなことない!!」
【そこまでよ、フラン】
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ミラよ、此処の者は少々肌を露わにし過ぎでは…」
「そう?皆こんなものよ?」
胸元の大きく空いた上着に、生地の薄い布をパレオの様に巻いて足をはだけさせている。
今は夏、ジリジリと熱気が地面から伝わって開放感のある服を着てないと汗が止まらないしギッチギチの正装とか熱中症まっしぐらでしょ。
「てか、アンタの上半身素っ裸の方が目立つわよ。いくら暑いからって街中を裸で歩く奴はいないって、ほらまたジロジロ見られてるわよ。」
行く人々の殆どが神将を奇怪な目で見ている、上半身は裸だが下半身は黒い鎧を身に着けており
「確かに視線が煩わしいな、では店に着くまでは霊体化しておくとしよう。」
「うわ、幽霊かあいつ…いや、英霊だから一応そういう類なのかしら。」
「「こんのガキ、どこ目え付けてやがんだゴラァ!!!」」
「うわぁ・・」
「子供が野盗に襲われているな。・・まさか助ける気か?」
「これでも多少の護身魔術は心得ているのよ、心配要らないわ。」
「ここで待っていろ、直ぐ片を付けてくる。」
「ちょ!?・・まあ、サーヴァントだし大丈夫よね。」
「ご、ごめんなさい・・」
「あ?テメエから当たってきておいて「ごめんなさい」の一言だけ?誠意が足りねえんじゃねえの?」
「おいおい怖がらせんなよ。適当にヤってそこらに放り捨てておきゃいいだろう?それかはロリコン野郎にでも高値付けて売っぱらえば二度美味しい。」
「ならば貴様等を冥界に売り捌くとしよう。」
「なんだテメ…」
一瞬の事だった、女の子を襲おうとしていた男が全員首を失い、力なく残された身体が倒れていった。
「安心せい、苦しまずして終わらせるのが私なりの美だ。」
「な、なんだよテメエ!?どこから湧いてきやがった!?」
「それは貴様等が知らずとも良い事だ、さあ早く逃げるといい。」
「あ、ありがとうございます!!」
「や、やべえぞあいつ…首切りやがった・・」
「お、俺は逃げるぞ!死にたくねえ!!」
「無駄だ、私を前にして生き延びようなど許されぬ。」
逃げていく男達の首が次々に斬り落とされていく、悲鳴すら出させずただ殺していく戦のプロとも見える
「数にして106か、野盗の集まりで良くこれだけ居たものだな。」
「へえ、すごい…あんだけいたのにもう終わらせちゃったの…」
「数が多いだけの野盗に遅れを取ってはサーヴァントの面汚しだ。初戦はサーヴァントと願ったものだが致し方ないな。さて時間をかけてしまった、夜が更ける前に私の着物をだな。」
「そ、そうだったわね…貴方なかなか容赦ないわね。」
「人であれ獣であれ敵と見做した者に容赦も慈悲も必要無いだろうに、狩り時を誤ればこちらが討たれる。ミラは戦には慣れていない故に敵に対する情は捨てろ、でなければその首は直ぐにでも飛ぶぞ、ん?」
「うっ…何やってんのよあんた…?趣味悪いわよ?」
彼が殺した野盗の首や胴体が散乱している。
なんとか堪えてはいるが人が目の前で無惨に死んでいるのは控えめに言って心地良くない、そして殺した当の本人は何故か殺した野盗の目を開けてジロジロ見つめている。
「いや、漠然とだがこの地の空気というべきか、覚えがあってな。」
「覚えがあって何で死体の首を弄ってるのよ…」
「思い違いか、しかしこの目は奴の所業に侵された目をしているな。」
「あの~、ガーディアンさ~ん?」
「ああ、悪い悪い。ミラよ、聞いておくがこの国はアーラ王国であったな?」
「ええ、それがどうかしたの?」
「恐らく私は以前にもこの地に召喚され、聖杯戦争に参戦していたのだろう、ぼんやりとだが覚えている。そしてこの野盗共の目だ、これはアーラ王国の隣国であるルーマニアにて起きた災厄の巻き込まれた者の目だ。」
「ルーマニアの災厄って、まさか吸血鬼による人間の吸血鬼化だっけ?確か全人類が吸血鬼の眷属になる〜とかいう、あれ止めたの神将だったんだ。」
「ああ、ワラキアの守護者たるヴラドの引き起こしたソレだ。本来吸血鬼では無い彼奴が聖杯の力を借りたのか完全な吸血鬼となり暴走し引き起こしたもの。しかしアレは奴が止めた筈、もう巻き込まれた者は居ないのも確認されていたが…」
「じゃあまたそいつが災厄を起こすつもりで、あんたは止めに行きたいとか?」
「そうだな、死したヴラドが生き返っているかは定かでは無いが、もし生き返っていたとすれば再び人類は危険に晒される。」
「じゃあ聖杯戦争の戦場に行く前にソイツぶっ倒して行きましょう?人間全員が吸血鬼状態とか嫌だし」
「そうだな、その前に着心地の良い服を」
「・・そうだったわね先に服屋行きましょうか。」
お読み頂きありがとうございます~。
次回は8日月曜日に投稿します。