一瞬の事だった。
俺の炎剣が視界を覆い尽くす程の炎を彼女に向かって放出したのだ。
それは自分さえも焼き尽くしてしまいそうな猛烈な炎、それは炎の滝と思わせるほどの激しさと規模。
「あ…っ…つ」
大技を出した反動なのか、俺は燃えている地面に寝転がっている。
熱さは感じない、恐らく感覚が鈍っているんだろう。
周りを見て二人を探す、レミリアとその妹。無傷で止める事など不可能と思っていたから多少の怪我程度で何とかするつもりだった。
でも、記憶に浮かんだあの技は多少で済む程度では無かった。
恐らく怪我だけじゃ済まされない一撃だ、レーヴァテインとの衝突で部屋全体が炎で埋め尽くされている。
「おい…大丈夫かい、妹さん…?」
炎の切れ目に僅かに彼女の姿がある。
俺と同じで立てないのか倒れたままで動いていない。
「はぁはぁ…死にたくないが死ねるくらい辛いぞ…」
足と手に出来る限りの力を入れて何とか立ち上がる、感覚はおかしいままに千鳥足で彼女の元に向かう。
「けほっけほっ!何だったのさっきの…は?」
「実質的に王手だ妹さん。俺がぶっ刺してたら首が落ちてるぞ?」
剣の切っ先を彼女に向けて勝利だけ示しておく、念の為に彼女の右手も開かないように掴んでいる。
「うぐ…」
妹さんも静めて上が騒がしいと思えば、妖精メイドがわんさかバケツを持って集まっている。
「ま、まさかアレ全部で消火するつもりか!?」
ざっと見ても数百以上の妖精が重たそうにバケツを持って流そうとしている……確か吸血鬼って流水が弱点だった気が…
「良いか?俺の身体吹っ飛ばすなよ!?流水浴びる事になるぞ!」
妹さんの身体を抱えて全速力で地上へ戻ろうとした所で、ある存在に気付いた。
「レミリア何処行った?」
「此処に居るわよ…ったくフランの奴、本気で殺しに来たわね…」
レミリアが煤に塗れた服で機嫌悪そうにしながらこっちへ近づいてくる、直後に起こりうる身の危険など一切感じてないご様子だ。
「レミリア上見ろ、上。」
「な!?妖精何してんの!?私達に思いっきり流水浴びせようしてるじゃない!咲夜はどうした!?」
「レミリア、妹抱えて上に飛べるか!?気を失ってるから暴れはしないと思うぞ!」
レミリアに妹さんを渡し、急ぎ俺も地上へと飛ぶ。
妖精メイドが配置されていない場所を見つけ、何とか館1階まで辿り着いた。
「はぁ…散々だった…」
「元はと言えば、あんたが地下室に突っ込むからでしょうに。」
「怖いもの見たさって言うだろ?」
「なら私は怖くないと?」
聞いてくるレミリアをじっと見て1分ほど考えて
「たべちゃうぞーとか言ってみてくれ」
「は?」
「いいから。」
「はぁ・・ぎゃおー!たべちゃうぞー!!」
「ああっ!たまらんちチキショーーー!!!」
「なっ!?いきなり叫ぶんじゃないわよ!」
「怖いぜ・・ああ、怖いよ。こんな幼女に意味深な事言わせてる俺が!」
「それ以上言ったらグングるわよ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あんな怖い離陸初めてよ…死ぬかと思った…」
「いやはや、豪快に行き過ぎたな機体が保てばいいが。」
「幸先不安すぎる…」
もう頭を抱えるしかなかった、まさか旅客ターミナルを破壊して離陸するなんて…あの空港はもう使い物にならないだろうなぁ。
「しかし…あまり面白い物では無いなこれ。」
「へ?」
「離陸こそ良い衝撃があって面白かったが、空に上がった途端暇になったぞ。」
「暇じゃなくて操縦せーーい!?落ちる気満々か!?」
「オートパイロットとかいうのを使っているから問題無いだろう。」
「そういうのは知ってんのね…」
戦国時代ってのはこういう行き当たりばったりな奴が多いのかな?
てゆーか神将の奴、初めて飛行機乗るってのにオートパイロットとかよく知ってたわね…
「ふああぁ〜…」
「眠いのか?」
「まあね、大丈夫よこんくらい。」
「最近寝ていなかっただろう?今の内に寝ておけ。休める時に休んでおかんと体を壊すからな。」
「それもそうね…ちょっと寝てくるわ〜。着いたら起こして。」
︙
︙
︙
「起きろミラ、そろそろ日本だ。」
「んあ…とうとう着いたか〜。」
「さて、飛び降りるぞ準備しろ。」
「……なんて?」
「だから飛び降りると。」
「着陸は?」
「それがだな…離陸の時に車輪を失ったみたいでな…一応不時着という手もあるが。」
「却下、あんたの不時着とか絶対酷い事になるから。」
「なら飛び降りよう、この機体は海に墜落させて処理する。」
「絶対に落とさないわよね?魔術は使えても空飛べるとか人外じみた事出来ないわよ?」
「安心しろ、私はガーディアンのサーヴァントだ。主を守るのが務めだぞ?」
「それもそうね、じゃあよろしく。」
「では、失礼して。」
「ふぁ!?」
神将に押されそのまま空へとダイブする、勿論パラシュートとか何も付けてない生身で。
「爽快なスカイダイビングと行こうじゃないか!!」
「落すなっつったでしょうがあああああああぁぁぁ〜〜!!!」
神将のバカによる恐怖のスカイダイビングで、髪はボッサボサになって墜落寸前でやっと私を掴んで着地した。
「どうだった?私が居なければ絶対に体験出来ないものだったろう?」
「召喚した時に自害させておくべきだったと後悔する体験になったわよ…ねえ、幻想郷だったっけ?当てはあるの?」
「結界で隔離されてるとか言ってたな、と言っても結界になんざあまり詳しくは無いからな…」
「だったら聞き込みでもするしかないわね、遠いけど街が…神将?」
「ん?ああ、すまん。何やら山の上に奇妙な力を感じてな。」
「まさかここにも気色悪いのがいるとか?」
「いや、禍々しい類では無いな。神聖、厳格的な匂いだ。」
「もしかしてそこにあるんじゃない?幻想郷の入り口みたいなのさ。山の上とかそれらしいじゃない。」
「そうだな、早くも戦地突入とは運が良いな!これで他のサーヴァントより有利に取れるというものだ。」
山の登山道を駆け上がるとやがて綺麗に敷かれた石畳が現れ、奥には少し古臭く感じる建物が構えていた。
「こんな閑散とした場所にこの建物って見るからに怪しくない?」
「怪しいというか神社だな、そういやミラの国では神社は無いか。しかしこんな山の上で参拝者など来るものなのか…」
「うだうだ言うより中入りましょ、絶対に何かあるわよ。」
そうして歩みを進め、中の様子を窺いに行く。
お読み頂きありがとうございます~。
次話投稿は7月16日の予定です。