「どうして俺を助けた?」
紅魔館に一時的に住まわせてもらってる代わりに人里への日用品買い出しや里で売られている小説や小物をフランやパチュリーに買っていくといった雑用をしていた時だった。
里の男達と酒に誘われ夜遅くまで飲んでしまい、飛ぶのは危険だと徒歩でフラフラと帰ったのが誤りだった。
黒く深い森の奥、思考が淀みながらも歩いていると周りから獣の唸り声が聞こえ、意識は目覚めた。
見渡せば妖怪妖怪妖怪、群れのご登場だ。空を飛ぼうとしても酔いが回ってるのかうまく飛べない、それどころか炎すらまともに出せないといった致命的状況だ。
これが妖怪の人食いか、と思いつつ覚悟を決めておく。喰われるってのは痛いんだろうなと恐れつつも彼等が逃がす気なぞ皆無だということも悟っている。
一匹の妖怪がこちらへ擦り寄る、やるなら一息にやってくれと祈っていると空から赤い札が妖怪の額へ引っ付き、妖怪は阿鼻叫喚の叫び声を上げ消滅していく。
そして空から一人の女の子がゆったりと降りてきた。
「あんたは・・・?」
その姿を知っている、吸血鬼に加担した際に敵対した人間、郷の守護者。
博麗霊夢ー。
中学生くらいだというのに凛とした強い背中を魅せる彼女は振り向いて
「大丈夫?」
優しげに微笑った。
「あ・・ああ・・」
酔いもそうだが何より彼女の姿に見惚れてしまった、なぜこんな夜更けに?なぜこんな暗く怖い森に?なぜこんな俺の元に?
「まあ、そこでゆったり待ってなさいな。すぐ終わらせるから。」
言って数分、魑魅魍魎の妖怪は博麗の巫女に討たれた。
俺の目には彼女の舞う姿が焼き付いている、蝶の様に舞い蜂の様に刺す、その言葉が相応しいと思える程に。
「あ、あんた。この前敵同士だったろ。なんで俺を助けた?」
「ふふ、アレはもう終わったでしょ?じゃあ敵も何も無いじゃない。私は博麗の巫女、人を護る巫女よ。」
:
:
「博麗の巫女…妖夢?」
「申し訳ありません幽々子様、未熟ながら相手を侮っていました。」
「うーん…仕方無いわねえ。まあ、博麗の巫女だから妖夢だと難しかったわね。」
「負けくたばってたのに私より先にここに居るなんて、足の速さだけは上等なのね。」
「お褒めの言葉ですかね?有難く頂戴しておきましょう。ついでに斬ります。」
「さっき地雷でくたばっておいて強気ね、今度は立ち直れなくなるくらいまで痛めつけるようかしら?」
「あー、霊夢。」
「あん?」
「あっちの如何にもなお嬢様頼む、全滅しかけなんだ。」
「なーる。咲夜は動けそうだけど魔理沙は難しそうね、あんたはともかくとしてあの二人が満身創痍って事は結構危険なやつ?」
「超危険、身体つきも危険。」
危険だよあれは、身体つきに増して近づいた時に香る華やかな桜の匂い?男にとってあれは危険過ぎるって。
「そこは聞いてないわよ…」
「隙あり!!!」
「早っ!?」
声が聞こえた時には少女の持つ白刃の刀が目の前に迫っていた。
その速さに驚いてしまい反応出来ずにいたところを霊夢が大幣で弾き返す。
「ったく!変な事言ってる暇があるなら倒してきなさい!!」
霊夢が言葉を発した直後に霊夢の真横に向けて炎弾を放つ。
霊夢がそれを見ると知らず知らずの内に接近していた蝶型の弾幕を撃ち落とした事を知る。
「霊夢もな。」
「るっさい。」
軽口を叩き合いお互いに相手を見据える、相手は刀を二本持った少女。
小柄な体躯だからこその速さなのだろうか、あのスピードを見た後だからか攻撃を仕掛けてくるタイミングに身構えてしまう。
「・・・・・」
「・・・・・」
彼女の足を無言で見続ける、向こうも俺の動きを気にしているご様子。
息苦しいなと思いつつ、耳に弾幕の炸裂音が響いてきた。
霊夢と幽々子のものだ、激しくやりあってるな…霊夢の奴少しキレてたしな…
などと思っている内に
「現世斬!!」
ずっと見ていた筈の彼女が視界から消えた、認識した後には彼女は俺の背後におり、脇腹からは血が出ていた。
「貴方、思考をずらしたでしょう?丸分かりですよ。」
「へ、へぇ…こりゃ思った以上にお強い方で…」
余所見ならまだしも思考をずらしたのが分かるとか何者だよと思いつつ脇腹を抑える。
霊夢も脇腹から血が出ていたがこれにやられたのか。
「埋まってる誰かさんを掘り起こすのに春を根こそぎ奪ってくのは止めてくれ、寒いし俺が暖房係として永続奉仕しなきゃならなくなるんだ。」
「止めるのは無理ですよ、私は庭師であり幽々子様の従者。主の望みを叶える為ならば季節の一つなぞ幾らでも奪ってみせます。」
「逆に問いますが、貴方は何故戦う?面倒事を任される辛さは理解し得ます。しかしここは冥界、面倒などという理由で立ち入る場所では無い。」
「理由、ねえ…」
「今なら帰り道を案内して差し上げましょう。手遅れにならない内に賢明な判断をおすすめしますよ?」
このまま頷けば何事もなく帰らせてくれるのだろう、暖房として炎を出す必要も無ければ痛みを堪えて戦う事さえ無い。
霊夢は弾幕ごっこであれば幻想郷では一騎当千とも言える凄腕、弾幕ごっこで無くても彼女には絶対の切り札があるらしいし俺が帰ろうとも問題無いのではないか?
「うーむ、やだね。」
「ほう、良いのですか?」
「俺が帰るのはアイツと同時期だ、先には帰れない。下にも倒れた友人と宿主のメイドさんがいるんでね、だから帰れない。」
彼女が霊夢の方を見る、数秒かけて納得したのか俺の方へと向き直す。
「・・・なるほど。これ以上の問い掛けも無粋でしょうし、斬るしかないですね。」
「そういえば貴方には名乗ってませんでしたね。名乗らずしての斬り掛かりは失礼しました、私は魂魄妖夢。」
「礼儀正しいんだな、なら俺も名乗らんと失礼極まりない。神龍 煉、記憶なしの放浪者だ。」
「記憶なしですか、では斬れば戻りますかね?」
「記憶が一生戻らん。」
会話しながら斬り合いを始める、刀と剣が競り合い火花が激しく散る。
小さい女の子だというのに力が中々強い、気を抜けば圧され腹を裂かれるだろう。
切り札であるスペルカードが一枚も無い、剣技においてはど素人の俺でこの娘に勝てるかどうか非常に危うい。
銀の線撃に合わせ、剣を振るう。
それだけで限界、これ以上踏み込むならば一太刀貰う覚悟で無ければ駄目だろう。
「一太刀受けた所で押し切れるかさえ微妙なんだがな…」
剣、刀という物を心得ている彼女に俺の決死の一撃は躱すことなど造作もないのだろう、現に彼女は幾度も決めに入った斬撃を躱しているのだから。
「見え見えですよ、一撃にかける挙動が大き過ぎです。」
「すまんね、俺に剣の心得がありゃ満足の行く斬り合いになるんだろうが。」
彼女の二刀同時の斬り掛かりを必死で受け流す、反撃を試みるも彼女は俺の二手三手を先に行っている。
剣を速くは振れても俺の単純な剣捌きではどうしても劣勢を強いられる。
「そうでしょうかね?貴方は動きに曇りがありますが、迷いは無いと見える。」
「そりゃ過大評価だ、俺は迷いなく誰かを斬り殺した事なんて一度も無い。」
「肘打ちかよ…!げほっ!」
「これで終わりです、冥界の華となりなさい。」
「ば、爆弾!?一体何処から!?」
「霧雨特製マジックボムだ、高くつくぞ。」
「何!?馬鹿な!暫くは立ち上がれない程度には斬ったはず!?」
「魔女に人形貸してもらってな、ほらこの通り。」
「人形、だと!?粋な真似を!!」
「おっと余所見は禁物だぜ?お嬢さん!」
「かはっ!?柄で突くとは…っぐ!」
「もう一発おまけだ持ってきな!!」
彼女は灯籠を三、四つ壊した所で動きを止める、もう立ち上がる事はなく気を失っているようだ。
「サンキュー魔理沙、ナイス援護。」
「煉も良いド突き具合だったさ。」
さり気なく魔理沙とタッチを交す、こういう悪知恵利くとこあるから魔理沙は怖いんだ。
「あら、そっちも終わったのね。」
「全く…霊夢のお陰で服が土まみれじゃない…」
霊夢と咲夜が戻ってくる、咲夜はスカートが土まみれだ。霊夢に対して文句を言い垂らしてるが何やったんだあいつは…
「さあて、これで春の到来か!やっとこさ花見だな!」
「切り替え早いわね、流石年中お花畑。」
「おう?やるか、第二回戦ここではじめるか?」
「嫌よ、魔理沙菌が移る。」
「私はキノコじゃないぞ!?」
「魔理沙=キノコよ、私の中のイメージ像は」
「私になんてイメージ付けてんだよ!?」
「おいおい、ここらで止めておけ。二次災害は御免だ、魔理沙=キノコと思われるのも仕方ないだろう?魔理沙は四六時中キノコ探してるんだから。」
「上等だ煉、咲夜。まとめてかかってこいや、マスパで一層してやる!」
「ほら煉、魔理沙をキレさせない。面倒な事になったじゃない。」
「全力で燃料投下したのは咲夜だと抗議したいな、魔理沙菌が効いたのは明確だぞ。」
「言いたい放題じゃねえか!霊夢!お前はどっちサイドに付くつもりだって、どうした霊夢?」
「盛り上がりのとこ悪いけど終わってないわねあれ。」
【まだよ、最後の一枚。避けきってみなさいな。】
お読み頂きありがとうございます~。
次回は11月7日です。