というのは言い訳で、本編では回収しきれなかったフラグ回収の話です。ひとつだけ戦士がいなかった北の都はどうなったのか。
スノとハッチャンは。そしてあの男は…
サイヤ人編の後になる人造人間編への伏線となりますので、ぜひご覧ください。
***side スノ***
スノはその日も、父の手伝いをするために積もった雪をどかすのにハッチャンと一緒になって雪かきをしていた。
途中から集めた雪で雪だるまを作るのが楽しくなってしまい、ハッチャンに手伝ってもらって巨大な雪だるまがいくつも乱立し始めたが。
そんなときだった。スノは自分の背筋に雪玉が入ってきたときを思わせる寒気を覚えて思わず空を見上げた。
空を飛び交う、鳥ではない生き物の群れ。
大人達の何人かが「魔族だ」と叫んでいるのが聞こえた。
スノは不安になり、隣に立つハッチャンに「家に帰ろう」と話しかけたが、ハッチャンは普段見ないほどに怖い顔をしてさきほどの自分と同じように空を見上げている。
合わせるようにスノも見上げれば、そこには恐竜が無理矢理ひとの形を取ったような姿をした生き物。
さきほど大人達が叫んでいた魔族がいた。
「スノ、家に行くんだ」
どこか突き放すようなハッチャンの声にスノはビクリと震えるが、普段なら優しく慰めてくれるハッチャンは厳しい表情のまま変わらない。
「おやおやぁ?こんな田舎じゃ人もいないかと思ったが、うまそうな娘っ子がいるじゃねえか」
「独り占めはだめだぜ。右足は俺がもらった!」
「じゃあ左足は俺だ!」
下卑た表情を浮かべた魔族がスノに向けて突っ込んでくる。スノは恐怖のあまり動けない。
自分はこのままでは食べられてしまう。そう思ったとき
ガッシッ!
自分の前に立ちはだかったハッチャンが二人の魔族の頭をつかんでその突進を受け止めた。
魔族二人は自分達が反応できないほどの速度で頭を捕まれた事実に驚くも、それをどうにかする前にハッチャンによって足元へ叩きつけられる。
「だあっ!!」
凄まじい勢いで叩きつけられた二人はそれだけで致命的なダメージを負ってしまい、まともに動けなくなる。
「むううううんっ!!」
そしてハッチャンもそんな魔族二人をそのまま放置したりなどしない。
固く握りしめられた拳は鉄槌と化し、振り下ろされた勢いで魔族の頭を粉々に砕くのであった。
スノははじめて見るハッチャンの戦う姿に怯えるが、同時にハッチャンがしたくないことをしているのをなんとなく感じ取った。
だから、スノが次に取った行動は早かった。
「…ハッチャン、ありがとう」
目の前のハッチャンが怖い。そんな思いを押さえつけて、スノは後ろからハッチャンの大きな足に抱きついた。
スノにはハッチャンが動揺したのがわかった。たぶん、一番怖いのはハッチャンなのだと。
嫌われたくない。怖がられたくない。そんな思いが、抱き締めた無機質なハッチャンの体から伝わってくる気がする。
「大丈夫だよハッチャン。あたしはハッチャンのこと怖くなんかないよ。一緒に帰ろう?」
「…スノ、ありがとう」
ハッチャンは笑っていたが、きっと涙を流せたら泣いていただろう。スノには、そんな気がした。
「妙な気配をさせたヤツだな。…貴様人間か?」
だから、再び空から嫌な声が聞こえたとき、スノは本気で怒りそうになった。これ以上、ハッチャンに辛い思いをさせるのかと。
そこにいたのは、ハッチャン以上に大きな体をした魔族だった。体以上に大きな羽根を広げてこちらを見下ろしている。
「スノ、俺は人造人間だ。その上、ひとを傷つけるために作られたのにひとを傷つけられなかった出来損ないだ」
突然いつも以上に饒舌に語りかけるハッチャンに、スノは不安を覚える。まるで、ハッチャンがどこか遠くへ行ってしまいそうな気がしたのだ。
「だけど、スノをはじめに村のみんなはこんな俺に良くしてくれた。寒い村で、俺は暖かさを知ることができた」
「…ハッチャン?」
「俺に搭載されたパワーレーダーによれば、俺ではヤツに勝てん。さよならだ、スノ」
ハッチャンはそう言うと、来ていた服の背中が破けて機械部分が露出する。
次の瞬間には空を飛ぶ魔族の元へ一目散に飛び出し、強烈な体当たりを食らわせる。
「ふん!この程度で俺がどうにかなるとでも思っているのか!!」
しかしハッチャンを受け止めた魔族は余裕の態度を崩さずに、逆に飛び込んできたハッチャンを壊そうと受け止めた腕に力を込めはじめる。
「うおおおおおおおっっっ!!!」
すると、露出した機械部分から緑色のエネルギーが迸り、魔族もろともハッチャンは上空に昇っていく。
「ぬおおっ!?だ、だがこんな程度では…!!」
加速によって負荷された重力に体をきしませながらも、魔族はハッチャンの拘束から逃れようと暴れるが、ハッチャンは己の体が壊されるのにも構わず決して拘束を緩めようとはしない。
そして、高度が十分にあがり、“動力炉の爆発がスノを巻き込まない”ことを計算し終えたハッチャンは、そのスイッチを入れた。
「ぐうぅ!いい加減に離せええ!!」
魔族の目から放たれた光線がハッチャンの首もとを貫く。千切れかけた首を見て魔族はほくそ笑んだが、すでに爆発は止まるはずもなかった。
グゥオオオオオオオオンッッッ!!!
空一面を焦がしながら、ハッチャンの動力炉は大爆発を起こした。
ハッチャンの体を消し飛ばして。
「ハッチャアアアアアアアアアン!!!」
スノの悲痛な声が空に響き渡った。
かつて孤独だった人造人間が見せた覚悟は、確実にひとりの少女を救ったのだった。
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***side ???***
魔族の襲撃。
予定外の出来事だったが、おかげでサンプルには事欠かないほどに魔族の実験体とデータを集めることができた。
そして、あの悟空という男に接触した人造人間8号。今後悟空のデータを取得するために自爆させないでおいてやったというのに、小娘ひとりのためにわしの計画を邪魔するとはな。
…まあよい。幸い首から上は回収することができた。興味深いデータも採取できたことだし、同じ設計コンセプトで開発中の16号にこやつのメモリーチップを搭載させてみるか。他の人造人間が暴走したときに食い止める、対抗措置としての役割を持たせるにはこやつのAIはちょうどいいやもしれん。
さて、以前勧誘した若者の改造措置を進めねば。やることはまだまだ多い。
ふと電子メールを見れば、受信を通知するランプが光っている。
…ふむふむ。おお、ドクター・ウィローめ。ようやくその気になったか。やつの研究が合わされば、わたしの人造人間の研究は一気に進む。
くっくく、それにしても最強の肉体か。いいだろう。わたしが今開発しているコンセプトで最強の人造人間をくれてやる。他の人造人間からデータや動力を吸収してパワーアップするタイプだ。やつも十分に満足できるだろう。まあ、最強からはほど遠いがな。
セルの培養は進んでおらんが、あれに関してはさらなるサンプルが必要となるだろう。できれば強化変身するようなタイプの異星人がどこかにいないものか。
ふむ、無い物ねだりをしてもしょうがないか。やることは多いのだし、目の前の問題から解決していくとしよう。
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***side ヤムチャ***
俺の名はヤムチャ。荒野の一匹狼だ。
人気のない荒野で、時折通りがかる人間から金やカプセルを奪い生活している。
ある日、ひとが飛んでいるのを見た日から、俺の生活は変わった。
いつものように奪ったモノを金に変えようと寄った町で、俺はひとを殺してしまったのだ。
これまで人を殺したことだけはなかった俺の、痛恨のミスだった。
一応理由はある。俺の相棒である妖怪のプーアル。そいつが、人質に取られていたのだ。
殺した相手は兎・人参化(と・にんじんか)といい、正直殺しても誰も悲しまないような悪党だったのだが。
ヤツに妻を人参に変えられ、無惨に食われてしまったという男に無理矢理頼まれる形で俺はヤツと退治することになった。
慇懃無礼にこちらを眺める兎・人参化の顔を見てカッとなった俺は、握手を差し出してきたヤツの腕を腰に下げた剣で切り落とした。
背後に控えた部下の連中が慌てていたが、ここまで来たらプーアルを救うためにも躊躇ってなどいられない。
俺は容赦なくヤツを脳天から真っ二つにすると、プーアルを取り戻して逃げるように町から出ていった。
それからというもの、俺は人殺しとして指名手配されてしまったらしく、町へ行けば警察に追われる毎日。
いつしか疲れはてた俺は、俺を狙って現れた賞金稼ぎどもを殺し、そいつらから奪った金で生活するようになっていた。
場所さえ選ばなければ、鼻つまみ者となった俺にも居場所はあった。プーアルは嫌がっていたが「いつでも俺を見捨てていい」と言ったら意地になって着いてくるようになった。…俺なんかのために尽くすことはないだろうに。
プーアルと出会ったのは、偶然だった。荒野で行商人を待ち構えていた俺は、そこで違法に捕らえられ檻に入れられたプーアルと出会った。
孤児を食い物にする奴隷商人がいるという噂話は聞いていたが、あのときは怒りのあまりに奴等をぼこぼこにしてしまった。
大半の孤児は西の都で警察に引き取られていったが、プーアルだけは身寄りもないといって俺についてきた。
普段からだらしない生活を送っていた俺は、プーアルのおかげで人間的な環境を手に入れられたと言ってもいい。
なにせ、掃除・洗濯・炊事と、まるで新妻のように甲斐甲斐しく働いてくれるのだから。正直プーアルが女の子だったら、とうの昔に結婚を申し込んでいるレベルだ。
そうして俺は、気づけばわずかな期間で裏の世界で名を馳せるようになっていた。
正直この頃の俺は、天狗になっていたのだと思う。並み居る賞金稼ぎらを倒し、実際に独学で身に付けた武術の腕前も以前からは比べ物にならないほどに上がった。
だからだろう。お尋ね者であるにも関わらず、天下一武道会に出ようなどと考えたのは。
予選会場を見渡したとき、自分に敵う実力者が幾人いるものかと思わず笑ってしまったが、ある人物を見て固まった。
そこにいたのは誰であろう、武術の神とまで呼ばれる人物。亀仙人、武天老師と呼ばれるほどの人物であった。
いわく、気配で相手の強さを正確に計る技量の持ち主。
いわく、その奥義は山を吹き飛ばし、月に穴を穿つ。
いわく、彼に勝てるのは伝説に語られるピッコロ大魔王のみ。
無理だ、と思った。自分では、勝てるはずがないと。
だがそれは今の話だ。見ている限り、もっときちんとした修行を積めば、勝てなくもないように思える。
ならばこそ、ここはあえて引き、三年後の戦いで本当の実力を引き出した自分を見せつけるのだ。
そう言って参加を辞退した自分を鼓舞したが、決勝戦で見たのはまさしく次元の違う戦いだった。
動きが追えない。技の仕組みが理解できない。
武天老師と対峙し、互角の勝負をする悟空という選手。
自分などでは及びもつかないくらい、修行を重ねたのであろう。その動きは遥かに洗練されていて、武天老師との試合はまるで互いに舞っているかのようだった。
ここに至って、自分の心は完全に折れてしまった。
だからプーアルに言って、荒野に戻ろうとした。元の生活に戻ろうと。
そんな風に考えたのがいけなかったのか。
それからしばらくして、魔族が世界中を襲う事件が起きた。
そのとき北の都にいた俺は、以前知り合った世界一の殺し屋と偶然にも共闘する形で魔族と戦っていたが、多勢に無勢。徐々に俺は追い詰められていた。
そんなとき、悲劇は起きた。襲ってきた魔族への反応に遅れた俺を庇って、プーアルが致命傷を負ってしまったのだ。
あまりの出来事に覚えていないが、俺はきっと狼狽し、役立たずと化したのであろう。
あっさりと最強の殺し屋は俺を見捨てると、彼がいなくなったことにより俺はあっという間に追い詰められた。
このままここで殺されるのか。せめて、プーアルの仇だけでも討ちたい。
そう考えた俺を、突如として奇妙な集団が救った。
集団を率いる男は老人だった。白い髭を生やしているが、その眼光はあの殺し屋以上に鋭く、裏社会でもそうそういない大物と同じ目をしていた。
男の指示に従い魔族と戦う奇妙な集団を横目に見ながら、俺はその男にプーアルを助けてもらうよう願い出た。
なぜ見ず知らずの、あまつさえどう見ても医者ではないであろう相手にそんなことを願い出たのか。
だが男は俺をじっと眺めたあと、集団のひとりに俺を見るように指示した。すると、こんな条件を提示したのだ。
「命を助ける代わりに、お前のすべてを捧げる覚悟はあるか?」
俺はその問いかけに答えた。俺のようなクズの命でプーアルが助かるならば、願ってもないことだと。
どうにも嫌な予感が拭えなかったが、俺にはもう自分のことなどどうでもよかった。ただ、プーアルさえ助かるのならば…
あの魔族襲撃事件。ドラゴンボールを使うほどの犠牲者は出ていませんが、誰も死んでないわけではありません。
そして当然一般人はドラゴンボールの存在など知らないので、死んだ人間はそのままです。
今回登場したヤムチャですが、彼が人造人間になるというのは元々ドラゴンボールマルチバースでのオリジナル設定ですね。そのときのインパクトが非常に強かったので、今回使わせていただきました。
ちなみに他にも魔族はいたのですが、その後駆けつけた悟空によって蹴散らされています。駆けつけるのが遅れたのはハッチャンが人造人間だったため、戦闘の気配がわかりにくかったからですね。場面的にはちょうどスラッグに吸われている辺りです。
あと一話、伏線回収を込みで書かせていただきます。なかなか本編開始できませんが、お待ちください。