久しぶりにえぐい描写が今回は多いです。今回の話全編に渡って“そういう”描写が付き物になりますので、ご注意ください。今回は物語の秘密に少しだけ迫ります。
***side ベジータ***
一体なにが起こったというのか。
紛い物のクウラを撃破した俺はセリパを伴い、他の仲間達の元へと合流せんと移動していたのだが、突如として爆音が轟き仲間達と通信が取れなくなった。
そのうえ移動中に原種サイヤ人への変身も解けてしまい、戦力としては正直微妙なものになってしまった。
「もう一度あの形態に変身できないのですか?」
「…消耗した体力以上に、あの形態は俺の存在そのものとでも言うべきか、なにか別のエネルギーを消耗しているようでな。恐らく、無理矢理変身したところでまともに維持できんだろう」
「あの姿にはそのようなデメリットが…」
そうして会話しながら仲間達のところへ行くと、そこにはナメック星人による回復を受ける皆の姿があった。
「ベジータ王!」
真っ先にこちらに気づいたラディッツが俺を呼ぶ。
他の者もその声に俺のことを気づき、ダメージもあるだろうに立ち上がろうとする者もいる。
「ダイーズ、無理をするな。皆も、不測の事態ではあったが、結果的にはお互いの力を知ることができるいい機会となった。俺もさらに強くなることができたしな」
「で、ではやはり先程の強烈な気配はベジータ王でしたか」
「だから言っただろうに、あんなんベジータ王しかいねえってよ」
「ぐぬぅ…」
どうやらラディッツは原種サイヤ人に変身した俺の気配が誰だかわからなかったらしい。
まあ存在そのものを変身させるようなものだからな、無理はあるまい。ターレスは本能的な部分で気がついたか。
「なにがあったか報告してくれないかい?合流が遅れたのは悪かったが、状況の変化に追い付けてなくてね」
セリパの問いに、ラディッツとナメック星人が交互に説明してくれる。
「あの銀ピカをなんとか倒した直後、お前達の方へ向かおうとした我らはあちらで倒れている人造人間に襲われたのだ」
「…ああ、それでもって俺たちの大半は、こいつに気絶させられてさっきまで離れた場所に避難させられてたんだ。ちなみにこいつも人造人間らしい」
「はは、どうも」
そういって内心複雑な心境なのを露骨に表情に浮かべたラディッツに指差されたのは軽薄そうな男。
人造人間とは気配が希薄である性質を持つらしく、たしかにこうして対面していても一般人にしか見えない。
だが、この男がここにいる大半を気絶させて無理矢理避難させたらしく、倒れている人造人間もこの男が倒したらしい。見た目から強さが想定できないのが逆に警戒心を煽る。
「その人造人間とは一体なんなのだ?サイボーグかなにかのようだが、それほどの戦闘力を秘めているというのか」
「それはわたしが答えよう」
俺の疑問に答えたのはナメック星人だった。この地球の神をやっているらしいナメック星人だが、その実力を俺をも凌駕する。ナメック星人も極めればこれほどになるとはな…
「そもそも人造人間とは、地球人の科学者が作った“考える兵器”でな。恐ろしい科学力と驚愕する他無いが、あそこに倒れている痩せぎすな人造人間でわたしと互角の実力を有していた。他にもう一体いたのだが、それは天津飯が倒してくれたらしい」
事実なのだろうが、驚くべき事態だな。この星の文明レベルはそれほど高くないと思っていたのだが、案外知能タイプの突然変異が生まれやすい星なのかもしれん。
「…俺は特別あの人を倒せたわけではありません。人造人間にされた白々さん曰く、自分は失敗作だと言っていました。戦うだけで細胞が消滅していくと」
「とはいえ、短時間ならあの銀ピカのクウラを越えるくらいには強かったわけだ。俺からすれば十分とんでもないと思うがね」
視線が自分に向いたことから、すでに倒したという人造人間のことを語る三ツ目の青年、天津飯というのか。それに答えたのはダイーズだ。たしかに、肉体的には特別強くもない地球人が紛い物とはいえあのクウラを越えたというのだから、それだけで恐ろしい事実だ。
『ヤーチャ様緊急事態です!13号に自爆装置が仕掛けられています!』
「なんだとっ!?」
さきほどの軽薄な男の横に浮かんでいたサポートメカらしき浮遊物が突然警告する。
ヤーチャと呼ばれた人造人間の様子からして、単なる証拠隠滅のものではないようだ。
「PRⅡ、爆発の規模はどの程度だ!」
『お待ちください…解析結果がでました、観測対象の炉心を特定条件下で融解させ爆発を引き起こすようです。想定される爆破半径は約20000キロ』
「なにぃ!?」
「…おい、それはこの星の直径より大きいんじゃないのか」
「やべえぞ、どうにかその爆発を止められねえのか」
驚くヤーチャに対し、ラディッツが補足し、ターレスが質問する。PRⅡと呼ばれたサポートメカもどこか慌てた様子で解析しているようだが、状況は芳しくないようだ。
『爆発を止めるのは不可能です。観測対象の活動停止後、しばらくしてから発動するようにされていた上に、こちらのサーチを可能な限り無効化するよう隠蔽処置までされていました。今からでは自爆を止めることは不可能です』
その報告を聞いた全員が絶望的な気分になる。ここまで来たというのに、こんなところで台無しにされるというのか。
「…PRⅡ。最後まで一緒だぞ」
『はい、ヤーチャ様。PRⅡはいつまでもあなたと一緒にいます』
「ど、どうするつもりなんだよ」
小さいハゲ頭、クリリンという男がヤーチャの様子が変わったことを訝しむが、俺はその様子から何かしようとしているのを察した。
だが俺が声をかけるよりも早く、ヤーチャという男は一瞬で倒れた人造人間の場所まで移動する。
「なんという速さだ!?」
「加速装置というらしい。あれのせいで俺たちの大半が気絶させられたんだ」
俺でさえ捉えられなかった速度で移動したヤーチャに、セリパが驚愕しラディッツが補足する。どうでもいいが説明役が板についてきたな、ラディッツ。
移動したヤーチャは煙を上げ始めた人造人間を担ぐと、俺たちの方を向いて人差し指と中指の二本で敬礼するかのようなポーズを向けてくる。
「地球が助かるにはどうやらこれしかないみたいだ。短い間だけど、あんたらに会えて面白かったぜ。PRⅡ、ウイングモード」
『了解しました、ヤーチャ様』
ヤーチャに声をかけられたサポートメカがヤツの背中を覆い、羽根というよりは外付けのブースター状に変形する。
わずかな砂ぼこりを残し、ヤーチャはあっという間にこの星から離れていった。
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***side ヤーチャ***
これで自分が死んでしまうとしても、それで地球が助かるならば、それでいい。
そんな殊勝なことを考えていたわけではないが、記憶を無くした俺が誰かの思い出に残るなら、それはそれでいいのかもしれないと考えた。
加速装置を使い、一瞬で大気圏を飛び越え、三十秒とかけずに火星を通りすぎる。
『爆発まで後十秒です、ヤーチャ様』
「ありがとうPRⅡ。できるだけ太陽系から離れてしまおうかと思ったが、木星辺りで限界かな。せっかくだからドクター・ゲロの移動惑星を巻き込んでやるか。それとPRⅡ、俺を切り離して自分だけ自爆に巻き込まれようだなんて考えるなよ」
『…了解しました、ヤーチャ様』
どうやら予想は当たっていたらしいな。PRⅡは機械だが、俺と同じで心があるようだ。誰かの記憶を受け継いだのか、元から自分のものなのかは知らないが。
やがて木星が見えてきた。爆発まで間もない。
しかし、そんな俺の前に突然人影が現れた。
「お、おいどいてくれ。こいつはもう爆発するぞ!?」
「わかってるよ、ピッコロ神に頼まれてな。後は任せろ」
突然目の前に現れたのは、人造人間の目標である孫悟空だった。どうやって宇宙空間で活動しているのかという疑問もあったが、彼は13号を引ったくるように奪いさると、壊れた13号の全身をバリアで包み込む。
「はあっ!!」
さらにドクター・ゲロが超(スーパー)サイヤ人と呼んでいた状態に変身すると、バリアにパワーエナジーを注いでさらに強化する。なんて凄まじいエネルギー量だ。
驚く間もなく爆発が始まり、目を焼かれないように咄嗟に腕で庇う。しかしバリアは光さえほとんど漏らすことなく、あっという間にその爆発を終わらせてしまった。当然、13号は跡形もないが、バリアにはヒビさえ入っていない。
けた違いの強さだ。これが孫悟空か。
「おい!なぜ俺がこの女を預かっていなければならん!!」
呆けていると、人造人間18号を抱えた20号が現れた。文句を言いつつもきちんと抱えている辺りは律儀だなと思う。
「悪い悪い、なんせ急ぎだったからな」
朗らかに話しかける孫悟空だが、いつのまに仲間になったのだろうか。
データで見る限りは相手は宇宙の支配者といっても過言ではないフリーザ一族、おまけにどうやら相手は俺のように記憶を奪われたわけではないようだというのに。
この男はどこまで大きいのだと、
かつての己を失った
「…さて、お前をなんと呼ぶべきか、教えてくれないか」
あれほど不遜で大きな男が、どこか気を使うように自分を呼ぶ。
それに可笑しさを覚えながらも、ヤーチャは正直に答えた。
「俺は人造人間15号だ。ただ、なぜかPRⅡは俺をヤーチャと呼ぶ。折角だから、俺のことはヤーチャと呼んでほしい」
その問いかけに一瞬、ほんの刹那の間、孫悟空の顔がくしゃりと歪んだように見えた。
「…すまない、お前にわざわざ言うことじゃないんだが、その相棒を、PRⅡを、大切にしてやってくれ」
「あ、ああ。ホントに言われるまでもないぜ。にしてもどうした、顔色が悪いぜ?」
「…なんでもないさ。なにかあれば言ってくれ、力になる。…っ!そうだ、聞きたいことがある。地球に現れた人造人間は、全員倒されたのか?」
孫悟空の様子は不思議だったが、その質問は自分も疑問に思っていたのだ。なので答えながら聞き返すことにする。
「俺が確認できたのは、13号と14号の二人だけだ。そこにいるのは18号と20号だろう?19号はたしかメタルクウラってのがそうだったはずだし、16号は故障したと聞いている。となると、今確認が取れていないのは17号だな。あんたの様子とビッグゲテスターの反応がないところからして、ドクター・ゲロこと人造人間21号は倒されたんだろう?」
「ああ、ヤツは一片の塵も残さず片付けた。そうか、17号が見つかっていないのか…ん、なぜ“ふりーざくん”の視界が…っ!!くそっ、まさかヤツラまだ俺の家族をっ!!!!」
言うなり激昂した孫悟空は目の前で超(スーパー)サイヤ人の壁を越えた第二形態へ変身する。
髪の毛だけではなく体毛までが赤く染まり、筋肉が膨らみ全身から赤い電光が迸る。
変身はそれだけでは治まらない。赤い電光が、黒い電光へと変わりはじめる…な、なんだこの寒気は…!?
「…悪いがヤーチャ、クウラと一緒に地球へ向かってくれ。その女が目を覚ますようだったら、気絶させておいてほしい。俺は一足先に地球へ向かう」
目の前の存在がさっきまでの男と同一人物だとはとても思えない。
俺は悪鬼のごとき表情へ変わった孫悟空に、どうにか首肯することで答えを返す。
俺の返事を確認した孫悟空は、さきほどまでの俺が遅く感じるほどのすさまじさで地球へ向かっていった。
***side スノ***
止めるみんなを振り切って、シェルターを出たわたしが見たのはーーー手足が引きちぎられ今にも死にかけているディナーくんの姿だった。
「いやああああああっ!?」
悲鳴はランチさんのモノだった。黒髪の男の子に首を掴まれぐったりしているディナーくんにすがりつこうとするのを、みんなが必死で止めている。
あたしは何故だかわからないけど無性に腹が立っていた。こんな、こんなわけがわからないやつに、あたしたち家族を弄ぶ権利なんてない。
「…なんだ女。順番に殺してやるから、せいぜいそこで怯えて待っていろ」
なんの感情も無いのかと思ったら、その声音に含まれていたのは愉悦だった。
この男は…!楽しんでディナーくんを“壊してる”!!
そう思ったら、気づくと男の頬をはたいていた。
まさか反撃されるなんて思ってなかったのかしら。随分と驚いた顔をしているわね。
「気が変わった。お前から殺してやろう」
言うなり男が動いた、のかしら。
あたしは地面に倒れてた。口が苦い。これ、血かな。
「おいおい、相当手加減して撫でてやったんだ。こんなもんで死ぬれちゃ困るんだよ」
髪の毛を掴まれて立ち上がらせられる。叫びたいのに、口から出るのはごぼごぼと溢れる血の泡だけ。
…ごめん、悟空さん。あたし、時間も稼げないみたい。
そう思ってたら、不意にあいつの手があたしから離れて、あたしは優しく抱き止められる。
悟空さんだと思ってあたしは見上げると、そこにいたのは見たこともないモヒカンの男の人だった。
「スノ、助けに来たぞ」
***side 17号***
俺は最強の人造人間17号。
ドクター・ゲロは孫悟空の体にいたくご執心みたいだったが、あいつがそれほどのモノかね。
少なくとも、この俺ほどではないな。
俺は右手で掴んだガキの首を、どのタイミングで折ってやろうか考える。
死体を見せつけてやってもいいが、どうせなら孫悟空の目の前で殺してやった方がいいだろうか。
それならヤツの女全員を裸にひんむいた上で、動けないヤツの目の前で殺していったほうが楽しいだろう。
悩ましいな。
そんな風に考えていると、シェルターに隠れていたはずの孫悟空の女達がぞろぞろとやってきた。
金切り声で悲鳴を上げている女はこのガキの母親か。はは、いいぞ。だったらあの女の前で殺してやろう。
絞るように首を千切ると、吹き出す血がまるで噴水みたいで楽しいんだ。
だが俺の楽しい時間は生意気にも俺に張り手を入れてきた女によって中断される。
ダメージなんか負っちゃいないが、そのせいで思考がひどく冷めた。
…だめじゃないか、おもちゃが勝手に動いちゃ。
「えぐっ…!?う、うう…」
相当手加減したんだが、内臓が潰れちまったかな?
まあいい。ムカついたからこの女から殺してやる。
「おいおい、相当手加減して撫でてやったんだ。こんなもんで死ぬれちゃ困るんだよ」
そうは言いつつも、女の髪の毛を掴んで引き上げたのとは逆の腕にエネルギーをためる。
よし、肺と心臓を残してどこまで生きていられるか試してみよう。この遊びはまだしたことがなかったな。
さっそく女の乳房を刈り取ろうとした俺だったが、突如として現れた何者かによって俺は顔面を蹴り飛ばされ
大きく吹き飛ばされた。
何者だ?
「スノ、助けに来たぞ」
そこにいたのは、見覚えのある男。たしか、ドクター・ゲロのデータにあった筈。
…そうだ!ヤツも人造人間!完全機械式の16号!
「お前が、スノをいじめたヤツだな」
16号は俺を前に構える。くくく、面白い。旧式のガラクタが、今度も庇いきれると思っているのか。
お前がその女を助けに来た理由はどうでもいいが、俺の顔を足蹴にした報いは受けてもらおう。
「死ねっ!!」
駆け出した俺の貫手は確実に16号の動力炉を貫くはずだったが、驚くことに俺の手は掴まれ動きを止められる。
「…予想以上のパワーレベルだが、想定外ではない」
16号は俺の胸ぐらをつかむと、そのまま掴んだ腕ごと発射した。
「ぐあっ」
その圧力に俺は思わず苦悶の声をあげる。この俺が?ふざけやがってブリキ野郎が!ぶっ壊してやる!!
「食らえっ!」
俺は右手に集中したパワーエナジーを圧縮してブラスターを発射するが、16号のヤツに防御すらせず弾かれた。なんて装甲をしていやがる。
「俺の表皮は耐エネルギー防護装置で守られている。お前の攻撃では傷ひとつ付けられんぞ」
自身満々に言う16号へ連続でブラスターを当ててみるが、そういうことならエネルギーの無駄だな。とはいえ、永久エネルギー炉がある俺に無駄なエネルギーなど存在しないのだが。
それにしてもドクター・ゲロのヤツめ。俺と18号に反乱されてから、16号を再改造しやがったな。道理で強い筈だぜ。
だがな、俺もなんの理由も無しに孫悟空の家族を殺しに来たわけじゃないんだよ。ドクター・ゲロの憂さ晴らしに従ってやったのはついでに過ぎない。
「喜べ16号。お前は宇宙で最初に完全無敵の存在と対面することができる。機械のお前があの世に行けるとは思わないが、せいぜいメモリーに焼き付けるんだな」
そう言って、俺はこの家の金庫に保管されていた宝石“眠り姫”を取り出す。
“月の光”を供給源に、太陽すら破壊しかねないエネルギーを生み出す至高の宝石。
そして、孫悟空の肉体を元に作られた俺の体には、常に3000万ゼノ以上のブルーツ波が流動している!
「はっはっはっは!見るがいい!究極至高の存在を!」
胸に染み込むように吸収されていった“眠り姫”の効果はすぐに現れた。
俺の体は成長し、ドクター・ゲロによって解除された変身機能が強化された形で現れる。
かつて変身したときは長身痩躯だった肉体は筋骨隆々とした逞しいモノへと生まれ変わり、オールバックに変化するほど伸びた髪の毛は逆立ち金色に染まる。
さらに俺の全身は溢れるパワーから青い電光を迸らせ、純粋なパワーが桁違いに上昇したことを見た目にも顕(あらわ)にする。
「…ふぅ。なあ16号、今俺がどんな気分か知りたくないか?」
変身した直後の隙だらけの俺を狙って残った腕をロケットパンチとして撃ってきた16号だったが、高速で飛来した腕を俺はあっさり止めると、過剰なほどにエネルギーを流し込んで消滅させる。
「…!」
「ふふ、いつの間にか近づかれて驚きか。俺がスピードを下げてようやく目にすることができたようだな」
眼前にまで近づいてやると、俺が止まってから慌てて下がろうとする16号。
そんな速度じゃ遊びにもならないぞ。
「プラズマスパーク!!」
なるほど。腕は本来そうやって使うのか。
先に飛ばして転がっていた腕と16号の間を紫電がほとばしり、ほんの僅かに俺の動きが鈍る。
「ヘルズフラッシュ!!」
自爆覚悟なのか、それとも“耐エネルギー防護装置”とやらを過信しているのか。
16号は俺の胸元で強烈なエネルギーブラストを解き放つ。
余波で孫悟空の女達が死ぬかと思ったが、いつの間にか復活したガキがバリアを張って爆発を防いでいた。
あの状態からどうやって回復したのだろうか。ああ、仙豆だな恐らくは。
あらゆる傷を元通りに癒す奇妙な豆だったか。だがまあそんなものがあったところで、地獄を味わう回数が増えたに過ぎない。
俺はヘルズフラッシュをバリアで反射してやったことで、全身を焦がして倒れ伏した16号を見下ろす。
「所詮、ガラクタはガラクタだったなぁ」
「…いいや、“時間稼ぎ”は済んだ。俺の勝ちだ」
「なに…?」
ドッグォアアアン!
隕石でも落ちてきたかのような衝撃に、俺は思わずたたらを踏む。
「…もうお前は謝っても許さんぞ」
振り向いた先にいたのは、どうやってここの状況に気づいたのか、孫悟空が立っていた。
はて、こいつの体毛と髪の毛は茶色だった筈。なぜ赤と黒が混じった体毛に変化しているのか。
超(スーパー)サイヤ人の第二形態だとしても全身が赤い色に変化しているはずだが。
「ようやく真打ちの登場か。だが遅かったな、お前の女のひとりはもう瀕死だぞ?」
挑発するようにそう言ってやれば、孫悟空は驚くことにこの究極の人造人間である超(スーパー)17号を無視して通りすぎやがった。
「舐めやがって!」
俺は無防備な背中へ向けて蹴りを放つが、なぜか俺が転んでいた。
ん?なぜ俺の足があんなところに転がっているんだ。
「…ブルマ、スノはどうしたんだ」
「あなた!スノちゃんはあいつに向かっていって、お腹を殴られたの…!咄嗟にかばったみたいだけど、仙豆も飲み込めないほど血を吐いていて、お願い、スノちゃんと子供を助けて!」
俺はいまだに事態が飲み込めない。
究極至高であり、完全無敵である俺が倒れていることに。
そしてヤツが俺には目もくれず、女の治療をしていることに。
「…よかった、まだ二人とも生きている。とっさに潰した仙豆を無理矢理食道に流し込んでくれたおかげだ。ありがとうな、ブルマ」
「そんな、そんなことないわ。あたしだって、どうしていいかわからなくて…!」
女が泣いている。
なぜだ。なぜ誰もこちらを見ようともしていない。
孫悟空が泣いている女の体を抱き締めて女を泣き止ませる。
次に孫悟空が死にかけの女に手をかざすと、赤いエネルギーが凄まじい勢いで死にかけの女に流れていく。
仙豆を含むことさえままならなかった女があっという間に回復していくが、まるでそれに反比例するように孫悟空の体毛が黒く染まっていく。
「あとは仙豆を飲ませてくれ。念のため、二粒頼む」
「わかったわ」
振り向いた孫悟空の目を見て、ようやく俺はすべてを察した。
俺の体は、あの蹴りを放った瞬間バラバラになっていたことを。
俺はすでに、シンデイタコトヲ…
「待てよ」
ナゼダ。ナゼシンダハズノオレガツカマエラレテイル。
「死んであの世に行けば許されるとでも思ったか?残念だったな、地獄まで俺が連れていってやる…!」
アア、オソロシイ。ネエサン、オソロシイカオガコチラヲミテイルヨ。
ネエサンタスケテ。ネエサン。
ネエサ…
***side 悟空***
俺は遠視能力で自分の認識の甘さを痛感していた。
五十三万体の分身を置いていけばなんとかなると思っていた。
フュージョンの許可を出したディナーがいれば、なんとかなると思っていた。
すべて、俺の認識の甘さが原因だ。
俺は能力を用いて、目の前で見ているのと変わらない状況でディナーの手足がもがれていくのを見つめる。
唇をかみきり、奥歯がいくつも砕ける。
握りしめた拳の中で爪が皮膚を突き破り、膨れ上がった筋肉が血管を圧迫して全身で内出血を起こす。
それと同時に、俺は自分で制限していた“最後の姿”へ変身していく。
女達への、家族への思いで押さえつけていたこの体の本来の超(スーパー)サイヤ人の姿が徐々に顕(あらわ)になっていく。
あのときの悟飯と同じように黒い電光が俺を包み、体毛が憎しみの黒で染まっていく。
遠視能力が暴走し、あらゆる場所のできごとを同時に写し出す。
ピッコロ神をはじめとする地球の仲間達や、ベジータ率いるサイヤ人もといクラッシャー軍団が俺の“殺意”に反応して狼狽している。
ピッコロ神だけはなにが起きたのか察知してピッコロJr.にポタラを渡そうとしているようだが、もう遅い。
俺は最低限地球を壊さない程度に速度を抑えて破壊されたカプセルコーポレーションに墜落する。
自分で自分を殴り飛ばしたくて仕方がない。
「…もうお前は謝っても許さんぞ」
目の前でなにか囀ずる17号がいたが、どうでもいい。
俺の視線の先、そこには倒れ伏すスノの姿があった。ディナーが起き上がっているのを見るに、アイツには誰かが仙豆を食わせてくれたらしい。
「舐めやがって!」
なにかしてきた17号を、俺は通りすぎながら全身から気で作った刃を一閃させてバラバラに刻む。
刹那よりも短い時間で切り刻まれたことにも、さらには死んだことにも今は気づかないだろうが、ヤツのことなどどうでもいい。
俺は診察と治療を並行しながら、仙豆を受け入れられないほどに損耗した肉体に俺の“生命力”とありったけの“愛”を込めたエネルギーを流し込む。
よかった。どうにか二人とも助かりそうだ。
俺はゆらりと立ち上がると、後ろでまだわかってない17号をねめつける。
ああ、ようやく気づいたか。体から魂が上っていくが、そんなことで“俺から”逃げられるとでも思っているのか。
「待てよ」
理性などないだろうに怯えるのか。くくく、許してほしいか。だめだね。
足りないなぁ、まるで足りない。そんな程度の恐怖で、お前の罪は賄えなどしない。
「死んであの世に行けば許されるとでも思ったか?残念だったな、地獄まで俺が連れていってやる…!」
俺は無理矢理次元を破ってあの世まで飛ぶ。
「ご、悟空か!?その魂をいったいどうするつもりだ…!?」
閻魔のおっちゃんが何か言っているな。無視してもいいが、知らない中じゃない。一応答えておくか。
「よう、久しぶりだな閻魔のおっちゃん。なに、このクズ野郎を俺が直々に地獄に落としたくてね。ああ、スピリッツロンダリング装置は必要ないぜ」
言うなり俺は、蛇の道から降りて地獄へ直行する。
さて、簡単に消滅してくれるなよ。
今回これだけしつこく悟空の家族を狙わせたのには、実はこういった理由がありました。
大切な存在を傷つけられたとき、なにが起きるか。
なぜ悟空は敵に容赦しないのに、いつもどこか余力を残して戦っているのか。
その答えがこれです。悟空自身、この力を嫌っています。
超(スーパー)サイヤ人ラブこと0は、実はこの力の片鱗が現れたにすぎず、精神と時の部屋で自身の力を見つめ直した悟空はこの力の存在に気づきました。かつて制限時間を五分としたのは、それが理性を保てる限界だったからです。
この超(スーパー)サイヤ人ブラックとでも言える形態に関しては、重要なネタバレになるので今は多くを語りません。
補足★説明
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・宇宙空間で会話しているのは以前も言いましたが、そういうものと思ってください(笑)でもお漏らしはきっちり凍って蒸発してたりという(笑)
・悟空が加速状態にいるはずのヤムチャと会話してますが、自力で同じ速度に至ってるだけです。
・17号に掴まれていたスノちゃんの髪の毛は少し切れましたが無事です。バキの天内悠みたいにはなってないのでご安心を。
・仙豆を飲み込めなかったスノちゃんでしたが、ブルマが無理矢理気道を確保した後、潰した状態の仙豆を喉を切り裂いて突っ込まれました。効果は半減以下でしたが、おかげで生命力を維持することができました。
・人造人間16号
緑川ヴォイスのイケメン。けどモヒカン。17号と18号の反乱後壊れた体を地球の拠点にて修理されていました。
再改造を受けているため、この世界の17号とも変身前ならある程度戦えます。
最後に焦げていたのは、耐エネルギー防護装置のエネルギーまで攻撃に回したためです。
・人造人間17号
悟空の細胞から作った有機組織により、原作よりもぶっちぎりで強くなりました。
ただしドクター・ゲロの妄執とも言える感情を移植された影響で、絶望の未来のような残虐な性格へと変貌してしまいました。
ちなみに彼のみ事件に先駆けて目を覚ましており、メタルクウラ襲撃の際はどさくさにジンジャータウンを襲っていました。
ジンジャータウン壊滅のお知らせはエピローグにてちょっとだけ出します。
・人造人間18号
上記の17号と同じくぶっちぎりで強いです。原作の完全体セルなら勝てますが、やはり17号よりは劣ります。
ドクター・ゲロの妄執を写されたのは17号と同じですが、彼女の場合悟空への憧れじみた複雑な感情までコピーされているため、17号とは別れてひたすら悟空を待ち構えていました。悟空との戦いにおいてクリムゾン状態となりましたが、自分より強くてちょっと安心している部分があったりしてます。
・人造人間20号
原作においてはドクター・ゲロだったこのナンバリングは、ずれて魔改造クウラとなりました。見た目は金属質な部分はまんまメタルクウラなものの、色が赤いです。個人的にはレッドクウラと呼んでいます。通常の三倍です(違)
クウラの理性や記憶を消すことができなかったドクター・ゲロは、次善策として首元に助手を改造した寄生体を埋め込みました。これの元は原作における人造人間19号ですね。
寄生体はレッドクウラの戦闘センス、最強に近い肉体を手にいれ調子こいてましたが、悟空の痛覚増幅を受けて呆気なく死にました。