※この作品はR-18です。

ドラゴンボールC【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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お待たせしました。
色々悩んだ結果ネタバレ回に( ̄▽ ̄;)

あ、地味にあらすじを付け足しました。

ううむ、それにしても話を進めるとエロを挟むのが加速度的に難しくなっていく…!




千年の追憶 ★

***side ◾◾◾***

 

昔話をしよう。

 

今より1000年以上前の話を。

 

その頃の宇宙は“科学”が支配していた。

 

発達した文明によって多数の銀河を宇宙船が行き交い、巨大な規模の交易が文化を、文明を遥かに発展させていった。

 

銀河の秩序は銀河王が率いる銀河パトロールによって守られ、“表面的”には誰もが平和を謳歌していた。

 

異変は唐突だった。

 

銀河の辺境に住まう少数民族サイヤ人に、今から1500年前ひとりの突然変異が生まれた。

 

突然変異によって生まれた子供は、温厚で穏やかな気質のサイヤ人とは違い、破壊と殺戮を好む凶悪な心を持っていた。星々をすら砕くサイヤ人においても強すぎる力を持つ彼は危険視されたが、彼を抑えることができる大人のサイヤ人がいたことが事態の悪化を招いた。

 

それを知っていたのか、はじめは彼も大人しかった。しかし成長するに従って更に力を増していった彼は、ある日その野心をむき出しにした。

 

もちろんそれを止めようと、サイヤ人のなかでも選りすぐりの者が彼に挑んだ。

 

しかし子供の頃とは違い、突然変異によって得た“黒い力”を十全に引き出す彼を前にしては、かつて宇宙に名を轟かせた戦闘民族も敵わず、戦いのなかで徐々に数を減らしていき、やがて滅んだ。

 

こうして自らを食い止めていた同族がいなくなると、彼は宇宙を征服し始めた。

 

宇宙空間をも生身で移動できる彼は、気まぐれに星々を訪れ、理不尽な要求を繰り返す。

 

好きなように女を抱き、好きなだけ食事をした。

 

彼に挑む強者もいたが、誰も彼に勝てるものはいなかった。

 

それどころか、彼は自分に戦いを挑んだ種族に興味を持つと、その種族の女を犯しにいった。

 

犯された女は子を産み、生まれた彼の血を引く子供は彼と同じく凶悪で、殺戮と破壊を好む存在へと育っていった。

 

あれだけ発展した文明は、広がっていく彼の血によって大きく衰退した。

 

また彼には寿命がないのか、年月を重ねることで衰えるどころかどんどん強くなっていった。

 

いつしか彼は“伝説の超(スーパー)サイヤ人”と呼ばれ、一種の災害と同義と考えられるようになっていった。

 

全宇宙を支配する彼の前にあっては、世界を管理する界王も界王神も抗うことができなかった。

 

何度か“あの世の達人”と呼ばれる者も差し向けられたが、彼に殺されその存在すら消滅してしまった。

 

すべてを破壊する破壊神ですら、真正面から戦えばどちらが殺されるかわからないほどに力を増した彼を確実に殺すため、彼を監視するに留めた。

 

そうして止める者は誰もいないかに思われ、数百年の時が流れた。

 

やがて1000年前、希望が現れた。

 

無秩序にばらまかれた“伝説の超(スーパー)サイヤ人”の種。彼の子孫に突然変異で善の心を持つサイヤ人が生まれたのだ。

 

善の心を持つサイヤ人の“少年”は成長に従い瞬く間に仲間を集め、彼へと挑んだ。

 

結果は、敗北。

 

銀河をひとつ丸々滅ぼした結果に終わった戦いで、少年は行方不明になった。

 

人々は絶望した。もはやいつ動くかわからない破壊神に再び希望を抱くほど、人々は神に期待していなかった。

 

しかし、少年は生きて戻ってきた。

 

数十年を修行に費やし、新たに少年の仲間となった伝説の超(スーパー)サイヤ人の子孫ら六人を引き連れて。

 

仲間の力を手にいれ神の力を得た少年と、突然変異によって神をも打ち砕く悪魔の力を有した伝説の超(スーパー)サイヤ人の戦いは、宇宙の歴史においても天地開闢に匹敵する激しさとなり、その余波だけで複数の銀河が滅んだ。

 

そして、決着が訪れた。満身創痍となった二人の戦いを終わらせたのは、時間だった。

 

神の力を枯渇させた少年はあっさりと伝説の超(スーパー)サイヤ人に敗れ、仇を取ろうとする仲間のサイヤ人らも返り討ちにあい死んでいった。

 

そのとき伝説の超(スーパー)サイヤ人が感じたのが虚無感だったことに、わたしは気づいた。

 

はじめて誰かを殺したことを後悔した伝説の超(スーパー)サイヤ人だったが、間もなく現れた破壊神ビルスによって“破壊”され、彼は死んだ。

 

そう、死んだのだ。あの無敵の超(スーパー)サイヤ人が。

 

神々は伝説の超(スーパー)サイヤ人が消耗したがゆえの結果だと思うだろう。

 

だがわたしは違った。彼は本当に悔いていたのだ。命を奪ったことを。

 

破壊と殺戮を好み、宇宙を支配したあの男が。

 

もしあのまま戦いとなれば、破壊神と伝説の超(スーパー)サイヤ人の余波は下手をすれば宇宙そのものをも壊してしまっただろう。

 

彼はそれを嫌がった。他の星々にいる自らの子孫が無為に死ぬことを。

 

だから破壊神を挑発した。自分を“殺す”ために。

 

わたしはゆえに彼に目をつけた。

 

この哀れで孤独な、強靭な力を持つ悪魔ならば、あるいは“変えてくれる”のではないかと。

 

とはいえすぐに私が介入しては、界王神や破壊神に察知されてしまう。

 

そこでわたしは複数の分身を作り出し、いくつもの星系に送り込んだ。

 

いつかこの魂が転生したときに、わたしの手で介入するために。

 

やがて彼の能力を研究し、意図的に突然変異を引き出したフリーザ一族のコルドが台頭し、それをきっかけとしたのか驚異的な肉体の強さをもって宇宙を支配しようとする強者がそこら中に溢れかえった。

 

もっとも顕著だったのは直系であるサイヤ人だろう。雑種と化したとはいえかつての戦闘民族としての力は劣化し、変わりに特定条件下での変身能力を手にいれていたが。

 

そしてわたしの分身のいくつかはコルドの軍に潜入し、ひたすらに時を待った。

 

姿を変え、年齢を偽り、身分を誤魔化し。

 

時は流れ、劣化サイヤ人に先祖帰りであるべジータが生まれ、ツフル人の星を乗っ取り王を名乗って宇宙を席巻した。

 

またコルドが自身を凌駕する存在として造り出したフリーザが軍を引き継ぎ、恐怖と懐柔によって宇宙の帝王を名乗った。

 

そしてとうとうその時は来た。忘れようがない魂の色。彼が生まれ変わったのだ。

 

だが驚くことに、彼はクローンとして転生した。

 

実験的にサイヤ人の王であるべジータ王と、下級戦士ながらその強さは王を凌駕しかねない潜在能力を持つバーダックの細胞を用いた“使い捨てのサイヤ人”として。

 

わたしは頭を抱えた。

 

どれだけ潜在的に強大な力を持っていようと、このままでは彼があっさり死んでしまうのが目に見えていたからだ。

 

そこでわたしは一計を案じた。

 

テロメアを維持するための保存ポッドに浮かぶ彼に、わたしが知るこの世界の“後の歴史”や様々な知識を、わたしがよく知る地球を中心とした物語として彼の脳に植え付けたのだ。

 

効果はてきめんだった。彼は植え付けられた知識を疑わず、前世の記憶や原作知識と言って重宝した。

 

わたしの分身は科学者として彼に近づきながら、小出しに情報を与えていった。彼の不安を煽り、ドラゴンボールを使う決心を固めるために。

 

ゆえに彼がドラゴンボールに気づけば、後は何とでも理由をつけて彼を単身ナメック星に送り込んでしまえばいい。

 

そう思っていた矢先、想定外の事態が起きた。

 

彼を追うようにして、かつて正義のサイヤ人として彼と戦った少年までもが少女として転生した。

 

最悪なのは、少女が無自覚に魅了の力を使っていること。

 

あの能力はまずい。対抗するにはよほどの力を持つか、そもそも生殖形態が違わなければならない。

 

かつて一度目に伝説の超(スーパー)サイヤ人と戦った際、少年は兆に迫る数の仲間を引き連れ、結果的には銀河をひとつ滅ぼした。

 

それにこのまま二人が出会えば、最悪どちらも前世の記憶を取り戻し、わたしの計画がダメになりかねない。

 

そこで彼をカナッサ星に送ることにした。あの星なら最低限高速艇がある。

 

わたしは軍の情報を彼が手にいれやすいよう工作し、彼が脱出したあとも迷わずナメック星にたどり着けるようにした。

 

逆にそのことで一部のエリートサイヤ人が情報をつかみ、脱走する現場で殺されかけたようだが。

 

まあその程度で彼が死ぬはずもない。肉体は弱ったとはいえ、あの“伝説の超(スーパー)サイヤ人”だ。

 

彼自身は戦闘センスがないことを嘆いていたようだが、そもそも求めている基準がおかしいのだ。あれは彼が求める動きを体が再現できない為に起きている一種の齟齬のようなものだ。

 

だいいちセンスがない人間があれほど巧みにエナジーアーツを操れるものかよ。

 

さて、旅立った彼はこれで大丈夫だろう。潜在的に自分の体を戻してもらう願いを言うようにしておいたし、多少の言い間違いがあったところで彼はかつての肉体を取り戻すはずだ。まあ顔などは今と変わらんだろうが。

 

さて、問題は少年の方だ。

 

まずは前世の記憶が蘇らぬよう、彼と同じ処置をした。

 

能力も可能な限り抑えた。

 

…とはいえあの力がどれだけ抑えられるかわからないが。

 

それから年月が経つに連れ、案の定綻びが生まれた。

 

しかも質の悪いことに、わたしの与えた知識が事態を悪化させている。

 

前世の天真爛漫さはそのままだが、彼と同じ処置をしたのが裏目に出たか。

 

前世の自分が男だったことには気づいているようだが、少し記憶の封印が強すぎたかもしれん。

 

半端な未来の知識で事態を判断しようとしている節がある。

 

かつての伝説の超(スーパー)サイヤ人の面影を持つバーダックに惹かれているようだが、さて吉と出るか凶と出るか。

 

そう考えていれば案の定最悪の事態を引き起こした。

 

バーダックの覚醒は想定していた。あの娘には近くにいるものを奮起させ、力を引き出す性質がある。

 

だがまさかフリーザが魔獣と化すとはな。あれは想定外だった。

 

サイヤ人が滅びたのは必然だろう。あやつらがこれまでやってきた悪逆非道な行為を考えればあれでもまだ足りんくらいだ。

 

とはいえ、赤子とあの娘を宇宙に放り出したままにはしておけんので、ナメック星まで運んでやった。あの星なら娘の能力はほとんど無効化される。下手な宇宙人に拾われて復讐などを図られてはまた宇宙が混乱しかねん。まだ、破壊神に出てこられては困るのだ。

 

それにわたしにもこの事態を招いた責任がある。なにより、赤子を見捨てるのは忍びない。

 

それにしてもあのブロリーという赤子は、どうやら伝説の超(スーパー)サイヤ人としての先祖帰りがかなり顕著なようだな。発揮できる能力としては近いものがあるだろう。

 

成長を見守ってはいるが、あれならかつてのフリーザでさえも一撃で倒せるだろう。“かつて”のならばな。

 

理由はともかく変身能力もうまい具合に制御できているようだ。

 

また、ナメック星を一足先に旅立った彼の方は順調だ。

 

予定通り地球につき、わたしが与えた知識の影響か多少なり金銭感覚をもったことから面倒なトラブルも起こさなかった。

 

育ての親にあれほどなつくとは思わなかったがな。危うくあの老人が死んだショックで記憶を取り戻すかと冷や冷やしたぞ。

 

それからも彼は修行を重ねた。

 

亡き育ての親との約束もあったのだろうが、持ち前のセンスに先達の技術が重なることによって短期間で驚くべき領域にまで至っていた。さすがはかつて“闘いの神”とまで称されただけはある。

 

やがて彼にも覚醒の時がきた。気まぐれに抱いた少女のなにげない言葉をきっかけに、かつての彼からは想像もできない理由で覚醒して見せた。“愛”か、彼にとっては意外ではないのかもしれんな。

 

それからの彼は家族を守るために、仲間を守るために力をつけた。すでにまず間違いなく、宇宙最強と呼べるだけの実力だろう。

 

だが足りない。それではまだ足りないのだ。

 

彼は自分のなかにある力の正体に気づいていたようだが、その正体に嫌悪し拒絶していた。

 

息子のひとりはそれを受け継いでしまったようだが、幸いにも地球人とのハーフであるから最悪の事態にはなるまい。

 

だがいずれ、彼が過去の記憶を取り戻すときが来るだろう。

 

今の自分と、過去の自分を比べたときに彼が何を決断するかは、わたしにはわからない。

 

願わくば、彼が自棄にならないことを祈ろう。

 

かつて“神”であったわたしが祈るべき対象がいったいなんなのか、わたしにもわからんがな。

 

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***side 悟空***

 

『ア…アア…』

 

消えていく17号の魂を見ながら、俺はかつての記憶を思い出していた。

 

破壊と殺戮の限りを尽くした記憶を。

 

「…そうか、どうりで地獄が懐かしく感じるわけだぜ」

 

荒涼とした大地。

 

針山が乱立し、煮立つ血の池は鼻に鉄錆びの臭いを届ける。

 

ここはかつて1000年に渡って俺が囚われていた場所。

 

そしてかつて通過した場所。

 

「…あそこはもっと下か」

 

俺は底が見えない暗闇の亀裂に身を投げ出し、落ちていく。

 

焼け溶けた銅鉄の川が見える。

 

何度も手足を砕かれる罪人の姿が見える。

 

懐かしい。ここで、幾度殺されたことか。

 

かつて地獄で裁きを受けた俺は、次々と他の魂が消えていくなかただ一人消えることはなかった。

 

焼かれ、裂かれ、食われ。

 

凡そありとあらゆる苦しみを味わわされても、俺は納得できなかった。

 

あの日自分の血を引く子供を殺したとき、はじめて自分の中の“黒い力”の全力を出しきったとき。

 

俺の胸に去来したのは、絶望と虚無感だった。

 

あのときまであり得なかった、戦うことへの悦び。

 

自分が拳を打ち付けても、倍の力でそれを返してくる強敵の存在。

 

宇宙の果てまでも、銀河の星々をも征服した俺が、ついぞ手にいれることの叶わなかった存在。

 

それを、俺はあっさりと壊してしまった。

 

その事実に気づいたとき、俺は怖くなった。

 

ひょっとしたら、今まで俺が壊してきた星や、殺してきた人間の子孫に、もっと俺を楽しませてくれるヤツが生まれていたかもしれない。

 

俺がこれまで挑んできた相手の種族、その女を犯していたのはこの為だったのかと、漠然と理解した。

 

そう思うと、俺はなにもできなくなった。

 

無闇にこの力を振るえば、それだけで人は死ぬからだ。

 

かつてはよかった。塵芥(ちりあくた)に過ぎない存在など、どれだけ滅びようとも構わなかった。

 

だが今は、それによって訪れるのが虚(うろ)だと知った今は、もはや先までのように無為な力を振るおうとは思えなかった。

 

そしてそれは、破壊神に殺される寸前まで変わらなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ずいぶんと無茶苦茶をしてくれたね、全王様に知られて僕が“消滅”させられたらどうするんだい」

 

破壊した星々が欠片となって宙に浮く片隅で、そいつは俺に話しかけてきた。

 

紫色の肌にやせぎすな体、なにかの儀礼用のような衣装を着た猫の獣人族のようなそいつを見て、俺は直感的に目の前のそいつが《破壊神》であることに気づいた。

 

「…なんの用だ、破壊神。“今の俺は疲れている”」

 

「その“疲れている”きみに用があって来たんだよ。早速で悪いけど、さっさと“破壊”させてもらうよ」

 

向かってくる破壊神の掌が、ひどく緩慢に感じる。

 

疲れているのは本当だが、戦いとなれば話は別だった。恐らく“黒い力”を解放すれば、この程度の消耗はわけもなく吹き飛ぶだろう。

 

「“破壊”っ!!」

 

「ぐっ…!」

 

だからこそ、俺はそれを避けなかった。勝手に反応しようとする体を無理矢理押さえつけてまで。

 

すでに俺とあのガキの戦いで、いくつもの銀河が滅びただろう。

 

もうそれを繰り返させてはいけない。仮に俺がこの破壊神と戦えば、さきほどのように宇宙が滅茶苦茶になるだろうから。

 

崩れ落ちていく体を見やりながら、俺は安堵する。

 

「…これでもう、殺さなくて済む」

 

「きみは…」

 

俺の全身が崩れ落ちる前に破壊神がなにか言ってきた気がするが、それは俺の耳には届かなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…そうだ、俺はここにいたんだ」

 

そこは無間(むけん)の闇。

 

光は一切ない。自分という存在以外の一切が存在しない完全なる無の世界。

 

それが、ここだった。

 

時間の感覚などありはしない。

 

一秒を一年のように感じ、それがひたすらに続く。

 

苦痛も、悦楽も、なにもない。

 

俺の魂が朽ちるのに、これほど相応しい場所はないだろう。

 

「…そうだ、ここで少し眠ろう」

 

ひどく疲れた気分だった俺は、そこで目を閉じようとする。

 

このまま闇に落ちていけば、今の俺を包む“黒い力”が大切なものを傷つけることもない。

 

そう、思ったときだった。

 

『あなた…!』

 

「っなに!?」

 

俺の耳にはっきりと、ブルマの声が聞こえた。

 

だがそんなはずはない。ここは無間の闇。誰かの呼び掛けなど、聞こえるはずがない。

 

だがだとすれば、今の声はなんだというのか。

 

『悟空さま…!』

 

「今度はチチか…!」

 

次々と自分の女の声が聞こえれば、例え闇とて俺は動かざるをえない。

 

もし万が一こんな場所に彼女たちが来てしまったというならば、一刻も早く助けなければ。

 

『旦那様…!』

 

「ランチ…」

 

ディナーを傷つけられ、悲鳴をあげたランチの声は悲痛に満ちていた。

 

誰だ、誰がお前にそんな声を出させやがる。

 

『バカ亭主…!早く帰ってきやがれ…!』

 

「…バカはひどいだろう」

 

次に聞こえてきたのは金髪ランチの声。その言葉とは裏腹に、彼女の声もまた悲痛に満ちている。

 

『ご主人様…!』

 

「マイ…」

 

彼女の声はひとえに俺を案じるものだった。

 

みんなの声が、熱のように俺のなかに広がっていく。

 

『悟空…!』

 

「バイオレット…」

 

気丈な彼女の声は震えていた。ああ、そうだ。彼女たちを悲しませているのは、この俺自身だ。

 

『悟空さん…!!』

 

スノの声が聞こえる。よかった、もう目を覚ますことができたのか。

 

『しっかりしな…!』『あなたがいなくなったら、あたし生きていけないわ…!』

 

「ハスキー、ランファン…」

 

次々と聞こえてくる女達の声が、俺を奮い立たせる。

 

そうだ、そうだとも。

 

今の俺は、かつての“名もないサイヤ人”じゃない。

 

ましてや、“伝説の超(スーパー)サイヤ人”でもない。

 

「俺は、俺は…!!!」

 

無間の闇に光が生まれる。

 

黒い電光がそれを邪魔するようにまとわりつくが、もはやこんな“力”は枷でしかない。

 

「俺は…孫悟空だ……!!」

 

光がすべてを覆いつくす。そして俺は…

 

□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□◽□

 

***side ピッコロ神***

 

「…やれやれ、なんとか自分を取り戻しよったか」

 

わたしはポタラを外し、元の自分に戻るとその場に膝をつく。

 

悟空め、とんでもない早さで地獄の最下層まで落ちよって。わたしが改造したポタラがなければ、呼び掛けることすら叶わなかったぞ。ポタラは砕けてしまったが、まあいいさ。友には変えられん。

 

「どうなったの!?」

 

慌てたように駆け寄ってくる悟空の妻たち。

 

「…安心せい。やつは自力で自分を取り戻した。礼を言いますぞ、界王様」

 

わたしは遠隔会話をブーストして繋いでくれた影響で気絶している界王様に向かって礼を言う。

 

今回、彼の協力がなければ間違いなく手遅れになっていた。

 

「いやあ、冷や冷やしたけど、どうにかなったならよかったよかった」

 

真っ先に快活な声をあげたのは宇宙から戻ってきたヤーチャこと人造人間15号。

 

彼の言葉をきっかけに緊張感が解けたのか、その場にいる全員が思い思いに膝をつく。

 

「ふはー、じじいにはしんどいわい」

 

「そうは言いますけど、武天老師様悟空さんを呼び掛けるのに力を貸してくれって言われたとき、いの一番に名乗り出たじゃないですか」

 

「そうですよ。俺も方法には驚きましたが、なんともあの人らしいですね」

 

亀仙人、クリリン、天津飯の三人が思い思いに感想を述べる。

 

今回悟空へ呼び掛けるために、わたしはポタラでの合体後、この場にいる全員へ呼び掛けた。

 

地獄の最下層へ落ちていった悟空を救うためには、尋常ではないエネルギーを必要とする。

 

そこで、みんなのパワーが必要だったのだ。

 

「わたしたちも力になれて何よりです」

 

「けっ、あの化け物師匠のこったから、俺たちがなにかしなくても勝手に戻ってきやがったよ」

 

「ギランっ!貴様というヤツはいつになれば師匠に敬意を示すのだ!」

 

立って喧嘩するほどに余裕がない三弟子だが、その顔は一様に安堵している。ギランも口ではああ言っているが、力添えを頼んだときに武天老師に次いで手をあげたのをわたしは覚えているぞ。

 

「まさか原種超(スーパー)サイヤ人にあのような力の回復方法があったとはな」

 

「ええ、驚きました。まさか我々のパワーを送ることで回復なさるとは」

 

「にしてもいいなあ、べジータ王もセリパの姉御も。俺もパワーアップしたいぜ!」

 

「…お前は本当に口が減らないな。だが、今回に限っては俺も同じ意見だな」

 

サイヤ人組も同じく座っているが、彼らはわたしに教えられた超(スーパー)サイヤ人4と悟空が呼んでいた形態、いわゆる原種サイヤ人への再変身と、それに伴うサイヤ人だけが持つエネルギーである“サイヤパワー”の回復に努めた結果だった。べジータ王の持つエネルギーは界王様の遠隔会話を繋げる際のエネルギーを大部分補ってくれていた。

 

「こりゃ、俺たちは第一線から引退かな」

 

「ンダ」

 

「「そう落ち込むことはないぜ。俺たち以外の強さがとんでもないだけだ」」

 

クラッシャー軍団の残りの面々は自分達の今後を考えているようだな。まあ、これだけ力の差がある戦いを連続で経験しては仕方があるまい。

 

「はい、仙豆だよピッコロ兄さん。あーん♪」

 

「ご、悟飯。俺は別に自分で食べられるぞ…!」

 

「…あーん」

 

「わかった、わかったからそんな目で見るな!」

 

我が息子は順調に染められておるな。…悟空よ、そろそろ真面目に悟飯の今後を考えた方がよいかもしれんぞ。

 

さて、悟空が帰ってくるまで時間があることだし、何か聞きたげなべジータ王の質問に答えるとするか。

 

「さて、べジータ王よ。今回はお主のおかげで助かった。聞きたいことがあればなんなりと聞くがよい」

 

「…よく俺が質問したがっていることに気づいたな」

 

「なに、これでも曲がりなりに“神”をやっておるのでな」

 

「なるほど、それはわかりやすい。では聞くが、悟空が放ったあの“力”はいったいなんなのだ?」

 

べジータ王の質問に、わたしはしばし考え込む。

 

「わたし自身、詳細を知っているわけではない。だが悟空曰く、あれは“魔神”の力だと言っておった」

 

「…魔神?」

 

「そこからはわたしが説明しましょう」

 

「誰だっ!」

 

いつの間にか現れた少年にべジータ王をはじめとしたサイヤ人組が真っ先に反応するが、それをわたしは手で抑える。

 

「先触れぐらいは寄越してくだされ、界王神様」

 

そこに立っていたのは宇宙を管理する神の最高位。少年のような姿をした存在───界王神だった。

 

「それは失礼を。ですが、さすがに“伝説の超(スーパー)サイヤ人”が再来したとあっては、黙っているわけにもいきません」

 

「っ!そういうことでしたか」

 

わたしは悟空が持つ“黒い力”に納得がいった。なるほど、そうであれば悟空があの力を“魔神”と評したのも頷ける。

 

「俺にもわかるように説明してくれるか」

 

「うむ、そうだな。べジータ王、魔族というのがどういった存在か、どこまで知っておる」

 

「大したことは知らんな。俺が把握しているのは、破壊と殺戮を好んで繰り返す結果魔族になるということ、魔族になると戦闘力が増すということだ…おい、まさか」

 

自分で言った言葉に得心がいったのか、べジータ王が問い返してくる。

 

「そう、そのまさかよ。やつのあの“力”は魔族と同種のものだ」

 

「…なんだと!?」

 

確信を得てしまったわたしたちはその言葉の意味を反芻するように黙りこむ。

 

「正確には彼の力は後天的なものではなく、先天的に得られたもののようですがね」

 

そこから説明を引き継いだ界王神様によって、1000年前に起こったこの宇宙を滅ぼしかねないほどの戦いが語られた。

 

「…なんとも、規模の大きな話だな」

 

思わず嘆息するべジータ王だったが、無理もあるまい。薄々気づいていたわたしでさえ、驚きを隠せないのだから。

 

「あなたはそれほど驚いていないようですね。地球の神よ」

 

「まあ、驚いていないと言えば嘘になりますがな。神になる際、宇宙の大まかな歴史は学んでおりますゆえ…」

 

「ええ、正直あなた方を界王神界に連れてきたこと、あとで破壊神にどやされそうで困ってますよ」

 

苦笑いしながらため息をつく見た目相応の反応を示す界王神様に、わたしは警戒心を少しだけ緩める。

 

「…彼が再び“殺戮と破壊の権化”としてその力を振るおうとするなら、わたしは一命に変えても破壊神を目覚めさせねばなりません」

 

悲壮な覚悟を決めた界王神様だが、そうはならないことも知っているだろう。ゆえにわざわざわたしたちの前に姿を現したのだから。

 

「まあ詳細は悟空の口から聞くべきでしょうが、今さら“その程度”の衝動にかられることはないでしょう」

 

「…信頼しておられるのですね、あのひとを」

 

「当たり前です。それにヤツがそんなことを仕出かそうとするなら、わたしがぶん殴って止めてみせますよ」

 

すでに悟空との力の差は開く一方だが、そんなことは問題ではない。

 

わたしはヤツの“友”なのだから。

 




べジータ「で、結局魔神とはなんだ」
界王神・ピッコロ神「あ」

まあ詳細は次回悟空に語らせます。魔族に関する設定や伝説の超(スーパー)サイヤ人の昔話はオリジナルですのであしからず。
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