去年の暮れに書きはじめた、元はストレス解消の八つ当たり小説。
処女作であるにも関わらず、多くの方に読んでいただき感無量です。
ここまで付き合っていただいた方々、本当にありがとうございます。
多彩な考察で物語の幅を拡げてくれたhisao様、ケンカを売ってるような文章ながら誰よりも早く読んで感想をくれたAPOCRYPHA様のお二人には特にお世話になりました。
…危うくGガンダムの脚本みたいに“完!”って書きそうになりましたが、もうちょっとだけ続くんじゃよ(笑)
***side 悟空***
「さすがにいいネタ使ってるな。あ、チチ、そこのエビフライ大皿で持ってきてくれ」
俺は口いっぱいに寿司を頬張りながら、揚げたてのエビフライをチチに持ってきてもらう。
「このお寿司というのは素晴らしいですねえ。ねえビルス様」
「ああ、正直こんなに美味いものを食べたのは4万年ぶりくらいかな」
ビルスと後から到着したウィスも並べられた料理に舌鼓を打ち、どことなく表情も柔らかくなっている。
「…師匠、こんなことをしていていいのでしょうか。今にもナメック星には破壊と暴虐が渦巻いているというのに…」
心底心苦しそうに話しかけてきたナムに、俺は“スプーンをぐにゃぐにゃと揺らしながら”答える。
「仕方ないだろう。現状でビルスを“押さえ込める”のは俺だけ。もし俺がここから離れれば、ヤツは容赦なくお前たちを破壊するだろうしな。それはごめんこうむる」
「…そうですか、“わかりました”」
残念そうにうつむくナムだが、俺の意図は伝わったようだな。さて、後はナメック星の連中がどれだけ持ちこたえられるかにかかっているが…
「言っておくけど妙なことをするんじゃないよ、サイヤ人。お前が指先ひとつでもナメック星の援護をしようものなら、僕はすぐにでもこの星ごとお前の仲間を破壊するからね」
「わかってるよ、ほれプリンでも食ってろ」
「…ほう、これはまた美味しそうだね」
餌付けであっさりと意識を逸らされるビルスに、こいつを感動させるほどの超一流料理人が現れたら破壊神の活動があっさり止められるんじゃなかろうかと思ってしまう。
ま、そんなことは隣の天使がさせないだろうがな。うまい食事を取らせなかったのも、どうせこいつの策略だろうし。
「おや、悟空さん。そんな目で見ないでくださいよ。わたしは“なにも”してないんですから」
「ほざけ、お前ら天使がどれだけ腹黒いかはよぉく知ってるんだよ。お前の親父がやってきたことはさんざん見てきたんだからな」
億年単位の追憶は記憶を劣化させるが、こいつら天使の所業は俺をして胸糞悪くさせる悪質なものだ。
宇宙の安定を保つためなら、どんな下劣な手段でも平気で取りやがる。
「まあまあ、お酒でも飲んでのんびりしてくださいよ。“今は”わたしたちが争う理由なんてないんですから」
相変わらず笑いながらのほほんと言ってのける目の前の天使にキレそうになるが、俺はそれをこらえて“手元の金属製ボトル”に入ったウォッカを一息に飲み干す。
その様子を見ていたチャパ王がこちらの意図を察したのがわかると、近づいてきたので声をかける。
「チャパ王、悪いんだが建て直した家の中に“水晶で出来た”俺のコップがあるんだ。中に“アレを入れて”取ってきてくれないか」
「はい、ただいま」
素直に立ち上がったチャパ王は、あるはずのないコップを探しに席を外す。
ビルスやウィスは俺やピッコロの動きはそれなりに警戒しているみたいだが、このなかでも弱い部類に入る三弟子は俺の妻たちに次いで無視されている。
それが好都合であることにも気づかずに。
「ギラン、暇だからなんかやれ」
「なんで俺だけそんな扱いなんだよ!」
さきほどからこちらに視線を投げ掛けてくるギランに、ややぞんざいに声をかける。お前露骨すぎるんだよ。
「いいから“グルグルガムで”なんか作れよ。そこにいる“破壊神と天使が満足”するようなものをな」
「…バカ師匠が無茶振りしやがって…」
「なんか言ったか?」
「わーったよ、やればいいんだろ!?」
俺が片手に構えたワサビのチューブを見て、ギランが悲鳴を上げながらグルグルガムを粘土のように捏ねはじめる。
「おや、なにかの余興かい。せいぜい楽しませてもらうよ」
ビルスがグルグルガムを捏ね回すギランの手元を注視する。
ちょうどその頃、“準備を終えた”チャパ王とナムが戻ってきた。
チャパ王はその手に“水晶で出来たコップ”を持ち、中には“あるもの”がなみなみと注がれている。
「そうそう、こいつが無いとな。手間をかけたな、チャパ王」
「いえ、それより“いつでも”お飲みください」
「ああ、じゃ遠慮なく「待ちなよ」…なんだ、破壊神」
俺がいかにも美味そうに飲もうとしたコップの中身を見て、ビルスが興味津々といった具合に覗きこんでいる。
「ずいぶんとそれを楽しみにしていたみたいじゃないか。ここはまず僕が口にするべきなんじゃないかな?」
イヤらしく笑みを浮かべ、自分の要求が通るものだと信じきっているビルス。ありがとうよ、お前がそう言うのを待ってたんだ。
「…仕方のないヤツだな。言っておくが、チビチビ飲むんじゃないぞ。それはな、一息にぐいっと煽るから美味いんだ」
俺はいかにも美味そうに、手で飲み干す仕草をする。ここまでの美食の数々に舌鼓を打ったビルスからすれば、それを食べなれているはずの俺がこれだけ期待している様子はさぞ羨ましそうに映るだろう。期待の意味が違うがな。
「もちろんだとも、君が飲む分なんて残してあげないよ」
言うなり、ビルスは一口でコップの中身をすべて飲み干す。“超神水”を。
「◎△$♪×¥●&%#?!」
意味不明の言葉を発しながら、ウィスの足元にコップを落とすビルス。
その瞬間、俺は合図を出す。
「今だ!」
「八手観音・水晶結界!」
落としたコップがまるで水に液体窒素を垂らしたように一瞬で広がり、ウィスを巻き込んでビルスごと水晶の仏像に閉じ込める。
「如意金箍呪・縛牢鎖!」
その水晶を囲むように鎖状に変形した如意棒が巻き付き、がんじがらめに縛る。
「おまけだ!ウルトラグルグルガム!」
水晶の隙間からギランが捏ねて粘度を強化したウルトラグルグルガムを流し込み固めてしまう。
「魔封波!」
とどめに俺がさきほど飲み干した金属のボトルに閉じ込めた破壊神と天使を封印すると、すばやく駆け寄った亀仙人が封印のお札を張り付ける。
「ナイスアシストだぜ、大師父!」
「ま、ギランがわかりやすかったからのう。今回の戦いに備えて一応持ってきておいてよかったわい」
俺は札を持ってきてくれていた亀仙人に感謝すると、ふたりを封印した金属のボトルをピッコロに投げ渡す。
「たぶん、10分ともたない。ピッコロ、急いでそいつを精神と時の部屋にある“開かずの間”に送ってくれ」
「よしきた」
ピッコロは魔法で金属のボトルを、精神と時の部屋にある開かずの間にあっさり送ってくれる。
これで時間が稼げるだろう。
「な、何が起きたというのだ」
事態についてこれなかったベジータ王がチキンを手に持ちながら固まっていた。界王神に至ってはキビトと一緒にまるで自爆したベジータのように白くなっている。
「ここで戦うわけにもいかないからな。とりあえず封印させてもらったんだよ」
「あれは、以前我々が師匠から教わった手順です。会話の中に連続してキーワードが入っていた場合、封印を施すための動きができるよう訓練してきましたので。…師匠は、最悪あれを自分にお使いになるつもりだったのでしょう?」
ややジト目でこちらを見てくるチャパ王に、俺は苦笑で返す。そのとおりだからな。
「悟空さん、開かずの間ってなんですか?」
俺が口に出した言葉が気になったのだろう。クリリンが聞いてくる。
「精神と時の部屋には、出入り口と繋がった場所に寝泊まりする場所があるのは知っているな。実はあそこの下に、部屋とは逆の作用が働く空間があるんだよ。落ちたら最後、外で一日が経つ間に一年が過ぎちまう。見つけたのは俺なんだが、あんまり危ないんでピッコロと協力して封印したんだよ」
「えっと、てことは…二日半は時間が稼げるってことですか?」
「正解だが、ヤツは破壊神だ。もしヤツが分割した封印をまとめてではなくひとつずつ破壊するしかないことにすぐ気づけば、思ったよりも出てくるのは早いかもしれない。それにどっちみち、二日では宇宙船での往復もできない。直接飛んでいくにしても今からじゃ間に合わない。だから、こうするのさ…!」
俺は“黒い”超(スーパー)サイヤ人へと変身し、遠視能力を発動する。イメージするのは、かつてノリで描いたヒーローの自分。
黒いバイザーマスクを被り、青いアンダーウェア、赤いマントを着込んだヒーローのテンプレのような姿。
「行けっ!グレートサイヤマンっ!」
遠視能力を最大発動させ、ナメック星に気で作られたヒーローが降り立った。
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カルゴは、目の前で起きたことが信じられなかった。
アジッサの苗の手入れをしていた最中、突如として空が暗くなった。
かと思えば、落ちてきた“キンイロノバケモノ”がムーリ長老を頭からかじった。
一瞬カルゴは固まり、次の瞬間には振り返って走り出した。
(早く、お兄ちゃんに伝えなくちゃ)
(逃げなくちゃ)
それだけが、幼いカルゴが精一杯考えられることだった。
だが幼いナメック星人の願いも虚しく、目の前には口を大きく開いた“キンイロノバケモノ”がいた。
悲鳴をあげる間もなく、カルゴは噛み砕かれて死んだ。
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ブロリーは急いでいた。
この星に訪れた自分の心をざわつかせるナニカに急かされて。
すでに通常の超(スーパー)サイヤ人には変身している。
だから、ブロリーは目撃してしまった。
化け物が、デンデの頭を噛み砕く瞬間を。
「…あ、ああ…!」
つい先日まで、そこにはムーリ長老が率いるナメック星の村があった。
多くはないが、それでも十数人のナメック星人が慎ましやかに暮らしていた。
だがその場に転がっていたのは、かつてナメック星人“だった”肉片たち。
そのときはじめてブロリーに気づいたように、ゆっくりと化け物がブロリーの方を向く。
ブロリーは自身の心に去来する、見覚えのないはずの記憶と今目の前に広がる光景を重ねていた。
それはかつてブロリーの目の前で起きた惨劇と同じ。
血だまりの中で、口の周りを紫色の血で染める『黄金の魔獣』が彼を向いて吠え叫んだ。
「■■■■■■■■■■■■■■■■っっ!!!!!」
「…フリーザ」
声に負けるようにして超(スーパー)サイヤ人を解いてしまったブロリーが、その場でうつむく。
しかしその周囲には、まるで風が吹くように気が集まりエネルギーが高まっていく。
「…フリーザ…!」
先程よりも大きく、呼び掛けるような声でブロリーは呟く。
「フリイイイィィィザアアアアァァァァァ!!!!!」
ブロリーのなかに“哀しみ”が広がる。
それはまるで“毒”のようにブロリーの心を侵食し、抑えられていた破壊と殺戮の衝動を解放した。
気が弾けるようにしてブロリーの全身から溢れ出ていく。
それに呼応するようにして、細かった全身の筋肉は肥大化し、身長までも変わっていく。
魔獣となったフリーザは、その姿をまるで“ごちそうができあがる”のを待つようにヨダレを垂らして待ち構えている。
やがて、ブロリーのほとばしる気が天候までもを変え、周囲が嵐に変わりはじめた頃。
変身を終えたブロリーは、巨大化してなお上回る大きさのフリーザを見上げて口角をつり上げる。
「さぁ来い!ここがお前の死に場所だあっ!!!」
挑発的に叫んだブロリーは、突進してくるフリーザに向かって掌に現出させたエネルギー球《ブラスターシェル》を叩きつける。
「■■■■■■■■■■■■っっ!!!」
だがその程度ではフリーザは止まらない。そしてブロリーも攻撃の手をゆるめず、今度は《ブラスターシェル》を連続でフリーザに叩きつけていく。
当然戦いが与える影響はすさまじく、嵐とともに大地が抉られ、湖が干上がっていく。
そして流れ弾が、破壊の余波が、打ち捨てられたナメック星人らの死体を砕いていく。
だがブロリーはそれらを気にも止めない。
目の前にいる怨敵(フリーザ)を倒す。
それだけが彼の思考を支配していた。
「はあああああああっ!」
ブロリーは全身にバリアをまとい、フリーザへと突っ込む。
予想外のカウンターを受ける形になったフリーザは一瞬ひるむが、次の瞬間にはバリアを砕いて中のブロリーを捕まえようと腕を伸ばす。
ブロリーはその巨体からは想像もつかない軽やかな動きでそれを回避すると、両手から《ダブルイレイザーキャノン》を繰り出し、フリーザの目に向かって叩きつける。
「■■■■■■っ!?」
目を潰すことは叶わなかったものの、一時的に視力を閉ざすことに成功したブロリーは大胆にもフリーザの懐へ入り込み、ゼロ距離で《ギガンティックミーティア》を放つ。
勢いのままに飛ばされていくフリーザは、防御することもままならず爆発した巨大な緑の極光に包まれる。
「…死んだか」
あまりにあっさりとした最後に、ブロリーはつまらなそうに気を抜く。
だがその瞬間を狙ったかのように、地面を通して伸ばされた尻尾が、ブロリーの左腕を切り落とした。
「ぐああああああああっ!?」
あまりの痛みにブロリーの中にあった気が乱れ、ブロリーは正気を取り戻してしまう。
「お、俺はいったい…!くそっ、腕が…っ!!」
腕を押さえてうずくまるブロリー。
だが、爆煙の中から現れたフリーザはそんなブロリーへと容赦なく突進していき、巨大な口で彼の左肩をとらえる。
「があああっ!は、離せ化け物ぉ!」
ブロリーは至近距離から連続で《イレイザーキャノン》を打ち込むが、フリーザはびくともしない。
むしろ、攻撃されることを喜んでいるようだった。
苦しむブロリーを美味そうに味わいながら、少しずつ噛みちぎろうとするフリーザ。
(これまでか…)
「おらぁ!」
ブロリーが絶望しそうになる中、超高速の一撃がフリーザの腹に打ち込まれ、その隙をついて喰らいついたブロリーの肩を離させる。
浮き足だったフリーザを、現れた男は回し蹴りで遠くへとぶっ飛ばす。
「ぐ…うう、悟空…さん?」
ダメージに喘ぐブロリーは、自分が唯一格上と仰ぐ存在が助けに来てくれたのだと見上げて、頭のなかが疑問符でいっぱいになった。
「わたしは悟空さんなどという男ではない」
黒いバイザーマスクを被り、青いアンダーウェア、赤いマントを着込んだ目の前の存在。
どう感じても悟空としか思えない気を迸らせる男は、両腕をぴんと右斜め上に伸ばし、ゆっくりと反時計回りに円を描いていく。
そして最初と逆の姿勢になると、右腕の肘を曲げながら甲は正面、拳は上に、左腕は構えた右肘を押さえるように、同じく甲を正面に向けた構えをとる。
「人の世の生き血をすすり、不埒な悪行三昧…!醜い浮き世の鬼を、退治てくれんと現れた…!我こそは正義の味方!グレート、サイヤマン!!」
色とりどりに背後を爆発させ、左掌を斜め前に、右拳を腰に取る構えをとった悟空。いやさグレートサイヤマン。
それを見上げるブロリーは…
「か、かっこいい…!!!」
子供のような顔で思いっきり憧れていた。
腕の痛みも忘れ、目の前の悟空…もといグレートサイヤマンを見上げるブロリー。
「ブロリーくん、急いでゼロ…いやセーロの元に戻るんだ。君には、君たちには、あの力が必要だ…!」
そう言って、目の前を警戒するグレートサイヤマン。
飛ばされたフリーザは食事の邪魔をされたのが気にくわないのか、ひどく怒った様子で歩いてくる。
「急げっ!」
グレートサイヤマンは地面に拳を打ち込みフリーザがいる場所までを凍らせると、足元を滑らせたフリーザに向かい手元に光の剣を出現させ、向かっていく。
「わかりました…!」
痛みをこらえながら、ブロリーは愛する姉のもとへと一度戻るのだった。
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***side 悟空***
「やれやれ、行ったか…」
グレートサイヤマンとなった俺は、どうにか空を飛んでいったブロリーを見送り、フリーザと対峙する。
光の剣で尻尾を切り裂いたが、あっさり再生されてしまった。
遠視能力を最大限まで発動させて作り出した分身だが、本体の俺の十分の一以下の力しか持たない。
ましてや先ほどゼロ、今世ではセーロの魂に語りかける為に力の大半を置いてきている。
だがせめて時間稼ぎくらいはしてみせよう。
なに、手段を選ばなければいくらでも戦いようはあるさ。
「行くぞフリーザ、お前の罪を数えろ…!」
光の剣を12本出現させ、矢のように射ちまくる。
殆どが弾かれるが、何本かは刺さっている。だが、フリーザはまるで問題にしていない。
それは剣の性質を変え、燃える剣や凍りつく剣であっても同じことだった。
「…なるほど、攻撃そのものを吸収しているのか。厄介だな」
言いながら俺は吸収される前に刺さった剣を爆破する。体内にまで響いたであろう攻撃に怯むフリーザの隙をつき、特大の剣を作り出し叩きつける。
剣は即座にへし折られてしまうが、物質化によって集束された気はまともに殴るよりもダメージが大きい。
「そらどうした、神にも届く力を見せてみろ」
挑発しながらも、フリーザが向かってくる先に槍衾(やりぶすま)を作り出し待ち構える。
こちらへ突っ込んでくる寸前ひときわ輝いたフリーザは、気で全身を防護して無理矢理槍衾を突破する。
そのまま俺にかじりつくが…残念、それは偽物だ。
ゴバッ!!
噛みついた瞬間爆発した分身に口の中を焼けただれさせたフリーザ。今度はうまく吸収できなかったみたいだな。
なるほど、防護と吸収をある程度任意で使い分けられるのか。
「では、こういうのはどうだ」
俺は非常に細かい霧状に分解した気をフリーザの周りに漂わせる。
フリーザはもちろん構わず動こうとするが、霧状の気から脱出しようとした瞬間、細かな気は連鎖反応を起こし強力な電撃へと変貌する。
「■■■■■■■■■っ!!」
悲鳴をあげるフリーザだが、今回は防護も吸収もできていない。
霧状の気の正体は、ひとつひとつが雷の性質を持った気の爆弾だ。
吸収しようにも細かな気そのものが持つ気の量は小さく、吸収しきる前に電撃と化してしまう。また防護しようにも、電撃は魔獣の肉体に入り込み内側から焼いていく。
これでどうにか倒せればと思ったが…
「やはり、そう上手くはいかないか。ぐっ!」
電撃を纏ったまま、フリーザはなりふり構わず攻撃を仕掛けてきた。
本気で動き始めたフリーザを前に、俺は対応が間に合わず右腕を持っていかれてしまう。
「■?」
気で作り出された遠隔分身であるために、味わおうにも溶けて消えてしまったのだろう。
不可思議な表情を浮かべるフリーザに、俺は残る気を分身を維持する分まで全て槍状に変え、フリーザに向けて射ち始める。
飽和攻撃でどこまで足止めできるかわからないが、これで分身が消えればもう俺からの直接的な援護はできなくなる。
後はセーロのなかのアイツが、どこまで自分の力を解放できるかにかかっている。
「さあ、後はお前の出番だぞ!ブロリー!」
俺は分身に最後の一言を言わせると、正義の味方グレートサイヤマンは泡のように消えていった。
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大怪我を負ったブロリーは、気を失ったセーロがいる最長老の元までやってきていた。
すでに他のナメック星人も最長老の元へ避難しており、この場所にすべてのナメック星人が集うことになっている。
他の長老らによって失った腕を治してもらったブロリーは、最長老の前で台座に寝かされた姉の顔を見下ろしていた。
「姉さん…」
理性を失い、自分の力を全て出して戦ったブロリーは気づいていた。
黄金の魔獣と化したフリーザに、自分では勝てないことに。
今も激しい戦いの気配を感じるが、あのグレートサイヤマンであっても時間稼ぎしかできないであろうことはブロリーも承知していた。
「ブロリー…」
「姉さん!大丈夫なのか!」
セーロに駆け寄ったブロリーはすぐに気づいた。姉の生命力がひどく弱っていることに。
「どうしてこんなことに…」
聞けばこの場にいるナメック星人がどれだけ治療を施しても効果がなく、徐々に弱ってしまっているということにブロリーは目の前が真っ暗になる錯覚を覚える。
「どうすればいい!俺にできることなら、なんだってする…!」
もはやフリーザのことなどどうでもいいほどに、ブロリーは狼狽していた。
「…前世の力が、魂に宿った本来の力が甦ろうとしているのです。ですが、彼女の肉体は弱い。とてもではないが、魂の力を受け入れるだけの強さはありません。このままでは、いずれ内側から蝕まれ、彼女は死んでしまいます」
「そんな…!」
ブロリーはその場に崩れ落ちる。
姉が死ぬ。そんなことは、彼にはとてもではないが受け入れられることではない。
ブロリーは無言でセーロの手を握る。
彼女を想い、愛し、大切にしたいと、心の底から思う。
だからだろうか。気づくと、ブロリーは真っ白な空間に立っていた。
「…はじめまして、かな。君がブロリーだね」
「姉さんっ!?…いや違う、あんたはいったい…?」
ブロリーの前に立つのは、白い髪のセーロによく似た少年。
「僕の名前はゼロ。かつて、伝説の超(スーパー)サイヤ人を追い詰め…負けた男さ」
自嘲するように微笑む少年。その姿に、ブロリーはさきほど最長老が言っていた言葉を思い出す。
「ま、まさかあんたが姉さんの前世、なのか…?」
目の前に立つ少年が瓜二つであることから、ブロリーはなんとなくムラムラしてくるが、今はそれどころではないだろうと我慢する。
「う…そ、それ、しまえないかな…?」
「あ、悪い」
全開でいきり立ってしまったぺニスがむき出しになってしまい、ゼロはブロリーのそれを恥ずかしそうに指さす。
「えっと、なんだったっけ。…あ、そうだ。このままだと生まれ変わった僕、セーロは“神”の力を受けきれずに死んでしまう。だから、君に提案しに来たんだ」
「姉さんを助ける方法があるのか!?」
ブロリーは思わずといった様子でゼロに駆け寄り、その両肩を掴む。
体格の違いもありブロリーの力を受けて苦しそうにするかと思いきや、相変わらず頬は染めたままだがゼロはあっさりとブロリーの腕を“力尽く”で下ろさせる。
「…僕に宿った神の力は死してなお魂に宿り、他の者を魅了する力として彼女に顕現した。僕もその力は宿していたけど、コントロールの効かないあの力は危険すぎる…結果として、君たちの親や仲間を死なせてしまったしね」
「俺が生まれて間もなくあったというフリーザとの戦いか…余計なお世話だ。さっきは思わず暴走したが、サイヤ人である以上戦って死ぬのは本望だろう。フリーザが強かった。それだけのことだ」
自らのトラウマに苦しめられながらも、ブロリーは理性的な部分ではかつての事件を納得していた。
弱いからいけなかった。それだけのことだと。
「…すごいね、さすがは“あの人”の先祖帰りだ。…僕はそうはなれなかった。けれど、あの人の支配を終わらせたいと思ったのも事実だ。見て、これが僕の、僕らの戦いだよ」
「これは…!」
白い空間に、まるでシャボン玉のように無数の泡が浮かぶ。
泡のなかには、漆黒の髪をたなびかせる筋骨隆々とした大男と、純白の髪に赤いオーラを纏いながら戦うゼロの姿があった。
数十年に及ぶ戦いの歴史。一度は銀河を滅ぼし敗北したゼロも、修行を重ね仲間の力を受け、伝説の超(スーパー)サイヤ人に匹敵する神の力を手にいれ、激闘の末に死んだ。
「…この力、超(スーパー)サイヤ人ゴッドは、担い手を選ぶ。本来なら、仲間となる正しい心のサイヤ人がいない今となっては、もはやゴッドになることは叶わない。けど方法はある。僕の魂に宿った神の力をすべて使えば、“彼ら”を呼ぶことが可能だ。あの黄金の魔獣を今ここで倒すには、もうそれしかない」
「それをやれば、姉さんは助かるのか?」
「うん、力を使い果たすから、もう魅了の力は失われてしまうけどね。でも、そんな能力は関係なく愛しているんだろう?そして君に、受け取ってほしいんだ。神の力を」
「…わかった。お前はどうなるんだ」
ブロリーは姉と瓜二つの少年の行く末を心配する。その様子を、おかしそうにゼロは笑う。
「ふふ、どこまでもサイヤ人なのに、優しいんだね。そんな君だからこそ神の力は相応しい。そしてどうか、僕に変わって守ってほしい。この宇宙を、星々の命を。そして伝えて…父さんに、いつまでも愛してますって」
その言葉を最後に、ゼロの姿は光の粒子になって消えていく。
光の粒子はブロリーにも入り込み、彼は目を覚ました。
「いったいどうしたんだブロリー!」
彼の横には、心配そうにブロリーを覗きこむネイルの姿があった。
「…師匠、いってきます」
「どういうことだブロリー…その力は…?」
赤い輝きに包まれたブロリーは、ゆっくりと浮かび上がると、フリーザのいる方向へと飛んでいく。
「はっ!」
「セーロ、目を覚ましたのか!」
目を覚ましたセーロは、遠くを見るようにして空を見上げて涙をこぼしていた。
「…バーダック」
セーロが呟くのと時を同じくして、無数の光の流星がナメック星に向けて集まりつつあった。
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「…ほーれ、来なさったぞ。お前が一番恐れた、サイヤ人ってやつがな!!」
もう一度分身を送った悟空だが、すでにグレートサイヤマンの姿を維持できないほど消耗していた。しかしそれでもなお、亡霊のように姿を現しフリーザを翻弄していた。
そんな状態だったからこそだろう。悟空は、夜空に輝く星が一際多くなっているのに気づいた。
ドガッ!!
降り注いだ光のひとつが、すさまじい勢いでフリーザを殴り飛ばす。
「…すげえな、魂の状態でフリーザを殴りやがった」
『せめて一発ぶん殴ってやりたくてな。お前が誰かは知らないが、見てたぜ。ブロリーとセーロが世話になったな』
そこにいたのはうっすらと姿を見せる、魂だけとなったバーダックだった。
「…ばー、ダっグ…?バアアアアアダアアアアアグッググググググググ!!!!!!!?????????」
殴り飛ばされたフリーザだったが、自分を殴った存在がバーダックだと分かるや否や、手足をめちゃくちゃに動かしてかけずり這い寄ってくる。
「うわ、気持ち悪いな。お、ブロリーが来たぞ」
飛んできた赤いオーラをまとうブロリーは、すでに消えかかった悟空とバーダックを見て驚く。
「悟空さん、大丈夫ですか!?…あなたは」
『サイヤ人の未来を頼んだぜ、ブロリー…』
そう言って、バーダックはその“力”をブロリーに与えて消えていく。
『あの赤ん坊がこんなに強くなるとはな』
『当たり前だろう、俺の息子だぞ』
ハゲ頭の大男が拳を胸に突き出すような形で“力”を与えて消えていく。
その隣にいた髭を生やした男は、優しくブロリーの頭を撫でるようにすくと、力を与えて消えていった。
「とう、さん…?」
『ブロリー、大きくなったね』
次にブロリーの元に来たのは快活な様子のスカートを履いた女のサイヤ人。ブロリーの体を一通りなで回すと、笑って力を与えていく。
次から次へと、かつてフリーザに殺され成仏できなかったサイヤ人の魂が、ゼロの持つ魂の力で呼び出され、ブロリーへと力を与えていく。
「こんな場面で邪魔なんかさせるかよぉ!ほら、こっちだフリーザ!」
悟空は連続で太陽拳を浴びせながら、フリーザの気を引き続ける。わざわざ顔をバーダックそっくりに変えたことも効果的で、フリーザは半狂乱で悟空を追い続ける。
「ブアアアアァァアァアダアァァアアアアグウウゥゥウウぅウウウウウ!!!」
そしてブロリーを見つめながら涙を流す女サイヤ人が、優しく彼の頬を撫でていく。
『…ブロリー』
「かあ、さん…」
『ごめんね、ごめんねブロリー…ひとりにして、ごめんね…』
泣きながら謝るブロリーの母、コリーを見て、ブロリーは答える。
「俺はひとりなんかじゃなかった。師匠がいた、友がいた、そして姉さんがいた。それに今だからわかる…!母さんが、父さんが、俺を見守っていてくれた…!!」
ブロリーは静かに、笑いながら泣いていた。体に流れ込むその大量の力をすべて受けとりながら、サイヤ人の神と呼ばれる赤いオーラを纏いながら、泣き笑っていた。
「…俺のなかに流れ込んだみんなの力が言っている!アイツを、フリーザを倒せって…!」
「くそっ、限界か…!」
「バアアアアアアアア!!!」
フリーザの滅茶苦茶な攻撃を受け、とうとう悟空の分身は消えていく。
そして、黄金の魔獣の狂った相貌が、ブロリーをとらえた。
「アアアアアアアアア!!」
事実狂いながら突進してくるフリーザだったが、ブロリーはそちらを振り向きもせず片手で受け止める。
突進の余波で大地が砕け、衝撃波が周囲を荒れ狂うが、ブロリーは小揺るぎもせずにたたずんでいる。
「はあっ!」
力をもて余したブロリーの、無造作な蹴り。
しかしフリーザはその顔を大きくひしゃげさせ、ゴムまりのように大地を転がり、弾み、山を砕いてようやく止まる。
「終わりにしよう…!」
ブロリーが気合いを入れると同時に、その全身を包む赤いオーラが青く変色していく。
変色は髪の色にも現れ、ブロリーの髪を透き通るような“蒼”が染めていく。
「ギイイッ!ガアアアダアアアグウウ!!」
「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
“拳を握った”フリーザの巨拳と、全エネルギーを一点に集中したブロリーの拳がぶつかり合う。
激しいエネルギーのぶつかり合いが、星を砕いていく。宙(そら)を割っていく。
まともに余波が漏れればナメック星があっさり崩壊しかねないほどのエネルギー。
ブロリーはそれらのエネルギーをすべて吸収しながら、フリーザの巨拳を消滅させていく。
「光に…!なああぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇ!!!!」
跡形もなく消えていくなか、フリーザは不意に正気を取り戻していた。
自分を消すブロリーの真っ直ぐな瞳を見つめながら、静かにフリーザは消えていく。
「未練…だな…」
最後に一言呟いて、フリーザは消えた。
その瞬間、星が輝いた。
多くの魂が、その瞬間を待ち望んでいた。
フリーザに食われた魂達が、一斉に空へと還っていく。
「ブロリー…」
光のなか、セーロがブロリーの元へと歩いてくる。
「姉さん…」
すでに通常形態に戻ったブロリーは、走ることも難しいほどに消耗しながら、少しずつセーロの元へと近づいていく。
「終わったの…?」
「ああ、全部終わった。姉さん、言いたいことがあったんだ」
どちらも疲れはて、どちらからともわからないタイミングで抱き合いながらその場に倒れたブロリーは、抱き締めたセーロのニオイを嗅ぎながら、愛おしそうに告げる。
「あなたを愛している…」
「ぼくもだよ、ブロリー…」
ふたりの愛を祝福するように、魂の花火は打ち上がり続ける。
その綺麗な花火は、いつまでもいつまでも二人を照らし続けた。
予告で期待していた内容と違う?こまけーことはいーんだよ(´・ω・`)(笑)
あっさり倒されたフリーザでしたが、まあこんなもんです。
恐怖の描写に関してはこれまでも散々書いたので。
あと、セーロがサイヤ人絶滅の原因の件についてはブロリーにばっさり切ってもらいました。感情では納得しきれてない分も当然あります。人間ってそういう生き物ですし。
…ふう、なんかもう全部終わった気分だけどまだビルスいたわ。
次回でさくっと倒してスーパー口説きタイムに突入だぜ(´・ω・`)(笑)